映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

聞こえない人、それぞれのコミュニケーションの形を見つめる香港映画『私たちの話し方』アダム・ウォン監督、撮影のミンカイ・ヨンさん舞台挨拶を開催@OAFF2025

CO11_The Way We Talk_main.JPG
 
 『狂踊派3』のアダム・ウォン監督が聴覚障がいを持つ3人の若者たちの挫折と希望を描く『私たちの話し方』が、第20回大阪アジアン映画祭コンペティション部門作品として3月15日「テアトル梅田」(大阪市北区)で日本初上映された。
 
 2000年代まで手話教育が禁止されていたことを背景に、手話を習うことなく、幼い頃から人工内耳を装着し、努力を重ねて口語話者となり、今は数理士を目指すソフィー(ジョン・シュッイン)。幼い頃から手話話者であることに誇りをもち、手話話者たちと一緒に車清掃業を行う一方、ダイビングコーチの夢に向かって歩んでいるチーソン(ネオ・ヤウ)。チーソンの幼馴染で、人工内耳をつけても手話で話すことも続けると約束を交わし、今はクリエイターとして活動している手話もできる口語話者のアラン(マルコ・ン)。この3人それぞれのコミュニケーションのやり方やその日常を、リアリティーをもって描いている。チーソンから手話を習うことで、自分らしい表現方法に出会えた喜びや、聞こえないことに対する自身の思いが変化していくソフィーを繊細に演じたジョン・シュッイン(0AFF2024『作詞家志望』は、金馬奨主演女優賞を獲得。登場人物たちの聞こえる/聞こえない感覚を疑似体験させるような音響も秀逸だ。
 
 
IMG_2895.JPG
 
上映後に行われた、今回で大阪アジアン映画祭4度目の来場となるアダム・ウォン監督と撮影のミンカイ・ヨンさんの舞台挨拶では観客から大きな拍手が送られた。
アダム・ウォン監督は、「この映画を作るにあたり、ほんとうに色々調べました。もともと耳の聞こえない友人がいましたが、あまり深くその文化を知りませんでした。5年前、耳の聞こえない人特有の文化があることを知ったのは5年前です。自分の立場をよくわかっており、それを誇らしく思う方が多くいらっしゃる。そういう方々の話を聞いて感動しましたので、チームを作ってリサーチを重ね、映画を撮ることにしました」と映画製作のいきさつを語った。
 
さらに「聞こえない方々全てが聞こえないことを誇りに思っているわけではなく、かといって恥ずべきことだと思っているわけではないことを強調しておきます。様々な(聞こえやすくする人工内耳や補聴器などの)方法を使ったり、手話を使って、みなさんそれぞれが、他のみなさんとコミュニケーションを取っていこうという積極的な想いを持っていらっしゃいます。手話を一生懸命学ばれた方も、いつ、どのようなシチュエーションで手話を使えば、どこまでコミュニケーションが取れるのかを考えながら、色々な方法を、色々なレイヤーを使いながら自己表現していこうとされています」と付け加えた。
 
続けて撮影監督のミンカイ・ヨンさんは、この映画の話を監督からもらったときに、最初に言われたのはリアリティーを出したいということだったと語った。さらに、
「その中でも人工内耳や手話を使って、自分たち以外の世界の人々とどうやってコミュニケーションを取るのかを、リアリティーをもって描きたいと監督から言われたのです。みなさんと一緒にいる間に、いろんなことを考え、感じ、それをどのように誠実に表現するかを考えました。(カメラで)正確に表現するだけではなく、私が手伝いながら役者のみなさんがそれをうまく表現できるように持っていきました」と役者たちの演じやすい環境づくりに腐心したことを明かした。
 
CO11_The Way We Talk_poster.jpg
 
第20回大阪アジアン映画祭は3月23日まで開催中。『私たちの話し方』は3月20日(木)15:40よりABCホールで2回目が上映予定。
詳しくはhttps://oaff.jp まで。