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モンゴル映画『シティ・オブ・ウインド』がグランプリを獲得!【第19回大阪アジアン映画祭受賞結果】

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 第19回大阪アジアン映画祭は、3月1日から10日間の上映を終えて閉幕し、最終日の10日に授賞式が行われた。見事グランプリに輝いたのは、モンゴル映画の『シティ・オブ・ウインド』。台湾映画『サリー』(リエン・ジエンホン監督)が来るべき才能賞とABC賞の2冠を獲得、尼崎を舞台にした日本映画『あまろっく』(中村和宏監督)が観客賞を獲得した。全ての授賞結果と授賞理由をご紹介したい。
 
★グランプリ(最優秀作品賞)
『シティ・オブ・ウインド』(City of Wind)|フランス・モンゴル・ドイツ・ポルトガル・オランダ・カタール|監督: ラグワドォラム・プレブオチル(Lkhagvadulam Purev-Ochir)
 
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<授賞理由>
青春映画というジャンルの枠組みでグランプリを受賞した本作は、私たちが見たことのない世界を照らし出し、スピリチュアリティや世代間の対立といった問題を、巧みさと自信に満ちた手腕で描き出す。この映画は、主人公の成長を繊細に描きつつ、啓示的な演技を中心に据えている。
 
★来るべき才能賞
リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)|台湾|『サリー』(Salli/莎莉)監督
<授賞理由>
リエン・ジエンホン監督は、予想だにしなかった展開とひねりを加えつつも、過去の偉大なキャラクター主導型コメディを彷彿とさせる素晴らしい創作力を発揮した。思い出の場所や人物を散りばめた卓越した脚本で、心からの感動と大爆笑コメディを両立させるテクニックを披露したリエン監督の次回作を大いに期待する。
 
★ABC テレビ賞
『サリー』(Salli/莎莉)| 台湾・フランス | 監督: リエン・ジエンホン(LIEN Chien Hung/練建宏)
<授賞理由>
とてもほっこりした気持ちにさせる映画です。パリへと渡る主人公の葛藤もうまく描けていますし、家族や友人との触れ合いも暖かく、読後感が大変良いです。なにより、ニワトリが可愛い!
 
★薬師真珠賞
チー・ユン (CHI Yun/池韵)|オーストラリア・中国|『未来の魂』(Unborn Soul/渡)主演俳優
<授賞理由>
チー・ユン(池韵)という俳優が存在したからこそ『未来の魂』は生み出された。そして彼女の繊細で深みのある演技が、観客の魂を最初から最後まで揺さぶりつづけた。
 
★JAPAN CUTS Award
『カオルの葬式』(Performing KAORU’s Funeral)| 日本・スペイン・シンガポール | 監督: 湯浅典子(YUASA Noriko)
<授賞理由>
『カオルの葬式』はある家族の葬儀の場で起きる赤裸々な感情のぶつかりを見事に捉えたホームドラマである。タガの外れた演技の完璧な掛け合いが、パーカッションのリズムが心地よいサウンドトラックと勢いのいい編集と相まって、家族の機能不全を面白くも切なく描いたダークコメディに仕上がっている。
 
★JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション
『ブルーイマジン』(Blue Imagine) | 日本・フィリピン・シンガポール | 監督: 松林麗
(MATSUBAYASHI Urara)
<授賞理由>
松林麗の力強くて誠実な初監督作である『ブルーイマジン』は私たちが生きる現在の証であり、そのメッセージにおいて緊急性を、そのアプローチにおいて癒しを感じさせる。現代文化に蔓延るセクハラや虐待に大胆に立ち向かう一方で、団結のレジリエンス(回復力)を指し示している。
 
★芳泉短編賞
『シャングリラに逗留』(Sojourn to Shangri-la/是日訪古) | 中国 | 監督: リン・イーハン (LIN Yihan/林詣涵)
<授賞理由>
強烈なイメージの魅力で観客の心を掴んで離さない物語は、一連のマジカルな展開に続く導火線に火をつけ、特に驚くほどパワフルな後半で映画的衝撃をもたらす。『シャングリラに逗留』は見る者すべてに驚きを与え、それは監督の映画づくりの成功と言える。
 
★芳泉短編賞スペシャル・メンション
『オン・ア・ボート』(On a Boat)| 日本 |監督: ヘソ (Heso)
<授賞理由>
結婚と人間関係をテーマに真摯に向き合った本作で、ヘソ監督は力強い演出力と緻密に計算されたテクニックで完成度の高い作品に仕上げ、確固たる才能を印象付けた。
 
『スウィート・ライム』(Sweet Lime)| 香港・イギリス |監督: ファティマ・アブドゥルカリム (Fatema
ABDOOLCARIM)
<授賞理由>
子供であること、大人であること、そして女性であることについての重要な物語を、映画制作の高い能力をもって表現した。アブドゥリカリム監督自身のコミュニティに対する貴重な洞察であり、家父長制文化に抑圧される女性たちへのリアリズムに基づいた観察でもある。
 
★観客賞
『あまろっく』(Amalock)|日本|監督:中村和宏(NAKAMURA Kazuhiro)
 
登壇者(敬称略。右から)
デイヴ・ボイル(コンペティション部門審査委員)Dave BOYLE
村田敦子(コンペティション部門審査委員)MURATA Atsuko
アンガ・ドウィマス・サソンコ(コンペティション部門審査委員)
湯浅典子(『カオルの葬式』監督)
ヘソ(『オン・ア・ボート』監督)
リエン・ジエンホン(『サリー』監督)
ステファニー・アリアン(『ブルーイマジン』出演)
チー・ユン(『未来の魂』主演俳優)
ファティマ・アブドゥルカリム(『スウィート・ライム』監督)
中村和宏(『あまろっく 』監督)
板井昭浩(朝日放送テレビ株式会社コンテンツプロデュース局制作部)
薬師悠一郎(株式会社薬師真珠)
靜敬太郎(公益財団法人芳泉文化財団理事長)
上倉庸敬(大阪映像文化振興事業実行委員会委員長)
 
第19回大阪アジアン映画祭公式サイト https://oaff.jp