
多分野でマルチな才能を発揮するジェフ・サターの映画初出演・主演作となるタイ映画『いばらの楽園』が、第20回大阪アジアン映画祭特集企画<タイ・シネマ・カレイドスコープ2025>作品として3月19日「テアトル梅田」(大阪市北区)で日本初上映された。
タイ映画のメジャースタジオ、GDHが手がけた本作では、同性の恋人と念願のドリアン農園を手に入れ結婚するはずだった主人公が、突然の事故で恋人を亡くしてからの苦難を描いている。本作が初監督となるボス・グーノーが、愛憎入り混じる人間関係や農園をめぐる攻防を「ドリアンホラー」と言わんばかりの見事なエンターテインメント作品に仕立て上げた。
日本初上映後にプロデューサーのワンルディー・ポンシッティサックさんが登壇して行ったQ&Aの模様をご紹介したい。
ーーー今のお気持ちは?
日本初上映が終わり、とても嬉しいです。『いばらの楽園』は昨年8月にタイで劇場公開され、そこからいくつかの国を旅して日本にたどり着きました。日本での劇場公開もできればいいなと思っています。
ーーー製作の経緯について
現在タイでは同性婚法案が成立していますが、この映画の企画が始まったときは、まだその法律はありませんでした。ある日、ボス監督がわたしにLGBTQの人たちは婚姻の権利が等しくないことを語ってくれ、一緒にこの映画を作ることになりました。映画はエンターテイメントの側面もありますが、社会にとって意義のあるもの、監督の考え方の後押しをしたいと思いました。この映画をご覧いただければ、なぜ同性婚法案を成立させなければいけないのかが、深く理解していただけたと思います。
ーーーボス監督の作風について
ボス監督はドラマ(「僕の愛を君の心で訳して」他)を監督しており、登場人物に太い感情を持たせ、登場人物の混乱や葛藤を描くのが特徴で、そういった要素を『いばらの楽園』にも活かしています。この映画は同性婚法案を後押しするだけでなく、それぞれのキャラクターの葛藤を描き、彼らが思い描いていたものが崩れていく様子を描いています。
ーーー資金集めやキャスティングでの難しさはなかったか?
製作費はGDHが全て出していますし、ジェフ・サターは元々からボス監督や私と一緒に仕事をすることを希望していたのです。この映画に参加する人は全員、同性婚法案に賛成する必要がありましたが、誰も反対する人はおらず、むしろ喜ばしいと言ってくれました。
ーーー舞台をタイ北部(メイホンソーン)のドリアン農園にした理由は?
なぜドリアン農園なのかについてですが、主人公のパートナーが亡くなったとき、法案成立前なので財産を相続できない設定にしたのです。ただ家財道具を売るとなると簡単すぎるので、難しい状況を作り出したいと思いました。土に生えて移動できない果物の木を財産にしようと考えました。次に、どんな果物がいいかを考えたとき、その答えがドリアンだったのです。ドリアンはとても栽培が難しい果物で、タイでは果物の王様と呼ばれています。舞台となった地域はタイで最も貧しい地域なのですが、高価な果物を最も貧しい地域に植えるという点がおもしろい着眼点だと思いました。
またドリアン自体の性質については、すごくいい香りがして甘さがあると同時に臭みがあり、痛々しいトゲがあります。皮を剥いて中身を見るととても美しい。ですからドリアンが愛の痛みや美しさ、そして傷つけあうというテーマに合うと思いました。

第20回大阪アジアン映画祭は3月23日まで開催中。『いばらの楽園』は3月23日(日)13:00よりABCホールで2回目が上映予定。
詳しくはhttps://oaff.jp まで。
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(江口由美)