「AI」と一致するもの
龍谷大学で4月20日(土)より、原一男監督の「ドキュメンタリー映画制作講座・企画編」が開催される。
本講座は、1年がかりで映画制作を学ぶもので、前半は企画編となっており、後半は実際に撮影・編集し、作品をつくり上げるカリキュラムとなっている。本講座の講師を担当する原一男監督自身もこの講座に合わせて、平成の世の閉塞状況を打破する「新しい生活者像」を追究するドキュメンタリー、「(仮題)もし、生まれ変われることができたなら?」を制作予定で、受講生はこの映画の撮影現場にスタッフとして参加し、原監督の映画づくりを間近で学ぶことができる。先着50名で受講生を現在募集中だ。
講座詳細、お申込みはコチラ
『ベルヴィル・トーキョー』エリーズ・ジラール監督インタビュー
(原題:BELLEVILLE TOKTO)
(2011年 フランス 1時間15分)
監督:エリーズ・ジラール\
出演:ヴァレリー・ドンセッリ、ジェレミー・エルカイム
★東京:渋谷シアター・イメージフォーラム⇒2013年3月30日~5月10日
『フレンチ・フィーメイル・ニューウェイブ』上映スケジュール⇒http://mermaidfilms.co.jp/ffnw/schedule.html
★大阪:梅田ガーデンシネマ⇒2013年4月20日田ガーデンシネマサイト⇒ http://www.kadokawa-gardencinema.jp/umeda/
『フレンチ・フィーメイル・ニューウェイブ』公式サイト⇒ http://mermaidfilms.co.jp/ffnw/
★5月16日(土)~京都みなみ会館にて公開
(C)Paolo Woods
~男の嘘を見抜く時、女は空っぽの心と決別する~
妊娠を機に心が離れてしまった夫と別れを決意するまでの妻の心の軌跡を描いた『ベルヴィル・トーキョー』。冒頭、「他に好きな女がいる」と言い放った夫ジュリアンを駅のホームで悲痛な表情で見つめる妻マリー。夫婦という親密な時を過ごした2人の関係が破綻した瞬間である。その後男は心を入れ替え、「僕も父親になりたい」と言って女の元に戻るが、次第に大きくなるお腹と共に募る夫への不信感。愛が失せたと実感する瞬間、瞬間を細やかに捉えた映像は、グレイッシュな冬の光がマリーの孤独を際立たせるように美しく映えて秀逸。
主演は、昨年公開の『私たちの宣戦布告』で、自らの体験を基に、子供の難病に向き合った夫婦をスタイリッシュでパワフルに描いたヴァレリー・ドンセッリとジェレミー・エルカイム。元夫婦ということで、これ以上はないキャスティングである。監督は、“シネフィル”を尊重するエリーズ・ジラール監督。本作が長編デビュー作となる。
お花見にはまだ遠い春の嵐が吹き荒れる3月半ば、キャンペーンのため来日したエリーズ・ジラール監督は、初来日ということもあって京都観光の前に来阪し、インタビューに応えてくれた。折り紙で鶴を折ってくれる11歳の息子がいるという。主演のヴァレリー・ドンセッリとジェレミー・エルカイムの息子と同じ歳だ。監督自身が妊娠している時もシングルだったそうだが、この映画の主人公マリーとは違って、「愛の決別」という切羽詰まった状況ではなかったという。それにしても、妻の元から逃げるように心が離れてしまう夫の様子が、マリーの目を通して実感できる、ある意味怖い映画である。
――― 劇中『イノセント』が使われているが、ルキノ・ヴィスコンティは好き?
大好き! 彼のエレガントな世界観で描かれる人間ドラマが好きです。
――― 『イノセント』には子供を殺すシーンがあったが、夫ジュリアンが意図的に選んだのか?
それほどはっきりと意図したものではないが、彼は子供は要らないという気持ちであることを表現したかったのです。
――― マリーがジュリアンとの決別を決意するまでを描いているが、マリーの心の変化をポイントポイントで表現したシーンが素晴らしかった。特にバス停のシーンとか、ベルヴィルで彼を発見するシーンとか。これらは経験から?
それらのシーンは、映画が持っている大きな特質だと思って下さい。何を描くか、その意図が濃密に集約しているのが映画のシーン作りだからです。だらだらと流れる日常を集約すると、こうしたシーンが生まれたのです。映画が成功するかどうかは、場面にメリハリを付けることが大事です。転換シーン毎に濃密なシーンを表現することが映画の基本だと考えています。
――― 監督と女優としての視点の違いは?母親としての仕事のやり方に違いは?
監督としても女優としてもビジョンの違いはそうは無いように思います。自分が母親になって何が変わったかというと、まず時間効率を考えるようになりました。子育てはとても時間がかかるので、以前より物事をダイナミックに効率良く動くことを考えるようになりました。
――― ヴァレリーさんも子供のスケジュールに合わせて仕事をするようになったと仰ってましたが?
私自身も子供の時間割に合わせて自分の仕事を調整するようになりました。以前は、シナリオを書くにしてもインスピレーションが浮かんだらいつでも書くというようなライフスタイルでしたが、今では子供が8時半に学校へ行くので、8時45分からシナリオを書く、という時間割を決めています。その分エネルギッシュになってきて、子供に時間をとられる分、どこかで時間調節しなければならないので、効率的になってきました。
――― 映画館の事務所で、マリーがふて腐れて悪態ついているシーンがとても面白かったが、あのシーンは笑いを狙っていたのか?またその理由は?
あのシーンは笑ってもらおうと考えいてました。悲劇的なシリアスドラマであっても「笑い」という味付けがあってもいいと思います。電話が鳴っても誰も出ない。あのぶっきら棒な態度がいい。従順な人より、そうでない人の方が好きなんですよ(笑)。
――― 曇り空などの光の具合がとても美しいと思ったが…デジタル化についてどう思う?
撮影監督がレナート・ベルタという世界でもベストテンに入るような人で、最も信頼できるキャメラマンです。初めてデジタルを取り入れた人でもありますが、彼が撮るデジタル映像は素晴らしく、私自身はデジタルは大嫌いですが、彼の映像は大好きなんです。フランスではもうフィルム上映できる映画館がないので、仕方なくデジタルを使用しています。デジタル映像は完璧すぎて、画像としての魅力に欠けます。フィルム映像はデジタルとは比較にならない程素晴らしいと思っています。
――― 衣裳・カラーについて?
最初は衣裳係に依頼して揃えてもらったのですが、実際には現場で私が選んでいました。主人公マリーにはあまり目立つような恰好は合わないと思ったので、衣装だけが浮いて目立つようなことはしたくなかったのです。そこで、主人公マリーの心情とヴァレリーとの統一感を出すために、ヴァレリーと私のワードローブの中から選んで着たものもあります。エレガントでちょっとファッショナブルな感覚が出せたらいいなと思ってそうしました。
桜色のスカーフをプレゼントしたら、早速首に巻いて、ニコニコしてインタビューに応えてくれたエリーズ・ジラール監督。そのキュートなイメージとは違って、表面的なスタイルより、「何を描くか」という本質を踏まえた、厳しい映像作りをしている。無駄なものを削ぎ落としたような人物像は、心情を端的に捉えて分かりやすい。シンプルな造形の中にも、彼女ならではのこだわりの映像美学が見て取れる作品となっている。パリはカルチェラタンにある名画座系映画館で働いていた経験もあり、とにかく世界中の映画をよく見ている映画ツウでもある。
(河田 真喜子)
『低俗喜劇』主演女優ダダ・チャンさんインタビュー
『低俗喜劇』“Vulgaria”
(2012年 香港 1時間32 分)
監督:パン・ホーチョン
出演:チャップマン・トー、ロナルド・チェン、ダダ・チャン、フィオナ・シット、サイモン・ロイ
(c)2012 Sun Entertainment Culture Ltd. All Rights Reserved
第8回大阪アジアン映画祭特別招待作品として日本初上映された香港の気鋭パン・ホーチョン監督の大ヒット作『低俗喜劇』。昨年香港における国産映画の中で興行収入2位、その下ネタぶりは日本でも大ヒットした『テッド』なんて足元にも及ばない!でも決していやな気分にならず、そのバカバカしさに男女問わず大笑いできてしまう、近年稀にみる香港映画らしい魅力的な作品だ。
同映画祭の特集企画《Special Focus on Hong Kong》の一本としてもラインナップされ、14日(木)の《Hong Kong Night》では、セレモニーゲストとして本作のカギを握る新進女優役“パチパチ飴”をキュートに演じた香港の女優・モデル、ダダ・チャンさんが脚本家のジョディ・イ・ローサムさんと共に来場し、満員の観客もその美しさにうっとり。映画祭ならではの豪華ゲストに会場は盛り上がった。
東京ガールズコレクション香港代表として2度来日、セレモニーでも「はじめまして、私はダダです」と日本語で挨拶するなど、小さい時から日本が大好きというダダさんに、『低俗喜劇』撮影秘話やパン・ホーチョン監督の演出法から名前の由来までお話を伺った。
<ストーリー>
ヒット作が 1 本もなく、妻への慰謝料も払えない窮地に追い込まれた映画プロデューサー、トー(チャップマン・トー)。父親の成功を信じる娘の期待に応えるべく、知り合いの紹介で怪しげな金持ち資産家の出資をなんとかとりつける。しかし、その条件は彼が若き日に熱烈ファンだったポルノ映画のリメイクを主演女優を変えずに作ること。往年のセクシー女優は既に60歳で脱ぐことを断固拒否し、映画制作は暗礁に乗り上げると思われたが、トーは首から下だけ若いセクシー女優に差し替える珍案を思いつく。白羽の矢が立ったのは新進女優の“パチパチ飴”(ダダ・チャン)。このまま出資者を丸め込み、映画を完成させることができるのか!?
━━━ダダさんの今までの活動をお聞かせください。
もうすぐ24歳になりますが、モデルの仕事を4年ぐらいやり、所属事務所を変えて2年前に写真集を出しました。それ以降は女優業に転向しています。『低俗喜劇』は3本目の出演作品で、1本目は舞台劇の映画化、2本目はランカイフォンというオシャレなバーがある地域で展開されるラブストーリーでした。
━━━香港でも大人気のパン・ホーチョン監督に、このような大胆な役をオファーされた時の気持ちは?
あまりこのような役をやる準備はできていなかったし、最初に話をいただいたときはただ「パチパチ飴をやるんだよ」としか言ってくれず、詳しく聞いても全然教えてくれませんでした(笑)。でも、もともと『ドリーム・ホーム』や『恋の紫煙』などパン・ホーチョン監督の映画が好きだったのでオファーを受けました。
━━━初めてパン・ホーチョン監督作品に出演されて、今までとは違うパン・ホーチョン監督らしさを感じるエピソードがあれば教えてください。
ものすごく真面目な監督で、もの凄く怖いのでビックリしました。私はお箸を上手に持てないので、子どもにおかずを取るシーンで、すぐに「そのお箸の持ち方はダメだ」と何度も指摘されました。主演のチャップマン・トゥさんに教えてもらいながら、なんとかギリギリOKをもらいましたが、まだ練習中です。
また、セリフに関しても非常に厳しくて、一字一句漏らさずきちんと言えなければならないことが、大きなプレッシャーでしたが、いい経験になりました。チャップマン・トゥさんと共演したのも勉強になりましたね。
━━━本作では困った顔がとてもキュートなチャップマン・トゥさんでしたが、共演して学んだことや面白いエピソードは?
チャップマン・トゥさんとパン・ホーチョン監督の二人がいると本当に大変で、パチパチ飴よりパチパチしてます(一同爆笑)。ずっとしゃべっていて、人にイタズラしたり、ものすごく仲の良い二人です。私も二人に随分イタズラされました。仕事面では、監督は言っていることの中に意味があるので、監督が言っていることを汲み取る練習をしなければならず、自分の勉強になりました。チャップマン・トゥさんからも、俳優のあるべき態度や芝居だけではないことを学ぶことができました。
━━━ダダさんの名前の由来は?
日本の文化が好きなので、小学校の頃から日本語っぽい「SUDA(スダ)」というイングリッシュネームを付けていたのですが、だんだんみんなに「ダダ」と呼ばれるようになったんです。日本のものがすごく好きだったので、2回東京コレクションで来日し、モデルの仕事ができたのもすごく楽しかったのですが、今回は映画の仕事で大阪に来られたのがとてもうれしいです。
━━━日本の歌手や女優、アイドルなどで憧れていた人がいらっしゃったのでしょうか?
香港の女の子は基本的に日本の文化やファッションが大好きなので、小さい頃からファッションの雑誌をよく見ていました。あと桜が見たいです。今回は残念ながらまだ咲いていないので、また個人的に桜を見に訪れたいと思っています。
━━━ダダさんは今後、女優としてどんな役を演じてみたいですか?
自分が死んでしまうような悲劇、感動ストーリーをやってみたいです。女優は現実と違う役ができるのが面白いので、不細工なメイクをされるのもやってみたいし、自分とは違うものに関しても幅広くチャレンジしていきたいです。
セレモニーでは白いドレス、この日は淡いブルーのドレスに身を包んだダダ・チャンさん。さっそく日本で買ったネイルを手に「パチパチ飴みたいでしょ!」と登場し、そのかわいらしさに一同拍手(全員女性でしたが、笑)。脚本家のジョディ・イ・ロッサムさんと一緒だったので、リラックスして取材に臨んでいただけ、コロコロ表情を変えながら身振り手振りを交えて“パチパチ飴”を演じることになった経緯や、手厳しいパン・ホーチョン監督の演出ぶりを明かしてくれた。どんなタイミングで写真を撮っても、絶対に瞳が開いているのはプロの証。映画の仕事で日本に来ることができたことを心底喜んでいらっしゃるのが伝わってきて、こちらまでうれしい気分になった。新聞社のフォト取材も受けたダダさん、翌日には大阪のスポーツ紙に大きく写真が掲載され、大阪から日本でもブレイク必須のダダさん来日の模様が発信され、ご本人も驚いていたとか。香港映画界のキュートな新星、今後の活躍が本当に楽しみだ。
(江口由美)
第8回大阪アジアン映画祭『低俗喜劇』作品紹介はコチラ
3月8日(金)より、梅田ブルク7をはじめ大阪市内の5会場にて開催してきた「第8回大阪アジアン映画祭」が3月17日(日)にクロージングを迎え、リー・ユー監督最新作『二重露光』上映前に、クロージングセレモニーが行われた。
夜中の12時から早朝3時まで国際審査員の高橋陽一郎監督、ツァン・ツイシャン監督、ゾーイ・チェン金馬奨ディレクターが熱い議論を交わした結果、例年の賞に加え、審査員の総意で「スペシャル・メンション」が授与されることになった。受賞結果と審査員コメントをご紹介したい。
★グランプリ(最優秀作品賞)
『親愛』 (Beloved)
中国/監督:リー・シンマン (Li Xinman)(李欣蔓)
<審査員コメント>これは大都会で働くシングルマザーが中国の現在社会の中、キャリアと家庭の間で悩みながらも生きていく様子を描いたものです。そこに日中の歴史に関わる個人的なトラウマも絡ませて、独特の視点で描いています。それと同時に血縁関係を越えた家族愛を優しく、そして強いメッセージとして伝えた形が印象的だったということで選びました。
<受賞者コメント>新人監督である私の処女作を大阪の皆さんと一番最初に楽しめてうれしかった。どの映画にもその宿命があり、この映画も企画から完成まで4年を費やしました。本当に苦労したけれど、その苦労は無駄ではなかったです。もっと努力してより良い映画を作っていきたい。本当にありがとうございます。忘れられない夜になりました。
★スペシャル・メンション
仲代達矢(Tatsuya Nakadai)
『日本の悲劇』(Japan’s Tragedy)主演俳優/日本
<審査員コメント>仲代さんはこの作品で死ぬことを決意する父親役をされました。非常に冒険心と知性の溢れる圧倒的な存在感をもって演じられ、それが大変素晴らしかったです。
★ABC賞
『ポーとミーのチャチャ』(Cha Cha for Twins)(宝米恰恰)
台湾/監督:ヤン・イーチェン(Yang Yi-Chien)(楊貽茜)、ジム・ワン(Jim Wang)(王傅宗)
<受賞者コメント>思いがけず受賞できてうれしい。4日間素晴らしい滞在を作って下さった皆さんに感謝します」(ヤン・イーチェン監督)
(日本語で)よかった!ありがとう大阪!ありがとうOsaka Asian Film Festival!(ジェイムス・シュー・チアハオ プロデューサー)
★来るべき才能賞
ホアン・ペイジア(Huang Peijia)
『ポーとミーのチャチャ』(Cha Cha for Twins)(宝米恰恰)主演女優/台湾
★観客賞
『恋の紫煙2』(Love in the Buff)(春嬌與志明)
香港・中国/監督:パン・ホーチョン(Pang Ho-Cheung) (彭浩翔)
『毒戦』ジョニー・トー監督インタビュー
『毒戦』“Drug War”
(2012年 香港・中国 1時間58分)
監督:ジョニー・トー
出演:ルイス・クー、スン・ホンレイ、ホァン・イー、ミシェル・イェ、ラム・シュー
(c) 2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.
He's back!3年前『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』で、大阪アジアン映画祭オープニング上映ゲストとして来阪を果たしたアジアの巨匠、ジョニー・トー監督。
以来『単身男女』(OAFF2011世界初上映)、『高海抜の恋』(OAFF2012日本初上映)と最新作を出品してくれたジョニー・トー監督が、満を持して全編中国大陸で撮影した『毒戦』でオープニング上映舞台挨拶のため再来阪を果たしてくれた。映画祭開催直前に決まったまさに緊急来日ながら、うれしいサプライズに日本全国からジョニー・トー監督ファンが集結。変わらぬダンディーなトー監督からは「大陸版ジョニー・トー作品を楽しんでほしい。感想は次来たときに教えてください」と来年の出品&来日を約束するかのようなうれしい言葉まで飛び出し、会場は大いに盛り上がった。
『毒戦』は、薬物取引と警察の捜査の追走劇を、幾重もの伏線で描き出すクライムサスペンス。香港のドラッグディーラー役ルイス・クー、覆面捜査官役スン・ホンレイの駆け引きを絡めながら、死刑を逃れるために捜査協力を願い出たことで二人でタグを組んで麻薬組織の摘発に奔走する前半は、中国警察の手際の良いチームワークが全面に出ており、何といってもスン・ホンレイの怪演ぶりを見るだけでも価値ありと思わせられる。後半はグイグイとトーさん節が炸裂!大陸ならではのスケールの大きい港のシーンやカーアクション)、思わぬ人物が突然猛烈にガンをぶっ放したり、真の実権を握る香港7人組、別名トー組常連(もちろんラム・シュウも!)が参戦したり、賑やかなことこの上なし、どこで撮っても変わらぬジョニー・トーらしさがファンにはたまらないだろう。
今回は劇場公開作品のキャンペーンを兼ねてではなく、まさにこの『毒戦』上映舞台挨拶のために来日したジョニー・トー監督。舞台挨拶からも、本作を作るに当たって試行錯誤を重ねた非常に意味を持つ作品であることが伺えた。舞台挨拶の翌日行われたインタビューでは、中国で公安ものを作ることの難しさや、ルイス・クーをはじめとしたトー組常連俳優起用の理由、そして大阪アジアン映画祭についてまで、葉巻片手に大いに語っていただいた。
―――大阪アジアン映画祭には4年連続最新作を出品くださっています。4年連続新作を撮る秘訣とは?
会社として年に少なくとも1本は撮るというポリシーがあり、今のところ年に1.5本ペースで作っています。ワイ・カーファイという脚本を書いてくれるパートナーがいるので、彼が書いてくれる間に私が映画を撮っているという形ですね。
―――世界の映画祭で出品、審査員をされているトー監督から見た大阪アジアン映画祭(以下OAFF)の魅力や、アドバイスがあれば教えてください。
カンヌ、ロカルノ、ヴェネチアなどの大型映画祭は60年以上の長い歴史があり、それぞれの特色を持っています。ヨーロッパは映画祭があるから、映画産業が盛り上がり、一つの推進力になっていますし、芸術性、市場の両方を持つものだと思っています。映画に関する理解の深さで考えるとヨーロッパの中ではフランスが一番いろんな文化を取り入れるのにアグレッシブであり、そのアグレッシブさがあるからカンヌが世界で一番注目される映画祭になっていると思います。
OAFFに関して言えば、世界の色々な映画祭と比べて、アジアの映画を上映するということで、インターナショナルとは言い切れない部分があります。アジアの映画だけではなく、それをどんどん広げていくのは観客の力にかかってきます。アジアの映画をOAFFで上映することによって市場や上映の機会が広がるのであれば、それがこの映画祭の特色や売りになっていくでしょう。色々な文化に関してもっとオープンになっていくことで、OAFFの地位がもっと上がっていき、一つの大阪の映画祭ではなく、アジアの映画を楽しむ中心になってくれればと思います。8回目とまだ若い映画祭ですが、事務局スタッフの皆さんもこの映画祭をどうやって大きくしていくか考えていらっしゃると思います。しっかりと方向性が決まり、皆で推進していく形ができれば、もっと大きくなると思います。
―――初めて全編中国で撮影したということで、様々な検閲が入ったことが、作品の描写からも見てとれますが、具体的にどのような部分に検閲が入ったのでしょうか?
公安に関するストーリーでは2つの審査を通らなければなりません。まず、公安が審査をしてそこでOKが出れば映検の審査が入ります。公安では、公安に関して不正確なことを言っていないか、公安のイメージを壊すようなことをしていないかをチェックされます。複雑な事情があるので、今まで大陸では公安に関する警察ものは制作されませんでした。
10年ぐらい前に黒澤明の自伝映画を観たのですが、それもかなり大陸の映検と喧嘩をして、やっと作ったそうです。時代は巡ってきますが、今回がターニングポイントになると思うのは、公安の中で「自分たちのことをテーマにしてそろそろ映画を作らなければいけない」という機運が出てきたことです。
今までの警察ものと違い、公安がこれを見てどう思うか、通してくれるかを考えて脚本を設計しました。注意するポイントとしては、ストーリーの中であまり人をたくさん殺してはいけない。今回かなり殺していますが、これでも随分減らしました。公安としては、自分たちの仕事がそんなに危ない仕事というイメージを持ってほしくない。また、銃撃戦もあまり撃つなと言われ、かなりカットしました。
―――『単身男女』『高海抜の恋』に引き続き、ルイス・クーが主演なのはなぜですか?
よく皆さんに聞かれますが、キャスティングに割く時間がもったいないのです。ルイスも自分が作る映画のイメージが合うと私のことを信頼してくれるし、映画を撮るとき声をかけたら必ず来てくれるのでやりやすいです。もう一つ、ルイスは中国国内で非常に人気があるので、出演してもらうと売り上げが上がるという部分もあります。
―――ラム・シュウをはじめとするトー組俳優が必ず何らかの役で登場していますね。
常にやっているということで、お互いわかっているし、人間としてもいい人で仕事もやりやすいのです。僕のやり方をわかっているので、いちいち言わなくても分かってくれます。映画というのは、監督が「こうやれ」というのを俳優がきちんと演じてくれればいいので、俳優はぐちゃぐちゃ言わなくてもいいのです。だから常に自分が言わなくても分かって演じてくれる人を起用するのです。黒澤明監督の映画も、どれを見てもほとんど同じ俳優が出ているので、多分同じ考え方だったと思います。
―――『エレクション2』のあと、「10年後に続編を作りたい」とおっしゃっていましたが、次回作あたりにその予定はありますか?
次は、『単身男女2』です。その次は歌が入っているものを考えています。『エレクション3』については、今回の経験が影響していると思いますが、今考えている内容は非常にデリケートな内容なので簡単には撮れません。以前は10年後と言っていましたが、もう少し(撮るまでに)かかるでしょう。中国大陸の言論の自由がもっと広がった時に、撮りたいと思います。
ゆっくりと葉巻をふかしながら、記者の質問に一からわかりやすく答えて下さったジョニー・トー監督。その姿はまるで映画のワンシーンを見ているようで、お話を聞きながら思わず惚れ惚れしてしまった。映画業界を世界的視野で見ているジョニー・トー監督ならではのOAFFに対するアドバイスもいただけ、視野が広がるインタビュー。映画祭の大小関係なく足を運んでくださる姿は、「色々な文化に対してもっとオープンに」という自らの言葉を体現しているようだ。『毒戦』の日本劇場公開決定および、来年OAFFにてまた最新作に出会えることを心から楽しみにしていたい。(江口由美)
第8回大阪アジアン映画祭 公式サイトはコチラ