『私が愛した大統領』
原題 | HYDE PARK ON HUDSON |
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制作年・国 | 2012年 イギリス |
上映時間 | 1時間34分 |
監督 | ロジャー・ミッシェル |
出演 | ビル・マーレイ、ローラ・リニー、サミュエル・ウェスト、オリヴィア・コールマン、エリザベス・マーヴェル、オリヴィア・ウィリアムズ |
公開日、上映劇場 | 2013年9月13(金)~TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ、9月28日(土)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS ほか全国順次公開 |
~国家を牛耳るトップは、愛にも忙しい?~
アメリカ歴代大統領の人気投票では、JFKと呼ばれたジョン・F・ケネディは絶対入ってくるだろうなという私の推測は大きくはずれ、ベスト3は、ワシントン、リンカーン、ルーズベルトなんだそう。昔、歴史の授業でフランクリン・ルーズベルト大統領が世界恐慌から脱するために行ったニューディール政策というのを習ったけれど、日本人の私にはアメリカ史上唯一四選を果たした彼がどういう人だったのか、どうもぴんと来ない。重度の障がいを持ちながら(当時はマスコミ操作により一般には知らされていなかったらしい)、精力的な仕事をし、国民から大きな支持をかちえた彼が、これまた精力的に複数の愛人とのおつきあいもこなしていたという裏事情をこの映画で頭に刻んだ。
この映画のもととなったのは、ルーズベルト大統領の従妹にあたるデイジーと呼ばれた女性の死後、彼女のベッドの下から見つかった私的な手紙や日記で、そこには大統領との蜜月の日々が克明に記されていたという。映画は、ニューショーク州ハイドパークにある大統領の実家を舞台に、彼女との恋のなりゆきと、その場所に迎えたイギリス国王ジョージ6世夫妻との歴史的にも面白いエピソードを紹介する。ジョージ6世といえば、コリン・ファースがアカデミー賞主演男優賞に輝いた『英国王のスピーチ』を思い出す人も多かろう。本作でも彼が吃音のためにコンプレックスを感じていて、王妃に叱責される場面もあるが、その吃音について、ルーズベルトから「私は車椅子だぞ」と、逆襲されるような、あるいは諭されるような場面が登場して印象深い。その後の“ホットドッグ・ピクニック”とともに、アメリカの協力を求めていたイギリスの国家的事情を背景に、両国トップの親密感を増幅させるに役だったようだ。しかし、まあ、この人気大統領はとんでもなく策略家であったかもしれないな、と思う。
そんな彼を、デイジーは、はにかんだ微笑みと、昔風の一歩後ろに下がった姿勢で包み込む。ほとんど個性を消して。“一般的男性”の多くが、好ましいと感じるような女性像。それを、気丈な役柄のイメージが強いローラ・リニーが演じたというのが驚きだ。また、1930年代と言っても、こんなにたびたび大統領がデートに出かけていいのだろうかと思うほどに、時間がゆったりと流れているのも驚き!(分刻みのスケジュールだと聞く現代の政治家とはえらい違い)。ともあれ、デイジーの秘密の恋より、ジョージ6世夫妻とのお話のほうに、断然、興味を惹かれたのだった。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://daitoryo-movie.com/
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