原題 | HAUTE CUISINE |
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制作年・国 | 2012年 フランス |
上映時間 | 1時間39分 |
監督 | クリスチャン・ヴァンサン |
出演 | カトリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン、イポリット・ジラルド、アルチュール・デュポン他 |
公開日、上映劇場 | 2013年9月7日(土)~シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマ、梅田ガーデンシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ他全国順次公開 |
~大統領が唸る味!官邸に新風吹き込む女性シェフの心意気~
すっと背筋を伸ばし、カトリーヌ・フロ演じる女性シェフ、オルタンスが颯爽とフランス大統領官邸、エリゼ邸に入っていく姿のなんとカッコイイこと! 官邸初の女性料理人としてミッテラン大統領のプライベートシェフを務めたダニエル・デルプシュさんの実話をもとに、男社会の職場で自分の道を切り開き、大統領を唸らせた伝説のシェフとその料理がスクリーンに甦る。『恋愛小説ができるまで』のクリスチャン・ヴァンサン監督が、オルタンスの料理に対する愛情と開拓者精神あふれる生き様を見事に表現、目に美味しく、ハートにズシリと響く“ブラボー!”な映画だ。
とにかく、オルタンスの作るお料理は豪快だ。言い換えれば、上品な装飾を施され、何が素材なのか分からないようなフランス料理ではなく、素材にこだわり、その良さを最大限に活かす「おばあちゃんの味」が、たっぷりお皿に盛られる。自分の菜園から採れたトリュフや、リムーザン産牛肉など、美味しい料理を作るために産地指定で自ら食材調達まで行う。そんなオルタンスは、宮廷の厨房で、規律に縛られて働く男性シェフたちから見れば異端児でしかない。しかし、周りの視線に臆することなく、小さな別室の厨房でたった一人の助手と共に料理に励むオルタンスには、男社会の職場でパイオニアとして仕事をする女性ならではの折れない強さがある。
ミッテラン大統領の好みを知ることもできず、それでも大統領の食べ終えたお皿を見て、食の進み具合を判断し、料理を作ってきたオルタンス。料理を通じて大統領と会話をしてきたオルタンスが、何度かミッテラン大統領と直接料理談義を交わすシーンがある。中でも大統領に食事制限がかかり、使用食材を厳しく制限され、オルタンス流の美味しい料理が作れなくなった頃、ふらりと大統領がオルタンスの厨房を訪れるくだりがなんとも味わい深い。オルタンスは大統領のために「シャトー・ラヤス69」という伝説のヴィンテージワインを開け、スライスしたトリュフをたっぷりのせたバゲットと共に差し出す。自らが信じる道を突き進んだ二人が静かに弱音を吐けたのも、シンプルで最上級のおもてなしがあったからこそなのかもしれない。
物語は、その後オルタンスが南極基地で働く様子を並行して描いている。大統領官邸時代とは違い、キッチンから直接自ら料理を出す南極基地の食堂では、オルタンス自身が料理を食べる人の笑顔をしっかり見届けることができるのだ。過酷な状況でも、作り手としての充実感を味わったオルタンスは、また次の目標に向かって進んでいく。信念を持って新しいことに突き進む女性の気概が、オルタンスを演じるカトリーヌ・フロや、その料理からにじみ出ていた。(江口由美)
公式サイト⇒http://daitouryo-chef.gaga.ne.jp/
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