原題 | ROBOT & FRANK |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間29分 |
監督 | ジェイク・シュライアー |
出演 | フランク・ランジェラ、スーザン・サランドン、ジェームズ・マースデン、リヴ・タイラー |
公開日、上映劇場 | 2013ン年8月10日(土)~角川シネマ有楽町、8月24日(土)~梅田ガーデンシネマ にて公開 |
~ロボットと過ごした、二人だけの熱い思い出~
舞台は近未来。物忘れがひどくなり、体調も思わしくない、一人暮らしの老人フランクは息子から、身の回りの世話をするロボットをプレゼントされる。はじめは、ロボットなんか、とつっぱねていたが、料理上手に掃除上手、皿洗いもこなす、まじめな働きぶりに、いつしかその存在を受け入れていく。
ロボットには目も表情もないが、話し言葉に時折ユーモアがあって、くすりと笑える。主人の健康改善が一番の目的で、そのためなら、違法なこともいとわないというところがおもしろい。フランクが、店で万引きをして、つかまりかけ、棚に戻した商品を、ロボットが代わりにそっと盗み出したのがきっかけで、二人の距離はぐっと縮まる。秘密の共有が互いの絆を強めるのは、人間とロボットでも同じこと。
実は、フランクは元宝石泥棒。体調が戻るに連れ、かつて自分の生きがいだった盗みへと心が向かう。華々しく活躍した往年の思い出をロボットに語りながら、盗みの術をロボットに伝授する。ピッキングの技術も息子には教えられなかったが、ロボットには教えられると嬉しそうだ。ロボットも、熱中するのは健康にいいからと、元気を取り戻していくフランクの頼もしい相棒になっていく。
金庫の電子錠の番号も数秒で解読できるという、超高性能なパートナーを得て、フランクは、自分達コンビの腕前を試さずにはいられなくなる。図書館の珍しい古い本や、近所に住む意地悪な夫婦の宝飾品と、たわいもない泥棒計画を練るあたりから俄然フランクが生き生きし始める。偏屈じいさんとロボットが泥棒稼業に挑むのは、スリリングで楽しいが、二人の友情も窮地に立たされる。フランクにとって、ロボットは、ただの機械ではなく、唯一無二のかけがえのない存在。ロボットが、フランクの言った言葉を覚えていて、修羅場で思い出させるところは泣かせる。感情を持たず、合理的に動くはずのロボットがみせる思いやり、友情に、ほろりとさせられる。二人だけの大切な思い出を共有できることの幸せが胸を打つ。
人間は皆、いつかは老いと向き合わなければならない。記憶力も衰えていく。もし認知症になったら、どんな大切な思い出も忘れてしまうかもしれない。そんな哀しみ、無常観がラストシーンにあふれ、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」に胸が熱くなる。フランクにとって、ロボットと過ごした、スリルいっぱいの緊張した日々は、きっとすてきな思い出になったにちがいない。フランクが最後にみせる、懐かしむような表情は、きっとその思い出が一瞬、心によぎったのではないかと思わせ、心に残る。
(伊藤 久美子)
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