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イタリア文化会館大阪主催《第2回DIM イタリアと出逢う12月》ステファノ館長インタビュー
ゲスト:イタリア共和国外務省 イタリア文化会館大阪:フォッサーティ・ステファノ館長
【開催日時】 2015年 12月5日(土)、6日(日)、9日(水)、10日(木)、12日(土)
【開催会場】 ナレッジシアター(大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪北館4F)
【料金】 無料 (全プログラム)※公式サイトより要予約
【公式サイト】 http://dim-osaka.com/ja/calendario/
★抽選でイタリア往復航空券が当たる!(スタンプ6個以上集めよう!)
★イタリアから、タンゴ、バロック、ジャズ、映画音楽、アラブ音楽のアーティストを招いたコンサート開催。
★日本初上映作品『レオーニ』『舞台裏』『ミュンヘンの時計』『SANDBOY』、4本の映画をプレミア上映。
大阪のイタリア文化会館主催のイタリア芸術にふれるイベント《DIMイタリアと出逢う12月》が、昨年に続いて大阪グランフロントのエナジーホールで開催されます。今年は、タンゴ、バロック、ジャズ、映画音楽、アラブ音楽の各コンサートに加え、日本初上映となる映画4本の上映会も予定され、さらにイタリア往復航空券が当たる抽選会もあり、しかもすべて無料! こんなラッキーなイベントに参加しない手はない。
朝日新聞主催の《イタリア映画祭》で上映される作品群とは違った視点の映画を、イタリア文化会館大阪独自のスタンスで紹介される大変貴重なイベントです。「音楽や映画を通じてイタリア文化芸術がもたらす可能性を拡げたい」という願いは、音楽ファンだけでなく映画ファンの心にも豊かな光明となって響いてくることでしょう。
12月5日(土)の開催を前に、イタリア文化会館大阪の館長であるフォッサーティ・ステファノ氏にお話を伺いましたので、下記にてご紹介いたします。
――― ここ数年のイタリア映画は、移民問題や経済危機の影響や政治腐敗などの社会問題を真正面から描いたものや、それらを踏まえつつ男女の愛や家族愛を描いている作品が多いように思います。イタリア映画を見れば、ヨーロッパの今がわかるといっても過言ではないようですが、今回はどんな視点で作品を選ばれたのですか?
館長:イタリア文化会館大阪の中には映画専門部隊がいる訳ではないので、イタリアのいろんなエージェントに頼るしかありませんでした。それらが提案する作品の中から選びました。
日本ではイタリア映画にとても高い評価を頂いているのにもかかわらず、公開されるケースが少なく、もっと多くの方に観て頂きたと思ったのです。映画祭などでイタリア映画が上映されても実際配給がつくのは4割位で、もっとプロモーションしていく必要があると感じます。さらに、西日本全体にイタリア映画を紹介する機会を拡げたいとも思っています。
15年間、朝日新聞主導の《イタリア映画祭》は、イタリア映画のショウウィンドウのような重要な役割を果たしてきました。今後も東京と大阪で開催される映画祭を支援していきますが、もっと踏み込んで付加価値を付けた形で紹介できないかと考えたのです。大きな会場でなくても、小さな会場でも紹介していければと思っています。
日本国内ではイタリア映画は特に人気が高い訳ではありませんので、来年は野村雅夫氏主催のドーナツクラブと協力して、1年間に6本のイタリア映画を、大阪の90席位の会場で上映する企画をしております。
選択範囲に制限がある中でも、バラエティに富んだ内容の作品を選んで紹介していきたいと思っています。今回の上映作品は下記の通りです。
- 『レオーニ』…新しい形のコメディ。
- 『舞台裏』…イタリア芸術の象徴でもあるミラノスカラ座のバレエ学校のドキュメンタリー。
- 『ミュンヘンの時計』…イタリア近代文学のジョルジョ・プレスブルゲルの原作を映画化したもので、ハンガリーから亡命してきたユダヤ系である彼のフィルムグラフィ。多くの文化人と交流があった彼の先祖を描くことによって、ヨーロッパの歴史を知ることができます。ある意味難しい映画ですが、作品を通してイタリア文化に関心を持って頂ければと思います。
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『SANDBOY』…イタリアの女性監督がアメリカで撮った短編映画。
――― 日本人にとって戦後のイタリア映画はとても馴染深いものがあります。戦後復興を背景にしたネオリアリズムの作品には多くの日本人が共感し感動しました。その後もマカロニウェスタンが世界を席巻し、『ニュー・シネマ・パラダイス』のような映画を愛する人々のための傑作に酔いしれたものです。近年のイタリア映画に再び勢いが戻ってきているように感じますが?
館長:DIM《イタリアと出逢う12月》は規模が小さいので、映画祭という程のものではありません。イタリアの文化の一部として紹介したいだけです。イタリア映画の歴史は古く、特にファシズムの影響をかなり受けていると思います。というのも、チネチッタ撮影所を築き、戦後も多くの映画を作り続けてきました。中でも、ネオリアリズムは“近代映画の祖”と言われています。イタリアには国立東方学研究所(ISEASイゼアオ)という東方研究所がありますが、チネチッタと同じように知的な分野で大きな貢献をしてきました。“反米英”の意図があったので、イゼアオの存在は大きかったのです。
――― 最近のチネチッタはハリウッド映画でも使われて活気があるように感じますが?
館長:今は商業的方向に向いて、危機的状況だと危惧しています。作品の中にはテレビやCMの影響が出ています。数十秒という短い時間に情報を詰め込むような。イタリアには、カルロ・ヴェルドーネという素晴らしい俳優がいますが、今のところ日本ではあまり紹介されていません。というのは、彼は土地の文化に密接につながっている作品に出演することが多く、日本人には解りづらいので、紹介しにくいのです。
(カルロ・ヴェルドーネの日本公開作品:『イタリア的恋愛マニュアル』『わが人生最良の敵』『昼下がり、ローマの恋』『グレート・ビューティ/追憶のローマ』他)
――― DIMでは、ミュージシャンを始め映画人のゲストも来日するのですか?
館長:監督中心で選んでおりませんが、『レオーニ』『舞台裏』『SANDBOY』の監督が来日予定です。上映後のトークは時間的に難しいので、無理だと思います。
また、イタリア文化会館大阪(中之島フェスティバルタワー17階)内に併設される芸術スペースでは、イタリア人画家ダヴィデ・プーマの展示会が開催されます。いずれも入場無料(コンサート、映画上映は公式サイトより要予約)です。
【公式サイト】 http://dim-osaka.com/ja/calendario/
(河田 真喜子)
織田作之助が書いたとされる幻の脚本を映画化した
山本一郎監督長編映画デビュー作『あのひと』
第22回ミンスク国際映画祭で審査員特別賞受賞!
第二次大戦末期の昭和19年に書かれた映画脚本『あのひと』が、2012年に大阪の中之島図書館で発見され、専門家によって文豪・織田作之助が書いたも のと認定されたと報道されました(2012年10月13日付「産経新聞」ほか)。松竹大船撮影所で製作予定だったものが、おそらく軍部の忌避にあい、実現しなかった幻の作品です。
ストーリーは、4人の帰還軍人が戦死した部隊長の遺児「小隊長」を育てているところから始まります。やがて、戦局が厳しくなり軍需工場に働きに出た帰還軍人たちの代わりに、今度は4人の女たちが住み込んで遺児を育て始める。「小隊長」を中心とした戦時下の奇妙な共同生活を、時にユーモラスに描く意欲作で す。
そんな幻の作品『あのひと』が70年の時を超えて映画化! メガホンをとったのは、『武士の一分』(山田洋次監督)、『珈琲時光』(侯孝賢監督)など数々の傑作のプロデューサーを務めてきた山本一郎監督。本作が長編監督デビューとなります。織田作之助の脚本を一字一句変えず、独自の解釈であえて モノクロ/スタンダード・サイズを採用し映像美を追究。カメラマンに佐々木原保志(『その男、凶暴につき』『ゲゲゲの鬼太郎』他)など映画界を代表するスタッフが結集し、山本一郎監督の世界観を映像化しました。
出演は、田畑智子、神戸浩、『太秦ライムライト』を製作した大野裕之率いる劇団とっても便利のメンバーに、福本清三、峰蘭太郎ら。撮影は、2013年夏に、京都の松竹撮影所で行われました。
このユニークな作品『あのひと』が、このたび、ベラルーシ共和国で11月6日から13日まで開催された、東ヨーロッパ・中央アジア最大の映画祭である第22回ミンスク国際映画祭にて、異例の2つの審査員特別賞を受賞!
「映画を信じることの奇蹟、人生を信じることの奇蹟への特別賞」
「日本映画の伝統へのこだわりに対しての特別賞」
を受賞しました。
初監督作品が、国際映画祭で二つの特別賞という異例づくめの快挙です!
【山本一郎監督・受賞の言葉】
「とても光栄です。京都の松竹撮影所で撮影できた事が良かったです。20 年以上前のことですが、そこにあった、KYOTO 映画塾に感謝しています。「あのひと」に参加して下さった皆さま、ありがとうございました。
山本一郎監督作品・織田作之助の脚本とされる映画『あのひと』は近日、東京・渋谷のユーロスペースにて公開予定です。
★映画『あのひと』
87分 モノクロ/スタンダード (C)2014山本昆虫
監督:山本一郎(プロデューサーとして『武士の一分』(山田洋次監督)、『珈琲時光』(侯孝賢監督)を担当)
脚本:織田作之助(推定)
プロデューサー:榎望(『日本のいちばん長い日』『駆込み女と駆出し男』他)
出演:田畑智子、神戸浩/大野秀典、多井一晃、彩ほのか、鷲尾直彦、杉山味穂、中島ボイル、上野宝子、大野裕之、川嶋杏奈/林基継、橋本一郎、上西雄大/福本清三、峰蘭太郎 他
公開劇場:ユーロスペース(近日公開)ほか
配給:劇団とっても便利
【一般からの問い合わせ先 および 配給・宣伝・宣材についての連絡先】
劇団とっても便利(担当:大野) info@benri-web.com
《第7回京都ヒストリカ国際映画祭》を終えて
2015年10月31日(土)~11月8日(日)、京都歴史博物館と京都みなみ会館で開催されていた《第7回京都ヒストリカ国際映画祭》は、最終日に『NINJA THE MONSTER』(日本初上映)と『ラスト・ナイツ』(11/14公開)の上映で幕を閉じた。毎年、時代劇のメッカ・京都にふさわしい作品を世界中から集めた映画祭は、時代劇ファンにとっては大変貴重な映画祭である。特に、日本初上映を含む新作だけを集めた【HISTORICA WORLD】は毎年楽しみにしている。今年は全部は見られなかったものの、『フェンサー』『吸血セラピー』『大河の抱擁』『NINJA THE MONSTER』を見る機会を頂いたので少しご紹介したい。
★自由のない暗い時代でも、生きる希望が人を強くする
第二次世界大戦後のエストニアを舞台にした『フェンサー』 (2015年)は、戦後ソ連の領土となったエストニアの田舎の子供たちと、フェンシングを通して夢と生きる力を育んだ実在の教師エンデル・ネリスの勇気ある行動を精緻な映像で描いた感動作である。政治犯としてソ連の秘密警察に追われる身のエンデルは、息を潜めてエストニアの田舎で教師生活を送っていたが、戦争で父親を失った子供たちに慕われ、特技のフェンシングを教えるようになる。子供たちに支えられ自らも居場所を見出すエンデルの様子や、戦後の困窮生活の中にも柔らかな光が差し込んでいく描写は胸を熱くする。フェンシングの全国大会でのエンデルや子供たちの表情がいい。シンプルな構成ながら、次第に色味を増していく映像から希望がわいてくるのが実感できる、そんな映画だ。
★悩めるドラキュラ伯爵のセラピー治療とは!?
20世初頭のウィーンを舞台にした『吸血セラピー』 (2014年)は、500年も連れ添った妻の愚痴に悩むドラキュラ伯爵がフロイトのセラピーを受けに来るという、ドラキュラとはいえ人間的な悩みを持つことに親しみがわいてくる映画だ。影がなく鏡にも写真にも映らない。自分がどんな顔なのか見たことがなく、美しいかどうかさえ分からない。他人の意見を聞くしかないので、毎日夫に自分についての感想を言わせる妻。それが500年も続けば、そりゃストレスも溜まるだろう。フロイトがドラキュラ伯爵夫妻に紹介した若い画家とその恋人をめぐる愛と血を追い求めるホラーコメディが、思いのほか面白かった。
★大河が見つめてきた、西洋文化の功罪
アマゾンの奥深く、西洋文化が如何に自然を破壊し原住民たちの生活を踏みにじっていったかがよくわかる『大河の抱擁』 (2015年)。部族で最後の生き残りとなったシャーマン(呪術師)カラマテの記憶を辿りながら行くアマゾン探検の旅である。20世紀初頭、カラマテが若い頃随行した探検家の日記を基にアマゾンを遡上したいとアメリカ人のエヴァンがカラマテを頼りにやってくる。アマゾン流域の豊かな自然がゴム資源を求める白人たちに破壊され、流域で暮らす人々の暮らしも残酷なほど一変させてしまう。それは、資源を求めてやってくる山師であり、無理やりキリスト教を押し付ける宗教家である。自然の息吹を感じながら、畏怖の念をもって逞しく生きて来た人々の変化をモノクロ映像で捉えた世界は、失われた文明を再発見する旅でもある。
★忍者本来の姿を描く時代劇スリラー
松竹株式会社の若手レーベルが海外向けに制作した『NINJA THE MONSTER』は、朝の連ドラ「あさが来た」で五代友厚を演じて人気急上昇中のDEAN FUJIOKA主演の忍者映画。江戸中期の浅間山噴火と天明の飢饉を背景に、困窮する長野藩のお家存亡の危機と正体不明の化け物騒ぎを絡ませたストーリー展開は、斬新。自然界のパワーバランスに敏感な山伏のような忍者像は、黒覆面の超人という従来のイメージを一新させる。お家の困窮を救おうと人身御供にされるお姫様と忍者・伝蔵との微妙な関係性も興味深い。イケメンすぎるDEAN FUJIOKAの甘いマスクがキリリと光る忍者ぶりに魅了される一篇だ。
この上映会は、京都ヒストリカ国際映画祭のいつもの客層とは違い、観客は女性ばかり!映画祭ナビゲーター・飯星景子さん司会による上映後のトークショーでは、黄色い歓声に迎えられてDEAN FUJIOKAと落合賢監督が登場。本作についていろいろ語ってくれた。
■今までの忍者のイメージを一新するアクションと忍者像
国際的に活躍するスタッフやキャストが集結して完成した作品とあって、ブルーレーベル海外向け第1作として自信を持って売り出したいと力強く語る落合監督。5年前に出会って意気投合したDEAN FUJIOKAとは、いつか一緒に映画を作りたいと、東京にあるジャマイカ料理を食べながら語り合ったそうだ。その後、『NINJA THE MONSTER』の企画書がDEAN FUJIOKAの元に届き、スカイプで連絡を取り合い、忍者についての資料を勉強するよう宿題が出されたという。かねてより中華武術をやってきたDEAN FUJIOKAは、今までの忍者像を一新するようなアクションを学ぶように言われ、フィリピンの「カリテ」という接近戦に強い武術を練習。劇中では、一番の見せ場となる山小屋の薄暗い中でのアクションに活用され、忍者・伝蔵の独特の殺陣が生まれた。
■神秘性を出すためにデザインされた液状の化け物
アニメ『もののけ姫』や『プレデター』などからイメージして、CGで創り上げているが、あまり知性的な化け物にはしたくなかったという。そのため目をひとつにして、予測不可能な動きと正体不明な不気味さを出している。具体的なビジュアルが完成する前に実写部分の撮影が進んだので、DEAN FUJIOKAは見えない敵との演技に苦労したようだ。落合監督のゾウのような声を合図に、それに向かってアクションを起こしたという。DEAN FUJIOKAは、『風の谷のナウシカ』のオウムのようなものを想像していたので、完成した作品を見て驚いたという。
■京都での撮影と日本武術の様式美
京都の松竹撮影所を中心に行われた撮影は真冬に行われ、劇中降っている雪は本物だそうだ。年末の撮影所では餅つきをしていて、お餅をご馳走してもらって嬉しかったというDEAN FUJIOKA。日本武術の様式美を教えてもらい、別のクルーの人たちと一緒に素振りもしたと懐かしそうに語る。そこで、DEAN FUJIOKA自前の武器を持ち出し、この日来場していたアクション俳優と殺陣を披露。DEAN FUJIOKAの生アクションを近くで見られて、観客も興奮気味。
■他人とは思えぬ“もののけ”と忍者に親近感
DEAN FUJIOKAは、“もののけ”も忍者も陰の存在で、世の中に認められず孤独に生きている覚悟が心に沁みると振り返り、伝蔵役をまた演じたいと希望。落合監督も、伝蔵が自分の居場所を求めているのに対し、藩のために人身御供になろうとしているお姫様もモンスターも忍者も、同じ立ち位置にいるという。DEAN FUJIOKAと落合監督は海外で長く暮らしてきて、こうしたキャラクターたちと共通するものを感じたようだ。DEAN FUJIOKAも、「5年前、なぜ落合監督に声をかけたのか今分かった。他人とは思えぬ何か共感するものを感じたからだ」と振り返った。
日本公開は、海外での映画祭のスケジュールによるので未定。細かな歴史的考察とファンタジックなシーンをミックスさせた新しい忍者映画に、乞うご期待下さい。
(河田 真喜子)