原題 | 有川浩『レインツリーの国』角川文庫刊 |
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制作年・国 | 2015年 日本 |
上映時間 | 1時間48分 |
監督 | 三宅喜重 |
出演 | 玉森裕太(Kis-My-Ft2) 西内まりや 森 カンナ 阿部丈二 山崎樹範 片岡愛之助(特別出演) 矢島健一 麻生祐未 大杉漣 高畑淳子 |
公開日、上映劇場 | 2015年11月21日(土)~TOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー |
~玉森×西内の初々しさが光る、純度100%ラブストーリー~
ジャニーズの人気グループKis-My-Ft2(キスマイ)の玉森裕太が、映画初主演で大阪出身の主人公を演じる。正直、ハードルが高いのではないかと思ったが、彼の口から飛び出す関西弁を聞いて思わず「これ!」と思った。お笑い芸人調のコテコテ関西弁ではなく、その辺の大学生が普通に話しているようなナチュラルな関西弁。その心地よさだけで、一気に物語に入っていけた。『阪急電車』や『県庁おもてなし課』と有川浩原作の作品を映画化してきた三宅喜重が三度目の映画化作品として選んだのは、東京で働く大阪出身の伸行が高校時代に大好きだった本のことを綴ったブログの管理人、ひとみに共感を抱くことからはじまるラブストーリー。本作が初主演となる玉森と、歌手としての活躍も目覚ましい西内まりやが、まっすぐに各キャラクターを演じ切った。観終わって、清々しい気持ちになれる作品だ。
伸行とひとみの出会いは、ひとみが管理人を務めるブログ「レインツリーの国」。好きな本のことを伸びやかに語るひとみの文章に魅了され、感想をかわし合ううちに、伸行は実際にひとみと合って話をしたいと申し出る。Webからリアルへ、今どきの恋愛パターンともいえるが、そこでひとみから思わぬ拒否に遭うのだ。ただ、そこでへこたれないのが伸行というキャラクター。誰に対しても自分の気持ちを偽ることなく、まっすぐに相手と向き合おうとする伸行を、玉森裕太が彼自身の持つ柔らかさも合わせながら表現している。一方、高校時代の事故で感音性難聴を患い、自信を失って自分の殻に閉じこもっていたひとみは、伸行と出会うことで一歩踏み出せるのではないかという希望と、結局失望する羽目になる現実との狭間で苦しんでしまう。恋愛でのすれ違いだけでなく、自分に自信を持ち、心を開くことの難しさを苦しみながら克服していくヒロインを、西内まりやが瞳に力を宿した表情で熱演。彼らを支える家族の姿もしっかりと捉えており、地に足のついた物語になっている。
特に、伸行の実家で、夫が病に倒れてからも美容院を一人切り盛りしてきた伸行の母(高畑淳子)が店をたたむ前の最後の一仕事は、家族の歴史の1ページを刻むだけでなく、新しい一歩を踏み出す助けにもなる「ナイスカット」だった。人と人が、ぶつかり、傷つきながらも、相手を理解し、新しい関係を築いていく。壁ドンもアゴクイもない、純情ラブストーリーは、人を愛することについ臆病になってしまう人にこそ見てほしいな。
(江口由美)
(C)2015「レインツリーの国」製作委員会
公式サイト⇒ http://raintree-movie.jp/