「AI」と一致するもの

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孤高の作家と呼ばれるフランスのフィリップ・ガレル。その監督としてのキャリアは16歳から始まり、70年代にはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫だったニコと運命的な結婚を経て前衛的な作品を次々に送り出し、ニコとの別離と彼女の突然の死を描いた『ギターはもう聞こえない』(90)でベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞している。以降も『白と黒の恋人たち』(01)で国際批評家連盟賞、息子ルイ・ガレルを主演に68年の5月革命を描いた『恋人たちの失われた革命』(05)では銀獅子賞とオゼッラ賞を受賞するなど国際的な評価を不動のものにしている。

ainozanzo.jpgフィリップ・ガレルの根底に常に流れているテーマ「愛の誕生と喪失」を、濃厚な大人の愛の物語として紡いだ『愛の残像』(08)、『灼熱の肌』(11)の2作を一挙に堪能できる『フィリップ・ガレル 愛の名作集』が8月18日(土)より第七藝術劇場で上映されている。2作品とも主演にフィリップ・ガレルのまさに分身とも言える息子のルイ・ガレルを起用し、どこか儚さを感じる美青年が運命の女性によって翻弄され、愛や生死と向かい合う様を美しい映像と詩的なセリフで綴る、まさしく”愛の映画”だ。モノクロの映像で「愛」について思い巡らされるシンプルで濃厚な時間に身をゆだねる感覚を味わえる。

名キャメラマン、ウィリアム・ルプシャンスキーがモノクロームの映像で綴る”生と死”、”夢と現実”をも超越する幻想的な愛の物語『愛の残像』(第61回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品)

ヒロインに『マレーナ』のモニカ・ベルッチを起用、その美熟女的な裸体がスクリーンに鮮烈に映し出しながら、ルイ・ガレル演じる主人公フレデリックと友人カップルとの夏の日と愛の喪失を、劇中劇を交えながら描く『灼熱の肌』(第68回ベネチア国際映画祭コンペティション部門 正式出品)

夏の終わりに、ガレル作品の芸術的な美しさと耽美な愛の世界をじっくり味わってほしい。


『愛の残像』”La frontiere de l'aube”
(2008年 フランス 1時間48分)

(C) 2008 - Rectangle Productions / StudioUrania
監督:フィリップ・ガレル
出演:ルイ・ガレル、ローラ・スメット、クレマンティーヌ・ポワダツ

パリ。若い写真家フランソワと人妻で女優のキャロルは激しい恋に落ちるが、すぐに関係は終わりを迎える。その後、キャロルは狂気にとらわれ、自ら命を絶ってしまう。1年後、フランソワは新しい恋人と幸せな日々を過ごしていたが、突然キャロルの姿が見えるようになり……。生と死、夢と現実を超越する激しい愛を、名キャメラマン ウィリアム・ルプシャンスキーがモノクロームで綴る悲恋の物語。

 
『灼熱の肌』”Un ete brulant”
(2011年 フランス=イタリア=スイス 1時間35分)

(C) 2011 - Rectangle Productions / Wild Bunch / Faro Film / Prince Film
監督:フィリップ・ガレル
出演:モニカ・ベルッチ、ルイ・ガレル、セリーヌ・サレット、ジェローム・ロバール、モーリス・ガレル

ローマ。ある日、売れない俳優のポールと恋人エリザベートは画家のフレデリックを訪ねる。そこにはフレデリックの妻アンジェラがいた。罪深いほどに美しい映画女優アンジェラと若く奔放なフレデリックとの夏の日々がはじまる……。照りつける太陽の日差しと鮮やかな色彩で魅せる欲望と官能。ゴダールの『軽蔑』への返歌と言える愛の物語。


『フィリップ・ガレル 愛の名作集』上映スケジュール、詳細はコチラ

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小津安二郎、黒沢明、溝口健二と並び称せられる日本映画の巨匠・木下恵介監督の生誕百年記念として、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで「全作品上映」(7月21日~9月7日まで)が絶賛開催中だ。また、松竹からテレビの代表作「木下恵介アワー」より、名作と言われる「二人の世界」(7月25日)、「おやじ太鼓」(8月29日)、「記念樹」(9月26日)、「3人家族」(10月26日)が初DVD化される。

これに先立ち7月14日、大阪歴史博物館で開催された「木下恵介アワー」の「3人家族」1、2話特別上映会では、主演の栗原小巻が来場し、トークショーを行った。男ばかり3人家族と女ばかり3人家族の心温まる交流を描いたドラマ。視聴率30%を超える大ヒットを記録した本作ではじめて木下監督と一緒に仕事をしたという栗原さんは、テレビドラマにもかかわらず映画のように贅沢な撮影だった当時を懐かしそうに振り返りながら、「木下監督は、最初は緊張しましたが、始まるとすぐ家族みたいな感じになって、とっても楽しい現場だったのを覚えてます。フィルムだったし、映画のように細部に気を遣って撮られていたのが忘れられられません。日本映画界をリードしてきた日本の良心、映画もテレビも不変不動の力があると思います」と語り、満席の観客を魅了した。脚本の山田太一が全26本のシナリオを担当、「それぞれの3人家族の会話や家族のエピソードも楽しく、次の脚本が楽しみで仕方なかった」と栗原さんが語るとおり、2話見ただけでも次が気になって仕方がない、家族と青春と愛という普遍的な要素がつまったドラマだ。


橋口亮輔監督共同インタビュー@生誕百年 木下惠介全作品上映はコチラ

生誕百年木下惠介監督全作品上映@シネ・ヌーヴォ【7/21~】はコチラ

木下恵介アワー「3人家族」DVD詳細はコチラ

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(C) 2011 MediaPark Film- und Fernsehproduktions GmbH

 

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アキ・カウリマスキ監督最新作『ル・アーブルの靴みがき』が8月18日(土)から公開されることを記念して、東京に引き続き、京都みなみ会館で全20作を一挙上映する特別上映『おかえり!カウリマスキ』が開催される。

長篇デビュー作の『罪と罰』や、敗者三部作『浮き雲』、『過去のない男』、『街のあかり』をはじめ、貴重な短篇にいたるまで、アキ・カウリマスキ監督の軌跡をじっくりと堪能したいスペシャル企画だ。


『ル・アーヴルの靴みがき』8/18(土)~公開記念!【特集上映:おかえり!カウリスマキ】詳細はコチラ 

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『そして友よ、静かに死ね』インタビューはコチラ

 

橋口監督-1.jpg~『二十四の瞳』の2012年版予告篇づくりをとおして~


大阪シネ・ヌーヴォにて開催中の「生誕百年 木下惠介全作品上映」。7月28日、橋口亮輔監督(『ハッシュ!』、『ぐるりのこと。』)が来館され、トークショーが行われました。橋口監督は、今回、松竹の初ブルーレイ化したDVDの発売に当たり、『二十四の瞳』の2012年版予告篇を監督されました。トークショーに先立ち行われた共同インタビューの内容をご紹介します。


―――今回の『二十四の瞳』の予告篇づくりで感じたことは?
学生時代、木下惠介監督の作品は叙情的でセンチメンタルな作品が多く、今村昌平監督や大島渚監督について語る方がかっこいいというイメージがありました。しかし、今回、『二十四の瞳』(1954年)を観て、なんて美しいのだろうと思いました。人生の理不尽により子どもたちの運命が変わっていく様子が描かれ、個人の人生がゆがめられたり、踏みつけにされてはならない、という木下監督の憤りが映画の底辺にあって、監督は、その怒りや悲しみを直接的に描くのでなく、映画の話法でもって美しさに浄化させました。表向きは涙ものにみえても、現実への激しい憤り、こうあってはならないという怒りに気付きました。

―――予告篇は短いですが、どんなふうにまとめたのですか?
反戦や女性の生き方といろいろな切り口がありますが、今の日本において、何を伝えるのが、一番いいのかを考えました。大石先生(高峰秀子)は、分校に赴任後、わりとすぐにけがをしてしまい、本校に移ることになります。子どもたちとのふれあいはわずか1、2か月ですが、その絆は一生続くことになります。このかけがえのなさを伝えたいと思いました。とりわけ、大石先生が、教室で子どもたちと初めて出会い、一人ひとりの名前を呼んでいく場面での子どもたちの表情がすばらしいです。大石先生だけでなく観客もまた、この子達の瞳が汚れないでほしいと感じるでしょう。社会環境が変わっても、そのときそのときに生きる人々へのメッセージがあり、時代を超えた名画だとあらためて気付かされました。

橋口監督-2.jpg―――木下監督の作品で、初めて映画館で観たのはどれですか?
長崎で高校生時代に観た『衝動殺人 息子よ』(1979年)です。ひとり息子を通り魔に殺された父親(若山富三郎)が、「犯罪被害者補償制度」という法津をつくろうと奔走し、最後は過労で死んでしまいます。そこまで息子を思う親の姿をみて、ちょうど両親が離婚した後だったこともあり、映画館で、未だかつてあれほど泣いたことはないほどに泣きました。木下監督は両親に愛されて育った人で、「そこまでやるのが(親の)愛情だ」とインタビューでも答えており、監督が自分の信じるままに本気でつくった作品は、何もわからない高校生にもちゃんと伝わるのだと実感しました。つくり手の人柄は作品にも出ますし、家族のためにやり遂げる話で、公開当時よりも今の方が、広く人々の心に通じるのではないでしょうか。

―――木下監督の作品の中でお薦めの作品を3本ほど挙げるなら?
『二十四の瞳』、『カルメン故郷に帰る』(1951年)、『楢山節考』(1958年)です。ほかにも、『お嬢さん乾杯』(1949年)や『破れ太鼓』(1949年)は、洒落ていて好きですし、人間としての強さを描いた『笛吹川』(1960年)もよいです。

―――木下監督の作品に出てくる役者さんで好きな方は?
女優なら高峰秀子、男優では佐田啓二です。観客が自分の気持ちを投げかけられるという安心感があります。高峰秀子はどんな役をやっても汚れず、すっとまっすぐな感じを失いません。

―――『ぐるりのこと』から4年経ちますが、次の作品の構想は?
 プライベートな話になりますが、『ぐるりのこと』の公開後、印税などをずっと盗まれていたことがわかり、弁護士に相談しても、裁判は多額な費用がかかるし、やめるよう言われ、泣き寝入りの状態が続き、疲れ果てた時に、この仕事の依頼がきました。何の落ち度もなく、平凡に日常を生きてきた人たちが、ある日いきなり、不幸に巻き込まれる。一方的に被害にあい、原状回復さえままならない。一度失ってしまった人生を取り戻すことの大変さを、身をもって感じました。木下監督は強い意思を持って映画をつくってきた人で、本物の映画人の仕事に触れて、僕も元気になりました。

次回作についてですが、今の日本には、振込詐欺でなけなしの年金を盗まれたお年寄りや、僕以上に理不尽な目にあって、どうしようもできない人がたくさんいます。だまされて家も人生も奪われ、絶望しかない中で、もう一度人生を始めることが、どれだけ大変なことか。どうやって希望を見出して、生きていったらいいのか。今の日本は、悪いことをした者勝ちのような社会で、悪を訴えたりすることもままなりません。これでも法治国家なのか、この国はどうなっているのかと、負の感情で生きていけない気持ちになります。こういった弱者の怒りを描きたいと思います。

日本では、戦争による大空襲や原爆で何十万人もの命が奪われました。それでも、戦後は、やっと自由になり、次は自分たちのための時代がくる、豊かな未来がくると信じて、皆頑張ってきて、今よりも元気だったのではないでしょうか。現在の日本は、バブルも体験して、お金の先には何もないこともわかっています。次の作品では、戦時中から2000年頃までを描き、震災、原発事故と幾つも重なった“今”という時代を、どうしたら生きていけるのかを描きたいと思っています。


橋口監督が『二十四の瞳』を観ることで、いろいろなことを感じ、考え、次回作への足がかりをつかまれたというのがとても印象的でした。いつもみごたえのある作品をつくりあげる橋口監督。新作を楽しみに待ちたいと思います。
さて、シネ・ヌーヴォでの木下惠介監督特集上映は9月7日まで続きます。橋口監督がつくられた予告篇も8月末には発表され、同館でも上映される予定です。ぜひこの機会に、日本人の強さ、弱さ、美しさ、喜びや悲しみの物語を通して、人間の真摯な姿を描き続けた木下監督の作品にスクリーンで浸ってほしいと思います。(伊藤 久美子)


生誕百年木下惠介監督全作品上映@シネ・ヌーヴォ【7/21~】はコチラ 

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