「AI」と一致するもの

 

『中島みゆき「夜会VOL.17 2/2」劇場版』鑑賞券プレゼント!

 

nakajimamiyuki-1.jpg11月9日(土)より、イオンシネマ、梅田ブルク7 ほか全国公開!
   (公開劇場⇒ こちら
募集人数:5組10名様

  締切:2013年11月3日(日)

★公式サイト⇒ http://www.yakai-movie.jp/index.html

 


 

『中島みゆき「夜会VOL.17 2/2」劇場版』

 

コンサートでもない、演劇でもない、ミュージカルでもない「言葉の実験劇場として1989年よりスタートし、2000年以降は不定期に開催されている「夜会」。従来のコンサートツアーとは違い、東京・大阪のみで開催されていることから、チケットは即完売、ファンの間では、プレミアム化し、「夜会を知らずして、中島みゆきを語るなかれ」とまで言われるほどの伝説の舞台として、知られている。今回上演される演目は、過去17回開催されている「夜会」の中でも、もっとも人気の高い作品「2/2(にぶんのに)」。楽曲・ストーリーがすべて中島みゆきのオリジナル作品であり、今まで2回上演され、2005年に映画化、小説化もされている。そして今回3度目の再演となる、最新公演「2/2」の模様を収めた「夜会VOL.17 2/2」が、ファンの熱い声援に応え、ついに全国の映画館で上映されることになった。

 

幸せになろうとするたびに見えない何かに妨害されてしまう、見えない何かとは…

上田莉花の務めるその中堅出版社の美術誌編集部は、このところ、もっと客受けの良い路線へと方針変更を余儀なくされている。しかし、日本画家の矢沢圭が仕上げて来たのは、地味な竹の絵だった。気まずい書き直し依頼の担当を任命された莉花だが、圭の絵を支持しながらも流れには逆らえない。どこかちぐはぐな、奇妙な弱さを、圭は鋭く見抜いてしまったのかもしれない。「何に対して怯えているんだ」その気掛かりは、2人の距離が狭(せば)まるにつれて、現実のものとなっていく。

圭のアトリエを訪れた、莉花。嵐の深夜、鏡の中から、誰かが莉花を見つめている。

圭を愛することを自分の幸福として生きたい、そう願う気持がつのればつのるほど、“それ”は莉花の中から、凶悪な力を増大させながら正体を顕(あらわ)して来た。「ココカラ遠ク消エテシマエ、何モカモ失ッテシマエ」自分を操(あやつ)る何かが自分の中に居ることに絶望した莉花は、圭のもとを去り、仕事も辞め、住まいも引き払い、傷心旅行に旅立ったベトナムで、過失から帰国できなくなったことをきっかけに、自らの過去や見えない何かの正体を知る物語。

 


 

kujikenaide-s550.jpgいつでも人生これから!『くじけないで』“親子”記者会見

ゲスト:八千草薫(81歳)、武田鉄矢(64歳)、深川栄洋監督(37歳)
2013年10月11日(金)(ウェスティンホテル大阪にて)

(2013年 日本 2時間8分)
原作:柴田トヨ 「くじけないで」「百歳」(飛鳥新社刊)
監督・脚本: 深川栄洋 『60歳のラブレター』『神様のカルテ』
出演:八千草薫、武田鉄矢、伊藤蘭、檀れい、芦田愛菜、上地雄輔、ピエール瀧、鈴木瑞穂

  

2013年11月16日(土)~全国ロードショー

  

公式サイト⇒ http://kujikenaide.jp
(C)2013「くじけないで」製作委員会

 


 

 

~90歳を過ぎて輝きを増したトヨさんの人生~

 

  

kujikenaide-1.jpg 八千草薫58年ぶりの主演映画『くじけないで』は、90歳を過ぎてから詩を書き始めた柴田トヨさんの物語。激動の時代を生きてきたトヨさんからの慈愛に満ちた言葉の贈り物は、忘れてしまった思い出や、失ってしまった感情を呼び起こし、心に優しさと潤いをもたらしてくれる。

 トヨさんの若い頃を檀れいが、子供の頃を芦田愛菜が演じている。明治、大正、昭和の激動期を生き抜いたひとりの女性の生き様を、八千草薫のたおやかさで穏やかに優しく描いて心に沁みる。定職にも就かず、短気で競馬好きで子供のような性格のトヨさんの一人息子:健一を武田鉄矢が頼りなく演じ笑いを誘う。健一のしっかり者の女房:静子に伊藤欄が扮し、老いたトヨさんと健一を支える。

 

kujikenaide-s2.jpg 11月16日の公開を前に、八千草薫、武田鉄矢、深川栄洋監督の記者会見が大阪市内で行われた。主演映画こそ58年ぶりだが、TVドラマや映画出演は多く、特に近年映画での活躍が目立ってきている八千草薫。80歳を過ぎて、50代後半から100歳近くまでを演じ分けるのは肉体的にもきついものがあったと思うが、それを感じさせない繊細な演技に、改めて大女優のキャリアを感じさせた。そんな立派な母親に付いてきた(?)という感じの武田鉄矢だったが、柴田トヨさんの詩にある「いつでも人生これから!」というメッセージをしっかりと伝えてくれた。また、常に八千草薫を気遣う深川栄洋監督の様子から、まるで三世代親子が会見しているようだった。

 


 

(最初のご挨拶)称略)
 kujikenaide-yachigusa1.jpg八千草:本日はおいでくださりありがとうございます。5月に撮影が終わり何ケ月か経ちましたが、その時の想いがずっと残っています。
武田:久しぶりに取り組んだ映画です。静かな物語が進行する中で自分に演じられるものに挑戦した映画でもあります。八千草さんはファイト満々で、いろんなことを勉強させて頂きました。
深川監督:この映画は詩集が原作になった珍しい映画で、初めてやる作業でしたが、とても楽しかったです。詩から誕生した映画はとても意味深いと思いますので、是非劇場でご確認ください。

――― 柴田トヨを演じるにあたり難しかったところは?
八千草:
最初90歳過ぎた役は無理かなと思いました。でも、トヨさんの詩を繰り返し読んでいる内にやっぱりトヨさんは素敵な方だと思えて、また登場人物すべてが愛情深く、温かくて、今の世の中こんな気持ちになれることは少なくなってきたので、これは出演しなければと思ったのです。自然に年老いて見せることが難しかったですね。息子が詩を書くことを勧めてくれるまでは何もすることがなかったので辛かったのですが、詩を書き始めてからは楽しかったです。私にとっても、とてもありがたい経験でした。

――― 息子の健一役は、母親に心配かけたり、周りに迷惑をかけたりする役でしたが、特に気を付けた部分は?
武田:
健一は庶民的で砂粒みたいな人。その人の手触り、戸惑い、怒り、楽しみと、小さな人が抱く様々なものをどう演じるか……今は大きなことを言うのが流行っているのか、大義を掲げている時代ですが、今日どうやって食べるのか、母親をどうやって喜ばせるのかと、小さなことに悩む人を表現するのが難しかったです。

kujikenaide-fukagawa2.jpg――― 初めて脚本も担当されましたが?
深川監督:
ゼロから書いたのは初めてです。客観性が持てなくなるので止めた方がいいと思ったのですが、この映画の構成が頭にパッと浮かんできたので、これは自分でやるしかないかなと。そのため、スタッフを違う方向へ導いてしまったり、役者さんを苦しめたり、皆さんにご迷惑をかけることになったのですが、どうしても自分の手で作りたかったのです。それが正解かどうかは、これからご覧になる方が決めて下さることでしょう。

――― 様々な映画を撮ってこられて、今までとは違うと感じることは?
深川監督:
自分の知らない世代の映画を作るのは『60歳のラブレター』で経験済みですが、私の祖父母や両親などに訊きながらゼロから書いていると、柴田家を描きつつも、いつの間にか深川家のお話になっていきました。この映画を家族が見て、「恥ずかしくて見ておられん」と言ってました(笑)。

――― キャスティングについて?
深川監督:
トヨさん自身は、八千草薫さんのファンで、『相棒』が好きと聞いていましたが、詩のイメージから可愛らしく観音様のような八千草さんしかいないと思いました。本当に受けて頂いて良かった! 武田さんは、何もいいところのない小学生のような健一の役をやれる人と言えば、武田さんが浮かんできたのです。瞬発力を持ったエネルギーの塊のような役を武田さんに演じて頂ければと。まるで動物園で面白い動物を見ているような感覚で、物語にいろんな楽しみが生まれてくるのではと思いました(笑)。

kujikenaide-yachigusa3.jpg――― 58年ぶりの主演映画ですが?
八千草:
それはあまり意識していませんでした。『蝶々夫人』が終わってから結婚して女優を辞めようと思っていたら、菊田和夫先生が、外国の女優さんは結婚しても女優業を続けていると言われ、TVドラマに出演したり、最近では映画に出演することが多くなりました。ゆっくりとした仕事が好きなものですから、今回も深川監督は「こうしなさい」というような言い方ではなく、いろんな言葉を返して頂きました。もっともっとお話を伺いたいと思うような楽しいお仕事でした。

――― トヨさんの詩の魅力について?
八千草:
トヨさんの詩で、「あたし本当は…」と始まるところあります。人間は長く生きていると、「本当は…」と言って何も言えなくなることがあります。苦しいことや悲しいことを明るく変えてしまう特徴が好きです。「息子が夫とそっくりの顔でテレビを見ている、何だか得した気分」などと、明るくさせて下さる詩です。

kujikenaide-takeda1.jpg――― 60歳を過ぎて、アイドルのプロデュースを始められたが、いくつになってもやることは?
武田:
どんな額縁を持って世界を見るかが大切だと思います。私は最近フライングフィッシュを始めたのですが、これがまた下手くそで全く釣れません。6回釣りに行って、1匹も釣れない! 周りはみんな釣れているのに、自分だけが釣れないなんて…1? 終いには私の近くで魚を放流して下さったのですが、それでも釣れない! もう皆さん大爆笑でしたよ。ひとり下手がいることでこれ程皆さんを楽しませられるのか…世の中上手な人ばかりじゃ面白くない、下手な奴もいるから面白い。老いも若きもいろんな人がいるから面白い、とつくづく思いました。新しい事を始めるのに遅すぎるということはないと思います。

――― 最近のネット炎上については?
武田:
ネットには全く興味がありませんね。最近「恨み」に関連する言葉多くなってきましたね。柴田トヨさんの詩をオススメします。人を傷付けないよう、思いやりのある言葉を使い分ける必要がありますね。

(最後に)
八千草:
武田さんの仰る通りです。この映画は、息子やお嫁さんや夫や両親と、家族がいっぱい出てきます。みんなの思いやりを強く感じました。家族は一番安心できて、心を許してもらえるところだと思います。是非多くの方に見て頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 


 

kujikenaide-yachigusa2.jpg いつになくスローテンポ!? 武田鉄矢さんも深川栄洋監督もMCも、皆が八千草薫さんのたおやかなテンポに合わせるかのように、ゆったりと、穏やかに、ひとつひとつ言葉を選びながら話していた。「いつでも人生これから」と謳った柴田トヨさんは 今年の1月、映画の完成を待たずに101歳で亡くなられた。トヨさんも“美人さん”だったようだが、日本人が一番“大和なでしこ”と思う女優:八千草薫さんに演じてもらってさぞかし喜んでおられることだろう。(ちなみに、“日本男子”と思う男優は高倉健だそうだ) 80歳を超えても優しい微笑みを絶やさず、慈愛に満ちた眼差しで周囲を和ませる八千草薫さんは、まるで観音様のようだった。(拝)

(河田 真喜子)

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(写真:第2回記者会見ゲスト 左より『ほとりの朔子』深田晃司監督、主演二階堂ふみ、フェスティバル・ミューズ栗山千明、『捨てがたき人々』榊英雄監督)

 

今やアジア最大級の国際映画祭へと成長した東京国際映画祭(TIFF)。昨年25回を迎え、今年は次の25年に向けて、部門構成を刷新し、さらに若く新しい才能を世界に送り出す機能を備えた映画祭として、新しい一歩を踏み出す。フェスティバル・ミューズに女優栗山千明さんを迎え、コンペティション部門の審査委員長にチェン・カイコー監督、国際審査委員に寺島しのぶさんが就任と、映画祭開催前から話題を集めている。

 

■コンペティション部門

The Double_main.jpgTIFFの看板ともいえるコンペティション部門では、「東京 サクラ グランプリ」受賞作品である一昨年の『最強のふたり』、昨年の『もうひとりの息子』が劇場公開で観客から大きな支持を得ているように、注目作のワールドプレミア、アジアプレミア上映を目撃できる貴重な機会だ。今年も魅力的なラインナップが出揃った。日本からは『歓待』でTIFF2010「日本映画・ある視点」部門作品賞に輝いた深田晃司監督と杉野希妃プロデューサーコンビが、二階堂ふみ、鶴田真由、太賀、古舘寛治等を迎えて贈る社会派青春夏物語『ほとりの朔子』、ジョージ秋山の原作を主演に大森南朋を迎えて榊英雄監督が撮りあげた人間の本質と欲望を描く『捨てがたき人々』の2本が選出されている。

We_Are_the_Best!_main.jpgイギリスからは、『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ主演、文豪ドストエフスキーの原作を近未来的設定に置き換えた、シュールで哲学的な新感覚スリラー『ザ・ダブル/分身』が登場。スウェーデンからは青春映画に定評のあるルーカス・ムーディソン監督が、80年代初頭を舞台に、思春期の衝動に駆られてパンクバンドを始める女子中学生の弾けるような日々を活写した『ウィ・アー・ザ・ベスト!』。

Barber's Tales_main.jpgそして、フィリピンから選出されたのは、フィリピン版『マンマ・ミーア』の『アイ・ドゥ・ビドゥビドゥ』(OAFF2013上映)で下町の母をパワフルに演じたユージン・ドミンゴ主演のワールドプレミア作品『ある理髪師の物語』。昨年「アジアの風」部門で上映された『ブワカウ』のジュン・ロブレス・ラナ監督がユージン・ドミンゴと組んで時代の荒波と闘う女性たちの姿を描く注目作だ。

 

■ワールドシネマ部門

Tom at the Farm_main.jpg昨年までの「ワールドシネマ」部門をリニューアルした「ワールドフォーカス」部門では、世界各国の映画祭受賞作や話題作、あるいは有名監督の日本で紹介されていない新作にフォーカスを当て、従来の欧米作品だけではなくアジアの有力作品もこの部門にてラインナップされている。
現在劇場公開中の『わたしはロランス』で高い評価を得ているグザヴィエ・ドラン監督が、自身主演で初のスリラーにチャレンジ。本年のヴェネチア映画祭国際批評家連盟賞を受賞したカナダ、フランス合作の最新作『トム・アット・ザ・ファーム』がいち早く上映される。

Unbeatable_main.jpgまた、香港からは、『密告・者』のダンデ・ラム監督が放つ総合格闘技アクション・ドラマ『激戦』が登場。ニック・チョン、エディ・ポンの若手人気俳優による熱い男たちの闘いを堪能したい。

 

 

 


Soul_main.jpg更に、【台湾電影ルネッサンス2013 】と題して近年活況が著しい台湾映画より、久々の新作で復活を果たしたベテラン監督から注目すべきニューウェーブまで、台湾映画の今が垣間見える作品を特集上映する。今年の台北映画祭でグランプリを獲得した、『四枚目の似顔絵』チョン・モンハン監督の最新作『失魂』をはじめ、『27℃ ― 世界一のパン』、『高雄ダンサー』、『Together』がラインナップ。さらに台湾ニューウェーブの記念碑的オムニバス『坊やの人形』(ホウ・シャオセン監督、ワン・レン監督、ツォン・チュアンシアン監督)のデジタルリストア版も上映される。

 

■アジアの未来部門

Today_and_Tomorrow_main.jpg昨年まで数々の秀作を特集上映と共に紹介してきた「アジアの風部門」を発展させ、今年から新部門「アジアの未来」部門が誕生。長編映画2本目までのアジア新鋭監督の作品を一挙紹介するコンペティション部門となった。ワールド・プレミアとなるヤン・フィロン監督(中国)の『今日から明日へ』をはじめ、アジア映画の新潮流をいち早く発見できる機会となるだろう。

 

■特別招待部門

The_Dust_of_Time_main.jpg「日本映画・ある視点」部門がリニューアルした「日本映画・スプラッシュ」部門では海外進出を狙う日本のインディペンデント作品を、監督のキャリアを問わずに紹介。そしておなじみの「特別招待作品」では、オープニングにトム・ハンクス最新作『キャプテン・フィリップス』、クロージングに三谷幸喜の最新作『清州会議』と話題性十分の作品が勢揃いし、映画祭を大いに盛り上げる。中でも、テオ・アンゲロプロス監督の遺作となった『エレニの帰郷』をいち早くスクリーンで観ることができるのは、映画祭ならではの楽しみだろう。東京が映画色に染まる9日間。日頃劇場でなかなか触れる機会のない、国際色豊かな世界の最新映画をぜひ楽しんで!

第26回東京国際映画祭公式サイト http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/

 

yoakemae-s550.jpg『夜明け前、朝焼け中』馬場良馬 平田裕一郎 高崎翔太、窪田将治監督インタビュー
yoakemae-1.jpg(2013年 日本 1時間30分)
監督・脚本・編集:窪田将治
出演:馬場良馬、八神蓮、平田裕一郎、高崎翔太、肘井美佳、草野康太、川野直輝他
2013年11月2日(土)~新宿バルト9、11月16日(土)~梅田ブルク7(1週間限定公開)他全国順次公開
公式サイト⇒
http://www.faith-pictures.com/
(C)2013「夜明け前 朝焼け中」製作委員会

馬場:この作品がみんなで「朝焼けに向かっていく」きっかけの一つとしてあればいいな。
平田:本当に終わったあと笑顔になれている作品。
高崎:何も考えないで観て、展開することを一つ一つ感じてほしい。

びっくりするぐらいイケメン揃い!爽やか青春ストーリーかと思いきや、すっきり気分になれるのはオープニングとエンディングだけで、あとは微妙な空気が支配するひと癖もふた癖もある異色群像劇、『夜明け前、朝焼け中』が11月2日(土)より新宿バルト9、11月16日(土)より梅田ブルク7で公開される。

yoakemae-2.jpg監督は、前作『僕の中のオトコの娘』で、女装を楽しむ男子、女装娘(じょそこ)をテーマにマイノリティーの世界で自分らしさを取り戻す異色青春ストーリーを描いた窪田将治。今作では結成10年をなんとしても成功させたい、売れない劇団「フラッシュバック」のメンバーのすれ違いや葛藤をリアルに盛り込みながら、とんでもない事件に巻き込まれ、一世一代の大芝居を打つ様子をオール若手キャストで描いている。

yoakemae-3.jpg『CRAZY-ISM クレイジズム』(11)に続き、窪田作品二度目の主演を務める馬場良馬をはじめ、八神蓮、平田裕一郎、高崎翔太とミュージカル『テニスの王子様』で女性に大人気の若手俳優陣が分裂寸前の劇団員をそれぞれの持ち味で熱演。窪田組常連俳優の草野康太、川野直輝が『僕の中のオトコの娘』とは全く違う、意外性のある役どころで物語に独特の間やユーモアを加えている。

公開に先がけて9月28日に大阪で開催された完成試写会&トークイベントでは、女性ファンが大集結!残暑厳しい大阪が更なる熱気に包まれた。トークイベント登壇前に控室にて馬場良馬 平田裕一郎 高崎翔太、窪田将治監督に独占インタビューを敢行。楽屋トークのようなにぎやかな雰囲気の中、本作の撮影秘話や見どころを語ってもらった。


━━━前作はマイノリティーへの応援歌ということで、女装娘をテーマにした作品でしたが、本作企画の狙いやテーマは?
 yoakemae_kubota-s1.jpg窪田将治監督(以下監督):今回は僕自身もそうですが、「追い込まれないと、人間なかなかやらないよね」というところからスタートしました。本当はコツコツやっていかないと、上手くいかないのだけれど、本作の登場人物たちは「なあなあ」でやっていて、「もっとちゃんとやらないといけないよ」というのが一つのテーマとしてあります。

出演している役者も、今回は皆若い役者ばかりで、僕と同い年の草野さんが一番上なんです。「一緒にコツコツやっていこう」という、若手に対してだけでなく、作り手や自分に対する戒めに近いですね。『夜明け前、朝焼け中』というタイトルも、「日が昇るのか昇らないのか分からないけれど、一歩ずつやるしかない」というところに重きを置いています。今回の脚本は、人生でもっとも短い期間で書いているんですよ。

 

━━━具体的にはどれぐらいで書き上げたのですか?
監督:5日間です。もう5日間で書くことは二度とないと思います(笑)やりたいことがはっきり決まっていて、中盤から全く違う話にしようと決めていたので、あとは逆算だけだったから早く書けたのでしょう。

 

yoakemae_baba-s1.jpg━━━この脚本を初めて読まれたときの感想は?
馬場:僕も役者をやっているので、泰介が感じている葛藤がよく分かりました。泰介自身30歳で僕と同じなので、台本を読んでいて自分に問いかけられている部分が大きかったです。そういった意味では、今の僕にしかできない役だなと思ったし、今現在の僕がやりたいと思っている役で、いつも以上にワクワクと興奮しました。

 

 


yoakemae_takasaki-s1.jpg高崎:途中で構成がガラッと変わるところがワクワクしましたし、実際に演じた後に観ても同じ気持ちになりました。(バラバラだった劇団員が)団結して本番中にトラブルが起こるというのが普通の台本だと思っていたら、この作品は途中でガラッと変わるので、ああいう形もあるのかと思いましたね。
平田:何のストレスもなく、謎解きのような「どうなるんだろう」というところもさっと読めたのですが、後で残るんですよね。普通のリアルな僕たちが役者として演じているところも、ワクワクして読めました。演じていても楽しかったし、できあがった作品を観ても楽しかったです。先ほど監督が5日間で書いたと聞いて、ビックリしました。

 

━━━窪田組常連俳優陣のキワモノぶりも楽しかったです。特に合宿所の管理人役をされた草野さんは、実は黒幕だったり、何か中盤の事件に絡んでくるのかと思いきや、ただの変わり者の管理人で終わっていましたね。 
監督:最初は劇団員が現場を撮られたテープを取り戻そうと合宿所から帰った後に、草野さん演じる合宿所のおじさんが、ヤクザ事務所へ「おまえら、掘り起こしてたぞ、あいつ」と電話するのを入れようかと思ったんです。でも、それはちょっと狙いすぎの気がして、逆に「結局いなくても別によかった」という感じが面白いのではと感じて今の形にしました。草野さんはそういう「いなくても別にいい」役も得意ですから。

 

yoakemae_baba-s2.jpg━━━馬場さんは、ずっとストレスを抱えて葛藤する、笑うシーンのほどんどない役でしたが、そういう役は珍しいのでは?
馬場:特に今回は男性キャストが元々顔見知りの人が多かったんです。僕一人その中でぶすっとしてなければいけなかったので、撮影中も少し距離感がありました。特に車の運転をしているシーンで、僕はぶすっとした顔で実際に運転をしているのですが、後部座席ではいつカメラが回っているか分からないので常に盛り上がっていて、「もうやめてくれ~っ」て気持ちになったことはありました(笑)でも基本は楽しかったですね。

 

━━━本作で窪田監督作品に主演するのは2度目ですが、窪田組の印象は?
馬場:初めて主演をさせていただいた『CRAZY-ISM クレイジズム』で、窪田監督と初めてお仕事をさせていただきました。「ちゃんと芝居をする」ことを初めて頭で理解させてくれた方だったので、僕にとって芝居の恩師みたいなものであり、揺るぎないです。だから『僕の中のオトコの娘』の時も、窪田監督にお願いしてチョイ役で出していただきましたが、それぐらい慕っています。窪田監督は愛があり、お芝居以外の人間的なことや大人としての振る舞いも教えてくださるので、そういった意味でも人生の大先輩で師匠ですね。早く師匠に恩返しができればいいなと思っています。

 

yoakemae_takasaki-s2.jpg━━━高崎さんは、男性キャラクターの中で一番年下でありながら、一番成長していく役でしたが、役作りはどのようにされましたか?
高崎:成長する役なので、映画一本を通してのテンションの変わり方に気をつけて演じました。テンションの移り変わりがすごく繊細なので、考えていることがうまくできなくて、へこんだりもしました。等身大で演じた感はありますね。

 

 

 

 

━━━平田さんは劇団きっての色男で、女の子に言い寄られると断れない、優柔不断男子を演じましたが、ご自身の役をどう感じましたか? 
yoakemae_hirata-s2.jpg平田:今の子たちってあんな感じがしませんか?悪気もなく二股をかけたり、誘われると断れなかったり。ふわっとした感じだけれど、お芝居が好きで10年やめないで続けていたり。看板女優と付き合っているけれど、そちらにはバレないように別の女優と付き合うわけで、女たらしというか、なんかすごいですよね(笑)。もともと(劇団員男子役の)4人は知り合いだったので、(高崎)翔太は一番年下だけど締めるところは締めてくれるし、馬場さんはやはりリーダーらしく締めてくれるし、王子(八神漣)はふわふわしていて、僕はマイペースなので、コンビネーションとしては良かったです。
馬場:窪田組はみんな気を遣ってくださるので、毎回現場の雰囲気はいいのですが、特に今回は劇団の合宿という設定で、山梨で泊まり込みで撮影をしていたので、そういう意味では本当の合宿みたな感じで取り組め、すごく一体感があったと思いますね。

 

━━━一番好きなシーンはどこですか?
 yoakemae_hirata-s1.jpg馬場:(高崎)翔太演じる圭吾に自分の今置かれている状況をカミングアウトするシーンがあります。「俺ももう30歳だし、先がない」と言っているところは、もちろん泰介として演じてはいるのですが、僕にとってもリアルな瞬間で、あそこはすごく演じていて気持ち良かったです。自分の気持ちの中でもすっと入ったお芝居で、印象的でした。僕も30歳目前で「これからどうしよう」と考えはじめることがありますからね。
高崎:劇団が一度団結を取り戻した後の切り替えが、やはりワクワクしましたね。何が起こるか、くるぞ、くるぞといった感じが好きですね。
平田:僕は雪の中でキャッチボールをしているシーンが好きです。後々思うと、キャッチボールしている人たち皆の心情が少しずつ出ている気がします。「台本が出来ていないから(稽古できないのは)仕方ないじゃないか」というのも本心だし、周りの人たちも「皆がやるなら・・・」と思っている。泰介が「ちゃんとやろう」と言っている気持ちも分かるけれど、俺らに言うなよという感じですよね。寂れた体育館の裏で、真っ白な雪の中というシチュエーションも好きでしたね。

 

━━━最後に、一言ずつメッセージをお願いします。
監督:逆説的な感じですが、「コツコツ、ちゃんとやった方がいいよ」ということが一つのメッセージです。とは言っても、追い込まれた人間は何でもできるから、「本当にやる人間はやるので、そんなに心配をすることはないよ」という部分もあります。この作品を観て笑ってもらえばうれしいし、スカッとしてもらってもうれしいです。僕の作品をご存じの方には、「いつも血がドバドバ出るけれど、今回はそうでもないよ」と言いたいですね。
 yoakemae-s2.jpg馬場:泰介は30歳手前で色々と悩んでいますが、この社会、特に恵まれている日本だからこそ何かもがいてやりたいけれど、今の現状に満足してしまう。そんな風に大小かかわらず、誰しも抱えている問題を描いているのかなと思います。この映画を観て、やる気になったり、何かのきっかけになればいいですね。みんなが「朝焼けに向かっていく」きっかけの一つとして、この作品があればいいなと、すごく思います。
高崎:何も考えずに観てほしいなと思います。そこで展開していくことを、一つ一つ感じとってくれたら、最後はスカッとすると思います。その後に思い返してみると、「最初はあんなにドロドロしてたな」とか「ピンチもあったな」とか「でも頑張ったな」と、何か感じてもらえたらうれしいですね。
平田:本当に終わったあと笑顔になれている作品だと思います。
(江口由美)

anokoro-550.jpg『あの頃、君を追いかけた』

 

shazai-b550.jpg自由の女神が熱烈歓迎!『謝罪の王様』舞台挨拶

 

 

 

ゲスト:阿部サダヲ(主演:黒島譲 役)、宮藤官九郎(脚本)、水田伸生(監督)  
(2013年9月20日(金)TOHOシネマズ梅田にて)

 

(2013年 日本 2時間8分)
監督:水田伸生
脚本:宮藤官九郎
出演:阿部サダヲ、井上真央、竹野内豊、岡田将生、尾野真千子、荒川良々、濱田岳、高橋克実、松雪泰子他 

2013年9月28日(土)~全国東宝系ロードショー

公式サイト⇒ http://www.king-of-gomennasai.com/
(C) 2013「謝罪の王様」製作委員会

 


 

 ~水田監督の土下座体験に着想!? クドカン流“謝罪のススメ”~

 


shazaino-2.jpg 世の中不祥事を起こしても悪いという自覚もなく謝罪するケースが多い。いくら美辞麗句を並べようと、自らの非を認めない限り謝罪の意は伝わらない。そんな光景を他人事のように見ている自分も、形骸化した謝罪しかできないのでは? な~んて思っている誠意の枯渇した現代人に「喝っ!」を入れてくれる映画『謝罪の王様』が公開される。

 謝罪の仕方を指南してくれる謝罪師のパイオニアである黒島譲役を、今年『奇跡のリンゴ』に次いで主演作が続く阿部サダヲが演じ、さらに『舞妓Haaaan!!!』『なくもんか』の宮藤官九郎脚本、水田伸生監督というゴールデントリオが再結成し、日本中に笑いのトルネード旋風を巻き起こすこと必至の話題作だ。

 

shazai-b2.jpg 9月28日(金)からの全国公開を前にキャンペーンのためこの3人が来阪。TOHOシネマズ梅田で開催された試写会では観客に王冠を被ってもらい、、映画の重要なアイテムである「自由の女神」450体で、舞台挨拶に登壇したゲストを熱烈に歓迎した。

 

 

 


 

shazai-abe1.jpg【最初のご挨拶】

阿部:こんばんは!眩しくて何も見えない…何ですか、それ? 大阪の人って面白いですね~、大阪だけですよ、そんな恰好で迎えてくれたの(笑)。

宮藤:こんばんは!今日はお金払ってないお客さんですね? 運だけで見られるなんて凄いですね~!

水田監督:そんな物まで被って頂いてありがとうございます。宮藤さんダメじゃないですか、そんなこと言っちゃ!? こっちから見るとイチゴ畑みたいですね♪

阿部:被らない人、ちゃんと見えてますからね!(と言われて被り出すと)そうそう、かわいいイチゴちゃんになったよ♪(笑)

 

 

shazai-kudo1.jpg――― 大阪のイメージは?

宮藤:大阪の好きな所は、〈揚子江ラーメン〉! よく行きます。

阿部:大阪は優しい人が多い! というのも僕を泊めてくれる人が多いから(笑)。知らない人でも何回か泊っているうちに友達になって、今では家族ぐるみで付き合っています。飲んで帰れなくなって泊めてもらうことが多いのですが、いつも「泊りい↗」って言ってくれます(笑)。

水田監督:お客様の反応が明らかに東京と違いますね。大阪の方は楽しむことを分かっていらっしゃる。その分笑いに厳しいので、舞台が盛り上がるありがたさを痛感しております。今日はシーンとしないようお願いします。

 

shazai-mizuta1.jpg――― 阿部サダヲさん主演映画を監督するのは3回目ですが、水田監督から見た阿部サダヲさんはどんな俳優?

水田監督:ゴムボールのような俳優。触るとフニュって柔らかいが、投げ方や方向によっては予想もつかないような変化球となって、面白い演技を見せてくれます。

――― 阿部さんはいかがですか?

阿部:水田監督はその時々によって投げ方が違うので…見て頂ければ分かると思いますが、今回は上へ投げっぱなしの場面もありました。

水田監督:はい、30メートルの高さに6時間吊るしっぱなしの時もありました(笑)。

 

shazai-kudo2.jpg――― 謝罪をテーマにした理由は?

宮藤: 〈風刺コメディ〉というお題を頂いて、どういうことかな?と考えていたら、TVで謝罪する人々を見ていて、謝り方がマニュアル化されているなと思ったんです。こうした形骸化している謝罪は風刺になる!と思って提案してみました。

 

水田監督:打ち合わせの時に、「僕は二度土下座したことがあるよ」という話をしたら、とても盛り上がったんですよ。

 

shazai-mizuta2.jpg――― ええ?どんなことがあったんですか?

水田監督:それを言ったら、記者さんたちはそのことしか書かないと思うんで(笑)。

 

――― これだけのエピソードの発想は?

宮藤: 「謝る」ということと「謝り方を教える」という謝罪師の二つを基本に、国を背負っての謝罪や家族に「ごめん」と言えない大人とか、深く考えなくてもいろいろ浮かんできました。

――― 土下座がいっぱい出てきましたが?

阿部:謝罪師は初めての役でしたので、「これぞ謝罪師!」と最初だから何をやってもいいかと思いました。この劇場の入口の所に謝罪師の顔が重なったパネルがあります。まるでエグザイルみたいな恰好のものが置いてありますが、あれは「ドゲザイル」と言うらしいです(笑)。

 

【最後のご挨拶】

shazai-abe2.jpg阿部:ニューヨークでも試写会をしたのですが、ニューヨークと大阪は客席の感じが似ているところがありますね。ワオー!とかエーイ!とか楽しみ方が同じ。そんな楽しみ方を全国に広げて頂きたいです。どうぞ自由に見てお楽しみ下さい。今日は皆さんは残念ながらお金を払えなかったらしいですが(笑)、28日からお金を払える上映が始まりますので、お友達やご家族をお誘いあわせの上お越し頂きたいと思います。

今日は皆さんかなりの強運ですね? パーだけで優勝するようなもんですよ(笑)。どうかよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

 


 

 この日の舞台挨拶はサプライズとあって、3人のゲストが登場すると大歓声が(じぇじぇじぇ~!!!)。劇団「大人計画」のメンバーでもある阿部サダヲと宮藤官九郎は、人気、実力とも全国区。特に、NHK朝の連ドラ『あまちゃん』の脚本を手掛けた宮藤官九郎の人気急上昇ぶりに、だれもがその素顔に興味津々。映画『謝罪の王様』の誕生秘話には、日本中を元気にしたクドカンのアイデアの泉を覗いた気がした。阿部サダヲも『あまちゃん』に出たかったらしいが、主役をくっちゃいそうな勢いの存在感は、映画の中で楽しみたい。

shazai-paneru.jpg パワー全開! 謝罪師にかかると、問題を根本から解決してくれます。 さあ、何かお悩みのあなた! “謝罪の王様”にご相談下さい。劇場に居ますよ。《ドゲザイル》と共にお待ちしております。

(河田 真喜子)

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yurusarezaru-b550.jpg豪華舞台挨拶!『許されざる者』主演3人&監督に浪花っ子も大感激!!!

(2013年8月30日(金)19:10~御堂会館にて)

ゲスト:渡辺 謙、柄本 明、佐藤浩市、李相日監督

 

(YURUSAREZARU MONO 2013年 日本 2時間15分)

監督・アダプテーション脚本:李相日(リ・サンイル)(『フラガール』『悪人』)

出演:渡辺 謙、柄本 明、柳楽優弥、忽那汐里、小池栄子、近藤芳正、小澤征悦、三浦貴大、滝藤賢一 / 國村 隼、佐藤浩市

 

2013年9月13日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー

 

★作品紹介⇒ http://cineref.com/review/2013/08/post-226.html

★公式サイト⇒ http://wwws.warnerbros.co.jp/yurusarezaru/index.html

© 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

 


 

 

~近年稀に見ぬ日本映画の傑作!
黒澤明監督作『用心棒』のリメイク『荒野の用心棒』で一躍ブレイクしたクリント・イーストウッドのアカデミー賞4部門に輝いた『許されざる者』を、さらに日本の最高のキャストとスタッフでリメイク~


 

 yuru-3.jpg 明治維新後、かつて官軍の討伐隊を皆殺しにして“人斬り十兵衛”と恐れられた男(渡辺 謙)が、アイヌの女性と出会って「別な生き方がある」と改心、妻亡き後も幼い2人の子供を育てながら、貧困の中人里離れた荒野を耕していた。そこへ、かつての仲間の金吾(柄本 明)が賞金稼ぎの話を持ち込んでくる。子供たちのために妻との誓いを破り、再び剣を持つ十兵衛。金吾と途中加わった若者・五郎(柳樂優弥)との三人で、女郎を切り刻んだ開拓民を打つべく鷲路の宿場へと向かう。宿場では暴力で絶対的な支配を誇る一蔵(佐藤浩市)が賞金稼ぎたちの前に立ちはだかる。

  クリント・イーストウッド監督・主演の『許されざる者』('93)を、明治維新後の北海道を舞台にアレンジした、とても日本映画とは思えない完成度の高い映画。リメイクということもあり安定したロジックに、日本ならでは明治維新後の官軍と旧幕府軍という構図に、アイヌの人々への差別や、厳しい環境の北海道で生きる開拓民の悲哀。あらゆる要素をひとりひとりのキャラクターに肉付けして、オリジナル以上にヒューマンドラマとしての深みを感じさせる。

 yuru-2.jpg 特に、“人斬り十兵衛”を演じた渡辺謙は、表情だけで周囲に物語を伝えられるほどの存在感だ。さらに、十兵衛を追い詰める冷血な一蔵を演じた佐藤浩市も、狂気を秘めた表情に凄みを感じさせる。「本当はお前が恐かった」と朴訥と語る金吾役の柄本明は、孤独と弱さを内包した男の哀しみを滲ませる。その他、柳樂優弥や忽名汐里などの若手も、ベテラン勢の重厚な演技に新風を吹き込んでいた。

 


 

 この日の御堂会館は、徹夜組も含め熱気にあふれていた。豪華ゲストに期待して蒸し暑い中集まった多くの観客。公開前全国キャンペーンの最後の地が大阪とあって、ゲストにも余裕があるようだ。いよいよ、豪華ゲストによる舞台挨拶の始まりです!

 

(大歓声と大喝采の中登場!)【最初のご挨拶】

yurusarezaru-b1.jpg渡辺:前の晩から並んで下さった方もおられるとか。また本日残暑厳しい折、並んでお出で下さった方々にこの作品を届けることができて、本当に嬉しく思います。

佐藤:本日はありがとうございます。皆さんには大変感謝しておりますが、僕が登場する頃にはビールを飲みたいと思っております(笑)。最後まで楽しんでください。

柄本:本日はご来場ありがとうございました。え~と、見て下さい(笑)。

李監督:早くから並ばれた方、おそらく前の方の席に座っておられると思いますが、この映画はもう少し後に座って見た方がいいと思います(笑)。

渡辺:身も蓋もないじゃないですか~!?(笑)

李監督:とても圧力のある方々が3Dのような圧力をもって迫ってくるので、もう少し後の方がいいかなと思いました(笑)。

 

――― 渡辺さん、これからご覧になる皆様に、まず言っておきたいことは?

yurusarezaru-watanabe-1.jpg渡辺:阪神3連敗しちゃったのですが、(笑)…この映画とても強い映画です。ある種の圧力もって息詰まるような映画ですので、今の内に深呼吸して下さい。

――― クリント・イーストウッド監督とはお話する機会はあったのでしょうか?

渡辺:イーストウッド監督も次回作に掛かっておられて、直接お話する機会はなかったのですが、本作については、製作についても快諾を頂いたうえに、とても丁寧なお手紙を頂戴しました。その中で印象的なことは、黒澤明監督の『用心棒』を彼が『荒野の用心棒』でリメイクし、そして今度は、彼の『許されざる者』を我々がリメイクすることになりました。映画を作ろうとする魂がいろんな価値観を超越して生き続けていくんだということを、改めて強く感じました。参加できて本当に良かったと思いました。

――― 十兵衛という役にいろんな反響があるようですが?

渡辺:私もよく分からないんですよ。とてもやっかいな人物なんで、分かろうとしなくてもいいと思います。登場人物ひとりひとりに寄り添うように見て頂ければいいかなと思います。

――― 今日は関西弁は聞かせて頂けないのですか?

渡辺:役が役なものですから、あまり喋りたくありません。いっそのこと僕の存在を一切消して頂きたい位ですので、すみません。

 

――― 佐藤浩市さんは今までいろんな役を演じて来られたと思いますが、今回一蔵役で心に止めたものとは何ですか?

yurusarezaru-satou-1.jpg佐藤:(一蔵になりきって)「そんなものはねえ!」(笑)。単純に正義や暴力とは何かを自分自身に問い掛けながら演じてました。ひたすら痛覚を鈍感にさせないと生きることができなかった。「人斬り十兵衛」という人間の対極にあるような人物です。暴力でもって自分の存在をより大きく強く見せようと、どんどん暴力に敏感になっていったような感じです。

――― 今回渡辺謙さんとは初共演ですが?

佐藤:渡辺謙さんの方が大人に見えるでしょうが(笑)、ほぼ同世代です。研鑽してきたものは違うがお互いの仕事を見てきたので、現場で改めて感じるというより、自分が知っている立ち居振る舞いの渡辺謙がそこに居るという感じでした。

――― 渡辺さんは如何ですか?

渡辺:この役で出会えて良かった。信頼して体ごとぶつかることができて幸せでした。

 

――― 柄本明さんにとって挑戦し甲斐のある映画だったのでは?

yurusarezaru-emoto-1.jpg柄本:そうですね…李監督が名作をリメイクする勇気があって、こうして出演させて頂きました。また、上半身裸になって、零下10℃以下の所で吊り下げられ、李監督には心から感謝しております(笑)。

――― 李監督とは3度目のお仕事ですが、今回の監督は如何でしたか?

渡辺:よく懲りないね!?

柄本:しつこいです(笑)、相変わらずしつこいです。

 

yurusarezaru-ri-2.jpg――― 李監督のロケ地のこだわりは?

李監督:確かに北海道で撮っています。CGで作ったような風景はありません。地元の人でも知らないような、地図を見ても緑色の部分しかないような、そして人工物がまったく無いような奥地に分け入って探しました。

 

――― 今だから言えるような撮影中のエピソードは?

渡辺:秋から冬にかけてロケしたのですが、北海道の天候は不安定で三日間雨が降り続いて、1カットも撮れない時がありました。そこで、監督に電話して、「こういう時は肉を食うのが一番!」と、焼肉屋を貸し切って、100人で焼肉大会をやりました。撮影に入って既に1か月経っていましたが、初めてみんなの笑顔を見ました。それぐらい大変な現場でした。

 

――― 大阪のみなさん、関西の皆さんへのメッセージをお願いします。 

yurusarezaru-ri-1.jpg李監督:今ここで聞いたことは全て忘れて下さい(笑)。すみません、勝手なことを言って。ヒットする映画がいい映画と見られる中で、この映画はどちらかというと、ヒットすることより、映画の世界でしか生きていけない我々が、映画で思いを伝えたい、発信していきたいと思って作った映画です。既にタイトルを聞いてお気付きだとは思いますが、優しい映画ではありません。厳しい映画ですが、とても切ない映画だと思います。どうか最後まで全身で受け止めて下さい。本日はどうもありがとうございました。

柄本:いろんな意見があると思いますが、とても分かりやすい映画だなと思います。映画というものは、作り手側だけで成立するものではなく、これから育てていかなければなりません。この映画を大きく育てるためにも、皆様のご協力をお願いしたいと思います。

 

yurusarezaru-satou-2.jpg佐藤:クリント・イーストウッドのオリジナル版を見られた方はどれ位いらっしゃいますか?(客席からパラパラと手が挙がる)よく「オリジナルとは別物と思って見て下さい」と言われると思いますが、(大きな声で)「堂々と見比べて下さい!」(笑)。そして、なるほど!ちょっとしか変わってないのに、こんなにも日本的なオリジナリティが出せるのか!と感じて頂けるはずです。我々は自信を持って皆様にお届けします!あれ?これは監督が言うセリフだ?!(笑)俺が言うことじゃないな(笑)。どうか今日はお楽しみ下さい。

 

 

yurusarezaru-watanabe-2.jpg渡辺:高い高い山を前にして登山をしようと決めました。しかも、李相日監督という難しいルートを選んで。今やっと9合目までやってきました。これから皆様のお力を借りて更に頂上を目指して行こうと思います。険しく高い山なので途中で息苦しくなるかもしれません。でも、最後には今までに見たことがない世界を見られると思います。どうか最後までお楽しみ下さい。本日はどうもありがとうございました。

 


 

 クリント・イーストウッドが、師匠であるドン・シーゲル監督とセルジオ・レオーネ監督に捧げた、アカデミー賞4部門受賞の『許されざる者』('92)。彼の作品の中でも金字塔に輝く作品をリメイクするとは……さらに、それを上回るような映画に仕上げてしまうとは……まだ39歳という李相日監督の大胆さと能力の高さには驚かされる。他の日本の監督が本作を見てどう思うだろうか?実に興味深い。

(河田 真喜子

 

 

watashinodaitouryou-550.jpg『私が愛した大統領』

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