映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

髭剃りが大変だった!?『マルセイユ・コネクション』ジル・ルルーシュ&セドリック・ジメネス監督舞台挨拶《東京国際映画祭2014》

marseille-ki-550-2.jpg髭剃りが大変だった!?『マルセイユ・コネクション』ジル・ルルーシュ&セドリック・ジメネス監督舞台挨拶《東京国際映画祭2014》


◎日時:2014年10月26日(日)
◎ゲスト:ジル・ルルーシュ(42歳)、セドリック・ジメネス(?)


 『マルセイユ・コネクション』
・原題:The Connection [ La French ] 
・(135分 フランス語 Color 2014年フランス=ベルギー)
・監督/脚本 : セドリック・ジメネス
・プロデューサー : アラン・ゴールドマン・ 脚本 : オードレイ・ディヴァン
・撮影監督 : ローラン・タンギー     ・美術 : ジャン=フィリップ・モロー
・編集 : ソフィー・レーヌ        ・音楽 : ギヨーム・ルセル
・出演:ジャン・デュジャルダン、ジル・ルルーシュ、セリーヌ・サレット、メラニー・ドゥーティ、ブノワ・マジメル
© LEGENDE FILMS, GAUMONT, FRANCE 2 CINEMA, SCOPE PICTURES


 
~現代の視点で描いたフランス版“フレンチ・コネクション”の醍醐味~

 
1970年代のマルセイユに実在した麻薬犯罪組織のボスと新任判事との攻防戦を描いた『マルセイユ・コレクション』。当時巨大な市場であったアメリカへの麻薬密売ルートを確立したのは、マルセイユを拠点とした“フレンチ・コネクション”と呼ばれた犯罪組織だった。ウィリアム・フリードキン監督の『フレンチ・コネクション』(71)とジョン・フランケンハイマー監督の『フレンチ・コネクション2』(75)では、まさにフランスからの麻薬ルートの取り締まりに命を懸けたニューヨーク麻薬取締官の活躍を躍動感あふれる映像で描いていた。当時、コルシカ島出身のフレンチ・マフィアと、シチリア島出身のイタリアン・マフィアの双方からアメリカへ麻薬が密売され、アメリカの若者が急激に麻薬に蝕まれていった。その後のアメリカ映画では大きな社会問題として数多くの作品で扱われるようになった。そんなマフィアが暗躍する世界を“ファミリー”の内側から描いたフフランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』シリーズはあまりにも有名。
 

marseille-550.jpgそしていま、マルセイユ出身の若き監督が、判事とマフィアのボスを両極において、それぞれの家族への想いや仕事に対する非情さを、現代の視点で細やかに物語る。特に、犯罪組織に果敢に戦いを挑み続けた判事の執念を、「勝負にこだわるギャンブラーのようだ」と語らせているところは人間臭くて興味深い。『アーティスト』(11)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダンがミシェル判事役を、『この愛のために撃て』(10)のジル・ルルーシュが犯罪組織のボス・ザンパ役を演じて、なんとも豪華なW主演となった。また、数々の主演映画で日本でも大人気のブノア・マジメルがボスと敵対するマフィアの一員を、さらに今年のフランス映画祭で上映されたトニー・ガトリフ監督の『ジョロニモ 愛と灼熱のリズム』で主演したセリーヌ・サレットなど実力派が脇を固めている。

 本作を監督したセドリック・ジメネス監督と、犯罪組織のボス役を演じたジル・ルルーシュが東京国際映画祭のために初来日し、舞台挨拶を行った。
 


 

marseille-di-1.jpg――― 歴史的事件を扱っている本作の製作にあたりプレッシャーはなかったのか?
監督:プレッシャーはなかったが、責任は感じていた。私はマルセイユで生まれ育ち、父はザンパ関係者が経営していた店の隣でナイトクラブを経営していたので、子供の頃から彼等のことはよく知っていた。いつかはこの事実を物語りたいと思っていた。実在の人々に対し敬意を払いながら、マルセイユの人々に対しても裏切らないような作品を撮りたいと思っていた。


――― ハンディカメラの使用について?
監督:映画の中に観客が入り込んで、より登場人物たちを身近に感じてもらえるようにハンディカメラを使用した。人物と観客との距離感をなくして、キャストの動きに付いて行けるよう、活き活きとした映像を撮りたかった。


marseille-ji-3.jpgのサムネイル画像――― ジルは『プレイヤー』(12)でもジャンと共演して究極の遊び人をコミカルに演じていたが、今回はシリアスにガチ勝負?
ジル:ジャンとの共演作は3作品あるが、直接顔を合わせる共演は今回で2作目。長年の友人でもあるので、対決シーンでは苦労した。知らない者同士なら上手くいくところを、とにかく8時間は敵として顔を合せない、話もしない、といった具合に緊張関係を作った。そのせいで、その後心理カウンセラーを必要としたほどだった(笑)。
 

――― フレッド・カヴァイエ監督がジル・ルルーシュの印象について、「愛する妻のために東京の街を駆け巡るようだ」と言っていたが、東京の印象について?
ジル:小さい頃から東京に憧れていた。私にとって東京は『ブレーランナー』の世界のようだった。とてもユーフォニックで快楽的でワクワクするような、違うコードの街。フランスが中世に見えるくらい日本は近未来的。興味を掻き立てられる街なので、多くの監督が東京で撮りたいと思う気持ちがよくわかる。
 

ジルもジャンも体格が似ていて濃い無精ひげの印象が強かったが、本作ではスッキリ綺麗なお顔で、特にこんなハンサムなジル・ルルーシュを見るのは初めてではないかと思う。実在の人物がモデルなので、家族や関係者にリサーチして役作りをしたという。また、当時の男性は服や髪などスタイルにこだわり、いつもきちっとした格好をしていたので、ジャンとジルにもまめに髭剃りをするよう監督の指示があったようだ。「髭剃りが大変だったんだ!」とこぼすジル(笑)。
 


marseille-ji-1.jpgのサムネイル画像≪ジル・ルルーシュ≫
1972年、フランス生まれ。
演劇学校を卒業後、俳優業を開始し、『Ma vie en l'air』(未/05)でセザール賞の若手有望株賞にノミネートされる。その後、ジェロール・サム監督の『アントニー・ジマー』(未/05)、セドリック・クラピシュ監督『PARIS(パリ)』(08)、リュック・ベッソン監督の『アデル/ファラオと復活の秘薬』(10)等のヒット作に出演。また『ナルコ』(04)では出演と共に監督・脚本デビューを果たした。その他の主な出演作は、『世界で一番不幸せな私』(03)、『ジャック・メスリーヌ/フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男』(08)、『プレイヤー』(12)、フレッド・カヴァイエ監督の『この愛のために撃て』(10)と『友よ、さらばと言おう』(13)など。
 

≪セドリック・ジメネス監督≫
マルセイユ生まれ、監督兼脚本家。ニューヨークとロンドンで数年を過ごしたのち、独立系プロデューサーとしてパリで映画製作のキャリアをスタート。2011年にサスペンス『ハッキング・アイ』をプロデュース・監督し、批評家から高い評価を受け、ナポリ国際映画祭最優秀作品賞を受賞。ジャン・デュジャルダンとジル・ルルーシュが出演する本作は監督としての長編第2作である。
 


(河田 真喜子)