原題 | INTERSTELLAR |
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制作年・国 | 2014年 アメリカ |
上映時間 | 2時間49分 |
監督 | 監督:クリストファー・ノーラン 脚本:ジョナサン・ノーラン AND クリストファー・ノーラン |
出演 | マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・アーウィン、エレン・バーステン、マイケル・ケイン |
公開日、上映劇場 | 2014年11月22日(土)~ 新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸、他全国ロードショー |
~史上初!驚愕の五次元の世界を体験!
時空を超えて愛は人類を救う~
他人の夢の中に潜入して意識をコントロールしようとした『インセプション』(2010)を見た時、原案者であるクリストファー・ノーラン監督の頭の中を覗いてみたい!と思った。きっと“メメント”状態なんだろうな!?
かつて、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968)を生徒と一緒に見に来ていた高校教師が、上映後看板を蹴って出て行ったらしい。訳が分からず腹が立ったのだという。黒い石板「モノリス」が現れる度に人類に進化をもたらし、人智を超えた力による宇宙時間の変動を表現するという哲学的意味合いの強い作品だった。だが、映画の中で登場するスペースシャトルや宇宙ステーションなどその後実用化されたものも多く、決して絵空事ではない、時代を先駆けた画期的映画だった。宇宙人やヒーローが登場する躍動感のあるSFアクションを期待していた観客には期待外れだったかもしれないが、宇宙開発事業の将来を見据えた科学的論拠に基づいた学術的にも優れた映画でもあったのだ。
そして、2014年、私たちは『インターステラー』という『2001年宇宙の旅』に匹敵する人類の未来を科学的に実証する映画に遭遇する。『アバタ―』や『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』のようなSFアクションではない。地球大変動による絶望的危機を迎えた地球から、時空のバリアを突破して宇宙の彼方へ人類生息可能な惑星探査に乗り出すという、『ゼロ・グラビティ』(2013)より複雑な物語と壮大なスケールで圧倒する。近年続発する異常気象や地球変動による大災害をみても、実にタイムリーでリアルなSFとして真に迫るものがある。
それもそのはず、重力波、とりわけブラックホールの研究で有名な理論物理学者のキップ・ソーン博士の検証に基づいたスペースフロンティアの展開は、作品を説得力のあるわかりやすいセリフと映像で物語っている。
さらに、「必ず戻る!」と娘と交わした約束を果たすため、どんな危機をも超越しようとする父親の意志の強さが、我々を時空を超えた未体験ゾーンへと誘う。母なる惑星地球に残した家族との関係を基に、遥か宇宙の彼方へ旅立とうとも、心は地球に戻ろうとする様が胸を熱くする。人類が常にまだ見ぬ世界へと冒険を続けてきたように、今まさに相対性理論を実証し、銀河系の果てのブラックホールへも到達しようとする。その先には一体何が見えてくるのか。ノーラン監督の独創的世界の極致を目の当たりにして、興奮のあまり体が震える。
これまでクリストファー・ノーランが描くキャラクターは、ヒーローであっても悪人であっても極めて人間的悲哀を滲ませた人物が多かった。今回主人公のクーパーを演じたマシュー・マコノヒー(『ダラス・バイヤーズ・クラブ』でアカデミー賞主演男優賞受賞)は、「これほど壮大な世界を描きながらも、人間らしい鼓動が響いている」とノーラン監督の特徴を語る。また、「自己犠牲をいとわないような勇敢な人々を心から称えている」と人類の進化につきものの犠牲についてアン・ハサウェイ(『レ・ミゼラブル』で同賞助演女優賞受賞)は語る。他にも、ジェシカ・チャステインやマイケル・ケインやエレン・バースティンなど演技派が人間味のあるキャラクターで惹きつける。さらに、ノーラン監督が思い描く想像を絶する異次元世界を具現化してきた優秀なスタッフにより、私たちはかつて目にしたことのない五次元の世界を体験することができる。
どこかに「モノリス」が現れて、今こそ人類進化の啓示を発信しているのだろうか。いや、この映画こそが「モノリス」なのかもしれない。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.interstellar-movie.jp
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