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池松壮亮イチオシの新星、中川龍太郎監督がラフマニノフの旋律にのせて描く『愛の小さな歴史』舞台挨拶@TIFF2014

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写真左より写真左より池松壮亮、高橋愛実、沖渡崇史、中村映里子、藤村駿プロデューサー、木ノ内輝エグゼクティブプロデューサー、中川龍太郎監督
 
池松壮亮イチオシの新星、中川龍太郎監督がラフマニノフの旋律にのせて描く『愛の小さな歴史』舞台挨拶@TIFF2014
登壇者:中川龍太郎監督、木ノ内輝エグゼクティブプロデューサー、藤村駿プロデューサー、中村映里子、沖渡崇史、高橋愛実、池松壮亮
 

~20代スタッフ、キャストの”情熱”がほとばしる!鮮烈で優しい”家族の再生”~

 
10月23日より開催中の第27回東京国際映画祭で日本映画スプラッシュ部門作品としてワールドプレミア上映された中川龍太郎監督の『愛の小さな歴史』。詩人としても活動している中川監督が原作、脚本も担当し、プロデューサーやメインキャストも20代というまさに若手の力が結集した作品だ。
 
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幼い頃に父親からの虐待に遭い、母親亡き後親戚の家で孤独に生きてきた夏希(中村映里子)。唯一の家族である実の妹がクスリ漬けになっていることを知る借金取りの夏生(沖渡崇史)。夏希は父親(光石研)に復讐するため、夏生は妹(高橋愛実)を救うため、孤独に生きてきた2人が唯一の家族と同居し、短くて熱い夏が始まる。
 

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家族だからこその衝突はとことん激しく、でも家族だからこそ分かり合える部分はとことん優しく、役者たちの情熱がスクリーンから溢れだしてくる感じは、どちらかといえば自然体の演技やさらりとした演出が多い最近の若手が作る日本映画にはない、懐かしさすら覚える。感情がぶつかり合う一方で、ふと笑わせるような演出も施したり、ラフマニノフの調べにのせて詩的に綴ってみたり、硬軟合わせながら展開する物語に思わず入り込んでいくのだ。主演の中村映里子、沖渡崇史をはじめ、妹役の高橋愛実らの体当たりの演技や、父親役の光石研が過去の大きな過ちを犯してしまい、今では社会で何もできなくなった情けない男をこれ以上ないぐらいリアルに表現。怒りを高ぶらせる登場人物たちの中で、父親の元同僚役の池松壮亮は、少ない登場シーンながら作品の中で癒しや笑いを生み出し、心憎いばかりの存在感を放つ。
 
 

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10月28日の上映前には、中川龍太郎監督、木ノ内輝エグゼクティブプロデューサー、藤村駿プロデューサー、そして出演者の中村映里子、沖渡崇史、高橋愛実、池松壮亮と総勢7人が登壇。満席の観客から大きな拍手で迎えられた。最初に「中川って誰?と思われるかもしれませんが、名前だけでも覚えてもらえれば。これからも映画を撮っていくので、よろしくお願いします」(中川監督)、「20代のスタッフ、若手の役者が頑張って作った映画が東京国際映画祭で上映されることはとても意味があること」(木ノ内)、「不器用で、ヘタクソで真っ直ぐな人間たちがぶつかる様を楽しんでもらえたら」(藤村)、「パッションがものすごい映画」(中村)、「若さあふれる映画。若さを楽しんで生きるということを考えてもらえれば」(沖渡)、「辛く悲しい中に希望がある」(高橋)、「(作品は)まだ観れていないけれど、(中川監督は)イチオシの監督です」(池松)とそれぞれが作品の見どころや印象を紹介しながら一言ずつ挨拶。
 
 

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司会の矢田部プログラムディレクターから、非常にタフな状況に置かれたヒロインを演じたときの心境を聞かれた中村は、「中川監督が本当に暑苦しいぐらいアツい人で、他のキャストのみなさんも情熱を持って本作に挑まれていたので、彼らに負けないように取り組みました。池松君が中川監督を紹介してくれたことがきっかけで、この映画に出演したのですが、池松君にがっかりされないようにがんばろうと思っていました」と緊張の面持ちで答えると、「緊張しすぎでしょ」と池松からフォローが。
 
 
 
 
 

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一方、本作の他にも様々な監督と組み、精力的に活動している池松は、中川監督の現場についての印象を聞かれ、「本作ともう1本、中川監督と一緒に撮ったのですが、4日ぐらいしか撮影していないので、あまり分かりません」と正直すぎる答えに観客も思わず大笑い。池松のコメントを受けて、中川監督は「池松君は気を遣ってそういう風に言ってくれたと思いますが、僕の現場は空気が悪いんです。皆、言いたいことがいっぱいあると思います」と自虐コメントで笑わせた後、「今も新作を撮っており、それと同時にこのように作品をみなさんに観ていただけるのが一番いいこと。前回の舞台挨拶でネタバレしてしまい矢田部さんに怒られたので、これぐらいにしておきます。どうもありがとうございます」と舞台挨拶を締めくくった。本作はもちろんのこと、まだまだ精力的に映画を撮っていくと宣言した中川監督の今後にも大いに期待したい。
 
 
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『愛の小さな歴史』
(2014年 日本 1時間20分)
監督:中川龍太郎
出演:中村映里子、沖渡崇史、高橋愛実、池松壮亮、光石研、中村朝佳他
 
第27回東京国際映画祭は10月31日(金)までTOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ日本橋他で開催中。(江口由美)
 
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