原題 | THE YOUNG AND PLODIGIOUS T.S SPIVET |
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制作年・国 | 2013年 フランス=カナダ |
上映時間 | 1時間45分 |
原作 | ライフ・ラーセン著『T・S・スピヴェット君 傑作集』 |
監督 | ジャン=ピエール・ジュネ |
出演 | カイル・キャトレット、ヘレナ・ボナム=カーター、ロバート・メイレット、ジュディ・デイヴィス他 |
公開日、上映劇場 | 2014年11月15日(土)シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田、阿倍野アポロシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ ほか全国ロードショー(3D/2D) |
受賞歴 | 第27回東京国際映画祭特別招待作品 |
~イマジネーション豊かに描く、天才科学少年の大冒険と内なる葛藤~
魂はカウボーイの父、昆虫博士の母、アイドルを目指す姉、射撃が得意で活発な双子の弟。天才科学少年スピヴェットの家族は、スピヴェットの存在がかすむぐらい、本当に個性的な面々だ。特に日本一似ていない双子の親を自認する私からみれば、顔も似ていなければ、好きなことも正反対という設定で双子が描かれることは非常に珍しく、興味をそそられた。モンタナの田舎町から授賞式に出席するため一人で大陸横断する10歳のスピヴェットの波瀾万丈の旅と家族の物語。極彩色の映像に加え、3Dで立体的に描くのは、『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督だ。天才科学者スピヴェットの脳内世界を体感できるだけでなく、3D映像による飛び出す絵本のようなワクワク感も楽しんでほしい。
モンタナの農場で暮らすスピヴェット(カイル・キャトレット)は活発で父に愛されている双子の弟をはじめ、個性的な家族の中で観察や実験に明け暮れる10歳の男の子。銃の事故で弟が亡くなってから、家の中には重い空気が立ち込めていたが、ある日スミソニアン学術協会からスピヴェットがベアード賞を受賞したとの電話が入る。家に自分の居場所がないことを悟ったスピヴェットは、一人で家を飛び出し、ワシントンへ旅立つのだったが・・・。
冷静に物事を見定めるスピヴェットから見れば、子どもというだけで相手にしない、プライドは高いが中身のない大人たちがウヨウヨしている。一方、一人旅の途中で出会うトラックの運転手たちは、スピヴェットの勇気を称え、一人前の大人のように扱ってくれる。スピヴェットの天才的分析ぶりや、旅の模様をカラフルに描き出す一方で、学校の先生やスミソニアン学術協会の担当員、しいてはゲスト出演したテレビ局のアナウンサーまで、自己都合を押し付ける大人たちを辛辣かつ滑稽に描写。作り笑いもお見通しのスピヴェットの観察力すら視覚的に表現するところは、科学エンターテイメントのような趣も感じさせ、とてもユニークだ。
授賞式や都会に夢を抱き、田舎に見切りをつけたかのように飛び出したスピヴェットの心の中には、誰にも言えない弟の事故の真相があった。両親に愛されていた弟と自分を比べ、胸を痛めていたスピヴェットを演じたカイル・キャトレットをはじめ、息子を温かく包み込む昆虫博士の母役にヘレナ・ボナム=カーター、寡黙で不器用な父役にカラム・キース・レニーを配し、「この親がいたから、こんな天才が育ったのか」と思わせる家族の物語は楽しくかつ、意外と説得力もある。スピヴェットの旅で一番の収穫は、自分も両親に愛されていると実感できたことだろう。想像力溢れる物理化学的描写も多数登場するが、私の心を一番捉えたのは喪失を超えて再生しようとしているスピヴェット一家の姿だった。
(江口由美)
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