「AI」と一致するもの

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ndjc2017.jpg上の写真、左から、
★齋藤 栄美(さいとう えみ)(34) 『トーキョーカプセル』 
★奥野 俊作(おくの しゅんさく)(37)『カレーライス Curry and Rice』
★金 晋弘(きむ じんほん) (41)『もんちゃん』
★池田 暁(いけだ あきら) (42)『化け物と女』
★中川 和博(なかがわ かずひろ)(31)『さらば、ダイヤモンド』


【大阪での上映会のお知らせ】
■日時: 3月17日(土)18:15~
            3月18日(日)~3月23日(金)18:30 ~

■劇場: シネ・リーブル梅田map
入場料金:(5本まとめて)一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円
*全席指定

◆3月17日(土)/ndjc2017参加監督5人による初日舞台挨拶予定
3月17日(土)18:15開映 20:45舞台挨拶開始(21:05終了予定)
※登壇者は変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。

2017年/カラー/スコープサイズ/©2017 VIPO
公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/



《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》とは?

 
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次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》は、文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタートした。このプロジェクトからは、『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、『ちょき』の金井純一監督、『話す犬を、放す』の熊谷まどか監督、今年は、『嘘を愛する女』(1/20公開)の中江和仁監督や、『花は咲く』(2/24公開)、『ANIMAを撃て!』(3/31公開)など、オリジナル脚本で活躍中の監督を輩出している。


今回も、最終課題である35ミリフィルムによる短編映画(約30分)に挑んだ5人の作品を、2月24日からは東京にて、3月10日からは名古屋にて、3月17日からは大阪にて一般公開されることになった。


以下は、それぞれの作品紹介と会見でのコメントを紹介しています。


ndjc2017-mon.jpg★『もんちゃん』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:金 晋弘(きむ じんほん) 
出演:大和田 賢、眞島秀和、平尾菜々花、榎本梨乃、中村映里子
制作プロダクション:ツインズジャパン

【作品紹介】
保育園年長組に通うもんちゃんは、ママが亡くなり、慣れない育児と家事で朝からパニックになっているパパに代わり、幼い妹の面倒をみる優しいお兄ちゃんだ。パパから「引っ越しをするから、ママの遺品を箱一つにまとめなさい」と言われるが、今も届くママへのダイレクトメールを大事に仕舞い込んだり、ママの化粧品をこっそり使ってみたり、ママの面影に浸っていた。そんな時、公園で不思議な姉妹と出会い、鬱積した悲しい気持ちを開放していく術を見つけていく……。


ndjc2017-240-3.jpgキャラクターの性格や心情を言葉ではなく行動や映像で表現できる巧みさが光る。ラッセ・ハルストレム監督や是枝裕和監督の初期の頃の作品を彷彿とさせる。特に、パパの仕事仲間の女性が必死でもんちゃんを助けるシーンや、不思議な姉妹とままごとをするシーンが、30分という短編ながら物語に深みを出している。家族以外の真心に触れ、自らも他者への関心を示していく。悲しみと喪失感をのり越えようとするまだ幼い少年の健気さに心が締め付けられるようだった。

【監督コメント】
誰にでも等しく訪れるグリーフ(死別体験)について、どのように立ち直って治癒していくか、一つのパターンとして描いてみた。それは万人が興味あるテーマだと思う。

最近観た映画では、娘の後をずっとついて行く『ありがとう、ドニ・エルドマン』が面白かった。一番好きな映画は『自転車泥棒』。ダルデンヌ兄弟の作品もリアルで好き。

◎金晋弘監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3794/
 


ndjc2017-tokyo.jpg★『トーキョーカプセル』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/27分/©2018 VIPO)
監督:齋藤栄美(さいとう えみ)
出演:りりか、川合 諒、菅原大吉
制作プロダクション:アルタミラピクチャーズ

【作品紹介】
様々な人が行き交うカプセルホテルで働いている理子。東京に出てくれば何か見つかるかもと上京したものの、ボ~っとしてはパートのおばちゃんに疎まれる始末。同じく、一人の若い男性客も就活のため上京したものの失敗続きの日々を送っていた。そんなある日、金髪ウィッグの忘れ物を見つける。それを試した理子は新しい自分に戸惑うが、若い女性客に誘われて、夜の街へ繰り出すことに……。


ndjc2017-240-1.jpgまず、「東京へ行けば何とかなる」という昭和の風潮が未だに若者の間にあることに驚かされた。具体的な目的もお金もない寄る辺ない若者が、何かしら変われる自分を発見し、さらに優しく見守ってくれる人もいることに気付いていく。理子の変化を瑞々しく捉えた映像と周囲の人々の描写が、冷淡に思えた都会をたちまち暖色に染めていく。夜の街を疾走する理子を一気に捉えた映像もまた、斎藤監督の意気込みがうかがえる。暗くなりがちな物語を、ミア・ハンセンラブ監督のような明るいタッチでまとめたセンスの良さが光る。

【監督コメント】
誰も撮ったことがないカプセルホテルという独特のロケーションで物語を作ってみたかった。主演のりりかには、彼女の独特なクセを消して、ささやかな一日を少し前に進めるように普通の女の子として演じてもらった。

最近観た映画では、『スリー・ビルボード』と『わたしは、ダニエル・ブレイク』が主張がはっきりとしていて面白いと思った。映画としての見せ方も正々堂々として素敵。

◎齋藤栄美監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3796/
 


ndjc2017-daia.jpg★『さらば、ダイヤモンド』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:中川和博(なかがわ かずひろ)
出演:伊藤祐輝、伊藤 毅、佐藤祐基、橋本真実
制作プロダクション:東北新社

【作品紹介】
大学野球部からの親友で社会人になってからも仲良しの元気と隼人、亮介。3人は30歳を迎え、亮介は結婚、隼人は海外への転勤が決まり、それぞれ新たな道を歩もうとしていた。そんな中、元気は隼人への秘めたる想いを募らせ、思い切って打ち明けようとするが……。


ndjc2017-240-5.jpg3人の親友を演じた俳優たちの細やかな心情表現を引き出すことに成功している。男同士の友情を、元気の隼人への恋愛感情を中心に、ストレートの隼人の戸惑いや、気まずくなった二人を思い遣る亮介の優しさなど、後味のいい爽やかさを感じさせる。元気が隼人の気持ちを探ろうと隼人の言動を注意深く伺うシーンや、思いのたけを告白するシーンなど、緊張感をもった映像に惹き付けられた。

【監督コメント】
その人がどういう人なのか認めることがテーマ。自分も登場人物と同じような年代になって、何を認めて、何を大切にしていくのか、という思いを等身大の人物像で描いたつもり。

一番好きな映画は『ジュラシック・パーク』。最近観た映画では『スリー・ビルボード』と『デトロイト』。この2本は全く毛色の違う作品だが、いずれも俳優の力量が必要とされる。特に『デトロイト』は、ドラマ性を持たせずに事件だけを描いていくタイプなので、今っぽいと感じた。

◎中川和博監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3798/ 
 


ndjc2017-curry.jpg★『カレーライス Curry and Rice』
(2018年/モノクロ/デジタル/スタンダードサイズ(ビスタサイズ仕様)/30分/©2018 VIPO)
監督:奥野俊作(おくの しゅんさく)
出演:井之脇海、安藤ニコ、松浦祐也、矢柴俊博、岩谷健司
制作プロダクション:東宝映画

【作品紹介】
23歳の大学生・満のもとに、フランス人の友人の妹で20歳になる留学生・ジャンヌがやってくる。翌日には京都へ行くというジャンヌを、満は一晩面倒をみることになる。そこで、ジャンヌをアルバイト先の先輩で同郷の茂が住む古民家へ連れていく。茂は自慢のカレーライスでジャンヌをもてなそうとしていたが、かつて関わっていた暴力団に押し掛けられ……。


ndjc2017-240-2.jpg満とジャンヌの恋愛映画かと思いきや、淡々とした渇いたタッチのモノクロ映像で、意外にもサスペンス映画だということを見終えてから知る。あれほどお腹を空かせていたジャンヌがカレーライスを食べようとすると邪魔が入り、結局彼女が初めてのカレーライスを食べるシーンがない。茂と暴力団との関係性もよく分からないままで、消化不良になりそうなカレーライスだった。

【監督コメント】
人生における不条理さと素晴らしさを自分なりに作ってみた。人間に対する距離感や眼差しをそのまま表現。モノクロにしたのは、非日常というか、脚本も淡々と渇いたトーンで描いてみたかったから。

最近観た映画では『ムーンライト』が男同士の想いが切なくて心に沁みた。カラーブレードも研究して撮ったようで、美しい映像にも感銘。ウォン・カーワイ監督作をオマージュしているようで素晴らしかった。黒人映画では収まらない普遍性がある。

◎奥野俊作監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3803/
 


ndjc2017bakemono.jpg★『化け物と女』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:池田 暁(いけだ あきら)
出演:熊倉一美、きたろう、有薗芳記、芝 博文、よこえともこ
制作プロダクション:東映東京撮影所

【作品紹介】
ある小さな町役場の受付で働く待子は、一人暮らしの孤独な日々を送っていた。昼食時には同僚とは別のテーブルに座り会話もなく、婚姻届のような幸せな受付は極力邪魔をして延期させるという始末。ある日、町に妖怪が出没するという騒動が起きる。妖怪退治に躍起になる町長や警察。そんな中、待子は帰宅途中に暗闇から聞こえる三味線の音色に惹き寄せられ、人々が恐れる妖怪に遭遇する。


ndjc2017-240-4.jpg人間に恐れられる異形のものと孤独な女性との運命的出会いといえば、今年のアカデミー賞4部門に輝いた『シェイプ・オブ・ウォター』を思い出す。ただ一人、化け物を恐れず愛情をもって接する純愛もの。本作も面白そうな物語だが、役場や食堂で同じ人物が同じセリフを繰り返すフレーズには閉口してしまった。化け物より怖い人間のエゴをブラックユーモアで強調しているのだろうが、肝心な人物描写が希薄なので、待子と化け物を結び付ける説得力に欠ける。化け物が奏でる三味線の音色だけはもの哀しく心に響いた。

【監督コメント】
基本的に化け物と女の関係性を描いた。その中で町長や町の人々が化け物に対してどういうことをしたのか。化け物を人間に置き換えて考えてもらえればいいかなと。

チェコのアニメ作家ヤン・シュヴァンクマイエル監督が好き。実写も多くて、80歳を越えても新しいことに挑戦していることに驚いた。アニメは結構自分の思った通りに撮れるのではないかと思う。ジャンルを問わず、映画も芝居も観ている。

◎池田暁監督の作品の詳細はコチラ→ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3802/
 


(河田 真喜子)

 

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「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』ポストカード(3枚セット) プレゼント!

  

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■提供: 松竹

■プレゼント人数: 3名様

■締切日:2018年3月11(日)

公式サイト: http://shiawase-enogu.jp/

 

2018年3月3日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー
 

 

 


  カナダで最も有名な画家モード・ルイスが教えてくれる、
人生で大切な喜びとは──  
 


siawase-enogu-550.jpg小さな港町で、カナダの美しい四季と動物を色鮮やかに描き続けた画家モード・ルイス。その素朴ながら愛らしい絵は、今もオークションで500万円を超える値がつく、カナダで最も愛された画家である。そんな彼女を不器用ながらも献身的にサポートしたのが、夫のエベレット。孤独だった2人が運命的な出会いを経て、夫婦の絆と慎ましくも確かな幸せを手に入れた感動の実話が映画化!


わずか4メートル四方の家で絵を描きながら暮らすモードを演じるのは、『ブルージャスミン』でアカデミー助演女優賞にノミネートされた実力派サリー・ホーキンス。妻への愛と尊敬の念を無骨に隠すエベレットに、『6才のボクが、大人になるまで。』などでアカデミー賞ノミネート常連組のイーサン・ホーク。一風変わった夫婦の愛を繊細に描くのは、『荊の城』のアシュリング・ウォルシュ。

絵と夫の愛に包まれたモードの生き方が、「どんな人生でも自由な精神で楽しめば、素晴らしいことが待っている」と教えてくれる感動作!


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監督:アシュリング・ウォルシュ『荊の城』
出演:サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク
2016年/カナダ・アイルランド/英語/116分/配給:松竹/原題:MAUDIE
後援:カナダ大使館 アイルランド大使館
©2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

2018年3月3日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー

 

 

 (プレスリリースより)

 

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リアル宇相吹・松坂桃李のマインドコントロールに、白石監督が驚愕のリアクション!『不能犯』大ヒット御礼舞台挨拶
(18.2.3 TOHOシネマズ梅田)
登壇者:松坂桃李、沢尻エリカ、白石晃士監督  
 
「愚かやねん、人間は――」が決め台詞。松坂桃李が絶対に立証不可能な方法でターゲットを殺す主人公・宇相吹正を演じて話題となっている白石晃士監督最新作の『不能犯』が、2月1日から絶賛公開中だ。宇相吹が唯一コントロールできない、正義感溢れる女刑事 多田友子役を沢尻エリカが演じる他、宇相吹に翻弄される人々に新田真剣佑、間宮祥太朗、テット・ワダ、菅谷哲也、岡崎紗絵、真野恵里菜、忍成修吾、水上剣星 水上京香、今野浩喜、堀田茜、芦名星、矢田亜希子、安田顕、小林稔侍という豪華キャストが出演する【立証不可能犯罪】スリラー・エンターテインメントになっている。
 
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2月3日節分の日にTOHOシネマズ梅田で行われた大ヒット御礼舞台挨拶では、松坂桃李、沢尻エリカ、白石晃士監督の3人が客席から豆まきをしながら登場。大喜びの観客に笑顔で応えながら、登壇した。
 

冒頭のあいさつで、白石監督は前日に尿路結石で救急搬送されたことを告白。「体の中の小さい豆を出させていただきました。誰かの体の中に…」とオカルト系作品に定評のある監督らしいコメントで笑いを誘った。

 
 
 
 

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2月1日に初日を迎えた感想を聞かれた松坂は「ようやく公開できたという感じでうれしい。本当に撮影期間より、番宣期間の方が長かった」と感慨深げに切り出し、「(バラエティーで)色々な芸人さんに可愛がってもらった。シソンヌという芸人さんと即興でコントを披露したり…。シソンヌさんにも感謝したいし、その番組の司会者、有吉さんにも愛を感じましたね」と、番宣を通じてのエピソードを語った。

 
 
 
 
 
 

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一方、オファーがあった時の感想を聞かれた沢尻は「脚本を読んで、すぐにその世界観に入っていけた。元々サスペンスやアクションが大好きで、今回は女性刑事でアクションのある役どころだったので、すぐにオファーを受けた」と振り返る一方、アクションシーンの撮影は「現場でアクションをすると、思った以上に難しくて体が動かない。こんなに大変なんだと思った」と、アクションシーンの洗礼を受けた模様。そんな沢尻の演技について、白石監督は「終盤、病院で走るシーンは、冒頭の短い走るシーンのテイクを重ねている時に痛めた足で、走りにくい靴にも関わらず、相当我慢してがんばってもらった」と語り、その女優魂を称えた。
 
 
 
ここで話は大阪の話題に。大阪で一番行きたい場所は?という問いに「(NHK朝ドラ『わろてんか』で共演の)兵動さんにフグを食べさせてもらったお店が、美味しかった~。お酒を飲んで、すべらない話をたくさんしてくれ、すごく贅沢な時間だった」(松坂)、「USJ大好きです。また行きたい」(沢尻)、「梅田食堂街にあるたこ焼屋、来るたびに食べてから仕事に向かう」(白石監督)。
 
 
 
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朝ドラの撮影で大阪に滞在していた松坂は大阪の人のエピソードとして、ドラマで共演の濱田岳から聞いた“上下真っ赤な下着姿で信号待ちしている40~50代の女性”の話を披露。大阪人はバラエティー豊かでノリがいいという“マインドコントロール”にかかっているのでは?と無理やりのフリから、「いきなり誰に〝バン!“と拳銃撃ちしても、必ず反応してくれる」と、本日のクライマックスへ。
 
事前に白石監督から様々なパターンの“撃たれ方”を演出された観客に向けて、松坂が「バーン!」と舞台上から仕草をすると、一番大きなリアクションをしたのはなんと隣の白石監督。舞台上に倒れ込み「ビックリした!」と、昨日の体調不良を感じさせないハイテンションで、松坂も沢尻もビックリ。観客を巻き込んでのマインドコントロールの成功ぶりに、「大阪の人は本当にやさしい!」と松坂も感謝しきりだった。
 
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ホラー顔で変幻自在の白石監督に刺激され、満面の笑顔でフォトセッションを行った松坂と沢尻。最後に「宇相吹というキャラクターが何を目指そうとしていたのか、思い描いてほしい」(白石監督)、「すごく思い出になった作品。また一人でも多くの人に観てほしい」(沢尻)、「東京の人では思いつかないような忌憚なき感想をぜひSNSにあげて!」(松坂)と挨拶。盛りだくさんの舞台挨拶を締めくくった。
 
 
明るい舞台挨拶とは裏腹に、攻略できない難敵、宇相吹が醸し出すダークな雰囲気が覆う『不能犯』。宇相吹を演じる松坂、そしてアクションにチャレンジした沢尻と、それぞれの新しい魅力を発見できる作品だ。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『不能犯』
(2018年 日本 1時間46分)
監督:白石晃士 
原作:『不能犯』(集英社「グランドジャンプ」連載 原作:宮月新/画:神崎裕也)
脚本:山岡潤平、白石晃士
出演:松坂桃李 沢尻エリカ 新田真剣佑 間宮祥太朗 テット・ワダ 菅谷哲也 岡崎紗絵 真野恵里菜 忍成修吾 水上剣星 水上京香 今野浩喜 堀田茜 芦名星 矢田亜希子 安田顕 小林稔侍
主題歌:GLIM SPANLY「愚か者たち」(UNIVERSAL MUSIC)
配給:ショウゲート
公式サイト → http://funohan.jp/
©宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会 
 
 

siawase-enogu-550.jpg《第28 回シネフィスト・サドバリー国際映画祭/第6 回モントクレア映画祭/第12 回バンクーバー映画祭/ウィンザー国際映画祭》

\世界の映画際で観客賞を受賞した感動作!/


丸福珈琲店×映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」


この度、カナダで最も有名な画家モード・ルイスと夫の人生を描き、世界の映画祭で観客賞を受賞した感動作「しあわせの絵の具愛を描く人 モード・ルイス」3月3日(土)より全国公開する運びとなりました。

本作は、小さな港町で、カナダの美しい四季と動物を色鮮やかに素朴で愛らしい絵を描き続けた画家のモード・ルイスと、不器用ながらもモードを献身的にサポートした夫のエベレット。はじめは孤独だった2人が運命的な出会いを経て、夫婦の絆と慎ましくも確かな美しい色にあふれた幸せな日々を手に入れた、感動の実話です。

公開に際して、創業から80 余年。大阪ミナミ・千日前に本店を置き、こだわりの珈琲が頂ける老舗の喫茶店として長きにわたって人々に愛され続ける丸福珈琲店とのタイアップが決定致しました。


siawase-enogu-marufuku-logo.jpg★期間:2 月15 日(木)~3 月31 日(土)
① モード・ルイスの色彩豊かな絵をイメージしたタイアップメニュー「しあわせの絵の具」(ドリンク付¥1580)を販売
siawase-enogu-marufuku-cake.jpg② タイアップメニューご注文のお客様に丸福珈琲店×「しあわせの絵の具」オリジナルポストカードをプレゼント
③ 「しあわせの絵の具」ご鑑賞の映画チケット半券をご提示のお客様にドリップ珈琲1P をプレゼント

★実施店舗:
千日前本店、上本町YUFURA 店、阪急西宮ガーデンズ店、ルクア イーレ店、大丸心斎橋店、近鉄あべのハルカス店、ハービスPLAZA 店、中之島ダイビル店(③のみ実施)、堺筋淡路町店、JR 高槻店、八尾店、HEP ナビオ店、銀座喫茶室、ヨドバシAKIBA 店、東急百貨店渋谷本店、川崎アゼリア店、東急百貨店たまプラーザ店、羽田空港店、MARUFUKU COFFEE TERRACE(タカシマヤゲートタワーモール内)、名古屋三越栄店


『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』 

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監督:アシュリング・ウォルシュ
出演:サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク、カリ・マチェット、ガブリエル・ローズ
原題:MAUDIE 2016 年/カナダ・アイルランド/英語/116 分
©2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc. / Parallel Films

公式サイト: http://shiawase-enogu.jp/

2018年3 月3 日(土)より新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマ、東劇、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマほかにて全国公開!

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「清貧の気持ちで、故郷の失われていく文化を守り、伝えていく」大林宣彦監督、戦中戦後の体験を語る『花筐/HANAGATAMI』舞台挨拶@大阪ステーションシティシネマ
 
壇一雄の原作を基に、デビュー以前に脚本を書き上げていたという大林宣彦監督が、40年の時を経て、佐賀県唐津市を舞台に映画化した『花筐/HANAGATAMI』。大阪ステーションシティシネマで初日を迎えた1月27日(土)に、大林監督が上映後の舞台挨拶で登壇した。まずは大きなスクリーンに、そして満席の観客に感謝の意を表した大林監督は、手にしているステッキから往年のミュージカルスター、フレッド・アステアを引き合いにだし、「フレッド・アステアのようにタップダンスが踊れればいいが、さすがに今日は踊る訳にはいかないので」とおどけてみせると、映画と戦争との関係(ハリウッド映画の成り立ち)から、軍国少年時代の話、敗戦後8ミリで映画を撮るに至った経緯と『花筐/HANAGATAMI』に凝縮された思いの源を語り明かし、最後はガンと闘っている今の心境を明かした。その内容をご紹介したい。
 

 

■映画は戦争を記録し、その記録をより深く記憶するために生まれた~ハリウッド映画の起源。

フレッド・アステアといえば私たちはアメリカのハリウッド大スターとして覚えているが、本当はヨーロッパの人。その話の続きで言えば、今でもハリウッド人たちの8割はユダヤ系の血筋を引いている。そもそもハリウッドというのは、エジソンが発明した活動写真のトラストからはみ出したユダヤ系の人がアメリカの東海岸から逃れ、アメリカ大陸を横断し、当時は雨一つ降らなかったカリフォルニア・ウエストコーストの地に作ったのがハリウッドという映画の街。そして、ハリウッド映画は、第一次大戦、第二次大戦の歴史と共に育ってきた。映画は戦争を記録するため、その記録をより深く記憶するために生まれたことが歴史的にも言える。ハリウッドに集まった人が、二つの大戦で国が滅び、家族がホロコースト等で斬殺され、自らもさすらい人になった。かつては新天地だったウエストコーストに居をさだめ、ここなら憧れの自由と映画に満ちた国を作ることができる。それを映画で作るというのがハリウッド映画の起源なのです。

 

■フレッド・アステアらのミュージカル映画は占領政策の一環。アメリカの人種問題を描いた『駅馬車』『風と共に去りぬ』は上映されなかった。

敗戦後、当時占領国のGHQの指示で、「日本人は精神年齢12歳だから」と、随分日本人をバカにした話ですが、日本人を育てるにはアメリカ映画を見せるのが一番いいということで、占領政策で見せてくれたのがアメリカ映画。でも現実には戦勝国のアメリカ映画はほとんど上映されなかった。『駅馬車』『風と共に去りぬ』は1939年には出来上がっていたのに、私たちが見ることができたのは、日本独立後の1952年になってから。アメリカの国内の戦争(南北戦争)を題材に、奴隷制度にも関わる作品なので、「アメリカの恥部を見せてはならない。人種差別があることを日本に教えてはいけない」ということで、私たちが見ることができたのは、ヒューマニスティックな映画や、フレッド・アステアやジーン・ケリーが登場するようなアメリカ得意のミュージカル。我々を食べてしまう青鬼のように怖い奴と教えられてきたアメリカ人が、アメリカ映画を観て、なんと白い、お尻の大きな人なのだろうと一気に好きになったものでした。
 

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■軍国少年が体験した敗戦。自分の気持ちの中で人が生きたり死んだりしている。

満7歳で日本が戦争に負けた。本当はそこで大人たちは自決をし、その前に子どもたちを殺してくれる約束だった。戦争中は、山本嘉次郎監督の日本がハワイの真珠湾をやっつけた映画を夢中になってみていた。パンフにもあるが、当時、零戦に乗り、空からなすび爆弾を落とすと、船に乗ったルーズベルト大統領とチャーチル大統領がキャー助けて!という自筆のマンガを慰問袋に入れて、母が戦地の父に送ってくれていた。そういう軍国少年だったから、戦争に当然勝つと信じていた。ところがその戦争に日本が初めて負けてしまった訳です。子どもに何が分かるかと侮るけれど、子どもぐらい大人を観察し、大人の世界をよく知る存在はいない。当時の4、5歳の私もそう。この大人は自分にとって役立つことをやってくれるかどうかをしっかり見抜き、大人を識別して生きている。戦争中の子どもだから、物心がついたときから、戦争ごっこの中で生きている。名前を知っている十人ぐらいの人が必ず戦争で死んだと聞かされる。無人の廊下を見ると、廊下の光と影の中に、戦死をした隣の鳥屋の兄ちゃんが立っている。肺病で戦争に行けず、非国民と言われ、列車に飛び込み自死した兄ちゃんが立っている。自分も大きくなれば大日本帝国の国民として戦争に行き、爆弾を抱えて死ぬ姿が、当時から見えていた。だから人が生きている、死んでいるという実感はあまりなく、生きていると信じていればそこに居てくれるし、死んじゃったと思えば、死んだ人としてそこに居る。光と影の気配の中に、自分の気持ち次第で、人が生きたり死んだりしている。私にとって、生きている人と死んでいる人の実感がないのです。

 

■「日本が歴史の中ではじめて平和国家を託された最初の大人」として大人になった世代。

むしろ敗戦で大人たちは死んでいたはず。その前に僕の事を殺していたはず。それなのに、日本が戦争に負けた途端、大人たちは自ら死なないし、子どもを殺さない。平和だと浮かれている。こんな大人は信じられない。戦前派、戦中派でもないが、戦後派にもなれなかった子ども。敗戦後の日本の大人が一番信じられなかった。子どもだから余計に生きて今いること、平和な時代にいることが信じられなかった。それでもぼくは生きてしまった。昭和10~15年生まれは、「日本が歴史の中ではじめて平和国家を託された最初の大人」として大人になった世代。そこには何のお手本もない。10年生まれの寺山修司、立川談志、ミッキー・カーチス…こういう人たちが中途半端なところで生きてきて、そのうち戦争の話はなかったことになっていた。
 

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■平和の時代の映画を作るならキャメラも選ばなければいけない~8ミリキャメラに込められた思い。

私は父親が残してくれた8ミリキャメラがあった。私が映画の道を歩みたいというと、父は「人間、心に決めた道を一生まっしぐらに進むことこそ平和の証。医学のことは分かるけれど、映画の事は分からないから、せめて大切に使っている8ミリキャメラを譲るから、これを持って東京に行きなさい」。さすがにこんなもので映画は撮れないと思ったが、これが父親の遺言ならと思ったのです。僕は映画が大好きで、1960年代までは日本で見ることのできる世界中の映画を観た人間。そして、僕が観てきた35ミリの映画は権力の機械を使って撮っていた。機械にも必ず権力がまとわりついている。平和の時代の映画を作るなら、キャメラも選ばなければいけない。父が譲ってくれた8ミリキャメラはアマチュアの庶民のキャメラだが、権力ではなく、殺される側が持っていたもの。ぼくはこれで身を立てようと思いました。

 

■『花筐』は一つの集大成~映画作家大林宣彦誕生秘話。

当時8ミリで身を立てようと思っていたのは高林陽一と飯村隆彦の三人だけ。しかも、「新しい時代だから映画は映画館だけではなく、画廊に白いキャンパスを置いて、おれたちの8ミリを上映したら発表できるんじゃないかな」。試しに銀座の画廊でやってみたら、銀座4丁目からお客さんが並んでくれた。美術手帖などが新しいフィルムアーティストの時代がきたと、私の名前が初めて公に出た。当時は横文字の職業名が日本ではなかったので、フィルムアーティストとは名乗れない。映画監督も、松竹の映画監督部の小津監督など、今で言う職能で、フリーのどこにも属さない人は名乗れない。おれは絵描きが一人で絵を描くように、一人で映画を作っていく人間だから、映画作家と言えるのではないか。それで、20歳の時に映画作家と名乗り、それ以来60年映画作家として生きてきた。それが『花筐』として一つの集大成になっていった。この映画は、私の父親、黒澤明、小津安二郎、木下惠介、溝口健二と同世代の小説家、壇一雄さんが書いた小説が原作です。
 

■清貧の気持ちで、故郷の失われていく文化を守り、伝えていく。

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8ミリで撮っていてもそれで食えるわけではないから、将来小説家として身を立てようと思っていた。私の妻は、生涯食えない作家の妻になるという覚悟で結婚し、生涯映画プロデューサーとして私を支えてくれた。食うための仕事なんて決してしない。金に身を売るぐらい哀れなことはない。美しく、賢く生きようとすれば、食えないのは当たり前ということで、当時は清貧で当たり前という教えの中で生きてきた。今でも清貧の気持ちで、自主映画を作り、故郷の失われていく文化を守り、それを伝えていくことが、それを知っている最後の世代の務めと思い、故郷映画を作りました。
 
 

■ガンになったおかげで分かったのは、「私も地球の中でのガンだった」

私の体の中にガンという同居人がいるんですよ。可愛いやつで。「お前はいいものを食べて長生きしようと思っているだろうけど、お前は宿子で俺が宿主だ。宿主の俺が死ねば、お前も死んだようなものだから、お前も長生きしたかったら、宿主の俺と長生きしようじゃないか」という話をするのだけれど、そこでハッと気が付く。この私も地球の中でのガンではないかと。私自身美味しいものを食べたり、好き放題してきたけれど、温暖化や色々なことを招いてしまい、宿の地球を滅ぼそうとしていると学んだ。少しは我慢して地球という宿を大事にしないと、人間たちも滅びてしまうということがガンになったおかげで分かり、余命3カ月と言われて、この映画を完成させる力となった。
(江口由美)
 

『花筐/HANAGATAMI』
(2017年 日本 169分)
監督・脚本・編集:大林宣彦
出演:窪塚俊介、長塚圭史、満島真之介、柄本時生、矢作穂香、門脇麦、山崎紘菜、常盤貴子、村田雄浩
1月27日(土)~大阪ステーションシティシネマ、2月3日(土)~京都みなみ会館、3月3日(土)~元町映画館他全国順次公開
公式サイト⇒http://hanagatami-movie.jp/
(C) 唐津映画製作委員会/PSC 2017
 

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ジャン=ピエール・レオと「生きていることは素晴らしいという映画にしよう」
『ライオンは今夜死ぬ』諏訪敦彦監督インタビュー
 
ヌーヴェルヴァーグの申し子、ジャン=ピエール・レオを主演に迎えた諏訪敦彦監督の最新作、『ライオンは今夜死ぬ』が20日(土)からYEBISU GARDEN CINEMA、1月27日(土)からシネ・リーブル梅田、2月3日(土)からシネ・リーブル神戸、近日、京都シネマ他全国順次公開される。
 
2012年、フランスのラ・ロッシュ=シュル=ヨン国際映画祭で自身のレトロスペクティブ上映が行われた際に、同じく特集上映され、来場予定だったジャン=ピエール・レオから「会いたい」と連絡をもらったのが出会いのきっかけだったという諏訪監督。今回はフランスで映画作りに興味のある子どもたちを募集。ワークショップを重ねた後、出演者に選ばれた子どもたちが劇中で映画作りをするという試みも取り入れた。「映画を撮っていて初めて楽しいと感じた」という本作の諏訪監督に、ジャン=ピエール・レオとの映画づくりから、現在フランスで起こっているヌーヴェルバーグ的動きまで、縦横無尽に語っていただいた。
 

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■学生時代から大好きなジャン=ピエール・レオは、「特殊な存在」

―――ジャン=ピエール・レオさんとの初対面は、どんな感じでしたか?
諏訪監督:事前に送った僕の作品のDVDを全部観てきてくれ、実際会った時には「良かったよ」とジェスチャーしてくれました。一緒に食事をした時も、カンヌにフランソワ・トリュフォーと来た時の話等、昔話をたくさんしてくれ、なんとなく一緒に映画を作りたいという雰囲気になっていたし、ジャン=ピエール・レオ(以降ジャン=ピエール)本人にお会いして、改めて「この人を撮れたら面白いな」と思いました。僕は学生の時、『男性・女性』のジャン=ピエールが、煙草を投げてくわえるのを真似していたぐらい大好きで、『不完全なふたり』の時に、ワンシーンだけの出演を考えましたが、自粛したのです。その『不完全なふたり』をジャン=ピエールは、「ヌーヴェルヴァーグみたい」と評し、何度も見たと言っていました。ジャン=ピエールもそこで関心を持ってくれたのだと思います。
 
―――どのようにして本作のアイデアを出したのですか?
諏訪監督:僕は自分の頭の中だけで作り上げるより、俳優と会って雑談する時間が必要。僕がパリに行くこともあれば、3年前ジャン=ピエールが初来日した時にも会って話をし、少しずつどんなことをするか探っていきました。僕の中では割と早い段階で幽霊の存在が出てきたんですよ。
 
―――なぜ幽霊が出てきたのですか?
諏訪監督:ジャン=ピエールはとても特殊な存在です。一般的な俳優は、どんな役でもやるし、いい俳優はどんな役でも「こういう人がいるかもしれない」というリアリティを与える。ロバート・デ・ニーロのデ・ニーロアプローチは有名ですし、こういう人がいると思わせるのですが、ジャン=ピエールの場合は「現実にこんな人はいない。映画の中にしかいない」という感覚をもたらします。演じているのかどうかよく分からないギリギリのところにいる。そういう俳優がどの映画にもはまるかといえば、現代の一般的な映画のリアリティにはそぐわないです。

 

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■ジャン=ピエール演じる俳優と幽霊との恋物語、子どもたちと映画を作る。二つの映画的欲望が組み合わさった作品。

―――ジャン=ピエールさんと釣り合うには、幽霊ぐらいしかいないということですね。
諏訪監督:ジル・ドゥルーズという哲学者が「非職業的職業俳優」という風にジャン=ピエールのことを呼んでいましたが、そういう特殊性があります。チャップリンの『街の灯』のように、若い女性と組み合わせようかと思いもしましたが、どうもしっくりこない。幽霊なら釣り合うのではないかという直感が働きました。幽霊と普通に暮らしている男です。一方で、小学生とのワークショップを通じて、彼らに映画を撮らせるという映画的活動を行ってきて、いつか子どもたちをスタッフにして映画を撮りたいと考えていたのです。例えば脚本チームを作って映画を作るとか。その二つの映画的欲望が一つにまとまり、老人と子どもの組み合わせの映画もあり得るのではないかと発展していきました。
 
―――ジャン=ピエールさんはあまり子どもとの共演作はないですが、現場ではどのような反応をされていたのですか?
諏訪監督:僕の知る限りでも、ちゃんと子どもと共演したのはほとんどないと思います。ただ、どうすれば子どもとジャン=ピエールが一つの物語になっていくのか。子どもと一緒に映画を作るのが面白かったので、今回は映画の中で子どもたちが映画を作る設定にし、本当に自分たちの映画を作らせようと決めていきました。最初ジャン=ピエールが役者という設定ではなかったのですが、やはり普通の役はできない。今年公開される『ルイ十四世の死』では王様を演じていますから。最終的にはジャン=ピエールに俳優役で了承してもらいました。
 
 
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■ジャン=ピエールは、子どもたちと一緒だと、見たことのないような表情を見せる。

―――全体的には年齢を感じさせますが、瞳は少年のまま。子どもたちとのシーンでも、脅かしたり、追いかけているのがとても楽しそうで、子どもみたいに映る時もありました。
諏訪監督:僕も最初は、「こんなに年をとったのか」と思ったし、まだ元気な年頃なのに、彼には深いシワが刻まれ、消耗し、傷ついている雰囲気がありました。一方、話している最中にふっと笑うと、『柔らかい肌』のアントワーネル少年の瞬間がすぐに現れる。実際のジャン=ピエールは、子どもですよ。彼の奥さんは、「彼は一度だって、責任ある大人であった試しがない」と言っていました。子どもたちとの距離を縮めるためにリンゴを投げることを提案したら、本番でジャン=ピエールは剛速球でリンゴを投げつけたので子どもたちもビックリしていました。多分子どもたちと対等なのでしょう。犬でも子どもでも同じ共演者という感覚です。子どもと一緒にスープを飲むシーンで即興のやりとりがあるのですが、ジャン=ピエールは今まで見たことのないような表情をしていたんです。子どもとやりあったから出てきた、彼の新しい表情なのではないでしょうか。
 
 
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■映画は現実ではないが、映画でしか体験できない現実がある。この作品はある意味で「カーニバル」。

―――幽霊の登場は、年寄りが感傷的な気分に浸るという意味合いもあるのでしょうか?
諏訪監督:僕が映画を作り始めた頃は、映画の中で起こっていることは嘘くさいと思っていました。自分が知っている世界ではこういう風に話さないし、人間だってもっと訳のわからないものだけど、そういうものに映画で触れられないのかと、よりリアリスティックなものになっていきました。でもある時点で、映画は現実ではないが、映画でしか体験できない現実があるはずだと気付きました。必ずしもリアルである必要はないし、現実的である必要もない。映画の現実があればいい。だから、現実にはない幽霊という存在が映画としてのリアリティに繋がりました。
 
今回の映画はある意味でのカーニバルだと思いながら撮っていました。ロシアのミハイル・バフチンが著書「ドストエフスキーの詩学」で「ドストエフスキーの新しさは、新しい小説の形を発明した。それはカーニバルだ」と書いています。誰がいつ、何を言うか分からないし、ここで何か起これば、また別の場所で何かが起こる。それは演じる、演じられるとか、ましては舞台と客席の区別もなく、演出家もいない。それを統制している人もいない。観客が演者になる可能性もある。それは鑑賞されるのではなく、生きられるものだと。カーニバルではヒエラルギーもひっくり返されます。この映画では、子どもたちが「くそじじぃ、いつまで寝てるんだ」という無礼な事を言ってもいい。大人が考える常識的な社会に幽霊はいないけれど、そこからこぼれおちている場所があります。子どもたちがいる場所だけでなく、ジャンも年をとり、常識的な大人たちのいる場所から外れた場所にいます。彼自身、70代は「非理性的な年頃」と言っていますが、子どもも含めてそういう人たちが作っていく映画ですね。
 
―――『ライオンは今夜死ぬ』はタイトルでもあり、劇中でも子どもたちと歌っていますが、なぜこの歌を選んだのですか?
諏訪監督:ジャン=ピエールに好きな歌を聞くと、この歌でした。フランスでは皆知っている歌で、アンリ・サルバドールがヒットさせています。内容が白紙の段階で、タイトルだけ既にこれだと決めていました。シナリオを書いていく時点で、ライオンを実際に登場させたのもある種のいたずらのようなもの。カーニバルですから、常識的な世界をひっくり返すという意味もありました。ジュールという男の子の父親的シンボルでもあるでしょうし、ジャン=ピエールとも重なるでしょうし、子どものイマジネーションのシンボルかもしれない。色々なものが響き合い、現れてくるのが面白いですね。 
 
―――ポーリーヌ・エチエンヌ演じるジュリエットとジャンのシーンは、台詞も非常に詩的で印象深いですね。

 

諏訪監督:ジュリエットのシーンは、ジャン=ピエールの父が書いた戯曲をダイアログで使っています。一部男女をひっくり返している場面もありますが、彼は父の台詞を演じていて、感慨深かったと思います。それまで彼にとっての父はトリュフォーで、カンヌで名誉賞を獲った時の第一声が「私はカンヌで生まれた」でした。最近、僕には「精神的な父とフィジカルな父、僕には二人の父親がいる」と言いますね。

 

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■「生きていることは素晴らしいという映画にしよう」南仏の明るさに、イキイキとした生命の輝きを感じて。

―――南仏らしいまばゆい陽光が全編に渡って広がり、湖のシーンも皆もがキラキラしているのが印象的でした。
諏訪監督:およそ幽霊が出てくる明るさじゃありませんね(笑)『山椒大夫』のような陰影のある世界ではなく、本当にキラキラした南フランスの光ですね。南に行くというのはフランス人にも映画的な意味があります。ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』はマルセイユに向かっていく話ですし、『勝手にしやがれ』は逆にマルセイユからパリに向かう話です。ジャン・ピエールはパリが似合う人で、南仏だと明るすぎるのですが、イキイキとした生命の輝きを感じていただけたと思います。
 
―――死をモチーフにした場面はありながらも、生きる希望を感じましたね。
諏訪監督:ジャン=ピエールと「死」の話はよくしましたが、暗い話は嫌で、「もうその話は止めよう」と。困難に耐えてきた人は暗い話はしたくない。それに、福島原発事故以降、世界的にも困難な時代になってきていると思います。だから、映画では明るく振る舞おう、できるだけ楽しくやろう、生きていることは素晴らしいという映画にしようと、話しました。普通の俳優はカメラの存在を消すように演じるのですが、ジャン=ピエールはカメラが恋人なので、カメラに向かって演技をします。

 

■ヌーヴェルヴァーグの時代のように、ユキの成長した姿を見せる。

―――前作『ユキとニナ』で出演したユキ役の女の子も出演し、成長した姿を見せてくれました。
諏訪監督:今は女優ではありませんが、快く出演してくれました。僕の現場には慣れているので、すごくやりやすかったですね。ジャン=ピエールもアントワーヌ役で別の映画に出演していますし、年齢を重ねるたびに、成長した姿でスクリーンに現れるので、ユキもこんなに大きくなったというのを作品に出て残していきたかった。ヌーヴェルヴァーグの時代は、役者がお互いの映画に出演していましたが、そんな意味で、これからもユキに出演してほしいですね。
 
 
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■フランスの若い世代は、現在のヌーヴェルヴァーグ。この時代に一緒に映画を作っている仲間として、色々な人と繋がれるのが映画のいいところ。

―――ヌーヴェルヴァーグといえば、撮影のトム・アラリさんと、兄で監督(本作では俳優)のアルチュール・アラリさんも本作で一緒に仕事をしていますね。
諏訪監督:撮影監督のトム・アラリはすごく注目していただきたい人物です。兄の『汚れたダイヤモンド』監督、アルチュール・アラリは、本作に出演しています。フランスのこの世代は正に現在のヌーヴェルヴァーグで、ギヨーム・ブラックの撮影監督もトム・アラリですし、若いフランスのジェネレーションと仕事ができたのは、今回うれしかったですね。僕は基本的に長回しが多かったのですが、それを知った上でトムは切り返しや、カット割りなどを提案してくれました。照明担当も仲間同士で映画を撮るところから始まっているので、助手経験がない。だからすごく大胆です。そこもヌーヴェルヴァーグらしいですね。どんどん新しいアイデアが湧いてきて、不自然なことに対する怖さもない。ヴァンサン・マケーニュ周辺の人たちも面白いですし、今回ギヨーム・ブラックに編集を見てもらったのも、ヌーヴェルヴァーグ的な仲間意識が表れていると思います。色々な人と繋がれるのが映画のいいところですね。今、この時代に一緒に映画を作っている仲間なのですから。
(江口由美)
 

<作品情報>
『ライオンは今夜死ぬ』
監督・脚本:諏訪敦彦
出演:ジャン=ピエール・レオー、ポーリーヌ・エチエンヌ、イザベル・ヴェンガルテン
配給:ビターズ・エンド
2017年 / フランス=日本 / 103分 / ビスタ
2018年1月20日~、YEBISU GARDEN CINEMA、1月27日~テアトル梅田、2月3日~シネ・リーブル神戸、順次京都シネマ にて公開。
 
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/lion/
Facebook : https://www.facebook.com/lion.tonight/
Twitter:@lion_tonight
(C) 2017-FILM-IN-EVOLUTION-LES PRODUCTIONS BALTHAZAR-BITTERS END
 
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