原題 | Mon Ange 1時間19分 |
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制作年・国 | 2016年 ベルギー |
上映時間 | 1時間19分 |
監督 | ハリー・クレフェン |
出演 | フルール・ジフリエ、エリナ・レーヴェンソン、マヤ・ドリー、ハンナ・ブードロー、フランソワ・ヴァンサンテッリ |
公開日、上映劇場 | 2017年10月13日(土)~ユナイテッド・シネマ大津、ユナイテッド・シネマ橿原、イオンシネマ和歌山、10月20日(土)~テアトル梅田、京都シネマ、10月27日(土)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
~愛は、見えないことの壁を越えられるか~
異色のラブ・ファンタジー。エンジェルは、生まれた時から透明で、姿が見えない。人知れず母親と暮らしていたが、隣の屋敷の庭に足を踏み入れた時、盲目の少女マドレーヌに気付かれる。マドレーヌは、匂いと触覚と声でエンジェルの存在を知り、二人は唯一無二の親友に。親密な思いはやがて恋へと変わる。大人になり、手術を受けて目が見えるようになった時、マドレーヌは、エンジェルの存在の秘密を知ることになる…。
観客は、エンジェルの声を聞くことはできても、姿は見えない。透明人間といわれて想像しがちな、物が宙を勝手に動くような映像は、導入部などに限定され、物語の大半はエンジェルの視点で描かれる。にじんだようにとらえられた映像が美しい。母親がエンジェルをのぞきこもうとカメラ(スクリーン)に顔を寄せてきたり、マドレーヌの手がエンジェルの顔をなでようと近づいてきたり、観客は、自分がエンジェルになったような感覚で、他者や外界と接する。エンジェルの孤独が体に浸透していく。
映画が始まってしばらくは、エンジェルの存在は母親の妄想ではないかと疑いながら観てしまうほど、説明もなく、セリフも少ない。幼少期、10代の思春期、大人に成長した姿と、マドレーヌを演じた3人の女優たちの、見えない者を相手にした演技がすばらしい。触れられることの喜びが伝わり、繊細な表情に釘付けになる。エンジェルが母と暮らした施設、マドレーヌの住む古い屋敷、緑あふれる湖畔の小さな小屋と、柔らかい光の中で、ファンタジックな物語が展開していく。
マドレーヌへの愛だけが生きる糧だと信じるエンジェルにとって、愛を失うことは死を意味する。試されるのは、マドレーヌの愛だ。愛する相手が見えない者、異界の存在であるという障害を受け入れられるか。「愛」を信じることができた時、その「愛」を貫き、自ら獲得しようと主体的に行動するのはマドレーヌ自身。水中でのドラマチックな姿が心を打つ。人は人をどうして好きになるのか、どうして好きなままでいられるのか、愛ゆえに生まれる底知れない力に息を飲む。エンジェルの甘い声もいい。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://angel-mienai.com/
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