「AI」と一致するもの
(2019年3月17日シネ・リーブル梅田にて)
ゲスト:坂田 聡(ただし)さん、眼鏡太郎さん、武 正晴 監督
「クソ女のままじゃ終われない!」どん底女子アナの起死回生奮闘記!
新境地を見せた夏帆の熱演と、奇祭「御崎祭」の巡行シーンが見所
本土最南端の鹿児島県南大隅町を舞台に、どん底女子アナが1300年続く奇祭「御崎祭」の完全復活をはかる起死回生の奮闘記、『きばいやんせ!私』。「頑張れ、私」という意味だが、NHK大河ドラマ「西郷どん」でもお馴染みとなった訛り懐かしい鹿児島の伝統祭の復興と若者の再生を謳った映画である。
監督は『百円の恋』『嘘八百』『銃』と主人公の変化を深く見つめる作風で評価の高い武正晴監督。主演は『ピンクとグレー』『ビブリア古書堂の事件手帳』『友罪』と、近年清純派からの脱却で演技派女優としての成長著しい夏帆。不倫の果てに左遷された女子アナを思い切りのいい熱演で新境地を見せる。さらに、多くの作品で存在感を示す若手の演技派俳優、太賀と岡山天音らと共に、「地方で生きること」「本気で打ち込む熱意」「様々な年齢の人々と協力し合うこと」「何かを成し遂げる歓び」など、身をもって体現してくれる。“ボーっと生きている”若者に、「本気で生きよう!」と呼び掛けているような爽快な感動作である。
公開中のシネ・リーブル梅田にて舞台挨拶が開催された。ゲストの武正晴監督と役場の課長役の坂田聡さんの紹介が始まると、客席後方から町長補佐役の眼鏡太郎さんがトランペットを吹きながら入場。映画の終盤でもトランペットを吹いていた眼さんの予定外の飛び込みに、会場は笑いに包まれる。
(以下、敬称略)
坂田の第一声は、「夏帆じゃなくてすみません!」。眼は「今日は来る予定ではなかったのですが、トランペットを吹くためだけにやって参りました」とご挨拶。
武監督との仕事について聞かれた坂田は「監督は撮影中寝ない人なんです。いつ寝てんだろう?代わりに助監督がどんどんやせ細っていきましたが…」(笑)。普通、現場ではやせ細っていくものだが、今回はモリモリ食べて太っていったとか?「滞在中のホテルに毎晩芋焼酎が次々と出され、主に坂田さんの部屋で飲んでましたね」と眼。坂田も「製作の方々が東京へ帰してくれなくて、ずっと鹿児島で待機してましたので、沢山ご馳走を頂く羽目となりました」。
ダイナミックな祭のシーンの撮影について、武監督は「祭りのシーンは1日で撮ったのですが、山を降りてからのシーンは次の日の撮影でした。実際の祭りと同じ行程を同じ時間をかけて歩いて撮っていきました。車で行けない所はすべて徒歩。あの重たい神輿を担いで、さらに途中降ってきた雨で重くなり、ドロドロになりながら、記憶がないほど大変でした」。
俳優たちの演技については、「実際の祭でもそうなんですが、道中の村々で応援の皆さんが用意して下さったおにぎりなどを食べながら、何とか日が沈む前に最後の神社まで辿り着けました。もう太賀君も天音君もみんなヘロヘロだったので、お疲れ様と言いに行ったら、天音君はもう居ないんですよ!? 祭の撮影が終了してすぐに鹿児島空港へ3時間かけて車をぶっ飛ばして行って、東京へ飛行機で飛んで、東京の舞台挨拶に間に合った!と言ってました。それでもって、翌日の撮影にも間に合うように帰って来たんですよ。ほんと、凄いよね!」
坂田は、「太賀君はあの大きな竿を持って歩いていましたが、僕は全く持てませんでした。ずっと一人で持って行ったんですよ!」と太賀の体力を絶賛。武監督も、「あれができる役者はそうは居ないと思いますよ。地元の人が「跡取りができた!」と、太賀君見て喜んでましたからね」(笑)。
さらに役者魂について、「役者は撮影のためなら何でもできちゃう!トランペットも吹くしね!鹿児島弁も喋るしね!撮影でなきゃやらないですよ!俳優さんは凄いな!」と武監督も絶賛。
神輿を担いで山を下りるシーンについて、眼は「僕は背が低いので、背の高い人に負担をかけてしまって申し訳なかったです」。武監督は「あのシーンを見直すと、坂田さんがムッとしてるんですよ。役場の優しい課長さんが怖い人になってるんですよ」(笑)。「僕の肩にグッとのしかかってきて痛かったんですよ。なのに、眼君は持ってないのに苦しい顔しやがって!」(笑)と、思い出しては眼をからかう坂田。
太賀や坂田は鹿児島弁を完璧にマスターしていたが、山越えのシーンでは、つい標準語が出てしまったことについて、「いや~演じてられない位、危険な状態でしたから~」と緊迫した撮影時を振り返る坂田。
1300年の歴史ある奇祭「御崎祭」について、「あの坂は映像で見るより急勾配でして、なんであんな所を神輿担いで通らなきゃいけないのか?」と武監督。「それを1300年もやってる訳ですからね、伝統とはいえ凄いですよね」と坂田が歴史の重みを強調。「道にある岩石も、人の足を乗せやすいような形状になっていて、歴史を感じさせますよね。雨が降ろうが雪が降ろうが続けて来られた訳ですから。撮影時にも雨が降らないかな~と思っていたら降ってきたり、晴れてほしいシーンでは晴れてきたりと、何だか見守られている感じがしましたね」とラッキーだったと撮影時を振り返る武監督。
そして最後のご挨拶で、武監督は「お神輿、お祭とか伝統映画のようなイメージがありますが、若者たちが仕事や働くことについて自分自身を見つめ直していくという物語にもなっておりますので、多くの方に勧めて頂ければと嬉しいです。そして、本土最南端の南大隅町の人々の力強い大らかな笑顔を胸に秘めてお帰り頂ければ幸いです。この作品を末永く大事にして頂けますようお願いいたします。今日はどうもありがとうございました」と最後を締めくくった。
『きばいやんせ!私』
【STORY】
不倫スキャンダルで叩かれやる気を失った女子アナの児島貴子(夏帆)は、全国の奇祭を紹介する番組制作のため、九州本島最南端の町、南大隅町を訪れる。そこはかつて父と共に子供時代の一年を過ごした町でもあった。父親と共に畜産業をしている太郎(太賀)や、家業のホテルを継いだドケチの洋平(岡山天音)はかつての同級生。廃れ行く祭の復興を巡って町の人々と対立する貴子だったが、彼らの協力もあり、昔ながらの祭に挑戦することになる。
若い担ぎ手のいなくなった現代では、20㎞の距離を人力で神輿行列を敢行するのは至難の業で、一部車を利用していた。だがそれではテレビ的に絵にならない上に、伝統ある祭の継承に誇りが感じられない!と貴子が高飛車な発言をしてしまい、「このぐぁんたれが!」(この馬鹿もんが!)と御崎祭奉賛会の会長(伊吹吾郎)の怒りを買う。完全なる祭の催行を巡る対立や、子供時代の思い出は、思いがけなく貴子が忘れていた仕事への熱意を呼び覚ますことになる。「クソ女のままじゃ終われない!」、どん底女子アナの起死回生は果たせるのか?
・監督:武 正晴
・原作:足立 紳「きばいやんせ!私」(双葉社刊 著:工藤晋)
・出演:夏帆、太賀、岡山天音、坂田 聡、眼鏡太郎、宇野祥平、鶴見辰吾、伊吹五郎
・配給:アイエス・フィールド/2018/日本/116 分
・(C)2018「きばいやんせ!私」製作委員会
・公式サイト: http://kibaiyanse.net/
・シネ・リーブル梅田、イオンシネマ京都桂川、布施ラインシネマ、にて絶賛上映中!
(河田 真喜子)
上の写真、前列左から、
①眞田 康平(さなだ こうへい) (34) 『サヨナラ家族』
②板橋 基之(いたばし もとゆき) (42) 『くもろ ときどき 晴れ』
③川上 信也(かわかみ しんや) (42) 『最後の審判』
後列左から、
④山元 環(やまもと かん) (25) 『うちうちの面達(つらたち)は。』
⑤岡本 未樹子(おかもと みきこ)(34) 『はずれ家族のサーヤ』
【5本まとめて大阪での上映会のお知らせ】
■日時: 3月16日(土)~3月21日(木・祝) 連日:18:00~
■劇場:シネ・リーブル梅田
■入場料金:(5本まとめて)一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円 *全席指定
◆3月16日(土)/ndjc2018参加監督5人による初日舞台挨拶予定
詳細はこちらをご覧ください⇒ 一般上映会2018
※登壇者は変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。
(2018年/カラー/スコープサイズ/©2018 VIPO)
★公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/
《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》とは?
次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》は、文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタート。今回も、学校や映画祭や映像関連団体などから推薦された中から5人の監督が厳選され、最終課題である35ミリフィルムでの短編映画(約30分)に挑戦。日本映画の行く末を担う新たな才能を発掘する企画である。
このプロジェクトからは、『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、『ちょき』の金井純一監督、『話す犬を、放す』の熊谷まどか監督、さらに『嘘を愛する女』の中江和仁監督や、『パパはわるものチャンピオン』の藤村享平監督、『花は咲く』『ANIMAを撃て!』などオリジナル脚本で活躍中の堀江貴大監督などを輩出している。
今回もオリジナル脚本で挑んだ5人の監督作品が一挙に上映されることになり、公開を前に5人の監督の映画製作への意気込みをきいてみました。以下は、それぞれの作品紹介と会見でのコメントを紹介しています。
★①『サヨナラ家族』
(2019年/カラー/スコープサイズ/30分/©2019 VIPO)
〇監督:眞田 康平(SANADA KOHEI)
〇作家推薦:東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻
〇制作プロダクション:スタジオブルー
〇出演:石田法嗣、根岸季衣、村田唯、土居志央梨、佐野和宏、斎藤洋介
【作品紹介】
〇あらすじ:洋平は、一年前に目の前で突然死んでしまった父の死をいまだに受け止められずにいる。時折、目の前の人物が別の場面で別行動をとるという不思議な現象が見える。妊娠中の妻を残して一周忌のため帰省するが、実家の母と妹は意外なほど冷静に父の死を受け止めていた。それが洋平にはどうしても納得できない。困惑する洋平の前に、またもや不思議な現象が見え始める。
〇感想:洋平が見る不思議な現象とは、現実を受け止められない心の乖離が生む幻影なのか。分裂気味の洋平に対し、母親を演じた根岸季衣のチャキチャキぶりが陰影を際立たせて印象深い。ワンカットで捉えた違う場面の映像も面白い。死を受け入れられない思いは、亡くなった人との関係性にもよるだろうが、亡くなり方の衝撃にもよるだろう。見る者も自らの思い出と重ねて共感することができる。最後には失った命と新たな命の誕生との対比が希望を感じさせ、繊細な作風が印象的。
【監督コメント】
3年前に父を亡くした実体験に基づいている。母と弟はそれぞれ父の死を受け止めているのに、自分はどうだろう?冷静な自分とそうでない自分、自分の中に二人の自分が存在し、ふとした瞬間に別な自分が見える。父が亡くなった時、自分の半身も死んでしまったような喪失感があった。その感覚を大事にしたいと思って、映画に活かした。怖がらせる映画ではないので、同一空間に人物が見えるよう合成とボディダブルの手法を使って撮った。
今までCMを作ってきて、クライアントの要望を重視するが、映画は自分の描く方向性にこだわって作れる。プロデューサーからうまく折り合いをつけることも重要だと言われることもあるが、映画をやる以上は自分の考えを責任をもって通したいと思う。
◎眞田康平監督の作品の詳細はコチラ ⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4251/
★②『くもり ときどき 晴れ』
(2019年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2019 VIPO)
〇監督:板橋 基之(ITABASHI MOTOYUKI)
〇作家推薦:ショートショートフィルムフェスティバル&アジア
〇制作プロダクション:ブースタープロジェクト
〇出演:MEGUMI、浅田美代子、水橋研二、有福正志
【作品紹介】
〇あらすじ:母親と暮らすキャリアウーマンの晴子の元に一通の手紙が届く。それは25年前に両親が離婚して以来消息不明となっている父親の生活保護扶養照会だった。兄の元にも同じ通知が届いていたが、父親に可愛がられていた晴子が動かざるを得なくなる。そして、25年ぶりに入院中の父親に会いに行くと、認知症もあって娘という認識もできないような状態になっていた。それでも晴子は家族の中で一人父親のことを思い揺れ動く。
〇感想:仕事もよくできるしっかり者の晴子だが、いつも浅田美代子演じる母親に「家に帰って美味しいものでも食べよう!」と励まされるところが可愛い。外で様々な目に遭っても、食卓にはいつも美味しい食事が用意されている、なんて幸せなことだろう。だからこそ、晴子は「設計図通りに」生きられなかった不器用な性格の父親を見捨てられなかったのだろう。面倒くさいけど、家族の絆はそう簡単には断ち切れないもの。「街を歩いているとね、お父さんに似た人を見ちゃうの。どうか元気でいて下さいって、なんか思っちゃうの。」という晴子の言葉に思わず胸が熱くなった。晴子の優しさが滲むセリフだ。
【監督コメント】
晴子も母も兄も、それぞれの考えがあって生きている。どんな家族でも形は様々で、家族の中のズレ感を描きたかった。家族だからこそ感じるやるせなさを描きたかった。和風の顔のイメージを希望していたらMEGUMIさんを推薦され、先に主人公から決まっていった。今までの尖った役とは違い、優しい雰囲気の役を演じてもらって新鮮だった。
僕にとって映画は精神安定剤。映画は撮影していてとても楽しい。もっと短編映画にも注目してもらって、ジャンルとして確立してほしい。
◎板橋基之監督の作品の詳細はコチラ⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4257/
★③『最後の審判』
(2019年/カラー/ビスタサイズ/29分/©2019 VIPO)
〇監督:川上 信也(KAWAKAMI SHINYA)
〇作家推薦:シナリオ・センター
〇制作プロダクション:ジャンゴフィルム
〇出演:須藤蓮、永瀬未留、黒沢あすか、荒谷清水
【作品紹介】
〇あらすじ:“画家”を目指して東京美術大学の受験に挑んで5年目となる稲葉は、既に大学4回生の弟やバイト先のおじさんに「いい加減諦めろ!」と言われながらも、どこか芸術家気取りの自意識過剰なところがある。今年で最後の挑戦と決めていたが、試験会場に遅れて入って来た初音の大胆な画力に圧倒され、自分のペースを狂わされてしまう。初音の非凡さに興味を持った稲葉はその秘訣を探ろうと、初音と共に商店街で似顔絵描きに挑戦。生きた人々を活写する初めての体験に、次第に描くことの楽しさを感じていく…。
〇感想:誰しも自分自身のことは見えないものだ。他人に嫌味を言われても気付けず、自分の傲慢さにも気付かない。そんな主人公に降りかかる真実の矢は、見ているこちらにもグサグサと突き刺さる。川上監督自身の経験を反映しているようだが、決して他人ごとではない。自分の真の姿(才能)を知った時の愕然たる思いや、求める何かの手応えを感じた時の歓びは、ラストの爽快感へとつながっていく。人間の本質を捉えようとする川上監督の人物描写は、自虐的であると同時に、虚飾が剥がれ落ちた後の真実を表現しているように思える。近年の日本映画に欠ける鋭利な作品を作っていってほしいものだ。
【監督コメント】
自分の人生を基にエンタテイメントにまとめている。皆が受験や入社試験などで上手くいかなくて挫折した経験や、美大受験というあまり見たことがない世界の特殊性が合わさった時に面白くなるのでは思った。天才にもいろいろあると思うが、それに対する憧れや嫉妬心を、主人公の目線で語らせ、引いては見ている人の目線と重なるようにした。主人公が天才的な少女と出会って描くことの楽しさを感じるようになって、傲慢な心が氷解していく。「素直にものを伝えることが一番素晴らしく大事なこと」だと思ったことをベースにして映画を撮った。
今までCMなどのビジュアル製作に関わってきたが、小学校の頃から映画は作りたいと思ってきたので、このような機会に恵まれて嬉しい。映画は製作の流儀が違う。いろんな人にお金を払って観て頂くための作品でもあり商品でもある。映画は混じりっ気のない本物だと思う。重要な主人公二人はオーディションで選んだ。俳優が持つキャラクターを活かすようにした。
『未知との遭遇』を小学校の頃に観て、家族や人間がとても丁寧に描かれていて、そこにスペクタクルな要素を盛り込んでエンタテインメントとして完成している。どんな作品にも人を描くことの重要性を感じた。
◎川上信也監督の作品の詳細はコチラ ⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4253/
★④『うちうちの面達は。』
(2019年/カラー/ビスタサイズ/28分/©2019 VIPO)
〇監督:山元 環(YAMAMOTO KAN)
〇作家推薦:PFF
〇作プロダクション:シネムーブ
〇出演:田中奏生、田口浩正、濱田マリ、小川未祐、山元駿
【作品紹介】
〇あらすじ:二週間前、ママは夫婦喧嘩が原因で姿を消してしまった。ところが、家の屋根裏部屋に潜んで、家族が出かけると天井からトイレに降り立ち家事をこなしている。そのことを知っているのは13歳の浩次朗だけ。一番早く帰ってきてはママと過ごす日々を送っていた。ある日姉の志保が家庭教師を連れてきて危ない目に遭いそうになるが、ママの機転で撃退してしまう。また、ママのことを探そうともしないパパは仕事にばかり熱中。一体いつまでママの“かくれんぼ作戦”は続くのだろうか…。
〇感想:祖父が建てたという家が大きなモチーフになっている。同じ家の中に隠れ住んでいても気付かない存在。そう、関心を持っていなければ気付かないことは多い。バラバラだった家族が、ママの失踪と家の中の異変で次第に共鳴していく過程が面白い。書斎のように広くて明るいトイレやインテリアなど各所でセンスの良さが光る。テンポのいいワンシチュエーション・コメディも、強烈な個性の濱田マリの牽引力が活かされている。
【監督コメント】
家族の形態や普遍的な営みはそれぞれ違うと思うので、家族の細かい人間性をテーマにした。家というくくりで、カメラは一歩も外に出ず、家の中で生活する家族の在り方を面白く撮ってみたかった。家の中のイメージを美術監督の方に伝えただけで、あとはデザインして作ってもらった。暖かく見えるようなウッディな色彩を多用した。(本作にも出演している山本駿は監督の双子の兄弟。『帝一の圀』には兄弟で出演したという)。
映画は自由度が高いように思う。表現の幅が広い。人を撮っていくのに没入できる。映画の娯楽的要素は意識的には違うところにあるように思う。
『鎌田行進曲』が面白すぎて、深作欣二監督の他の作品も観てみたのですが、どの作品にもエンタメ性を必ず盛り込んだ作風は唯一無二だなと思った。
◎山本環監督の作品の詳細はコチラ ⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4249/
★⑤『はずれ家族のサーヤ』
(2019年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2019 VIPO)
〇監督:岡本 未樹子(OKAMOTO MIKIKO)
〇作家推薦:大阪芸術大学映像学科
〇制作プロダクション:テレビマンユニオン
〇出演:横溝菜帆、黒川芽以、増子倭文江、田村泰二郎、森優理斗
【作品紹介】
〇あらすじ:おばあちゃんと二人暮らしの小学3年生の沙綾(サーヤ)の所には、時々ママが父親の違う弟を連れてやって来る。そう、ママは沙綾を祖母に預けて、新しい家族と暮らしているのだ。いつもママと一緒に居られる弟が羨ましい沙綾。ある日、学校帰りに不思議な古い木箱を売るおじさんに出会う。自分の願い事を書いた紙を箱の中に入れると願いが叶うというのだが・・・。
〇感想:沙綾は親の都合で寂しい想いをしているが、おばあちゃんもママも優しいし、弟も沙綾が大好きで懐いている。それでも、沙綾は新しい家族と一緒に暮らせず孤独を抱え、「ママを独り占めできたらいいのにな」と思うようになる。幼児や児童虐待事件が頻発している昨今、しかしながら、子供にとってどんな親でも親ほどいいものはない。親に愛されたいばかりに子供は時々不都合な行動をとることもある。本作は少々優しすぎるストーリーだが、ファンタジックな展開の盛り込み方や沙綾の表情の変化の捉え方など、ナイーブな演出に心を掴まれた。
【監督コメント】
大人も子供もそれぞれ幸せになりたいと思っているが、それを求められる自由は圧倒的に大人にあるということを描きたかった。弟にやきもちをやいて、「要らない!」と思っていたものが、本当に居なくなってしまったらどうするのか?本当はそれが大事なものだったと気付いた時のショックを駆け合わせられたらと思って映画化した。(子役二人は仲良しすぎて、ずっと抱き着いたままだったようだ)。
映画製作に携わっている人達には終わりがないので、それを受け継ぐ意識が高く、TVドラマより映画の方が気合が入る。自分たちがやりたいことを発揮できるのが映画なのかなと思う。
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、子供を描くのに参考になるかなと思って見直した映画。主役の横溝菜帆ちゃんに、絶対にため息をつかないでねと指導。子供の方がいろいろと溜め込んでいるものが多く、ため息をつかずにその想いを表情で見せようと思った。
◎岡本未樹子監督の作品の詳細はコチラ ⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/4255/
今回の作品は5本中4本が家族をテーマにしている。それぞれの視点で思い描いた家族像は、監督自身の経験をベースにしていたり、疎遠になりつつある社会を背景にしていたりするが、どれも家族の絆を求めている心情を浮き彫りにしている。自分自身を見失い自意識過剰な人間になってしまった青年が開眼する様子を描いた作品も興味深い。どれも人物描写が深く、ストーリーを追うだけの平凡なものではない。短編・長編を問わず、今後の活躍に注目していきたい。
(河田 真喜子)


この度、ドイツ敗戦直前の混乱期に起こった信じがたい実話を映画化した『ちいさな独裁者』の公開を記念いたしまして、 2月10日(日)に、元・読売新聞記者で、映画にも造詣の深い武部好伸さんを迎えましてトークイベントを行います。 他人の軍服をまとった脱走兵が巧妙な嘘で特殊部隊のリーダーに成りあがっていくという、実在の人物に基づいた驚愕の物語を 歴史的背景や映画的視点から、より深くお話しをいただきます。
開催日時:2019年 2月 10日 (日)14:00の回 上映終了後
場所:シネ・リーブル梅田 (梅田スカイビル タワーイースト4F)
★上映終了後のイベントとなりますので、トークイベントは、16:00~16:20を予定しております。
★イベント詳細は、劇場 HP(https://ttcg.jp/cinelibre_umeda/)にてご確認ください。
映画エッセイスト 武部好伸さん 1954 年、大阪市生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。1995 年 からフリー。映画、ケルト文化、洋酒、大阪をテーマに執筆活動を展開している。日本ペ ンクラブ会員。関西大学非常勤講師。著作に『大阪「映画」事始め』(彩流社 2016)、『ウ イスキー アンド シネマ 2 心も酔わせる名優たち』(淡交社 2017)などがある。
【STORY】
1945 年 4 月、敗色濃厚のドイツでは戦いに疲弊した兵士たちによる軍規違反が相次いでいた。部隊を脱走して 無人地帯をさまよう兵士ヘロルトは、道ばたに打ち捨てられた軍用車両の中で軍服を発見。それを身にまとって 大尉に成りすました彼は、ヒトラー総統の命令と称する架空の任務をでっち上げるなど言葉巧みな嘘を重ね、道 中出会った兵士たちを次々と服従させていく。かくして“ヘロルト親衛隊”のリーダーとなった若き脱走兵は、強大 な権力の快楽に酔いしれるかのように傲慢な振る舞いをエスカレートさせ、ついにはおぞましい大量殺人へと暴 走し始める……。
【監督・脚本】:ロベルト・シュヴェンケ (『RED/レッド』『フライトプラン』)
【出演】:マックス・フーバッヒャー、ミラン・ペシェル、フレデリック・ラウ、ベルント・ヘルシャー、ワルデマー・コブス
【配給】:シンカ/アルバトロス・フィルム/STAR CHANNEL MOVIES
(2017 年/ドイツ=フランス=ポーランド/ドイツ語/119 分/カラー)
2019年2月8日(金)より、シネ・リーブル梅田/シネ・リーブル神戸 にてロードショー! 2月9日(土)より、京都シネマ にて
『半世界』舞台挨拶
(2019年1月31日(木)TOHOシネマズ梅田スクリーン1)
ゲスト:稲垣吾郎(45歳)、阪本順治監督(60歳)
ふと自分を見つめ直すキッカケをくれる、
思うようにならない人生でも素直に向き合える――。
「こんな稲垣吾郎、見たことない!」自然体の魅力が光る感動作!
阪本順治監督の記念すべき“還暦作品”『半世界』は、昨年の第31回東京国際映画祭で観客賞を受賞。田舎町を舞台にした39歳の仲良し同級生3人組の人生の折り返し点に立つそれぞれの思いと悲哀を描いた、阪本監督完全オリジナル脚本の映画化である。主演には《新しい地図》結成後の初映画出演となる稲垣吾郎を迎え、朝ドラ『まんぷく』で人気急上昇中の長谷川博己に、緩急自在の手堅い演技力で魅了する渋川清彦や池脇千鶴に石橋蓮司という、キャスティングだけでも吸引力のある面々で大いに楽しませてくれる。阪本監督の初期の頃の作品を思わせる笑いあり涙ありの人情物語は、現実的だがどこか懐かしく、心のひだに優しく寄り添うような、そんなヒューマンドラマである。
2月15 日(金)の公開を前に、主演の稲垣吾郎と阪本順治監督が舞台挨拶に登壇。TOHOシネマズ梅田のスクリーン1の733席のチケットが即完売したとあって、稲垣吾郎人気に改めてびっくりした阪本順治監督は、「無理にこっち見なくてもいいですから(笑)。僕は大阪人なんで大阪の怖さも知ってます。20年前に藤山直美さん主演の『顔』という映画の舞台挨拶の時、立ち見が出るほど満員だというので楽しみにして行ったら、受付でおばちゃんが怒鳴ってまして、何怒鳴ってるかというと、「立ち見やったら300円まけて!」(笑)――これが大阪や!」と、大阪のファンにご挨拶。
(撮影中の阪本順治監督)
阪本順治監督とは初タッグを組む稲垣吾郎は、「阪本監督が怖かった?」という質問に、「全然!」と即答。『座頭市 THE LAST』と『人類資金』と2本の阪本監督作に出演した香取慎吾から監督について色々と聞かされていたという。「ああ見えて人見知りするタイプの香取君が、“阪本監督、阪本監督”と珍しく心を開いてとても慕っているようだったので、きっと仲良くして下さったんだろうなと思ってましたから」。
阪本順治監督はいつも撮影前に主演俳優と二人だけで食事に行くようにしているという。「自分ってこんな人間なんだよってバラした方が、撮影中も相互理解が深められるから」という理由。今回も、稲垣吾郎とホテルの1室で大まかな台本10枚を渡して読んでもらった際も、「とても緊張しましたよ」という稲垣に対し、「えっ?二人きりだったから、違う意味で?(笑)こっちも何言われるかと緊張して、隠れて酒飲んでましたよ。“炭”を焼く役がイヤだと言われたら、じゃ“ピザ”にする?(笑)とかね、返答の仕方を一所懸命考えていたんですよ」と阪本監督。
ロケ地は三重県南伊勢町、2018年2月15日クランインで1ヶ月の撮影期間中、東京から名古屋まで新幹線で行って、近鉄線に乗り換えてロケ地へ行ったという稲垣吾郎。近鉄電車の車両が旧式と新式のタイプがあり、「今日はどっちのタイプかな♪」ととても楽しみにしていたという。
炭焼きの役について聞かれた稲垣吾郎は、「炭焼きは落ち着く感じがして、興味はありました。実際使われている炭焼き小屋で持ち主の方に協力して頂いたのですが、撮影中の炭も実際の商品となる訳ですから、小屋の横に寝泊まりしては炭焼きのタイミングを見計らって、夜中でも撮影していました。伐採のシーンでは初めてチェーンソーを使いました。箸より重たいものを持ったことがないこの僕が!? かなりの重労働だと実感しました」。
これからご覧になるお客様に向けて、
阪本順治監督、「映画が始まったら全く違う彼(稲垣吾郎)がいます。この映画に自分なりの思いを込めていますが、基本的にはスター映画は大好きでして、いろんな人物が登場します。その人たちへ思いを寄せてもらえれば嬉しいです。つぶやきはスマホでなくてもできます。横断歩道ですれ違う人に“半世界”と一言つぶやくとか(笑)、ついでに電車の中で友達と話す時も、「今日は寒いね、“半世界”」と(笑)――こんなこと大阪でしか言えませんが、合言葉は“半世界”で拡げて頂きたいと思います。『半世界』というタイトルに込めた想いや、俳優のみなさんが何をやろうとしているのか理解して頂ければ嬉しいです。還暦記念映画でもあります。どうぞお楽しみ下さい」。
稲垣吾郎、「阪本監督の記念すべき映画に主演させて頂いて嬉しく思っております。この映画は、一昨年から準備を重ねて撮った作品です。備長炭ではありませんが、我が子のように育て上げた映画ですので、皆さんにきっと気に入って頂けると思っています。合言葉は“半世界”でぶつぶつつぶやくばかりでなく、さっき撮った写真をSNS駆使して拡散して頂きたいです。ここから世界に発信していって、多くの皆さんの観て頂ければと思います。本日はどうもありがとうございました」と、締めくくった。
この日はWEB媒体の取材撮影は勿論、観客にもスマホでの撮影を許可するという、ジャニーズ時代では絶対厳禁とされていたことが許された。少し不慣れな様子を見せた稲垣吾郎だったが、観客との近い距離感を楽しんでいたようにも見えた。コテコテの大阪人気質で笑いを誘った阪本順治監督のトークからも、今までに経験したことのないキャラクターを演じる稲垣吾郎を撮影現場でもフォローしていた様子がうかがえる。ベテラン監督のもと、新たな挑戦の始まりを感じさせる記念すべき作品となったようだ。
『半世界』
【STORY】
田舎町の地元で炭焼きをしながら妻の初乃(池脇千鶴)と中3の息子・明(杉田雷麟)と暮らす絋(コウ:稲垣吾郎)は、自衛隊を辞めて帰郷した瑛介(長谷川博己)の姿を見つける。瑛介が何か訳ありで固く心を閉ざす中、同じ同級生で祖父母に両親と未婚の姉という大家族を支える独身の光彦(渋川清彦)と共に彼を助けようとする。だが、瑛介は中々心を開こうとしない。地元で家族と暮らしながらも、心のすれ違いや商売の難しさなど、思うようにならない人生に戸惑いを見せる一方、瑛介の帰郷をキッカケに、39 歳という人生の折り返し点に立つ男3人が、改めて自分を見つめ直していこうとするが、……。
■2019年 日本
■脚本・監督:阪本順治
■出演:稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川晴彦、杉田雷麟/小野武彦、石橋蓮司
■コピーライト:©2018「半世界」FILM PARTNERS
■公式サイト:http://hansekai.jp/
■2019年2月15日(金)~TOHOシネマズ梅田、他全国ロードショー
(写真・文:河田 真喜子)