原題 | ROBIN HOOD |
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制作年・国 | 2018年 アメリカ |
上映時間 | 1時間56分 |
監督 | オットー・バサースト |
出演 | タロン・エガートン、ジェイミー・フォックス、ジェイミー・ドーナン、イヴ・ヒューソンン、ベン・メンデルソーン、ティム・ミンチン、F・マーレ・エイブラハム ほか |
公開日、上映劇場 | 2019年10月18日(金)~全国ロードショー |
忍者顔負けのロビン・フッド、
その誕生の秘密が明かされる!
東の鼠小僧、西のロビン・フッド――。庶民に人気のある義賊です。世界的には後者の方が圧倒的に知られていますね。中世の12世紀、イングランド中部の街ノッティンガムの北30キロに広がるシャーウッドの森に暮らすアウトロー集団のボスですが、圧政を敷くジョン王の治世下、悪だくみを働かせる代官(州長官)を懲らしめ、金満家から盗んだ金を貧しい人たちに分け与えていた伝説上のヒーローです。
弓の名手で、頭巾(フッド)と緑色の服がトレードマーク。怪力を誇る巨漢のリトル・ジョン、陽気なタック修道士、ロビンに次いで弓に自信を持つウィル、そして恋人のマリアン……。個性豊かな仲間とともに、陰鬱な中世にあって、ロビン・フッドの物語はひときわ光芒を放っていました。幼少期、ワクワクしながら童話を読んでいた記憶があります。
そのロビンがいかにして誕生したのか――。これまでのロビン・フッド像をことごとく覆し、全く新しい解釈で映画化したのが本作です。驚かされた点がいくつもありました。とにかく映画の冒頭から、「えっ、何でやねん!?」の連続。
エルトン・ジョンの自伝映画『ロケットマン』で熱演し、いまやノリノリのタロン・エガートン扮するロビンの頭髪が完全に今風だったから。それもお坊ちゃま的な髪型。それに頭巾から甲冑、ブーツまですべて黒一色。おいおい、緑はどこにいってしもうたんや~!!?? そんないでたちで素早く動きまくるのだから、まるで伊賀忍者! 手裏剣が飛び出たらどうしよ~とハラハラしていましたが、杞憂に終わって安堵した次第。
ほかの登場人物もそう。州長官(ベン・メンデルスゾーン)なんてきちんと毛髪を横分けにしていて、ジャケットのような上衣を羽織っています。どこを見ても現代的で、ニューヨークの街にいそうな銀行マンといった感じ。銀縁メガメを付けたらどうしよう~とこれまたハラハラしていましたが、これも杞憂に終わりました。
ロビンが荘園の領主で、十字軍遠征に加わるという設定もなかなか斬新な切り口です。遠征先のアラビアで捕虜にしたイスラム教徒の敵兵の父親が帰国後、ロビンの指導役で片腕的なリトル・ジョンになるとは……、開いた口がふさがらなかった。それも黒人。ジェイミー・フォックスが新興宗教の教祖みたいで存在感満点! 修道士タック(ティム・ミンチン)が思いのほかまともな司祭というのも意外でしたが、敵役のギズボーンがロビンの元上官という役どころも想定外。すべてこんな調子です。
紅一点のマリアン(イヴ・ヒューソン)はあまりイメージと異なっていませんでした。結構、じゃじゃ馬的に描かれていて、うれしかったです。そのマリアンをめぐり、友人のウィル(ジェイミー・ドーナン)が、いずれ弓の名手ウィルになるのでしょうね。ということは、絶対に続編があるんですわ!
戦闘場面が白眉です。昨今、アクションシーンは大概、ドンパチと銃をぶっ放してばかりで、いささか食傷気味でしたが、ここでは銃に代わって弓矢が主な武器。エガートンはアーチュリーの達人から指導を受け、いかに早く矢を弓に装填するかを猛特訓したそうです。CGか代役を使っていたのかと思いきや、すべて本人がやっていました。目にも留まらぬ早業! 家で弓矢を射る真似をしたんですが、そんな早くできませんわ。エガートンはよほど運動神経が発達しているんですね。
機関銃のような弓矢発射機が登場したかと思えば、敵の体に刺さっている矢を抜き取って「再利用」する戦闘方法など、ほんまかいな、いやこれはほんまやろとあれこれ考えさせられるシーンのオンパレード。至近距離でも、殴る方が手っ取り早いのに、律義に弓で矢を放つのですから、相当、弓矢依存症です。チラシには、「ハイパーシューティング・アクション!」のキャッチコピー! ここまで徹底すれば、文句は言えまへんな。
舞台となったノッティンガムの街が美しすぎました。撮影場所が世界遺産に登録されているクロアチアのドゥブロヴィニクと知って納得。見映えはしましたが、あまりイギリスっぽくなかったですね~(笑)。近郊にある鉱山が近未来の大工場のようにすら思え、おどろおどろしい独特な空間が構築されていました。中世という時代を忘れさせてくれます。
そんな中、ロビンがジョンとタッグを組み、世渡り上手な〈領主〉と弱者を守る〈盗賊〉の2つの顔を使い分け、悪の権化ともいえる州長官に挑んでいきます。正義VS悪。100パーセント、勧善懲悪の世界で、すごくわかりやすい!
これまでケヴィン・コスナー、ラッセル・クロウらがロビン・フッドに扮し、数多くの映画が製作されてきました。しかし本作のようなこんな奇天烈な作品が生み出されると、当分、ロビン・フッドは映画化しにくいでしょうね。とにもかくにもエガートンはエポックメーキング的な存在でした。続編が楽しみです。
武部 好伸(エッセイスト)
公式サイト⇒ https://hood-movie.jp/
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