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『SHADOW/影武者』

 
       

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作品データ
原題 SHADOW
制作年・国 2018年 中国
上映時間 116分
監督 チャン・イーモウ
出演 ダン・チャオ、スン・リー、チェン・カイ、ワン・チエンユエン
公開日、上映劇場 2019年9月6日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都、OSシネマズ神戸ハーバーランド、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー
受賞歴 第75回ベネチア国際映画祭非コンペティション部門出品作
 
 

~水墨画の世界で描くチャン・イーモウ流、美の武侠映画〜

 
 『HERO』(02)ではジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チェン、ドニー・イエン、『LOVERS』(04)では金城武、アンディ・ラウと、中華圏の大スターたちに自身のミューズ、チャン・ツィイーを加え、色鮮やかで美しい武侠映画を世に送り出し、大ヒットを記録したチャン・イーモウ監督。その偉業をすっかり忘れてしまうぐらい、ここ10年以上は歴史大作やヒューマンドラマなど別分野の作品が相次いでいたが、歳を重ね、さらに円熟味を増し、美の極みに達したチャン・イーモウ流武侠映画が帰ってきた!今までは華麗なワイヤーアクションが見ものだったが、今回は飛ばない。むしろ地に足をつけ、美しくも新しい武器を手に、真っ向勝負で挑む。動く水墨画のような武侠映画で描かれる究極の下克上。キーワードは、陰と陽だ。
 
 
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 三国志でも有名な戦国時代、敵の炎国に領土を奪われて20年の沛国では、敵と休戦同盟を結んだ若き王(チェン・カイ)を筆頭とする穏健派と、武芸を得意としている重臣・都督(ダン・チャオ)を中心に奪還を目標とした開戦派に二分されていた。都督は、敵の将軍・楊蒼に手合わせを申し込み、勝手な行動に激怒した挙句、最終的に都督に無官にしてしまうが、都督にとっては好都合だった。この都督こそ、実は戦で傷を負い、衰退している都督の影武者で、そのことを知っているのは都督の妻、小艾(スン・リー)だけ。都督から楊蒼を殺せば自由の身にすることを約束された影武者は、最強の敵に挑むため、技を磨くのだったが…。
 
 
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 冒頭で動く水墨画と表現したが、この物語に陽光は一切ない。常に靄がかかり、命が吹き込まれたかのような雨粒が舞い散る中、決戦の時に向け、王との駆け引きや、だんだん影武者に同情心を寄せる小艾と都督の三角関係など、様々な関係が緊張感をもって描かれる。影武者が都督や小艾と傘を手に訓練を重ねる場所には大きな陰陽が刻まれ、まさに都督と影武者の関係を象徴しているかのようだ。軟をもって硬を制するような傘の技も、力任せの武術とは違うしなやかさがあり、優雅だ。
 
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 クライマックスの戦闘シーンでは、都督に王の妹や、王に追放された部下らも加わり、屈強な炎国の将軍、楊蒼に戦いを挑む。刃物傘を振り回しながら向かってくる沛国軍の姿は見たこともないようなスペクタクル感を醸し出すが、迫力の対決シーンを終え、全てが終わった後に、実は本当の対決が控えている。どちらが陰となり、陽となるのか、影武者物語の真意はそこにあるのだ。都督と影武者の一人二役を演じたダン・チャオと、都督の妻役のスン・リーは実の夫婦で、一人二役のダン・チャオの気迫溢れる演技はもちろんのこと、夫と影武者の間で揺れる妻を演じたスン・リーも感情の揺れを繊細に表現。息の合った演技で、動きの部分だけでなく、内面の表現も研ぎ澄まされ、最後まで引きつけられた。中国伝統の水墨画の世界観に浸りながら、美の武侠映画を堪能してほしい。
(江口由美)
 

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公式サイト⇒:http://shadow-movie.jp/ 
 
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