「AI」と一致するもの

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「この作品の中に佐々部監督の魂がきっちり入り込んでいる」
『大綱引の恋』西田聖志郎さん(企画、プロデューサー、出演)インタビュー
 
 心温まる家族ドラマを数多くてがけてきた名匠、佐々部清監督の最新作にして遺作となる鹿児島県薩摩川内市を舞台にした『大綱引の恋』が、5月7日の全国公開を前に第16回大阪アジアン映画祭の特別招待部門作品として、関西プレミア上映された。
 薩摩川内市で400年の歴史を誇る大綱引に青春をかける青年・武志と、韓国からやってきた女性研修医・ジヒョンとの恋だけでなく、薩摩川内市と大綱引が縁で姉妹都市盟約を結んでいる韓国・昌寧(チャンニョン)郡との交流も描かれる。
 三浦貴大が武志を演じ、見事な一番太鼓を披露するほか、知英が武志一家と交流する研修医ジヒョンを好演している。比嘉愛未や升毅など佐々部組の常連俳優も顔を揃え、軽快かつ味わい深いヒューマンドラマに仕上がった。迫力の大綱引シーンはまさに圧巻だ。
 本作の企画、プロデューサーを務めるだけでなく、武志の父を熱演。長年、佐々部監督と交流の深かった西田聖志郎さんにお話をうかがった。
 

 

■佐々部監督とは共に遅咲き、シンパシーを感じた仲間

―――まずは佐々部監督との出会いについてお聞かせください。
西田:佐々部監督が44歳でデビュー作『陽はまた昇る』を撮ったのですが、僕は当時46歳でそのオーディションを受け、いわば東映の大作で役名がつくような役をいただけた。監督も長年助監督を務めた遅咲き組ですし、同世代として昭和のいい時代に青少年期を過ごしたという意味でも、シンパシーを感じたんですよ。ただ失礼なことをしたと思うのが、オーディションで、中央に監督と思しき方がが座っていて、周りをチョロチョロしている人がいて、その人は助監督なんだろうなと思っていたら、実はそれが佐々部監督で、僕が監督だと思い込んでいたのは、大御所カメラマンの木村大作さんだったんです。その後何年経っても、佐々部監督からそのことを言われてましたね(笑)
 
―――その後、佐々部監督とは『六月燈の三姉妹』でプロデューサーとして初タッグを組まれましたね。
西田:『六月燈の三姉妹』は僕が構想を練り、全国で上演した舞台です。再演した2011年に、違う映画製作会社の3人のプロデューサーが別々に観劇し、3人とも映画にしたら面白いのではと仰ったので、映画に向いているのかと僕もその気になったんですよ。佐々部監督しかいないと思い、演劇の台本を読んでもらい、公演映像を観て頂いたら面白いと快諾してもらえ、僕の初プロデュース作品でタッグを組むことが実現しました。
 

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■薩摩川内市と昌寧(チャンニョン)郡の関係を通して日韓の交流を描く

―――今回の大綱引は、西田さんご自身も馴染みの深いものだったのですか?
西田:僕は鹿児島市出身なので、川内大綱引のことを新聞やテレビのニュースでしか知りませんでした。『六月燈の三姉妹』が海外で上映される中、5カ国8都市を僕一人で行ったり、監督とともに周ったりしたのですが、鹿児島の経済界から依頼を受け、その体験記を「映画により鹿児島の魅力を世界に発信」という演題で県内3ヶ所で講演したことがあり、その中の一つが薩摩川内市でした。その時、「薩摩川内には400年の歴史を誇る大綱引がある。これを、どげんかして映画にできんですか?」と声をかけられ、その年の川内大綱引にお招き頂いたのです。3000人の男たちが本当に死に物狂いで激闘している姿を見ながら、この人たちそれぞれに家族や恋人がいるだろうし、その一人にスポットを当てながら主人公を取り巻く人間模様を描くと、面白いドラマができるのではないかと閃いたんです。
 
薩摩川内市は、綱引がご縁で韓国の昌寧(チャンニョン)郡と友好都市盟約を結んでおり、私も2018年の交流ツアーに同行させて頂いたのですが、国同士がどれだけギクシャクしていても、大綱引保存会の人たちは毎年交流していて、親睦を深めているんですよ。佐々部監督も『チルソクの夏』『カーテンコール』と韓国との交流を描く作品を撮っていますし、その関係性も映画の中に取り入れようと思っていました。また主人公、武志の相手役となる知英さん演じる韓国からの研修医・ジヒョンがどのように武志の家族に受け入れられていくかも最初からイメージができていたんです。そういう意味でも、日韓の交流を描いた『大綱引の恋』を大阪アジアン映画祭に呼んでいただけたのは本当に意義深いし、佐々部監督も喜んでおられると思います。
 
 
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■2年がかりで撮影した迫力の大綱引シーン

―――大綱引シーンの迫力に圧倒されましたが、どのように撮影されたのですか?
西田:2年がかりで撮りました。年に一度、秋分の日の前日に大綱引が開催されるのですが、その翌日から次の年に向けての人数集めが始まります。両チームとも綱の長さに収まる約1500人ずつを集めることになります。それだけではなく、毎年365m、直径40cm、重さ7tの大綱を作るのですが、その材料となる縄作りも始まるんですよ。ちょうど稲の収穫の時期でして、藁を確保し始めるタイミングでもありますので、諸々の準備も含めて一年がかりの祭りなのです。

そんな祭りを撮影するのに、本番の祭りに役者を入れるのはとても危険なので、2018年、2019年の本番の大綱引を撮り、2019年は本番の6日後に、中央でぶつかり合っていた両チーム約200人ずつの大綱引メンバーに、今度はエキストラとして参加してもらったんです。双方の一番太鼓を叩く三浦貴大さんと中村優一さんが入って撮った時は、エキストラの皆さんも本番さながらの熱気で挑んでくれました。

 
―――佐々部監督も相当気合が入ったシーンだったのでは?
西田:亡くなった佐々部監督も大綱引シーンは全神経を集中させて挑んでいました。国道3号線を封鎖して行う祭なのですが、国道を全面封鎖する祭は日本でも数少ないし、前週に本番をやったばかりなので、まずは警察に必死でお願いして、なんとか18時から22時まで時間を確保したのです。限られた時間の中で撮りきらなければいけない緊迫感がある中、佐々部監督は助監督経験が長かったので、段取りが全て頭の中に入っていたんですね。だから、きっちりと決められた時間内に撮影することができました。
 
―――大綱引の要となるのは一番太鼓ですが、三浦さんは相当練習されたのですか?
西田:三浦さん、中村さんに加え、一番太鼓経験者である父親役の僕も、写真だけしか登場しませんが、一緒に練習しました。実際に一番太鼓を経験された方々が指導をしてくださるのですが、皆さん、三浦さんは最初から上手いと褒めていましたね。大綱引では2時間近く叩き続けなければいけないのですが、「太鼓を掲げた手が下がったら負けだ」というプレッシャーがある中で、二人ともよく頑張ったと思います。一番太鼓は一生に一度のことですし、その人選については何年も前から取り組む姿勢などを先輩たちがしっかり見ているんですよ。今回、三浦さんは鹿児島弁に加え韓国語を喋るシーンもあり予習が多い現場でしたが、どれもしっかりとマスターされていました。
 

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■佐々部監督と作品作りの根底で共通していたのは「家族がテーマ」

―――一番太鼓をかけた青春物語だけではなく、家族模様を細やかに撮りきったのも、佐々部監督ならではだなと痛感します。
西田:これまでの僕のプロデュースする作品も家族がテーマですし、佐々部監督も家族をテーマにした作品を多く手がけてこられた。そういう面でお互い作品作りの根底で共通している部分があります。ただ、脚本のことなどで意見が対立することはもちろんあって、僕は、父親が息子の武志を呼び、ジヒョンとの交際を反対する場面を入れ、綺麗ごとではない日韓の間にある壁を描こうと思っていました。でも佐々部監督は直接的な方法ではなく、次のシーンの、病院でジヒョンが席を外している時の妻と娘との会話の中でそれを表現したのです。最終的には佐々部監督が気持ちよく撮れることが一番なので、信頼してお任せしましたね。
 
―――今まで佐々部監督と一緒に仕事をされてきた中で、思い出深いエピソードはありますか?
西田:まず驚いたのは、佐々部監督は撮影初日に全スタッフの名前を覚えているんですよ。助監督でもサードやフォースの人が自分の名前を覚えてもらっていれば、そりゃ頑張りますよね。ご自身の助監督時代が長かったからこそそうなれるし、一方若いスタッフの成長のために厳しく叱咤する時もある。佐々部監督の作品を見て温かい気持ちになれる根底には、その愛情深さがあるんですよ。佐々部監督と接した中で、深く心に響いたことですね。

■この作品の中に佐々部監督の魂がきっちり入り込んでいる

―――佐々部監督らしさが詰まったまさに集大成で、コロナ禍でしばらく川内大綱引の本番を迎えることが難しい今、本当に大きな役目を果たす映画となりそうですね。
西田:佐々部監督は街の人たちともすぐ仲良くなるし、必ず一緒に飲むんです。この作品は我々が東京から遠征し、単にロケ地として薩摩川内市で撮った映画ではなく、エキストラ、ボランティア合わせて1000人近い方が現場に携わってくださり一緒に作り上げた映画ですから、市民の皆さんもスタッフであり出演者なんです。佐々部監督は昨年の3月31日に亡くなった時点で、本作に関しては監督としての仕事を全てやり終えていました。しかし、ポスターやチラシ作りにおいて監督の意見を伺いたくて、亡くなる数日前まで頻繁にメールでやりとりをしていたのです。だから訃報を聞いた時は全く受け入れられず、脳も感情も時が止まったかのようにシャットダウンしてしまった。その事実を受け入れたくなかったんでしょうね。でも、この作品の中に佐々部監督の魂がきっちり入り込んでいるし、作品という形で監督は生きている。だんだん、そう思えるようになりました。今は監督の代わりに舞台挨拶やインタビューなどでお話しさせて頂くこともありますが、この作品について実際にあったことをそのままお話すれば、それだけで佐々部イズムが伝わると思っています。
 
(江口由美)

 
<作品情報>
『大綱引の恋』(2020年 日本 108分)
監督:佐々部清
出演:三浦貴大、知英、比嘉愛未、中村優一、松本若菜、升毅、石野真子、西田聖志郎
2021年5月7日(金)より全国公開
公式サイト→http://ohzuna-movie.jp/
©️2020「大綱引の恋」フィルムパートナーズ
 

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上の写真、左から、
植木咲楽(UEKI SAKURA)(25)   『毎日爆裂クッキング』 
木村緩菜(KIMURA KANNA)(28)  『醒めてまぼろし』
志萱大輔(SHIGAYA DAISUKE)(26)『窓たち』



日本日本映画の次世代を担う

若き3人の監督作品とコメントを紹介

 

まず、《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》とは――?

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次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》です。文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタート。今回も、学校や映画祭や映像関連団体などから推薦された中から3人の監督が厳選され、最終課題である35ミリフィルムでの短編映画(約30分)に挑戦します。第一線で活躍中のプロのスタッフと共に本格的な映画製作できるという、大変貴重な機会が与えられるのです。


このプロジェクトからは、先ごろ公開された『あのこは貴族』の岨手由貴子(そでゆきこ)監督も輩出されています。「東京」で生きる立場の違う二人の若い女性の生き方を、鋭い洞察力と瑞正な映像センスで観る者の心を掴む秀作です。他にも、『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、さらに『嘘を愛する女』の中江和仁監督や、『パパはわるものチャンピオン』の藤村享平監督、そして『おいしい家族』『君が世界のはじまり』のふくだももこ監督などを輩出して、映画ファンも業界人も注目するプロジェクトです。


今年はどんな若手監督に出会えるのか?――日本映画の次世代を担う新たな才能、3人の監督に作品に込めた想いや作品についてご紹介したいと思います。



 

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■監督:植木咲楽(UEKI SAKURA)

■作品名:『毎日爆裂クッキング』

■作家推薦:PFF
■制作プロダクション: アルタミラピクチャーズ
■出演: 安田聖愛 肘井ミカ 駒木根隆介 今里真 小日向星一 大谷亮介 渡辺えり

■製作総指揮:松谷孝征(VIPO理事長)■プロデューサー:土本貴生 
■撮影:柳島克己
(2021年/カラー/スコープサイズ/30分/©2021 VIPO)


【あらすじ】
ndjc2020-「毎日爆裂クッキング」-pos.jpg味覚障害に苦しむ相島文(安田聖愛)は、あらゆる調味料をかけて無理やり食べていた。それというのも、<食>の情報誌『織る日々』の編集者として働く文は、上司・皆月によるパワハラ、というより執拗なイジメに遭っていたのだ。文が手掛ける連載記事「畑食堂」は読者や上層部にも好評なのだが、それを皆月は妬んでいるのか、文だけに嫌がらせをしていた。同僚は知らん顔、誰も助けてくれない。もうストレスゲージはMAX!そんな時に空想するのが、キッチンで大暴れする憧れのエッセイスト・芳村花代子(渡辺えり)だった。


食についての編集者が味覚障害とは!? ある日、取材に訪れた農家の妻に見破られ、益々自分を追い込んでしまう。さらに、文が敬愛する芳村花代子が出版社に打合せにやってきて、連載記事「畑食堂」のファンだと言われ大喜びする。ところが、なんとその記事の担当者はいつの間にか皆月になっていたのだ。大好評の自信作を皆月に横取りされて、ついに文の怒りが爆裂する!

【感想】
ストレスを抱えながら生きている人が多い現代、にっちもさっちも行かなくなることもあるだろう。だが、自分を追い詰める前に、まずはその原因となる障害に立ち向かおうよと、勇気をくれるような作品。明らかに理不尽なことを強要されれば我慢も限界となる。立場の弱い人々が置かれた現状に着目し、ストレスからくる障害も妄想シーンを交えてユーモラスに描出。さらに、青々とした田園風景の中で作物への愛を語るシーンからは、得意分野で輝ける希望を感じさせてくれる。キッチンで爆裂する渡辺えりが痛快!


【植木咲楽監督のコメント】
ndjc2020-inta-ueki-1.jpgベテランのプロの方々との初めての大規模撮影に緊張しましたが、皆さんに支えて頂いて心から感謝しています。また、渡辺えりさんに出演して頂けたことはとてもラッキーでした。可愛い衣装選びも楽しかったです。

元々「食」をテーマにした作品を撮りたいと思っていたので、コロナ禍で時間が出来たこともあり、今までの想いを全部詰め込んで書いてみました。

テーマについては、昨今の状況や自分の人生の中で、罵倒されたり不当な扱いを受けたりして心に傷を負うことも多くなってきて、そんな重い空気を笑い飛ばせるようなコミカルなテイストの作品を目指しました。

できるだけ重くならないように、弱っている人を追い詰めないように、最悪の事にはならないように、頑張っている人に失礼にならないように、人を傷付けることにならないように、というような事を大事にしながら書きました。

私は自然がある所に惹かれる性質のようで、今回の農家のシーンは、企画の段階から三浦半島で撮りたいと希望しました。豊かな自然を背景にした映画を撮っていきたいです。ラッセ・ハルスレム監督が好きなんですが、『ギルバート・グレイプ』や『サイダーハウス・ルール』でも自然の描写が活かされていると思いました。

今後は、なるべく誠実な映画を作っていきたいです。できれば、見過ごされてしまったり、蔑ろにされてしまいそうなもの、そういう経験で感じた悔しい思いや、また、そこから助けてもらった時の嬉しさとかを忘れないで映画を撮っていきたいと思っています。
 



【PROFILE】1995年大阪府生まれ。
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科にて、高橋伴明、福岡芳穂らより映画制作について学ぶ。監督・脚本を務めた卒業制作『カルチェ』がPFFアワード2018にて入選、第19回TAMA NEW WAVEにてグランプリを受賞。大学卒業後は上京し、石井裕也監督のもとで監督助手を務め、映画・ドラマ・ドキュメンタリー作品の助監督および映像作家としても活動中。
 




ndjc2020-inta-kimura-2.jpg■監督:木村緩菜(KIMURA KANNA)

■作品名:『醒めてまぼろし』

■作家推薦:日本映画大学
■制作プロダクション: シネムーブ
■出演: 小野花梨 青木柚 遠山景織子 仁科貴 青柳尊哉 尾崎桃子
■製作総指揮:松谷孝征(VIPO理事長)
■プロデューサー:臼井正明、古森正泰 
■撮影:今泉尚亮
(2021年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2021 VIPO)

【あらすじ】
ndjc2020-「醒めてまぼろし」-pos.jpg2009年、冬。高校二年生の清水あき子(小野花梨)は自宅から自分の学力で通える最大限に遠い都内の高校に通っている。家では眠れないあき子は常に睡眠不足で、教室や電車内でよく居眠りをしている。ある日、電車内で目覚めると、将棋に夢中になっている一人の少年・吉田(青木柚)が目に入る。吉田との出会いがあき子の暗くて単調な生活に変化をもたらすが、またしても共に過ごす時間が消え去ろうとする。

あき子は時々、昔一緒に住んでいた祖母の家に行って眠りにつく。と言っても、もう家は取り壊され更地になっているのだが、お構いなしに、優しい祖母との思い出に包まれるようにして地べたで寝てしまうのだ。そんな祖母を大切しなかった両親への反発もあり、家には居場所がないあき子にとって、そこが一番安心して眠れる場所だったのだ。

【感想】
大切な人を失って、その面影と温もりを求め過ぎて他を寄せ付けないこともあるだろう。ましてや、思春期のどうしようもない気持ちを持て余し、家族や級友らにも心を閉ざしてしまうこともあるだろう。そんな行き場のない気持ちを抱えた少女が、安心して眠れる場所を探すように他者とのコミュニケーションをとろうとする。その姿に冷ややかなニヒルさを感じさせる。終始仏頂面の少女と、安易な理解を拒むような展開は共感しづらいところもある。思春期の暗い面ばかりでなく、少女ならではの生命力はじけるようなシーンも盛り込んでほしかったなぁ。


【木村緩菜監督のコメント】
ndjc2020-inta-kimura-1.jpgコロナ禍での撮影は、マスクやフェイスシールドなどで相手の表情が見えにくく、気持ちも分かりにくかったように感じて、コミュニケーションを如何にとっていくかが大変でした。それでも、いろんな人が意見を言って下さったり協力して下さったりして作品ができたことにとても感謝しています。

テーマについては、「自分の居場所がないというか、帰る場所がないと思っている人が、どうやって一人で生きていったらいいのか?」と思った時に書いた脚本です。主人公は自己肯定感の低い少女ですが、過去の楽しかった思い出を拠り所にして、新たなコミュニケーションをとろうとしていきます。私が伝えたいテーマは分かりにくいと思うので、どこまで理解してもらえるか分かりませんが、自分の中でこれが正しいと思うことは曲げないようにしました。

好きな映画監督は、田中登監督や熊代辰巳監督に黒澤明監督、アンドレイ・タルコフスキー監督などが好きです。「感性が先行する映像派」と言われるかも知れませんが、今後は、言葉で説明できない感情をちゃんと映画にできたらいいなと思っています。
 



【PROFILE】1992年千葉県生まれ。

日本映画大学卒業。在学中からピンク映画や低予算の現場で働く。卒業制作では脚本・ 監督を務めた「さよならあたしの夜」を16mmフイルムで制作。卒業後は映画やドラマ、CM、MVなど様々な監督のもとで助監督として働く。
 




ndjc2020-inta-shigaya-2.jpg■監督:志萱大輔(SHIGAYA DAISUKE)

■作品名:『窓たち』

■作家推薦:PFF
■制作プロダクション:角川大映スタジオ
■出演: 小林涼子 関口アナン 瀬戸さおり 小林竜樹 里々佳
■製作総指揮:松谷孝征(VIPO理事長)
■プロデューサー:新井宏美 
■撮影:芦澤明子
(2021年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2021 VIPO)

【あらすじ】
ndjc2020-「窓たち」-pos.jpg一緒に暮らして5年程が経つ美容師の朝子(小林涼子)とその恋人でピザ屋のアルバイトをしている森(関口アナン)。その関係性はもうときめくことはないが冷め切っているわけでもない。森には他の女性の気配がする上に、生活を向上させようとする意欲もない。このままこの関係を続けていいものだろうかと不安に感じ始めた朝子は、森に妊娠したことを告げる。

子どもがいる友人宅で父親としての自覚を感じ始めた森は、朝子に子どもを産んで欲しいと伝える。彼なりに正社員になろうとしたり女性関係を清算したりするが、朝子はなぜか冴えない表情のまま。そんな朝子が働く美容室に、森の彼女らしき女性がやって来る。笑顔で対応する朝子。その夜、朝子は森にある告白をする……。

【感想】
同棲も長くなると緊張感も薄れ不安がつのることもあるだろう。お互いの信頼感が揺らぎ始めると、相手の心を試したくなってくる。そんな二人の変化を日常の生活の一部分を切り取ったような描写は、微妙すぎて瞬時には理解しづらいところもあった。本当に一緒に生きていきたいのか、本当に必要な存在なのか、もう少し心情を吐露するようなシーンがあっても良かったのでは?と、単調なトーンで終始した展開にちょっと物足りなさを感じた。それでも、朝子役の小林涼子さんの美しさと芦澤明子カメラマンの陰影の効いた撮影に救われた気がした。


【志萱大輔監督のコメント】
ndjc2020-inta-shigaya-1.jpg私もプロの方々との大規模撮影に緊張しました。「監督」と呼ばれること自体初めてでしたので、監督としてどう振舞えばいいのか分からず戸惑いました。

テーマについては、「絶妙な男女のすれ違いを切り取ったストーリー」、自身の経験上、夫婦ではないが恋人同士とも違うという実感があったので、それを映画にできたらいいなと思って書きました。

設定の説明不足もあり、人物が登場するシーンなどで唐突に思われたシーンもあったかも知れませんが、基本的には脚本に忠実に撮影していきました。本当はもっと前の段階のシーンもあったのですが、30分に収めるが課題でしたので、どの段階から描き始めればいいのかと考えた結果、あのような構成になったのです。

好きな映画というか、何度も見返している映画は、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ザ・マスター』です。物語が好きという訳ではないのですが、無表情の登場人物をただ撮っているように見えて、心の中がありありと映し出されていくところが好きでよく観ています。他にホン・サンス監督も好きで、キム・ミニと一緒に撮っている作品が最高だと思います。

今後は、単純に霊感に興味があるので、そういうものを題材にした作品を撮ってみたいです。どんな撮り方ができるのか、とても興味があります。
 



【PROFILE】1994年神奈川県生まれ。

日本大学芸術学部卒。監督作「春みたいだ」がPFF2017、TAMA NEW WAVE正式コンペティション部門などに入選。また海外では、Tel Aviv International Student Film Festival(イスラエル)などに出品/上映された。現在はフリーランスの映像ディレクター/エディターとしてMVやweb CMを手がける一方、自主映画制作も行い、最新作「猫を放つ」(2019)が公開準備中。
 




★東京で開催された合評上映会のレポートはこちら▶ http://cineref.com/report/2021/02/ndjc2020.html



(シネルフレ・河田 真喜子)

 
 

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「理想の死に方を提案したい」『痛くない死に方』高橋伴明監督、長尾和宏さん(原作)インタビュー
 
 在宅医療による平穏死を提唱する尼崎の開業医、長尾和宏さんの著書「痛くない死に方」「痛い在宅医」を原作に、高橋伴明監督(『赤い玉、』)が終末期医療の現実と理想を描く『痛くない死に方』が3月5日(金)からテアトル梅田、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、京都シネマ、イオンシネマ京都桂川、MOVIX堺、3月12日(金)から塚口サンサン劇場、豊岡劇場にて公開される。
 
 苦い経験を心に刻みながら、在宅医療の道を歩む主人公河田を、『火口のふたり』などの柄本佑が演じる他、河田の誤診から実父を苦しい死に追い込んだと後悔する娘を坂井真紀、悩める河田にアドバイスを与える先輩医師長野を奥田瑛二、全共闘世代のガン患者本多を宇崎竜童が演じている。平穏死から程遠い死に方、枯れるように死んでいく理想の死に方に家族と死について話したくなるような作品。要所要所で在宅による終末期医療で肝心なことや、自分の意思で自分の死に方を選ぶ方法もさりげなく盛り込まれている。同時期に公開される長尾さんの仕事ぶりに密着した毛利安孝監督『けったいな町医者』と合わせて観ることで、より病院や医者との付き合い方や、平穏死を迎えるために必要なことがわかるだろう。終末期医療を見事に言い当てた川柳にも注目してほしい。家族や夫婦の絆、青年医師の成長を描いたという点でも見応えのある、真面目に死を捉えたヒューマンドラマだ。
 
 本作の脚本も手がけた高橋伴明監督と、原作者で医療監修を手掛けた長尾和宏さんにお話を伺った。
 

 

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■余計な力を入れずに作った「理想の死に方の提案」(高橋)

――――「痛くない死に方」の原作者で在宅診療医の長尾先生との出会いは?
高橋:「痛くない死に方」を拝読した後、築地の本願寺で長尾先生の講演会があったんです。それが初対面でしたが、そこでいきなり歌を歌い出したので、びっくりして。この人は規格外だなと(笑)
 
――――原作を元に、どのようにして脚本を作ったのですか? 
高橋:映画の前半はまさに原作通りなのですが、それだけだと中身も辛いし、自分自身が映画にするのも辛い。長尾先生の他の本も読ませていただきましたし、他にも死に関連する本を多々読み、在宅医に関する知識を蓄えていたので、それらを取り入れながら今自分で考えられる「理想の死」を後半部分にくっつけました。理想の死に方の提案ですね。余計な力が全然入らずに作れた作品でした。
 
――――今回、高橋伴明監督によって映画化された感想は?
長尾:高橋監督の作品はずっと観ていましたし、時代の先端を行く作品を作っておられてカッコいいと思いましたし、奥様(俳優の高橋恵子)と結婚された時のことは記憶にバッチリ残っているぐらいです。そんな方が、医療ものの重いテーマのものを撮っていただけるということが、とてもうれしかったです。自分がやってきた素材を高橋監督が脚本という形で料理していただき、しかも色々な調味料を加えて、僕が言いたかったことを一点の無駄もなく入れてくださった。しかも川柳というユーモアも加えてくださった。カルタにして売りたいぐらいです(笑)
 
 
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■阪神・淡路大震災で踏ん切り、町医者になり「平穏死」を知る(長尾)

――――長尾先生に密着したドキュメンタリー『けったいな町医者』で阪神淡路大震災が勤務医から町医者、そして在宅医になるきっかけになったとおっしゃっていましたが、今一度その経緯を教えていただけますか?
長尾:芦屋市民病院で消化器医として勤務して10年目の頃、個室にいる胃ガンの患者さんに夜呼ばれ、家に帰ることと抗がん剤を止めるという二つのお願いを聞いてくれないかと頼まれました。上司に相談した結果どちらもダメだと伝えると「僕はダメな人間です。一度だけ浮気をしたんです」と泣かれたのです。驚いて声をかけて帰宅した真夜中に病院から電話があり、その患者さんが病院の屋上から飛び降りたと。僕はその患者さんを殺してしまったと思いました。その後、阪神・淡路大震災があり、今もコロナで大変ですが当時も無政府状態になっていて、自分で動かなければダメだと踏ん切りがつき、小さな雑居ビルの一角で開業医として再出発しました。当時、朝夕注射にきてくれた肝臓ガンの患者さんがいたんです。その方の具合が悪くなって自宅まで診に行くようになり、僕の初めての在宅医としての看取りとなりました。
 
肝臓ガン専門病棟で仕事をしていたこともあったので、毎日末期の肝臓ガンで血を吐いて血の海になって亡くなる姿を見ていましたが、その患者さんは手厚い治療を施されることもなく、血を一滴も吐くことなく亡くなった。肝臓ガンの患者さんでこのようなケースを見たのは初めてでした。これが平穏死なんです。在宅医もだんだん増えてきて、今は非常勤を入れて8人の医者が600人ぐらいの患者さんを診ています。規模が大きくなっても600人全員と関わるようにしているんです。
 
――――柄本佑さんは『心の傷を癒すということ<劇場版>』で阪神淡路大震災時に避難所などで被災者の「心のケア」に積極的に取り組んだ安先生をモデルにした精神科医を演じていますが、長尾先生の原作を元にした本作では苦い失敗を経て成長していく在宅医を演じています。役作りで監督から何かアドバイスはされたのですか?
高橋:今回は柄本さんに限らず、ほとんど役作りや登場人物の狙いをほとんど話していないですね。時々宇崎さんがロックンローラーになってしまうので、「ちょっと抑えて」と言ったぐらいですね。柄本さん自身も長尾さんの往診に1日同行し、患者さんとどんな接し方をしているかを見ているので、それを参考にしたのではないでしょうか。何かをきっかけに成長させるというのは、映画の王道ですから。
 
――――長尾先生をモデルにした主人公河田の先輩、長野を演じているのは奥田瑛二さんですね。
長尾:奥田瑛二さんが撮影現場で、僕が普段言っていることを言っていただけたのは、やはり全く重みが違います。俳優が語るのは、こんなに人の心に届くものなのだと思いましたし、奥田瑛二さんには感謝しかありません。
 
 
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■下元さんなら紙おむつを履いてくれると思った(高橋)

――――前半、苦しみ抜いて死んでいく老人を演じた下元史朗さんの演技が実に真に迫っていました。
高橋:死ぬ間際に過呼吸になるのですが、その呼吸の仕方は医療監修もしていただいた長尾先生がすごくこだわっておられたんです。ここはリアルにやろうと腹を決めたので延々とカメラを回しましたが、実は役者は大変なんですよ。あとは、紙おむつの姿を他の役者さんは絶対に撮らせてくださらない。他の男優は全員、「自分なら紙おむつは絶対だめだ」と。僕は下元さんなら履いてくれると思っていました。ただあの紙おむつ、もう少しシンプルにならないですか?
長尾:NHKスペシャルでもあんなシーンはないですが、みなさんが知りたいのは紙おむつの実態だとか、そういうのが知りたいんですよ。
 
 
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■リビングウィルと死の壁を描いた初めての映画(長尾)

――――ラストに「リビングウィル」が説明されていましたが、これもこの作品の一つの提案なのですか?
長尾:現在、日本でリビングウィルは3%の人しか書いていません。日本人の終末期医療は3分の2は家族、3分の1は医者が決めており、自分で決めているのは3%ということです。国際的にみれば極めて特異で、欧米では認知症にならない限り100%自分で決めます。日本は世界で唯一リビングウィルが有効であるという法律がないのですが、もう少し希望を出したり、話し合ったりしてもいいのではないか。国は人生会議という言葉を昨今使っていますが、その核となるのはやはり本人の意思です。遺言状もそうですが、紙に書くことで重みが増します。そういうこともこの映画で知っていただけるとうれしいし、高橋監督がリビングウィルを映画で扱ってくださったというのは、映画としても初めてではないかと思います。
 
また、宇崎竜童さん演じる本多が直面する「死の壁」は、亡くなる前に自然と悶えるんです。病院だと麻酔がかかっているので眠ったままになるのですが、自然の最期は死の壁があり、それを描いた最初の映画だと思います。一枚の川柳にも話せば一時間かかるぐらいの重みがありますし、映画という時間の制約がありながら、この一本の映画の中に僕が書いた10冊ぐらいの本の内容が散りばめられています。
 
――――本多が亡くなる前、河田が一緒にお酒を飲んだり、『けったいな町医者』での長尾先生の「笑うこととしゃべることがリハビリ」という言葉を聞くと、やりたいことをやれるのが一番だと思いますね。
長尾:それができるのは現時点では自宅なんです。病院も本当は変わらなければいけないので、病院のお医者さんにこの映画をぜひ見ていただいて、ディスカッションしたいです。僕は強烈なアンチテーゼで本を書いているし、『痛くない死に方』『けったいな町医者』は病院の先生が正視したくない2本だと思います。だけど正視してほしいし、市民の声を聞いてほしいと思います。
(江口由美)
 

『痛くない死に方』(2020年 日本 112分) 
監督:高橋伴明 
原作:長尾和宏「痛くない死に方」ブックマン社
出演:柄本佑、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二、大西信満、大西礼芳、下元史朗、藤本泉他
3月5日(金)からテアトル梅田、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、京都シネマ、イオンシネマ京都桂川、MOVIX堺、3月12日(金)から塚口サンサン劇場、豊岡劇場にて公開
©「痛くない死に方」製作委員会
 

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安先生を熱演の柄本佑、動画メッセージで「エンターテインメント作品として肩肘張らずに楽しんで」『心の傷を癒すということ<劇場版>』完成披露試写会&トークショー
(2021.1.15  OS シネマズミント神戸)
登壇者:京田光広氏(NHK エンタープライズ近畿総支社企画事業部)
              安達もじり氏(テレビ版総合演出 NHK 大阪拠点放送局制作部) 
 
    1995 年 1 月 17 日に発生し甚大な被害をもたらした阪神・淡路大震災から25年目を迎えた2020年に、みずから被災しながらも、避難所などで被災者の「心のケア」に積極的に取り組んだ若き精神科医・安克昌さんが寄り添い続けた被災者たちとの交流と、安さんにとって大切な家族、友人との絆、自分らしい死の迎え方を貫く姿を描いたNHKドラマ(全4回)「心の傷を癒すということ」が放送され、大反響を呼んだ。
コロナ禍の今年で震災から26 年目を迎える今、改めて傷ついた心を癒すためにはどうすればいいのかを改めて問いかける本作が特別に再編集され、『心の傷を癒すということ<劇場版>』として2月12日(金)OS シネマズミント神戸ほか全国公開される。
 
 
  1月15日、OS シネマズミント神戸で開催された完成披露試写会&トークショーでは、本作の企画・京田光広さんとドラマ版の総合演出の安達もじりさんが登壇。京田さんが東日本大震災後に精神科医、安克昌先生の原作に出会い、安さんの文字の魅力や作品の魅力、もう一度被災地と向き合いたいという思いから、いつかは番組にしたいと長年企画を温めていたという。安達さんとの出会いを経て、ドラマ化の企画が動き出した時には安先生のご家族や関係者の方にインタビューを重ね、西宮で被災した桑原亮子さんに脚本を依頼したという。
 
 
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  ここで、緊急事態宣言発出のため残念ながら登壇が叶わなかった主演、安和隆役の柄本佑と、妻終子役の尾野真千子が感謝の気持ちを寄せたビデオメッセージがスクリーンに映し出された。
「会場にお越しの皆さん、こんにちは。柄本佑さん演じる安先生の妻、終子を演じた尾野真千子です。この作品は一人でも多くの方に、観たこと、感じたことを伝えたくなるような、これからも受け継ぎたくなるような作品です。この作品に含まれる本当に温かいメッセージは一人でも多くの方に届けたいと思うようなものであり、伝える人がこれからもいてくれると、心強くなるようなメッセージが含まれています。皆さんにもこの気持ちが届くことを願っております」(尾野)
 
「この作品は2020年1月、NHKテレビで放映されましたが、まさか劇場版で大きなスクリーンでみなさんに観ていただけるとは思っていなかったので、感動しています。撮影中神戸の街をあるいて、とても肌に合うなと思いました。神戸がすげえなと思ったのが、手の届く範囲に全部あること。ぎゅっと詰まっていて暮らしやすい街だなと感じました。早く神戸ロケのある作品に出会えないかと真面目に思っています。スクリーンで上映される映画になったことで、もう一つ安さんのご家族にプレゼントできるものが増えたことがうれしいです。震災や心のケアもありますが、一本のエンターテインメント作品として肩肘張らずに、フラットに楽しんでください」(柄本)
 
 
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  心のこもった二人のメッセージを観た後は、柄本と尾野のキャスティングについて語られた。安達さんは「柄本さんは元々顔見知りでいつかご一緒したいと思っていました。この企画を立ち上げた時、年頃や見た目もなんとなく安先生に似ているなと思い、ちゃんと強い思いをもってドラマを作るのだけど、ご一緒しませんかとお声かけしました。尾野さんは、今までご一緒したことがありましたがキャラクターが濃い役が多かったのです。今回はこの物語にとても感情移入をしてくださり、自然体で神戸で生きる人としてそこにいてくれました。本当に安夫妻がそこにいるという時間がとても多く、素敵な現場でした」と撮影を回想。一方、京田さんは「この企画が立ち上がり、モデルとなった安さん一家とご挨拶の会をした時、キャスティングで名前を挙げてくださったのが尾野さん。見事最高のコンビになりました。佑君は、安先生に似ているというより、彼なりに演じて表現してくれたことがすごく良かったと思います」とその演技に賛辞を惜しまなかった。
 

 

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 本作は実にリアルな避難所のシーンが登場するが、このシーンでは300人ぐらいの地元の方がエキストラ出演し、撮影に協力したという。震災を題材にしたドラマを神戸で撮影したことを振り返り、「スタッフ全員で丁寧に説明しながらロケをさせていただいたが、涙が出るぐらい、みなさんきれいな気持ちでご協力いただきました。ロケをするたびに神戸の皆さんと一緒に作らせていただいた感覚を覚えましたし、そういうのが画面に映っていると思います」(安達)、「神戸出身なので阪神大震災直後に取材に入り、三日三晩取材を続けたが、避難所には行けなかったんです。その後東日本大震災や熊本地震では避難所に通い続けたので、今回は同じ風景だと思いました。神戸の方が集まれば何らかの体験をしている中『あの時に何もできなかったけれど、エキストラ出演することで震災を伝えることに協力できた』という人もいらっしゃり、神戸のDNAというか、みんなで作らせていただいたという思いです」(京田)。
 
 

 

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 さらに、安先生のご家族にちゃんと届けたいという思いでドラマを作ってきたという京田さんは柄本のメッセージに触れ、「思いをちゃんと届けることはドラマでやり遂げたということ。公開のタイミングで緊急事態宣言になるとは思っていなかったので今回はオンラインでの開催を提案したのですが、劇場の方を含め、神戸の方々はスクリーンでやりたいとおっしゃってくださった。この時期だからこそ、この映画は絶対に届けなければいけないと思いましたし、安プロデューサーから『プレゼントは終わったから、日本中の人に届けるんだ』と言われている気がします」と決意を新たにした様子。また、柄本の「肩肘張らずにエンターテイメントとして楽しんで」という言葉が一番良かったと褒め、家族の愛など、映画の世界に没頭してほしいと訴える場面もあった。最後に演出をした安達さんは「安先生の本を読ませていただいた時から、これはもっと大きな思いがそこにあるという思いがしたので、奇をてらわずに、そこにある表現すべきこと、思いに寄り添って作ることを肝に命じました。この映画をご覧になった方は、ぜひ安先生の本を読んでみてくださいと言いたいですね」と、映画と安先生の著書「心の傷を癒すということ 神戸…365 日」の両方を味わってほしいと呼びかけた。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『心の傷を癒すということ<劇場版>』
総合演出:安達もじり
原案:安克昌「心の傷を癒すということ 神戸…365 日」 (作品社)
脚本:桑原亮子
音楽:世武裕子 主題歌:森山直太朗『カク云ウボクモ』(UNIVERSAL MUSIC)
出演:柄本佑、尾野真千子、濱田 岳、森山直太朗、浅香航大、清水くるみ、上川周作、 濱田マリ、谷村美月/キムラ緑子、石橋 凌、近藤正臣 ほか 
2月12日(金)OS シネマズミント神戸ほか全国公開
公式サイト→https://gaga.ne.jp/kokoro/
Ⓒ映画「心の傷を癒すということ」製作委員会
 

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