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『テーラー 人生の仕立て屋』

 
       

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作品データ
原題 英題 Tailor  
制作年・国 2020年 ギリシャ・ドイツ・ベルギー
上映時間 1時間41分
監督 監督・脚本ソニア・リザ・ケンターマン
出演 ディミトリス・イメロス、タミラ・クリエヴァ、タナシス・パパゲオルギウ、スタシス・スタムラカトス、ダフニ・ミホプール他
公開日、上映劇場 2021年9月3日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹ほか全国ロードショー

 

偏屈なこだわりにとらわれない方向転換で、

新しい扉を開くという生き方

 

長く一つの仕事に精を出し、それで生活の糧を得て、そこそこ認められたとしたら、人は自分の仕事に誇りを持つだろう。そういう状態がずっと続くなら、この上ない幸せだろうが、なかなか思い通りにいかないのが、世の常、人の常。そう、この映画の主人公のごとく、ある時、大切なものを諦めざるをえなくなるかもしれないのだ。


TAILOR-500-6.jpg舞台はギリシャの首都アテネ。父から裁縫の技術を教わり、父と共に高級スーツの仕立て屋店を36年間営んできたニコス(ディミトリス・イメロス)が主人公だ。彼は50歳になる独身男性で、けして外交的とはいえず、寡黙だが、律儀で仕事熱心、優しいところもある。隣家に住む少女ヴィクトリア(ダフニ・ミホプール)との他愛ない交流で心を安らげている。


ところが、ギリシャを襲った経済危機の波が、この小さな仕立て屋店にも及んできた。高級なスーツを注文する顧客が激減、ついに銀行から店を差し押さえると言われ、プライドの高い父親はそのショックで倒れてしまう。何とかして店を再建させたいと願うニコスが思いついたアイデアとは…。


TAILOR-500-3.jpgお客さんが店に来ないなら、こっちからお客さんを探しに行こうと、ニコスが始めた“移動式テーラー”は、まあみごとな空振り三振になるのだが、外へ出て行ったことで、予想外の注文が飛び込む。なんとウェディングドレスである。ここからは、ニコスの大きな変貌ぶりに注目してほしい。いかにも高級店でございますという店の中でどことなく窮屈な表情をしていたニコスが、太陽の下、大勢の女性たちを相手に、徐々に水を得た魚のようになっていく。心底変わりたいと思えば、人は本当に変わることができるのだと示してくれるかのよう。


TAILOR-500-5.jpgヴィクトリアの母親オルガ(タミラ・クリエヴァ)が仕事を手伝ってくれるようになったおかげで、女性服のバリエーションが増え、恋のときめきまでおまけについてくる。紳士服ひと筋にやって来た主人公が、そんなに簡単に女性の服を作れるの?という疑問はある。その道のプロならどう答えるだろうか。ただ、リアルでないから、面白さが減るというわけでもない。


TAILOR-500-1.jpg日本人的感覚でいえば、かなり濃い顔立ち(眉毛も目も鼻も口も、すべてが大きくて主張している)のディミトリス・イメロスは、実績を積んできたギリシャのベテラン俳優。そんな彼が、職人としての手は器用なのに、気持ちの表し方が不器用な男を印象深く演じている。本作で長編デビューした監督・脚本のソニア・リザ・ケンターマンは、“次世代のアキ・カウリスマキ”と目されているそうだが、私的には、少しテイストが異なるように思う。ジャック・タチやバスター・キートンを本作の制作過程で研究したらしく、それについては功を奏しているように感じた。ともあれ、人生の微妙なニュアンスをうまく映しとる若き女性監督が、また一人ここに出てきたことがうれしい。

 

(宮田 彩未)

公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/tailor/

配給:松竹

(C) 2020 Argonauts S.A. Elemag Pictures Made in Germany Iota Production ERT S.A.

 

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