原題 | Never Rarely Sometimes Always |
---|---|
制作年・国 | 2020年 アメリカ |
上映時間 | 1時間41分 |
監督 | エリザ・ヒットマン |
出演 | シドニー・フラニガン、タリア・ライダー、セオドア・ペレリン、ライアン・エッゴールド、シャロン・ヴァン・エッテン他 |
公開日、上映劇場 | 2021年7月16日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば(本館・別館)、京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OS、7月23日(金)~シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
~傷つきやすいガラスの青春に寄り添う~
アメリカ・ペンシルベニア州。17歳のオータム(シドニー・フラニガン)と、そのいとこのスカイラー(タリア・ライダー)は、同じ高校に通い、同じスーパーでレジのアルバイトをしていて、心の通じ合う仲だ。ところが、オータムの妊娠が発覚。出産を望まないオータムは何とかしようと思うが、ペンシルベニア州で未成年が中絶をするには親の同意が必要だということがわかる。オータムの悩みを知ったスカイラーは、レジの売上げ金の一部をポケットに突っ込み、二人で長距離バスに乗り込んだ…。
中絶手術を受けるために大都市ニューヨークへ向かうという、この無謀ともいえる旅は、17歳の少女ふたりを取り巻く世界がどんな表情で関わってくるのかを教えてくれる。バスの中で出会った青年ジャスパー(セオドア・ペレリン)はいい加減なナンパ男かと思わったが、実は…という意外な本質を知らされるし、ヘルスセンターのカウンセラーはとても親身になってくれるいい人だった。オータムが、気持ちの温度差を感じている家族と比べたくなっても仕方がない。世界はもっと苛酷で、辛辣なものであったかもしれないのに、監督はそのような姿を晒したいとは思わなかったようだ。
いいなと思えるシーンがあった。お金に困った少女たちのためにATMを探しにスカイラーを連れていったジャスパー。彼は、スカイラーのほうに気があるようで、柱の陰でスカイラーにキスしているのをオータムは見つけてしまう。ジャスパーに気づかれないように、そっと後ろからスカイラーの指を握りしめるオータム。この何気なくも繊細な気持ちの伝え方・受け取り方にじいんとした。
スカイラーは、孤独で寡黙なオータムと世界を結ぶ“窓口”のような存在といっていい。言葉でなく、瞳の中をのぞき込むだけで、オータムの思いをすぐさま察知するのではないかというような。このような友情は実に得難いものだ。大げさな演出などなく、ドキュメンタリータッチに近い語り口で淡々と描かれる物語。彼女たちの旅が、いい意味でも、逆の意味でも、一生けして忘れられないものになることは間違いない。ここにあるのは、特異な青春像ではなく、状況が違っても何かしら心惹かれ共感できるものがあってほしいと願いたくなる“或る青春”なのだ。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://17hitomi-movie.jp/
【配給】:ビターズ・エンド パルコ
ⓒ2020 FOCUS FEATURES, LLC. All Rights Reserved.