「AI」と一致するもの

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 3月15日に閉幕した第15回大阪アジアン映画祭で、クロージング作品『蒲田前奏曲』の世界初上映前にグランプリ以下各賞の受賞結果が発表され、グランプリ(最優秀作品賞)は、ナワポン・タムロンラタナリット監督の『ハッピー・オールド・イヤー』(タイ)に決定した。
 
 大阪アジアン映画祭ではドキュメンタリーの『あの店長』(OAFF2016)、ABCテレビ賞受賞作『フリーランス』(OAFF2016)、死生観をテーマにした『ダイ・トゥモロー』(OAFF2018)と、年を追うごとにファンを増やし、昨今はチケット完売が相次ぐ人気を誇るナワポン・タムロンラタナリット監督。今年グランプリに輝いた『ハッピー・オールド・イヤー』は、ヨーロッパでミニマリズムに目覚めた主人公が、デザイン事務所にリフォームするため、タイの実家の楽器修理店兼自宅を断捨離するところから始まる物語。現代的な身近なテーマで、映画もミニマムなのに奥深く、そしてモノとの関わりを通して自分の友達や元カレ、そして家族との関係を見つめ直していく。深い洞察力に満ち、ナワポン・タムロンラタナリット監督を新しい次元に押し上げた、まさに彼の代表作になるであろう作品だ。2018年に日本でもスマッシュヒットした『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の主演女優、チュティモン・ジョンジャルーンスックジンが、本作では周りに自分勝手さを気づかされるヒロインを好演。今まで、アジア映画ファンの中では評判が高かったものの、劇場公開に至らなかったナワポン・タムロンラタナリット監督だけに、当映画祭のグランプリ受賞を機に、『ハッピー・オールド・イヤー』が日本での初劇場公開作になることを、切に祈りたい。
 
 
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 また注目の観客賞には、ABCテレビ賞受賞作『七月と安生』(0AFF2017)に続き、デレク・ツァン監督とジョウ・ドンユーがタッグを組み、さらに相手役に中国人気アイドルのジャクソン・ユーを迎えた『少年の君』(中国・香港)が見事に受賞。既に中国でも大ヒットし、映画祭では2回の上映が、いずれも満席の大人気作。こちらも日本での初劇場公開に期待がかかるところだ。
 
その他の受賞結果は以下のとおり。
 
★来るべき才能賞
パク・ソンジュ(PARK Sun-joo) 韓国/『家に帰る道』(Way Back Home)監督
<授賞理由>
この映画の時間と、ヒロインの過去が癒されていく時間が水の流れのように重なり、ゆっくりと浄化されていく過程が美しかった。監督として今後の作品にも期待したい。
 
★最優秀男優賞
間瀬英正(MASE Hidemasa) 日本/『コントラ』(Kontora)主演男優
<授賞理由>
映画全体の狂気を体現し、緊張感を絶やさず、強烈なインパクトを与えてくれた。
 
★ABCテレビ賞
『愛について書く』(Write about Love) フィリピン/監督:クリッサント・アキーノ(Crisanto AQUINO)
<授賞理由>
シリアスなテーマも織り込まれつつ、観れば明るく元気になれる、素晴らしいラブコメディである。
 
★薬師真珠賞
レオン・ダイ(Leon DAI/戴立忍) 台湾/『君の心に刻んだ名前』(Your Name Engraved Herein/刻在你心底的名字)助演男優
<授賞理由>
主人公青年の中年時代を、繊細さと緻密にコントロールされた情念で説得力たっぷりに演じきり、『君の心に刻んだ名前』に核心的な深みと陰影を与えた。彼の演技人生の新しい一頁がここに記されたことは、間違いない。
 
★JAPAN CUTS Award
『ある殺人、落葉のころに』 日本・香港・韓国/監督:三澤拓哉(MISAWA Takuya)
<授賞理由>
腐敗した小さな町、男特有の毒性、若者の不安をひるむことなく描き切った『ある殺人、落葉のころに』は極めてよく作り込まれた物語として、インディ・フォーラム部門の中でも際立っていた。三澤拓哉監督のストーリー構築に対する鋭い目と映画言語の卓越した手腕が存分に発揮されている。潔く大胆でありながらも完成度の高い本作は、三澤監督の今後の作品はもとより、日本インディペンデント映画のダイナミックかつ重要な表現の将来性について、大いに期待を抱かせるものである。『ある殺人、落葉のころに』にJAPAN CUTS Awardを授与できることを光栄に思う。
 
★芳泉短編賞
『Hammock』 日本/監督:岸建太朗(KISHI Kentaro)
<授賞理由>
ほぼ全編が1軒の家の中で展開する『Hammock』は大きな悲劇と、喪失や記憶、夢、希望といった思いを、ほとんど言葉を発しない1人の少女の視線から、素晴らしいバランスで描く稀有な短編作品である。さまざまな感情が重層的に描かれ、いずれ長編映画になるべき作品であろう。
 
第15回大阪アジアン映画祭はコチラ

阪急うめだ本店フランスフェア 2020 「フランスの国旗」の画像検索結果フランス映画の魅力トークショー実施! 

 
3月18日(水)~24日(火)に阪急うめだ本店で開催される《フラ ンスフェア 2020》。会期中の3月 20 日(金・祝)は、映画トークショーを実施いたします。 フェアのテーマであるノルマンディーを舞台にしたフランス映画と、昨年のカンヌ国際映画祭審査員賞受賞、 本年度アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた最新作『レ・ミゼラブル』について、ライター・編集者・ 翻訳者・フランス語講師でもある小柳帝さんに語っていただきます。   
 

《フランス映画の魅力 トークショー》 

【実施日程】3月 20 日(金)16 時~
【場所】阪急うめだ本店 9 階 祝祭広場
【登壇者】小柳帝〔ライター・編集者・翻訳者・フランス語講師〕

※イベントは事情により中止・変更する場合がございます。


◆【トーク内容】◆
フランスフェアのテーマに合わせ、ノルマンディーを舞台にしたフランス映画を、シェルブール(『シェルブール の雨傘』)やドーヴィル(『男と女』)など、ノルマンディーの海岸線を辿りながらご紹介します。また、最新のフ ランス映画として、今年のアカデミー賞の国際長編映画賞にもノミネートされている『レ・ミゼラブル』(3/13 よりシネ・リーブル梅田ほかにて公開)についてご紹介します。 
 

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『レ・ミゼラブル』
3/13(金)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸 3/14(土)~京都シネマにて公開 
© SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS 
 
 
 
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    『シェルブールの雨傘』
      3/13(金)~テアトル梅田
    《ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち》
      内で上映 
       ©ciné tamaris 1993  

 

◆【小柳帝 プロフィール】◆
映画・音楽・デザイン・知育玩具・絵本などの分野を中心に、さまざまな媒体で執筆活動を行なってきた。主要 な編・著書に、『モンド・ミュージック』、『ひとり』、『EDU-TOY』、『グラフィックデザイナーのブックデザイン』、 『ROVA のフレンチカルチャー A to Z』、『小柳帝のバビロンノート 映画についての覚書 1・2』、また、翻訳書 に『ぼくの伯父さんの休暇』、『サヴィニャック ポスター A-Z』などがある。その他、CD や DVD の解説、映画 パンフレットの執筆等多数。
 

 
 

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上の写真、左から、
①川崎 僚 (KAWASAKI Ryo)(33)     『あなたみたいに、なりたくない。』 
②島田欣征(SHIMADA Yoshiyuki)(33) 『Le Cerveau - セルヴォ -』
③山中瑶子(YAMANAKA Yoko)(22)     『魚座どうし』


日本映画の次世代を担う新たな才能3人の監督作品とコメント紹介

 
《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》とは? 
次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》は、文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタート。今回も、学校や映画祭や映像関連団体などから推薦された中から3人の監督が厳選され、最終課題である35ミリフィルムでの短編映画(約30分)に挑戦した。日本映画の次世代を担う新たな才能3人の監督に作品に込めた意図や作風についてお話を伺った。
 


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■監督:川崎 僚(KAWASAKI Ryo)
■作品:『あなたみたいに、なりたくない。』
■作家推薦:シナリオ・センター 
■制作プロダクション:ダブ 
■出演:阿部純子、小島 聖、鳥谷宏之、吉倉あおい、藤田真澄
(2020年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2020 VIPO)


【あらすじ】
ndjc2019-「あなたみたいに、なりたくない。」-sub3.jpg30歳までに結婚しようと結婚相談所に入会したOLの鈴木恵(28)は、職場の小山先輩(42)のように、「婚期を逃した孤独な女性」にはなりたくないと思っていた。だが、何人かとお見合いするも適合する相手には巡り合えず。ようやく優しく誠実そうな相手に出会えたかと思ったのだが、先々まで決めてしまう相手の積極性に臆して連絡を絶ってしまう。少しトラブルになりかけたところを小山先輩に助けられ、初めて彼女の自宅に招かれる。そこで小山先輩の意外な一面を知り、結婚について相談していく内に、自分自身について考え始める。

 
【感想】
川崎僚監督はプロット作成やシナリオライターの経験者だけあって、安定感のある構成や心を掴むセリフに、特徴を捉えたキャラクター描写に優れ、完成度の高い作品に仕上げている。タイトルの「あなたのように、なりたくない。」をキーワードにして、エッジの効いたユーモアを生み出して爽快。久しぶりにスクリーンで見た小島聖の包容力のある自然体の演技が、作品により説得力を持たせていた。誰もが共感し勇気付けられるような作風で、川崎監督の他の作品も観たくなった。
 

【インタビュー】
ndjc2019-kawasaki-1-1.jpg川崎僚監督は、自身が28歳の時に結婚相談所やアプリなどを利用して婚活していた経験を基に脚本を書いたそうだ。「いま頑張らないと!女性は20代でないと選ばれないから!と言われ焦っていたが、中々相手を選べなかった」。そして「自分はどう生きたいのか?と自分自身を見つめ直し、性別や世間の常識から解放されたい」という想いを作品に込めたという。

また、こだわった点は「足元のカット。この作品は“現代のシンデレラ”。理想の相手と巡り合うまでは慣れないヒールを履いて見栄を張っていたが、最後はラフな格好でスニーカーを履いている。様々なシーンで主人公の気持ちを足元で表現したかった」。

演出については、「ガラス細工のような阿部純子さんには、一緒に主人公を演じるような気持ちでずっと寄り添っていた。小島聖さんは、私が思っている以上の心情をセリフに込めてくれた。表現したいことを“どう伝えるか”が難しかった」。好きな映画は伊丹十三監督の『マルサの女』。「知らない世界を教えてくれるのが映画だと思っている。複雑な人間同士が意外な展開や結末を迎えるのが面白い。外連味のあるものも好き」。周囲の意見も尊重しつつ、自分の世界観を創れる監督になりそうだ。
 
【プロフィール】
1986年大分県生まれ。
早稲田大学第二文学部卒業。シナリオライターとして映画・ドラマの企画開発に携わる傍ら、ニューシネマワークショップにて映画製作を学ぶ。その後「笑女クラブ」「彼女のひまわり」等の短編映画を製作し、数々の国内映画祭に参加。2018年に初長編映画「wasted eggs」を監督し、タリン・ブラックナイツ映画祭に正式招待、イタリアのレッジョ・エミリア アジア映画祭でも上映された。
 


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■監督:島田欣征(SHIMADA Yoshiyuki)
■作品:『Le Cerveau - セルヴォ -』
■作家推薦:デジタルハリウッド大学
■制作プロダクション:東映京都撮影所
■出演:田中沙依、藤崎絢己、南 岐佐、八田浩司、上瀧昇一郎
(2020年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2020 VIPO)
 
【あらすじ】

ndjc2019-「セルヴォ」-sub1.jpgシングルマザーの前川早弥の息子・蒼太はネオン症という奇病にかかっていた。蒼太を救うための生体移植に早弥自身の身体が適合することが分かって喜んでいた矢先、交通事故に遭う。目覚めると、見知らぬ研究所のような部屋に拘束された上に、奇妙な子供博士とボディガードが立っていた。早弥は蒼太の手術のことが心配になり脱走して病院に向かうが、自分が全くの別人に入れ替わっていることに気付き、さらに蒼太の傍には早弥そっくりの女が居てパニックになる。蒼太の病気はどうなるのか?別人になってしまった早弥は蒼太を取り戻すことができるのか?

【感想】
最愛の息子を救うため、母の強い想いが最後に選択するものとは?――島田欣征監督の専門であるデジタル技術を活かしたSFサスペンスは、突如別人になってしまった恐怖と焦りと息子を想う母の強い愛を描くことによって、人間とロボットとの相違点を浮き彫りにする。さらに、「子供のためなら他者を犠牲にしてまでも」という母親のダークな面の表現に挑戦し、人間性の本質に迫ろうとする意図が伺える。緊迫感を出すためか、全体的にぎこちない感じがした。できれば作品の中で生きるキャラクターの情景(演技や背景)に少し柔軟性を持たせてもよかったのではと思った。

【インタビュー】
ndjc2019-shimada-1.jpg「『マトリックス』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『E.T.』も好きだけど、いろんなジャンルの映画が好き。SFやビジュアルや機械ものとかでサスペンスを作りたい。観終わって、“踊らされたな”という感じで観客を巻き込めるようなもの」。テーマに関しては「暗めのものが好きなので、モヤモヤを抱えた生き方や他者を犠牲にせざるを得ないキャラクターがいてもいいのではと思っている。自己犠牲が美徳という捉え方とは対照的な嫌な気分にさせるダーク路線も表現していきたい」。

撮影中苦心した点については、「未経験のことばかりで、しかも設定は空想でしかないので、そこにリアリティを持たせるのに苦労した。機械なのに人間らしい、アンドロイド系はドライという考え方ではなく人間らしく描きたかった」。作風について「技術は日々進歩するので最重要という訳ではない。時代の先を行く描写で、子供心をくすぐるような誰が見ても面白いストーリー性のあるものを作っていきたい」。人間のダークな面にも注視するユニークさといい、子供の頃に感じたわくわくドキドキ感を忘れない感性は貴重だ。

【プロフィール】
1986年 東京都生まれ。
大学時代に実写の撮影、編集、3DCGを専攻。イギリス留学中にファインアート、写真、VFX、グラフィックを学ぶ。CG制作会社、デザイン会社を数社経て2013年に独立。監督として広告映像やMVを企画・演出、CGデザイナーとしても映画やCMの制作に携わる。また一方で、CGを教える大学の非常勤講師も務める。初監督作品の短編映画『宵の棒鱈』(2016) が海外や国内の映画祭に選出・招待上映。
 


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■監督:山中瑶子(YAMANAKA Yoko)
■作品:『魚座どうし』
■作家推薦:PFF
■制作プロダクション:オフィス・シロウズ
■出演:根本真陽、外川 燎、山田キヌヲ、伊東沙保、カトウシンスケ
(2020年/カラー/ビスタサイズ/30分/©2020 VIPO)ふたりが出会う、わかってしまう。
 
【あらすじ】
ndjc2019-「魚座どうし」-sub2.jpgみどりと風太は、川を隔てた別々の町の小学校に通う4年生。なんの接点もないふたりだが、あえて言えばふたりとも大人の事情に振り回されて、子供らしく生きられないでいること。みどりの家庭は、外国へ行ったきりで帰って来ない父親のせいで笑顔が絶えてしまった母親と二人暮らし。みどりが熱を出しても、嫌々病院へ連れて行って「あなたのために生きてるんじゃないから」と吐き捨てる冷たい母親。一方、風太は、新興宗教の布教活動に余念のない柔和な表情の母親と、反抗期の姉との3人暮らし。母の活動を手伝う風太は時々怖い目に遭うこともある。そんな風太の唯一の慰めは優しい理髪店の主人だったが……。みどりの学校では異様にテンションの高い担任が何やら事件の犯人捜しを始めて……。
 
【感想】
大人になると忘れてしまうことがあれば妙に記憶に残っていることもある。子供の頃、大人の心無い言動に傷つき、それがトラウマになることもある。二人の小4の子供を通して、大人の子供への無関心や勝手な振舞いによって子供が孤独になったり抑圧されたりして、子供らしく生きられないことを映像で訴えようとする意欲作である。ただ、子供の自然な表情を捉えようとする意図は理解できるが、映像が暗くてその表情が分かりにくい。昨年公開の『存在のない子供たち』(レバノン)のように強い意志で大人に訴える訳ではなく、振り回されている状況を描くだけでは感情移入しにくいように思った
 

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【インタビュー】
山中瑶子監督は、「子供の時の学校と家の中の世界が全てだった頃、人間関係が日々変わってしまう小学校って結構残酷だなと思っていた。親や先生たち大人を1人の人間と気付き始めたのが小4か小5の頃で、その時の大人の見え方を作品に盛り込んだ」。学校のシーンでは、「子供たちの自然な表情から物語りたかったので、子供たちはコントロールしてはいけない存在だと思っていた。エキストラの扱いはかなり大変で、拘束時間も午後4時まで。スタッフともどうする?どうする?と言いながら、一番最後の学級会のシーンは10分しかない状態で1テイクで撮った。子供たちの“何が起こったの?”という感じの表情が撮れたのは良かった」。

また、山中監督は、「人間の複雑さを描いた、音がなくても観られる映画が好き」だそうで、ドラマと映画の違いについても常に考えていて、「人間性を重視しているのか?何を求めているのか?内容にこだわった、“画で見せる”作品を撮りたい」。山名監督の22歳という若い感性と吸収力で、さらなる成長が期待される
 
【プロフィール】
1997年長野県生まれ。
日本大学芸術学部中退。独学で制作した初監督作品『あみこ』がPFFアワード2017に入選。翌年のベルリン国際映画祭に史上最年少で招待され、香港、NYをはじめ10カ国以上で上映される。監督作に、オムニバス映画『21世紀の女の子』(2019)の『回転てん子とどりーむ母ちゃん』。
 


《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》

このプロジェクトからは、『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、『ちょき』の金井純一監督、『話す犬を、放す』の熊谷まどか監督、さらに『嘘を愛する女』の中江和仁監督や、『パパはわるものチャンピオン』の藤村享平監督、『花は咲く』『ANIMAを撃て!』などオリジナル脚本で活躍中の堀江貴大監督、そして今年も活躍が期待される『おいしい家族』のふくだももこ監督などを輩出している。
 


ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019「合評上映会」のお知らせ
<大阪> 
期間▶3月13日(金)~19日(木) 連日18:30~ 
場所▶シネ・リーブル梅田
舞台挨拶▶3月14日(土):映画パーソナリティの津田なおみさんと、ndjc2019監督3人とのトークセッション
公式サイト▶ http://www.vipo-ndjc.jp/
 

(河田 真喜子)

 
 
 
 

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「自転車だけでなく、ちゃんと映画に出てくれるんだ」佐藤浩市、先輩火野正平との共演に感謝『Fukushima 50』完成披露舞台挨拶
(2020.2.10なんばパークスシネマ)
登壇者:佐藤浩市、火野正平
 
 2011年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災。それから間もなく、テレビで目を疑うような光景を目撃し、日本のみならず、世界中が危機感を募らせた福島第一原発事故の衝撃を今でも忘れられない人が多いのではないだろうか。今まで語られることのなかった現場の惨劇と、その最中、命がけで福島第一原発を守ろうと奮闘した作業員たちや、関係者たちの姿を、とことんリアルにこだわり描いた超大作『Fukushima 50』が、3月6日(金)より全国ロードショーされる。
 

 原作は、福島第一原発事故の関係者90人以上への取材をもとにした門田隆将渾身のノンフィクション作品「死の淵を見た男吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)。官邸や東京の東電本社からの指示に対峙しながら、刻一刻と状況が変化する現場の指揮を執る吉田昌郎所長を渡辺謙が、福島第一原発1機、2機の当直長、伊崎利夫を佐藤浩市が演じる他、日本の実力派俳優が集結、海外のメディアからFukushima50(フィフティ)と呼ばれ、その勇気と行動力を賞賛された、作業員たちの決死の奮闘ぶりを、目の当たりにすることだろう。

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 2月10日、なんばパークスシネマで開催された『Fukushima 50』舞台挨拶付き先行上映会では、上映前、出演の佐藤浩市、火野正平が登壇。佐藤は原作を読む前に、監督とプロデューサーから本作のオファーがあったことを明かし「正直、時期尚早ではないかとか、プロパガンダになるのは嫌だという思いもありましたが、ほぼ現地雇用が多かったという職員の方を中心に描きたいと監督に思いを告げられ、そういうことなら最後まで一緒に走りたいと伝えました」と回想。火野も「俺たちがやった役は、逃げられないなら戦おうぜという人たち。多分あそこにいた人はそうだったんだろうなと思って。まあ、見てちょうだい」と他の共演者の気持ちを代弁しながら、自身のベテラン作業員役を振り返った。
 
 

■71歳の火野正平、控え役に気付かず、酸素ボンベを担いで吹き替えなしの熱演。

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 映画では震災後の5日間の福島第一原発の中での職員たちの奮闘が事実に沿ってリアルに描かれるが、実際に日が経てば立つほど、作業員役の俳優たちの疲れ具合が如実に表れている。震災後から時系列で撮っていったという佐藤は「皆ノーメイクで、どんどん人の顔が変わっていく。それは映画的には非常に良かった」と言えば、火野は「3週間ぐらい、一つのセットで男たちばかり50人もいてごらん…」と心底ウンザリした様子。さらに重い酸素ボンベを持ち、率先して現場に入る役を演じ、「ずっと隣に控えの人が待機していたのに、全部自分でやっちゃって、最後の日まで気づかなかった」と71歳とは思えない体力で吹き替えなしの名演を見せたという。
 時には電源が落ちて、真っ暗になるシーンもあり、現場ではスタッフたちが頭を抱えることも多かったというが、「防護服を着てしゃべるので、セリフも不明瞭でわかりにくいし、専門用語が飛び交いマイナス要素ばかり。でも、それが妙にリアルに聞こえたり、いいふうに転換していく気がして、映画の神様がいましたね」。
 
 

■人が一人もいない町に対する複雑な思いは、映画に映ってくれていると思う。

 火野は現在NHK-BSで日本全国を自転車で回る「にっぽん縦断こころ旅」に長年出演中だが、「日本はどこ行っても元被災地だから。そういう国に住んでいるという自覚がある日本人って強いなと思う。福島は被災後2年目に行って、僕が(福島の人に)頑張ってと思っていたのに、火野さんがんばって!と言ってくれた。日本人って美しいな」と、福島でのエピソードを語った。佐藤は、クランクアップ後、ラストシーンとなる数年後の桜のシーンを撮りに行ったとき、「何も終わっていない。下手すれば、始まっていないかもしれない」と痛感したという。「帰還困難区域で、人が一人もいない、生活の匂いが全くしない町が日本にあることを、どれぐらいの人が知っているんだろうという複雑な思いで見ていました。僕自身と役(伊崎利夫)と必ずしも一致はしないけれど、そういう複雑な思いは映画に映ってくれていると思います」(佐藤)
 
 

■一回り上の先輩でも、撮っているときは仲間。作業員たちの雰囲気を映画でも映し出せた。

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 終始リラックスムードの火野を前に、最初の緊張感がほぐれてきた佐藤は火野との長年の付き合いを振り返り、「かなり古いんです。僕より一回り上だけど、先輩後輩があるにせよ、僕らの世界で撮っているときは仲間です。30数年前にご一緒して、死ぬほど飲まされて、今では正平ちゃんと呼んでいます」。今回は、火野をはじめ、平田満らベテラン勢も佐藤が演じる伊崎の元で作業する仲間として加わり「自転車だけでなく、ちゃんと映画に出てくれるんだと思いました(笑)。本当に先輩が現場にいると、助かります。福島第一原発で前線の当直室にいた作業員は地元の人で、学校の先輩後輩もいました。その雰囲気が映画の中でも実現して、本当にうれしかったです」と、危機に直面した当直室の撮影に思いを馳せた。
 
 最後に「とにかくたくさんの人に見てもらいたい。よろしくお願いします」(火野)
「映画の最後に桜を見ながら僕は一言つぶやきますが、桜は自分たちのために実を作り、花を咲かせて生きている。人間は勝手にその桜に思いを馳せる。人は色々なことを自分で考えることができます。災害は深い爪痕しか残さないけれど、負の遺産にせず、少しだけ考えて、次の世代に渡したい。そう思える映画だと思います」(佐藤)と結んだ舞台挨拶。

Fukushima 50には「50人」と「50歳以上」というダブルミーニングがあり、映画の中でも未来のある若い世代は作業に行かせず、年配の作業員が率先して危険な作業に向かった事実も明かされる。真実を知るのに遅すぎることはない。まだ記憶に新しい福島第一原発事故に改めて向き合い、日本の進むべき道を考えるきっかけにしてほしい。

(江口 由美)
 

 

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<作品情報>
『Fukushima 50』
(2019年 日本 112分)
監督:若松節朗
原作:「死の淵を見た男吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
出演:佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工、富田靖子、佐野史郎、安田成美
3月6日(金)より大阪ステーションシティシネマ他全国ロードショー
公式サイト→https://www.fukushima50.jp/
 (C)2020『Fukushima50』製作委員会

 

 
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