原題 | La bonne epouse |
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制作年・国 | 2020年 フランス |
上映時間 | 1時間49分 |
監督 | 【監督・脚本】:マルタン・プロヴォ(『ルージュの手紙』『セラフィーヌの庭) |
出演 | ジュリエット・ビノシュ(『真実』『私の知らないわたしの素顔』)、ヨランド・モロー(『セラフィーヌの庭』『神様メール』)、ノエミ・ルヴォウスキー(『PLAY 25年分のラストシーン』『マチルド、翼を広げ』『カミーユ、恋はふたたび』)、エドゥアール・ベール(『今さら言えない小さな秘密』) |
公開日、上映劇場 | 2021年6月4日(金)~京都シネマ、6月25日(金)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
ジュリエット・ビノシュが女性の生き方に新風を吹き込む!
歌おう♪踊ろう♪讃えよう♪自由をもたらした女性たちを!
フランスの男性はとにかく女性に優しい。旅をしていて一番気持ちよく過ごせる国だと思う。ところが、そんなフランスでも近年まで良妻賢母を育てる全寮制の花嫁学校が存在していたとはびっくり。カソリックの国なので家庭を守る貞淑な女性が尊重されたのは納得できる。ジュリエット・ビノシュ主演の『5月の花嫁学校』は、1968年の「五月革命」直前のアルザス地方の花嫁学校が舞台。校長や教師を始め女生徒たちが、旧態依然の女性の生き方を見直し、時代の波に乗ろうとする様子と自由への讃歌をコミカルに描いたとてもキュートな作品。
日本でも高等学校教育の中に家政科・生活科学科などという科目があるが、本作の花嫁学校は、玉の輿を目指して近隣の農家や商家の娘たちが良妻賢母の花嫁修業のためにやってくる学校である。裁縫・料理・育児・園芸・保険衛生・家計・行儀作法に妻としての務めに至るまで、「良き妻の鉄則」なるものを学んでいくのだが、現代人からすると到底従える代物ではない。と同時に、今の自由な生き方ができることに感謝せずにはおられなくなる。
1967年、アルザス地方にあるヴァン・デル・ベック家政学校の入学式。年々入学者が減り、学校の経営も大変。それでも校長のポーレット(ジュリエット・ビノシュ)は、講師のジルベルト(ヨランド・モロー)と修道女のマリー=テレーズ(ノエミ・リヴォウスキー)と共に生徒たちを張り切って迎える。ところが、経営者である夫のロベール(フランソワ・ベルレアン)が急死。さらに夫は、ポーレットや姉のジルベルトを無給で働かせ、ギャンブルや性風俗の趣味で多額の借金を抱えていたことが判明。女には銀行口座を持たせず、学校の経営一切を握っていた夫の不正に途方に暮れるポーレットたち。
そこで、ポーレットはジルベルトと共に銀行へ相談に行くと、なんと第二次世界大戦で死に別れたはずのかつての恋人アンドレ(エドゥアール・ベール)と再会。終戦後、二人はそれぞれの人生を歩んできたが、今では二人とも伴侶を亡くした自由の身。恋の炎が再燃するのは火を見るより明らか!校長としての責務と女としての幸せの狭間で悩むポーレットは、アンドレの求愛を素直に受け入れることができないでいた。そんな時、波乱が訪れることに……。
折しも、パリでは5月革命が起きていた。旧態依然のド・ゴール政権に反発するパリ大学の学生たちのデモから始まった運動は、労働組合のゼネストに発展し、瞬く間に全土に新たな自由主義が広がっていった。それは女性の生き方をも変え、それまで許されなかった銀行口座の新設や、職業や出産の選択の自由、家庭内でも男性と対等な立場で生活するなど、現代では当たり前のことがこの時期にようやく認められるようになったのだ。
ポーレットは、ヴァン・デル・ベック家政学校の支持者の招待を受けて生徒全員を連れてパリへ向かっていたが、革命の旋風吹き荒れるパリを目の前にして、吹っ切れたように新たな女性の生き方を目指して前進していく――女性の自由のために闘った世界の偉人たちを讃えながら……。
『8人の女たち』以来になるだろうか、ジュリエット・ビノシュのコミカルな映画は。共演している修道女役のノエミ・ルヴォウスキーと同じ56歳だが、相変わらず可愛らしくて美しい。それから義姉のジルベルト役のヨランド・モローは、『ミックマック』や『セラフィーヌの庭』などで不思議な個性で魅了したが、本作でも素直で可愛らしいおばちゃん役で和ませる。この二人が着こなすファッションにもご注目。カラフルな色彩の衣装が緑豊かなアルザス地方の美しさに映えて、鮮やかなコントラストをもたらしている。心が弾むようなテンポで、観る者の心まで軽くしてくれるようだ。
(河田 真喜子)
公式サイト:https://5gatsu-hanayome.com/
配給:アルバトロス・フィルム
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