「AI」と一致するもの

tsuda.jpg

日本映画史に映画監督として絹代さんの名を刻むきっかけになれば。
「映画監督 田中絹代」著者、津田なおみさんインタビュー
 
シネマパーソナリティーの津田なおみさんが、初の著書となる「映画監督 田中絹代」を5月11日に出版した。サイレント映画の時代から活躍し、戦中、戦後と常にトップスターとして注目を浴びた田中絹代。300本近くの映画に出演し、『愛染かつら』『女優須磨子の恋』『西鶴一代女』『雨月物語』『楢山節考』『おとうと』等多数の代表作で知られる大女優には、映画監督としての顔もあった。なぜ監督になりたかったのか。監督として描きたかったことは。津田さんの優しい語り口そのままに、田中絹代の監督としての一面や、全6作品に迫っている。日本映画の変遷も分かりやすく解説され、映画初心者にもオススメしたい一冊だ。著者の津田なおみさんに、お話を伺った。
 
 

 

■監督作が6本もあったことに驚き。迷わず「自分で映画監督、田中絹代を研究しよう」と決意。

―――元々は女性監督のことを研究しようと思ったところから、スタートされたそうですね。
津田:日頃から映画のことを書いたり、話したりさせていただいていますが、どうしても物の見方が主観的になってしまうので、もっと映画を分析する力を付けるために2012年に大学院に入学しました。修士論文のテーマに女性監督を取り上げようと考え、日本に的を絞って女性監督を調べていると、田中絹代さんの名前が出てきたのです。絹代さんは大女優ですが、その時まで彼女が監督をしていたことは知らなかった。しかもなんと6本も監督作があるのには本当に驚きました。絹代さんを監督として取り上げた書籍は今までなかったですし、研究論文も監督作の中の数本を取り上げたものはあっても、全作品をまとめて研究したものはありませんでした。指導教授からも勧められ、私も「自分で研究しよう」と思ったのが始まりですね。
 
―――私も、監督の一面は知らなかったです。戦前から戦後まで国民的人気の大女優、田中絹代さんを取り上げることに対して、迷いは全くなかったですか?
津田:迷いは全くなかったですが、調べはじめると、大変でした。論文が何もないので、まず文献を集めるところから始めなければならず、作品を安易に観ることもできません。
 
―――そこはお聞きしたいところでした。著書では、この6本のことを細かく分析されていますが、どうやってご覧になったのですか?
津田:近代フィルムセンターにアーカイブで全作品が保管されています。研究者は申請をすれば観ることができるので、センター内の試写室にたった一人で2日間に分けて6本全て観ました。一人田中絹代監督映画祭です(笑)。『恋文』はDVDが発売されているので取り寄せましたが、それ以外の作品は本を執筆するのに1度観ただけでは書けないので、最終的には修士論文を書く2年間で3回観に行きました。
 
―――文献もかなりの数をあたられていますね。
津田:田中絹代さんについて書かれた書物と、雑誌ですね。検索で少しでも引っかかれば、それを確かめに方々の大学図書館等へ足を運びました。欲しいコメントが得られるかどうかは行ってみなければわかりませんが、このことについてしゃべっていることが欲しかったというコメントに出会えた時は、本当にうれしかったですね。
 

■なぜ6本で監督を辞めたのか。その真意を知るためのエピソード、証言探しに苦労。

―――特に、探すの苦労したのはどんなコメントですか?
津田:彼女がなぜ6作品で監督を辞めてしまったのか。私はそこがどうしても知りたかったのですが、あまり分からなかったのです。本文で触れていますが、6作目の『お吟さま』撮影当時、宮川一夫と並び撮影界の巨匠と呼ばれた宮島義勇に、監督だった絹代さんは随分絞られていたそうです。文献の裏付けは取れませんでしたが、その様子を見た、聞いたという話を多数の方から伺い、その状況なら彼女はこう思うだろうと、私なりの考察で書いています。監督を続けなかったことに関してご本人もあまり語っておらず、今回の執筆で一番苦労した部分でした。
 
―――当時を知っている方の証言として、神戸100年映画祭のゲストで来場された香川京子さんのコメントも掲載されています。
津田:香川さんは、バッシングを受けて自宅に籠っていた絹代さんを訊ねた時のことを語って下さいました。他にも、「監督をしていないように言われることもありましたが、絹代さんはちゃんと監督していらっしゃいましたよ」とおっしゃっていたのです。昔の事なので詳しくは覚えておられず、本にはこのコメントは書いていませんが、香川さんは今まで何度も、絹代さんが現場でちゃんと監督をしていたのかと聞かれていたのだと思います。実は、『お吟さま』主演の有馬稲子さんにもお手紙を書き、取材を申し入れたのですが、「女優としては尊敬しておりますけど…」と取材は叶いませんでした。当時のことを知っておられる方がどんどん少なくなってしまい、あと10年早く着手できていれば、もっと多くのお話が伺えたのにと、つくづく思いましたね。
 
 
kinuyo1.jpg

■絹代監督に「あなた出たらいいのよ」と声をかけられて。

―――証言を得るにもかなり難しい状況の中、原作者のお子様で、撮影中に田中絹代監督と交流された方とお会いできたそうですね。
津田:5作目となる『流転の王妃 満州宮廷の悲劇』原作者の愛新覚羅浩さんの次女、福永嫮生(こせい)さんです。嫮生さんは、ご両親の写真を関西学院大学に寄贈されています。本書にも掲載させていただいている写真が偶然展示されていたので、大学を通じて嫮生さんをご紹介いただきました。もう50年ほど前の話ですが、絹代さんはとても気さくで「あなた(映画に)出たらいいのよ」と何度も声をかけて下さっていたそうです。
 
―――一番多くの資料を提供してくださったのが、下関にある田中絹代記念館だったそうですが、記念館の成り立ちも含め、取材のエピソードを教えていただけますか?
津田:田中絹代さんは下関出身です。生涯独身を通したので、遺品は又従弟の小林正樹監督が管理をされていました。小林監督が下関に彼女の遺品を集めた記念館を作ろうと動き、2010年に小林監督が管理していた遺品を下関市に譲渡し、オープンしたのが田中絹代記念館です。絹代さんが当時使っていた監督台本もありますし、着用していた帽子やハイヒール、自宅に置いていた棚など、絹代さんの私物が本当にたくさんあるのです。季節ごとに展示も変わりますし、監督コーナーには、監督協会に入っていたことを示す書類や、影響を受けた監督として溝口監督などの写真も飾られていました。また、小林正樹監督が作られた毎日映画コンクールの田中絹代賞の過去受賞女優も展示されています。事務局長からは「監督として書かれた本はないので、是非頑張ってください」と激励していただき、色々とお力を貸していただきました。
 

■監督になった一番強い動機は、「なんとしてでも映画業界で生き残りたい」

kinuyo2.jpg

―――地道な資料の読み込みを重ねて、女優田中絹代が監督を志した動機を津田さんなりの仮設を立てながら章立てで解き明かしています。最終的には映画しかなかったというのが、一番強い動機に見えますね。
津田:本書でも触れていますが、家族を経済的に支えているのは絹代さんでした。彼女の肩に全員の生活がかかっていたのです。また、先日蒼井優さんが「私は映画に関わっている人たちとずっと生きていたい」とおっしゃっていたのですが。田中絹代さんもそう思っていたのではないかと。この映画業界が大好きだし、(女優として)もう若くないと言われても、なんとしてでも映画業界に生き残りたい。だからいつか監督できたらとずっと思っておられたのではないでしょうか。
 

■一番好きなのは、女性の性欲を描く3作目『乳房よ永遠なれ』。

―――6本も残しながら、作品の評価は当時あまり高くないと本書でも書かれていますが、実際にご覧になった津田さんの評価はどうですか?また、一番好きな作品は?
津田:作風があまりにも一作ずつ違うのには驚きましたが、例えば「そんなに小津監督風に撮らなくてもいいのでは」と思う一方、小津風に撮れるのは逆にすごいなとも思います。一番好きなのは3作目の『乳房よ永遠なれ』です。本当に不思議な角度で撮っています。例えば乳がんで乳房を切除した主人公がベッドに仰向けになっており、その上から恋人が覆いかぶさる図を、ベッドの下から撮っています。透明のベッドなのでしょうか、主人公の背中と恋人の顔が見えて、斜め上に電球が見える。男性監督なら、死を間際に恋人と一体になる喜びを噛みしめる女性の顔を映すでしょうが、絹代さんはそうはしなかった。アップになるのは、喜んでいるだけではない戸惑いも見える恋人の顔です。愛しているとはいえ、相手は病気なのですから。一方、表情が映らない主人公は、何を思っているのか分からない。視点を変えて、面白い撮り方をしています。『乳房よ永遠なれ』は女性の性欲を描きながらも、生々しくなり過ぎないように鏡を使ったり、背中で見せたり、少しオブラートに包みながら、言いたいことを表現しています。そこが上手いと思いました。
 
―――『乳房よ永遠なれ』までの初期2本は、周りが「監督、田中絹代を失敗させてはいけない」と、映画業界をあげて全力支援していたのも、当時の日本映画界の裏事情が垣間見えるエピソードでした。
津田:今で言えば、吉永小百合さんが監督するようなものですから。絶対に失敗させられないと皆が思っていたはずです。でも絹代さんは、初監督の前に、成瀬監督の『あにいもうと』の撮影では監督見習いとしてずっと撮影に立ち会った努力家でした。(「絹代の頭では監督できない」と言い放った)溝口監督に対して「この人に認められなければ」という気持ちがずっとあったのでしょう。必死だったのだと思います。溝口監督が亡くなった後、『サンダカン八番娼館 望郷』でベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞した際、「監督したことがこの賞に結び付いたことを、溝口健二に言いたい」という趣旨のコメント(原文は著書に掲載)を残していますが、あれが本音だと思います。女性監督第一号の坂根田鶴子さんは監督としての仕事に迫った本が2冊(いずれも女性著者)出版されているのに、絹代さんの本がなかったのも、他の監督たちが力を貸した作品だから、彼女の作品と認められてこなかったのでしょう。でも、私は監督として最終的にOKを出す以上、どれだけサポートがあってもそれは絹代監督の作品だと思います。
 
―――確かにそうですね。それらの作品全てを解き明かすだけでなく、日本映画の黎明期からの流れや当時の日本の状況も丁寧に解説しながら進行するので、すっと頭の中に内容が入ってきます。津田さんが語っているような優しい文体で、「小説 田中絹代」のように絹代さんの人物像が立ち上がってきますね。
津田:田中絹代さんが生きた時代がどうであったか。そして日本映画界がどういう動きをしていたか。作品は、その時代に置かなければ分からないことがたくさんあるので、昭和初期から戦後の映画のことを分からない方にも理解していただけるように、並行して分かりやすく書くことを、とにかく心がけました。
 
 
kinuyo3.jpg

■少し先をいく女性を描こうとした映画監督、田中絹代

―――後は、戦前戦後の女性が社会の中でどういう立場に置かれていたのか、その中で田中絹代さんがどういう存在であったか。監督として作った作品の中に、どんな意義があったのかを、女性ならではの視点で考察しています。
津田:どの作品もヒロインは悲しい目に遭うのですが、最後は必ず立ち上がる。そこは一貫しています。自分で死ぬと決めて死ぬことも(『お吟さま』)自立として描きます。絶対に男に迎合しないです。2作目の『月は上りぬ』は小津監督が脚本を手掛けており、前時代的な台詞を言わされている箇所もありますが、最終的には家から出るという形をとり、少し先をいく女性を描く意図が読み取れます。彼女自身がそういう女性が主人公になる映画がないと憂いでいたのでしょう。
 

■素の絹代は孤独。全てを映画に捧げ、プライベートも「田中絹代」を演じきった。

―――監督としての田中絹代さんに焦点を当てた本を書かれた今、改めて彼女の人生をどう感じましたか?
津田:きちんと日本映画史に点を残した人だと思います。絹代さんが映画監督であったことは、今まで素通りされていました。この本を執筆したことで、絹代さんはささやかではあっても、きちんと女性が活躍する社会が本当に来ればいいと思い、監督した6作品できちんと点を残してきた。それが面になればいいのにと思っていた人だと私自身も実感できました。その一方で、溝口監督にとても執着していたことから、負けず嫌いな点もあったのでしょう。そして色々な映画監督が放っておけない面もお持ちだった。絹代さんは本当に言葉遣いが丁寧です。監督として普通なら「よーい、スタート!」と言う場面でも、「今から参ります」という具合で、どんな人にもとても丁寧な応対をされる方でした。だからいい意味で“監督田中絹代”を演じて6作品を作った人だと思います。一生田中絹代を演じ続けた。一方、自宅ではいつも電話の前で、オファーの電話がかかるのを待っていると何かで読んだことがあります。素の彼女は孤独だったのでしょう。全てを映画に捧げ、プライベートも演じきった人ではなかったのでしょうか。
 

■日本映画史の年表の中に「田中絹代監督」をきちんと入れるきっかけになれば。

―――ありがとうございました。最後に、メッセージをお願いいたします。
津田:私は、日本映画史の年表の中に「田中絹代監督」をきちんと入れるきっかけになればと思い、執筆しました。今は「女性監督特集」というくくりでは記載されても、映画監督本になると、田中絹代が入っていないのです。それどころか、女性監督はほとんど入っていません。この本は薄いですし、まだまだ深める余地がたくさんありますから、「田中絹代は映画監督だった」ともっと多くの方に知っていただき、研究していただいたり、女性監督が羽ばたく起点を再発見してもらえるとうれしいです。
(江口由美)
 

 
「映画監督 田中絹代」
著:津田なおみ 
出版:神戸新聞総合出版センター 
 

30nengo-550.jpg

yuzai-bu-550.jpg生田斗真、瑛太『友罪』特別試写会舞台挨拶

(2018年5月13日(日)17:10~17:30  なんでもアリーナにて)


5月13日(日)大阪のなんでもアリーナにて、『友罪』の特別試写会が開催され、主演の生田斗真さん、瑛太さんが舞台挨拶に登壇しました。


上映後の興奮冷めやらぬ300人を越える観客の前に二人が現れると、会場からは黄色い大歓声!生田さんは「本日はお足元の悪い中、ありがとうございます。皆さんが映画を観ている間、大雨警報が出ていたみたいですよ。帰りも気をつけて帰って下さいね。」と生憎の天気になったことを気遣いながらご挨拶すると、瑛太さんは「この前の完成披露も雨だったので、生田斗真には気をつけた方がいいですよ(笑)」と生田さんへの雨男いじりの発言で会場から笑いを誘うと共に「素晴らしい作品が出来たと思っているのでお客さんに観てもらえて本当に嬉しい」と熱い気持ちが込もったご挨拶を。


yuzai-bu-500-1.jpg和やかな雰囲気で始まったイベントですが、三度目の共演について質問が及ぶと、生田さんは「普段から瑛太のことを知っている分、関係性が築きやすかった。覚悟がいる作品だけど、二人だからこそ増田と鈴木が演じられたと思う」と、一方瑛太さんからは「斗真はパーフェクトな人間なので僕は捻くれたことをしたくなるんですが、どうやったら斗真の感情を揺すぶらせられるかを考えながら演じました」と二人の関係性が垣間見れる回答が。


yuzai-bu-240-1.jpg「友罪」という映画タイトルに因み、お互いの罪だなーと思う部分を問われると、生田さんは「瑛太は、どんなに朝が早くてもいつも現場にお洒落な格好をしてきてシャレオツ!罪だ!と思います」と一言。瑛太さんは「全体的に罪だなと思います。役者としての幅や説得力があって…」とギャップのある真面目な回答が。これには生田さんも思わず「シャレオツとか言って、おれ瑛太のこと真面目に考えてないみたいじゃん!」と。会場からは再び笑いが起こっていました。


最後に生田さんから「映画をご覧になって賛否両論あると思いますが、皆さんに語り合って貰うきっかけになればいいなと思います」と、瑛太さんからは「人それぞれ感じ方が違うと思いますが、周りの方に問題作と広く伝えて貰えたら」と、映画公開に向けて期待が高まるご挨拶で舞台挨拶は締めくくりとなりました!


(オフィシャルレポートより)

 


yuzai-550.jpg『友罪』

【STORY】
ジャーナリストの夢に破れた益田。他人との交流を避ける無口な鈴木。
二人は町工場で出会い、同じ寮で暮らし始める。
「俺が死んだら悲しい?」「悲しいに決まってるだろ」
益田にとって他愛のないやり取りだったはずのそれは、鈴木の悲壮な思いを秘めた質問だった。 やがて少しずつ友情が芽生えてゆく二人。だが、ある事件をきっかけに益田は、鈴木が17年前の連続児童殺害事件の犯人だった “少年A”ではないかと疑い始める――。

 
・(2018年 日本 2時間9分)
・監督・脚本:瀬々敬久
・原作:薬丸岳『友罪』集英社文庫刊
・出演:生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、佐藤浩市他
・2018年5月25日(金)~全国ロードショー
公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/yuzai/
・(C) 薬丸 岳/集英社 (C) 2018映画「友罪」製作委員会

 

 

yuzai-zeze-500.jpg

「友達」という言葉が背負わされている純粋性、優しさを大切にできる映画にしたかった。
『友罪』瀬々敬久監督インタビュー
 
17年前に許されない罪を犯した鈴木(瑛太)と、癒えることのない傷を抱えた元ジャーナリストの男益田(生田斗真)。二人の男の出会いから、止まっていた時計が動き出す…。瀬々敬久監督(『64−ロクヨン−』、『ヘヴンズ ストーリー』)の最新作『友罪』が5月25日(金)から全国ロードショーされる。ミステリー界の旗手、薬丸岳のベストセラー小説を映画化した本作では、生田斗真と瑛太のW主演に加え、佐藤浩市が息子が起した罪によって家族を’’解散’’したタクシー運転手を、富田靖子が過去に少年院に勤め、唯一鈴木の過去を知る女性、を演じる他、夏帆が元AV女優役で瀬々監督作品に初参加している。様々な過去を抱えた登場人物が、過去とどう折り合いをつけ、未来を描いていくのか。元犯罪者と真の「友達」になれるのか。様々な問いとその答えを映画の中で見つけていく。そんな醍醐味が感じられる作品だ。
 
脚本も手がけた瀬々敬久監督に、原作で感銘を受けた点や、本作に反映させた日ごろの問題意識について、お話を伺った。
 

 
yuzai-550.jpg

■原作者薬丸岳さんに感じた、こだわりの強さと優しさ。

――――犯罪者に復讐する物語はよくありますが、社会復帰した元犯罪者と、かつては追う立場だった元ジャーナリストとの友情がテーマとなる物語は珍しくもあり、とても奥深かったです。薬丸岳さんの原作を読まれた時、どの部分に特に魅力を感じたのですか? 
瀬々監督:薬丸さんが、ずっと少年犯罪をテーマに書き続けてきたという部分で、作家としてのこだわりの強さを感じました。また、ジャンルは違えど、同じ作り手として尊敬の念を抱きました。犯罪を基にした作品は興味がありますが、原作者の態度に大きく触れたのは初めてに近い体験で、とても印象的でした。実際、薬丸さんにお会いすると、とても優しい方ですし、「友罪」というタイトルもすごく優しい。シビアな内容の物語ですが、友情という純粋さが出てくる映画になればという気持ちで、作りはじめました。
 
 
yuzai-500-2.jpg

■未来へ向かうベクトルと、過去に向かうベクトルが、それぞれ映画の中で進んでいく。

――――モチーフになった事件をあまり想起させず、元犯罪者のその後の人生を描く未来志向の映画になっていますが、脚本を書くにあたって重視したことは?
瀬々監督:事件そのものは取り返しがつきません。事件を起こした本人でさえ、どうしたらいいか分からないのです。そのようなことが起こった時、その後を描いていく上で、事件そのものがどうだったかも大切ですが、それから未来に向かっての比重が大きくなるのだと思います。一方で、過去もこの映画の中でとても重要な物語です。鈴木は自分の起こした事件がどうだったのか。死んだ少年への思いをどう償いとすればいいのかを、益田と出会って発見していきます。益田自身も、事件に対する気持ちを整理していく訳です。また、益田と鈴木以外に、心に傷を持っている人たちが登場します。彼らにもそれぞれ過去に事件があり、それに対して今贖罪的なことをしています。例えば佐藤浩市さんが演じる山内は、息子が交通事故で何人もの児童を死傷させてしまった。その謝罪を実行するために、自らも家族を解散してしまいます。でも本当に謝罪ができているのか。そして息子たちと本心で付き合うことができているのか。山内は、この映画の時間を通す中で、最後に息子との会話や本当の謝罪がどういうことかを発見していくのだと思います。そういう意味では未来へ向かうベクトルと、過去に向かうベクトルが、それぞれ映画の中で進んでいく話ですね。
 
 
yuzai-500-3.jpg

■現実は一つの出来事に対してあまり深く考えない不思議な情報社会。そこから一つ一つの事件に関わり、重く感じなければならない立場の人を作り出す。

――――山内は、事故を起こした息子に「犯罪者が幸せになってはいけない。子供も産んではいけない」と言い放ちます。犯罪者に関わる人たちにも様々な影を落とす様子が印象的でした。
瀬々監督:ここで描かれているのは、どれも極端な例です。僕達は、毎日様々な殺人事件や天災にニュースとして接しています。しかもそれは次から次へと新しい情報に更新されていくので、一つの出来事に対してあまり深く考えないのが、普通の生活でしょう。それが幸せなのかもしれませんが、実際に僕達と関係がないように見えるところで、事件は起こっています。僕たちはそういう希薄で不安定な情報社会で生きているなと思う訳です。だったら、もし一つ一つの事件に深く関わり、重く感じなければならない登場人物たちだったらどうなるだろう。そのような考えから作っている部分はありますね。
 
――――鈴木は早い段階から「友達」という言葉を口にしていましたが、瀬々監督は鈴木をどのようなキャラクターと捉えていますか?
瀬々監督:瑛太さんは、皆が理解不能な芝居を敢えてしています。普通の人では理解できないような人間像を目指されていました。一方で映画の中で表立って現れてはいませんが、脚本を作るうえでは、鈴木は生や死を子どもの頃から人一倍考えてしまう人間という設定にしています。どうして人は死ぬのかという不思議さを抱え、命はどういうことなのかと深く考え込み、逆にその謎を解くために人を殺してしまうような少年像を考えていました。
 
――――ファーストシーンはその鈴木と益田の背中が映りますが、それぞれの背中から人物像がふわりと浮かび上がってきました。ハッとさせられるオープニングでしたが、演出の意図は?
瀬々監督:かなり早くからファーストシーンは背中から始めようと決めていました。観客が二人を追いかけるように見せる方がいいと思ったのです。タイトルバックも二人が背中を向けて立っています。それは二人が、観客に面と向かって顔を見せるという存在ではないということでもあります。鈴木は社会の中でひっそりと生きている訳ですし、益田もどこか逃れて生きている訳で、二人の背中から入るというのは、そういう二人の社会の中での立場を象徴しています。
 
 
yuzai-500-4.jpg

■かけがえのない一瞬を生きている時に誰もが感じる愛情、友情が、罪深い世界を救うことができる。

――――生田斗真さんが演じる益田も、最初は鈴木から友達呼ばわりされることに抵抗感を覚えながら、最後には「友達だから死なせたくない」と気持ちが変化していきます。鈴木と呼応しながら、自身のトラウマを乗り越える難しい役でしたが、どのような演出をしたのですか?
瀬々監督:生田さんには、観客と同じ立場に立ってくれとお願いしました。この事件を全て受け止める訳で、鈴木といる時も受け身です。観客と同じ目線の「普通の人」としてこの映画で生きてほしいと言いました。友達という概念で言えば、私のような年になると「彼は友達だ」とはなかなか言えません。中学生や高校生の頃のもので、そういう意味では「友達」というのはとても純粋なものだと思います。原作者、薬丸さんの世界観は少年犯罪があったとしても、その中で彼らの未来に関して優しい目線で見ています。友達だったら救えるのではないかと。情報化社会となり人間同士の関係性が薄れてきた中で、友情や愛情、情けというものが、悲惨な出来事に対して救いを投げかけることができるのではないか。後半、益田と鈴木が公園へ飲みに行くシーンがありますが、本音を語り、とても大切なシーンになっています。そういうかけがえのない一瞬を生きている時に誰もが感じる愛情、友情が、罪深い世界を救うことができる。そういう意味では、友達という言葉が背負わされている純粋性、優しさを大切にできる映画にしたいと思って作っています。
 

■元犯罪者から問いかけられる逆転構造。そこから起こる本心と本心のぶつかり合いは、普通の生活ではなかなか起こりえない。

――――公園のシーンでは、鈴木が「死んで罪を償おうと思うけど、心の底から生きたいと思っている」と告白します。本作のキーワードのようにも見えました。
瀬々監督:台詞もさることながら、瑛太さんの表情と独特の言い方が心に響きますね。原作では居酒屋という設定になってるんですが、元犯罪者である鈴木側から、普通の人である益田側に問いかけがある訳です。「君もどこかで傷ついているんじゃないか」と聞きますよね。元犯罪者から問いかけられる逆転の構造です。必然的に本心と本心のぶつかり合いになっていく。その会話劇が素晴らしいと、原作を読んだ時から思っていました。元犯罪者と、それに関わろうとしている人との間に本音のぶつかり合いが起こる。そういうことはなかなか普通の生活では起こりえないことです。だから、その流れの中で鈴木が言った「心の底から生きたい」という台詞が、胸に響くのだと思います。
 
 
yuzai-500-5.jpg

■『友罪』は、事件のその後を描いていることが興味深い。

――――瀬々監督は、今まで様々な犯罪をテーマに作品を作ってこられましたが、平成を締めくくるタイミングで『友罪』が公開されることに、どのような意義を感じますか?
瀬々監督:神戸連続児童殺傷事件が起きた1990年代(平成初期)は、暗い時代でした。阪神大震災もありましたし、オウム真理教関連の事件が象徴していたと思います。景気も低迷し、皆が精神性のものを追求していく時代でした。2000年代になると、金融的自由主義が発展し、ネットも流行り出し、仮想通貨もそうですが、価値が目に見えなくなる時代、ふわっとした時代になっていきました。ほんの10年前に起きた事件のことも忘れ去ってしまい、奇妙な明るさすら感じます。東日本大震災で絆を再認識することもありましたが、それもまた忘れつつあります。そういう意味で、この映画は事件のその後を描いていることが、興味深い。色々な事件や出来事があり、その後の先には次の未来がある。それが、『友罪』の中から見えてくるはずです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『友罪』(2018年 日本 2時間9分)
監督・脚本:瀬々敬久
原作:薬丸岳『友罪』集英社文庫刊
出演:生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、佐藤浩市他
2018年5月25日(金)~全国ロードショー
公式サイト⇒http://gaga.ne.jp/yuzai/
(C) 薬丸 岳/集英社 (C) 2018映画「友罪」製作委員会
 

soratobutaiya-550.jpg

yakyu-butai-550.jpg

London-550.jpg

ndjc2017.jpg上の写真、左から、
★齋藤 栄美(さいとう えみ)(34) 『トーキョーカプセル』 
★奥野 俊作(おくの しゅんさく)(37)『カレーライス Curry and Rice』
★金 晋弘(きむ じんほん) (41)『もんちゃん』
★池田 暁(いけだ あきら) (42)『化け物と女』
★中川 和博(なかがわ かずひろ)(31)『さらば、ダイヤモンド』


【大阪での上映会のお知らせ】
■日時: 3月17日(土)18:15~
            3月18日(日)~3月23日(金)18:30 ~

■劇場: シネ・リーブル梅田map
入場料金:(5本まとめて)一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円
*全席指定

◆3月17日(土)/ndjc2017参加監督5人による初日舞台挨拶予定
3月17日(土)18:15開映 20:45舞台挨拶開始(21:05終了予定)
※登壇者は変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。

2017年/カラー/スコープサイズ/©2017 VIPO
公式サイト⇒ http://www.vipo-ndjc.jp/



《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》とは?

 
ndjc2017-pos.jpg
次世代を担う長編映画監督の発掘と育成を目的とした《ndjc:若手映画作家育成プロジェクト》は、文化庁からNPO法人 映像産業振興機構(略称:VIPO)が委託を受けて2006年からスタートした。このプロジェクトからは、『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞に輝いた中野量太監督や、『トイレのピエタ』の松永大司監督、『ちょき』の金井純一監督、『話す犬を、放す』の熊谷まどか監督、今年は、『嘘を愛する女』(1/20公開)の中江和仁監督や、『花は咲く』(2/24公開)、『ANIMAを撃て!』(3/31公開)など、オリジナル脚本で活躍中の監督を輩出している。


今回も、最終課題である35ミリフィルムによる短編映画(約30分)に挑んだ5人の作品を、2月24日からは東京にて、3月10日からは名古屋にて、3月17日からは大阪にて一般公開されることになった。


以下は、それぞれの作品紹介と会見でのコメントを紹介しています。


ndjc2017-mon.jpg★『もんちゃん』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:金 晋弘(きむ じんほん) 
出演:大和田 賢、眞島秀和、平尾菜々花、榎本梨乃、中村映里子
制作プロダクション:ツインズジャパン

【作品紹介】
保育園年長組に通うもんちゃんは、ママが亡くなり、慣れない育児と家事で朝からパニックになっているパパに代わり、幼い妹の面倒をみる優しいお兄ちゃんだ。パパから「引っ越しをするから、ママの遺品を箱一つにまとめなさい」と言われるが、今も届くママへのダイレクトメールを大事に仕舞い込んだり、ママの化粧品をこっそり使ってみたり、ママの面影に浸っていた。そんな時、公園で不思議な姉妹と出会い、鬱積した悲しい気持ちを開放していく術を見つけていく……。


ndjc2017-240-3.jpgキャラクターの性格や心情を言葉ではなく行動や映像で表現できる巧みさが光る。ラッセ・ハルストレム監督や是枝裕和監督の初期の頃の作品を彷彿とさせる。特に、パパの仕事仲間の女性が必死でもんちゃんを助けるシーンや、不思議な姉妹とままごとをするシーンが、30分という短編ながら物語に深みを出している。家族以外の真心に触れ、自らも他者への関心を示していく。悲しみと喪失感をのり越えようとするまだ幼い少年の健気さに心が締め付けられるようだった。

【監督コメント】
誰にでも等しく訪れるグリーフ(死別体験)について、どのように立ち直って治癒していくか、一つのパターンとして描いてみた。それは万人が興味あるテーマだと思う。

最近観た映画では、娘の後をずっとついて行く『ありがとう、ドニ・エルドマン』が面白かった。一番好きな映画は『自転車泥棒』。ダルデンヌ兄弟の作品もリアルで好き。

◎金晋弘監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3794/
 


ndjc2017-tokyo.jpg★『トーキョーカプセル』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/27分/©2018 VIPO)
監督:齋藤栄美(さいとう えみ)
出演:りりか、川合 諒、菅原大吉
制作プロダクション:アルタミラピクチャーズ

【作品紹介】
様々な人が行き交うカプセルホテルで働いている理子。東京に出てくれば何か見つかるかもと上京したものの、ボ~っとしてはパートのおばちゃんに疎まれる始末。同じく、一人の若い男性客も就活のため上京したものの失敗続きの日々を送っていた。そんなある日、金髪ウィッグの忘れ物を見つける。それを試した理子は新しい自分に戸惑うが、若い女性客に誘われて、夜の街へ繰り出すことに……。


ndjc2017-240-1.jpgまず、「東京へ行けば何とかなる」という昭和の風潮が未だに若者の間にあることに驚かされた。具体的な目的もお金もない寄る辺ない若者が、何かしら変われる自分を発見し、さらに優しく見守ってくれる人もいることに気付いていく。理子の変化を瑞々しく捉えた映像と周囲の人々の描写が、冷淡に思えた都会をたちまち暖色に染めていく。夜の街を疾走する理子を一気に捉えた映像もまた、斎藤監督の意気込みがうかがえる。暗くなりがちな物語を、ミア・ハンセンラブ監督のような明るいタッチでまとめたセンスの良さが光る。

【監督コメント】
誰も撮ったことがないカプセルホテルという独特のロケーションで物語を作ってみたかった。主演のりりかには、彼女の独特なクセを消して、ささやかな一日を少し前に進めるように普通の女の子として演じてもらった。

最近観た映画では、『スリー・ビルボード』と『わたしは、ダニエル・ブレイク』が主張がはっきりとしていて面白いと思った。映画としての見せ方も正々堂々として素敵。

◎齋藤栄美監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3796/
 


ndjc2017-daia.jpg★『さらば、ダイヤモンド』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:中川和博(なかがわ かずひろ)
出演:伊藤祐輝、伊藤 毅、佐藤祐基、橋本真実
制作プロダクション:東北新社

【作品紹介】
大学野球部からの親友で社会人になってからも仲良しの元気と隼人、亮介。3人は30歳を迎え、亮介は結婚、隼人は海外への転勤が決まり、それぞれ新たな道を歩もうとしていた。そんな中、元気は隼人への秘めたる想いを募らせ、思い切って打ち明けようとするが……。


ndjc2017-240-5.jpg3人の親友を演じた俳優たちの細やかな心情表現を引き出すことに成功している。男同士の友情を、元気の隼人への恋愛感情を中心に、ストレートの隼人の戸惑いや、気まずくなった二人を思い遣る亮介の優しさなど、後味のいい爽やかさを感じさせる。元気が隼人の気持ちを探ろうと隼人の言動を注意深く伺うシーンや、思いのたけを告白するシーンなど、緊張感をもった映像に惹き付けられた。

【監督コメント】
その人がどういう人なのか認めることがテーマ。自分も登場人物と同じような年代になって、何を認めて、何を大切にしていくのか、という思いを等身大の人物像で描いたつもり。

一番好きな映画は『ジュラシック・パーク』。最近観た映画では『スリー・ビルボード』と『デトロイト』。この2本は全く毛色の違う作品だが、いずれも俳優の力量が必要とされる。特に『デトロイト』は、ドラマ性を持たせずに事件だけを描いていくタイプなので、今っぽいと感じた。

◎中川和博監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3798/ 
 


ndjc2017-curry.jpg★『カレーライス Curry and Rice』
(2018年/モノクロ/デジタル/スタンダードサイズ(ビスタサイズ仕様)/30分/©2018 VIPO)
監督:奥野俊作(おくの しゅんさく)
出演:井之脇海、安藤ニコ、松浦祐也、矢柴俊博、岩谷健司
制作プロダクション:東宝映画

【作品紹介】
23歳の大学生・満のもとに、フランス人の友人の妹で20歳になる留学生・ジャンヌがやってくる。翌日には京都へ行くというジャンヌを、満は一晩面倒をみることになる。そこで、ジャンヌをアルバイト先の先輩で同郷の茂が住む古民家へ連れていく。茂は自慢のカレーライスでジャンヌをもてなそうとしていたが、かつて関わっていた暴力団に押し掛けられ……。


ndjc2017-240-2.jpg満とジャンヌの恋愛映画かと思いきや、淡々とした渇いたタッチのモノクロ映像で、意外にもサスペンス映画だということを見終えてから知る。あれほどお腹を空かせていたジャンヌがカレーライスを食べようとすると邪魔が入り、結局彼女が初めてのカレーライスを食べるシーンがない。茂と暴力団との関係性もよく分からないままで、消化不良になりそうなカレーライスだった。

【監督コメント】
人生における不条理さと素晴らしさを自分なりに作ってみた。人間に対する距離感や眼差しをそのまま表現。モノクロにしたのは、非日常というか、脚本も淡々と渇いたトーンで描いてみたかったから。

最近観た映画では『ムーンライト』が男同士の想いが切なくて心に沁みた。カラーブレードも研究して撮ったようで、美しい映像にも感銘。ウォン・カーワイ監督作をオマージュしているようで素晴らしかった。黒人映画では収まらない普遍性がある。

◎奥野俊作監督の作品の詳細はコチラ → http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3803/
 


ndjc2017bakemono.jpg★『化け物と女』
(2018年/カラー/デジタル/ビスタサイズ/30分/©2018 VIPO)
監督:池田 暁(いけだ あきら)
出演:熊倉一美、きたろう、有薗芳記、芝 博文、よこえともこ
制作プロダクション:東映東京撮影所

【作品紹介】
ある小さな町役場の受付で働く待子は、一人暮らしの孤独な日々を送っていた。昼食時には同僚とは別のテーブルに座り会話もなく、婚姻届のような幸せな受付は極力邪魔をして延期させるという始末。ある日、町に妖怪が出没するという騒動が起きる。妖怪退治に躍起になる町長や警察。そんな中、待子は帰宅途中に暗闇から聞こえる三味線の音色に惹き寄せられ、人々が恐れる妖怪に遭遇する。


ndjc2017-240-4.jpg人間に恐れられる異形のものと孤独な女性との運命的出会いといえば、今年のアカデミー賞4部門に輝いた『シェイプ・オブ・ウォター』を思い出す。ただ一人、化け物を恐れず愛情をもって接する純愛もの。本作も面白そうな物語だが、役場や食堂で同じ人物が同じセリフを繰り返すフレーズには閉口してしまった。化け物より怖い人間のエゴをブラックユーモアで強調しているのだろうが、肝心な人物描写が希薄なので、待子と化け物を結び付ける説得力に欠ける。化け物が奏でる三味線の音色だけはもの哀しく心に響いた。

【監督コメント】
基本的に化け物と女の関係性を描いた。その中で町長や町の人々が化け物に対してどういうことをしたのか。化け物を人間に置き換えて考えてもらえればいいかなと。

チェコのアニメ作家ヤン・シュヴァンクマイエル監督が好き。実写も多くて、80歳を越えても新しいことに挑戦していることに驚いた。アニメは結構自分の思った通りに撮れるのではないかと思う。ジャンルを問わず、映画も芝居も観ている。

◎池田暁監督の作品の詳細はコチラ→ http://www.vipo-ndjc.jp/ndjc/3802/
 


(河田 真喜子)

 

siawase-enogu-logo.jpg
「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』ポストカード(3枚セット) プレゼント!

  

siawase-card1-374.jpg

 

 
 

■提供: 松竹

■プレゼント人数: 3名様

■締切日:2018年3月11(日)

公式サイト: http://shiawase-enogu.jp/

 

2018年3月3日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー
 

 

 


  カナダで最も有名な画家モード・ルイスが教えてくれる、
人生で大切な喜びとは──  
 


siawase-enogu-550.jpg小さな港町で、カナダの美しい四季と動物を色鮮やかに描き続けた画家モード・ルイス。その素朴ながら愛らしい絵は、今もオークションで500万円を超える値がつく、カナダで最も愛された画家である。そんな彼女を不器用ながらも献身的にサポートしたのが、夫のエベレット。孤独だった2人が運命的な出会いを経て、夫婦の絆と慎ましくも確かな幸せを手に入れた感動の実話が映画化!


わずか4メートル四方の家で絵を描きながら暮らすモードを演じるのは、『ブルージャスミン』でアカデミー助演女優賞にノミネートされた実力派サリー・ホーキンス。妻への愛と尊敬の念を無骨に隠すエベレットに、『6才のボクが、大人になるまで。』などでアカデミー賞ノミネート常連組のイーサン・ホーク。一風変わった夫婦の愛を繊細に描くのは、『荊の城』のアシュリング・ウォルシュ。

絵と夫の愛に包まれたモードの生き方が、「どんな人生でも自由な精神で楽しめば、素晴らしいことが待っている」と教えてくれる感動作!


 siawase-enogu-pos.jpg
監督:アシュリング・ウォルシュ『荊の城』
出演:サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク
2016年/カナダ・アイルランド/英語/116分/配給:松竹/原題:MAUDIE
後援:カナダ大使館 アイルランド大使館
©2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

2018年3月3日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー

 

 

 (プレスリリースより)

 

funouhan-bu-550-2.jpg

リアル宇相吹・松坂桃李のマインドコントロールに、白石監督が驚愕のリアクション!『不能犯』大ヒット御礼舞台挨拶
(18.2.3 TOHOシネマズ梅田)
登壇者:松坂桃李、沢尻エリカ、白石晃士監督  
 
「愚かやねん、人間は――」が決め台詞。松坂桃李が絶対に立証不可能な方法でターゲットを殺す主人公・宇相吹正を演じて話題となっている白石晃士監督最新作の『不能犯』が、2月1日から絶賛公開中だ。宇相吹が唯一コントロールできない、正義感溢れる女刑事 多田友子役を沢尻エリカが演じる他、宇相吹に翻弄される人々に新田真剣佑、間宮祥太朗、テット・ワダ、菅谷哲也、岡崎紗絵、真野恵里菜、忍成修吾、水上剣星 水上京香、今野浩喜、堀田茜、芦名星、矢田亜希子、安田顕、小林稔侍という豪華キャストが出演する【立証不可能犯罪】スリラー・エンターテインメントになっている。
 
funouhan-main-500.jpg
 

funouhan-bu-Di-240-1.jpg

2月3日節分の日にTOHOシネマズ梅田で行われた大ヒット御礼舞台挨拶では、松坂桃李、沢尻エリカ、白石晃士監督の3人が客席から豆まきをしながら登場。大喜びの観客に笑顔で応えながら、登壇した。
 

冒頭のあいさつで、白石監督は前日に尿路結石で救急搬送されたことを告白。「体の中の小さい豆を出させていただきました。誰かの体の中に…」とオカルト系作品に定評のある監督らしいコメントで笑いを誘った。

 
 
 
 

funouhan-bu-matuzaka-240-1.jpg

2月1日に初日を迎えた感想を聞かれた松坂は「ようやく公開できたという感じでうれしい。本当に撮影期間より、番宣期間の方が長かった」と感慨深げに切り出し、「(バラエティーで)色々な芸人さんに可愛がってもらった。シソンヌという芸人さんと即興でコントを披露したり…。シソンヌさんにも感謝したいし、その番組の司会者、有吉さんにも愛を感じましたね」と、番宣を通じてのエピソードを語った。

 
 
 
 
 
 

funouhan-bu-sawajiri-240-1.jpg

一方、オファーがあった時の感想を聞かれた沢尻は「脚本を読んで、すぐにその世界観に入っていけた。元々サスペンスやアクションが大好きで、今回は女性刑事でアクションのある役どころだったので、すぐにオファーを受けた」と振り返る一方、アクションシーンの撮影は「現場でアクションをすると、思った以上に難しくて体が動かない。こんなに大変なんだと思った」と、アクションシーンの洗礼を受けた模様。そんな沢尻の演技について、白石監督は「終盤、病院で走るシーンは、冒頭の短い走るシーンのテイクを重ねている時に痛めた足で、走りにくい靴にも関わらず、相当我慢してがんばってもらった」と語り、その女優魂を称えた。
 
 
 
ここで話は大阪の話題に。大阪で一番行きたい場所は?という問いに「(NHK朝ドラ『わろてんか』で共演の)兵動さんにフグを食べさせてもらったお店が、美味しかった~。お酒を飲んで、すべらない話をたくさんしてくれ、すごく贅沢な時間だった」(松坂)、「USJ大好きです。また行きたい」(沢尻)、「梅田食堂街にあるたこ焼屋、来るたびに食べてから仕事に向かう」(白石監督)。
 
 
 
funouhan-sub-500-1.jpg
 

funouhan-bu-matuzaka-240-2.jpg

朝ドラの撮影で大阪に滞在していた松坂は大阪の人のエピソードとして、ドラマで共演の濱田岳から聞いた“上下真っ赤な下着姿で信号待ちしている40~50代の女性”の話を披露。大阪人はバラエティー豊かでノリがいいという“マインドコントロール”にかかっているのでは?と無理やりのフリから、「いきなり誰に〝バン!“と拳銃撃ちしても、必ず反応してくれる」と、本日のクライマックスへ。
 
事前に白石監督から様々なパターンの“撃たれ方”を演出された観客に向けて、松坂が「バーン!」と舞台上から仕草をすると、一番大きなリアクションをしたのはなんと隣の白石監督。舞台上に倒れ込み「ビックリした!」と、昨日の体調不良を感じさせないハイテンションで、松坂も沢尻もビックリ。観客を巻き込んでのマインドコントロールの成功ぶりに、「大阪の人は本当にやさしい!」と松坂も感謝しきりだった。
 
funouhan-bu-550.jpg
 
 
ホラー顔で変幻自在の白石監督に刺激され、満面の笑顔でフォトセッションを行った松坂と沢尻。最後に「宇相吹というキャラクターが何を目指そうとしていたのか、思い描いてほしい」(白石監督)、「すごく思い出になった作品。また一人でも多くの人に観てほしい」(沢尻)、「東京の人では思いつかないような忌憚なき感想をぜひSNSにあげて!」(松坂)と挨拶。盛りだくさんの舞台挨拶を締めくくった。
 
 
明るい舞台挨拶とは裏腹に、攻略できない難敵、宇相吹が醸し出すダークな雰囲気が覆う『不能犯』。宇相吹を演じる松坂、そしてアクションにチャレンジした沢尻と、それぞれの新しい魅力を発見できる作品だ。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『不能犯』
(2018年 日本 1時間46分)
監督:白石晃士 
原作:『不能犯』(集英社「グランドジャンプ」連載 原作:宮月新/画:神崎裕也)
脚本:山岡潤平、白石晃士
出演:松坂桃李 沢尻エリカ 新田真剣佑 間宮祥太朗 テット・ワダ 菅谷哲也 岡崎紗絵 真野恵里菜 忍成修吾 水上剣星 水上京香 今野浩喜 堀田茜 芦名星 矢田亜希子 安田顕 小林稔侍
主題歌:GLIM SPANLY「愚か者たち」(UNIVERSAL MUSIC)
配給:ショウゲート
公式サイト → http://funohan.jp/
©宮月新・神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会 
 
 
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108