原題 | Mal de pierres |
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制作年・国 | 2016年 フランス |
上映時間 | 2時間 |
監督 | 監督・脚本:ニコール・ガルシア(『ヴァンドーム広場』『』) |
出演 | マリオン・コティヤール、ルイ・ガレル、アレックス・ブレンデミュール、ブリジット・ルアン、ヴィクトワール・デュボア、アロイーズ・ソヴァージュ、ダニエル・パラ他 |
公開日、上映劇場 | 2017年10月7日(土)~新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、10月14日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、そのほか京都シネマなど全国順次ロードショー |
狂気の愛をめぐる大河ロマンス、
その果てに待っていたのは?
全身全霊を捧げて誰かを愛してしまうというのは、本当に幸せなことなのか、どうなのか。人は、永遠の愛だとか究極の愛だとかいう言葉にロマンティックな匂いを嗅ぎつけて憧れるが、そういうものに捕らわれてしまった者は天国と地獄の両方を味わわねばならないはずだ。別にペシミスティックに考えているわけでなく、恋愛を描いた映画を何本も観てきた人なら、きっと賛同してくれることだろう。そうして、この映画である。いやはやマリオン・コティヤールの激しさったら!
フランス、プロヴァンス地方の田舎町で暮らすガブリエル(マリオン・コティヤール)は、家族をはじめ周囲から“美しいけれど、ちょっと変わった女”と見なされていた。彼女の身体も心も常にうずいていて、この男と思い込んだら命がけ。まわりの視線なんて全く気にかけない。その情欲の対象になった男は逃げるしかないようで、ある教師は全拒絶した。結婚すればそういう性癖は治るかもしれぬと考えた親が、ガブリエルに気があるように見える真面目な季節労働者のジョゼ(アレックス・ブレンデミュール)と結婚させる。だが、ガブリエルは「あなたなど絶対愛さない」とジョゼに宣告するのだ。それから後、腎臓結石だと診断され、温泉治療に出かけたガブリエルは、そこで世捨て人のような影を持つ将校ソヴァージュ(ルイ・ガレル)に出逢い、惹かれてゆくのだが…。
この映画には、冒頭のシーンと連動したクライマックスがあり、衝撃的な結末が待っているのだが、真実を覆っていた愛の深さに打たれる。ジョゼがガブリエルに対して最後に放つ言葉からは、つらい時間を過ごしてきた人の哀しみがあふれ出してくる。なんという愛のカタチだろう!
主要3人の役者がそれぞれに素晴らしい。そして、彼らの演技を高みまで引き上げたように思えるニコール・ガルシア監督の手腕は、映像にみなぎる緊迫感が証明している。チャイコフスキーの〈四季〉舟歌という情感豊かな旋律も物語を盛り上げ、上質のミステリーの色で包まれた大河ロマンスを、久しぶりに堪能したなという満足感でいっぱいだ。物語に終止符が打たれ、映画が終わった後も、主人公たちは、その後どのように生きていくだろうかと考える。甘酸っぱさと共に、希望の光の温かさが胸のあたりに確かに在る。まるで、嵐の後の穏やかな空のようだ。
(宮田 彩未)
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