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『リングサイド・ストーリー』

 
       

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作品データ
制作年・国 2017年 日本
上映時間 1時間44分
監督 武 正晴
出演 佐藤江梨子、瑛太、有薗芳記、田中要次、伊藤俊輔
公開日、上映劇場 2017年10月14日(土)~大阪ステーションシティシネマ、T・ジョイ京都、109シネマズHAT神戸 ほか全国ロードショー

 

大言壮語のダメ男が、愛を賭けて、無茶ぶりな闘いに挑む!

 

カナコとヒデオは、同じ劇団の出身で、同棲して10年のカップル。ヒデオは、かつて大河ドラマに出たことはあるが、今は低迷中の売れない役者。家計を支えるカナコは、ひょんなことから、格闘技団体の広報の仕事に就く。プロレス好きのヒデオは、最初のうちは、カナコのバックヤードパスをこっそり使って、プロレスを観てはにんまり。でも、地方巡業で泊まりの出張に出たり、楽しそうなカナコを見て、嫉妬を募らせ、K―1チャンピオンと浮気したと勘違い。とんでもない事件を巻き起こし、チャンピオン相手にリングで一騎打ちすることになる。一念発起、トレーニングに励み始めるものの…。


ringside-500-1.jpg自信過剰で、いつかカンヌ映画祭に行くと夢だけは大きくても、オーディションには落ち続け、パチンコに逃げてばかりのヒデオを演じるのは瑛太。ダメ男ぶりはどこか愛嬌があって憎めず、カナコとの口喧嘩も、威勢はよくても負けてばかり。『レイジング・ブル』のボクサーの役づくりでトレーニングしたロバート・デ・ニーロを気取って、シャドーボクシングしながら商店街を走り込む姿は、けなげで微笑ましい。文句を言いながらも、ヒデオの夢は自分の夢だと、懸命に尽くすカナコを佐藤江梨子が好演。ヒデオのプロモーションビデオに見入る表情からは、昔と変わらない熱い想いが伝わる。カナコの母親を余貴美子が演じ、ヒデオが「おかあさん」と呼んで、ギョーザを食べながらおしゃべりに興じる日常の光景も楽しげで共感を呼ぶ。


ringside-500-2.jpg格闘技に真剣に取り組む人たちを題材に面白い映画をつくりたいという李鳳宇プロデューサーのリクエストにこたえたのは、ダメ女がボクシングに目覚める『百円の恋』(2014年)の武正晴監督。プロレスラーたちのリング外での温厚で、礼儀正しい素顔もとらえる。『光る女』(1987年・相米慎二監督)に主演していた武藤敬司の穏やかなたたずまいが嬉しく、人気K-1選手武尊や黒潮“イケメン”次郎も映画初出演でいい味を出している。ビール瓶のケースを上げ下げして筋トレする青年がヒデオに語る話や、会場にロープを張って、底板を並べ、シートを重ねてリングをつくる場面を俯瞰で静かにとらえた映像も心に残る。


ringside-500-3.jpgリング…そこは、格闘技という一瞬の油断も許されないハードな世界に飛び込んだ男たちが目指す華やかな場所。俳優として、常々、本番での演技について「そこでしか見えない最高の景色がある」と得意げに語っていたヒデオ。果たして“俳優として勝負の場”であるリングに立つことができるのか。面白い脚本と魅力あふれる役者たちの好演を得て、夢に向かって走り出す勇気をもらえる、とびっきり楽しい人情ラブ・コメディが生まれた。


【おまけ】

ヒデオは、学生時代は卓球部の補欠だった。卓球の素振りが得意なら、リングでは、ストレートではなく右アッパーでいけ!と指導される。瑛太は、『ミックス。』(10/21公開)では卓球の選手を演じており、ぜひ本作と見比べてほしい。        

(伊藤 久美子)

公式サイト⇒ http://ringside.jp/

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