「AI」と一致するもの

オフィシャル写真(©2020 TIFF) (2).JPG

第33回東京国際映画祭・特別招待作品

初監督となる寺門ジモンの演出をEXILE NAOTO、土屋太鳳が大絶賛!!

『このトングが、もしも侍が持つ日本刀だったら』とアドバイス

 

寺門ジモン初監督作品『フード・ラック!食運』が11月20日(金)より全国公開となります。

世界中でいまだ続く新型コロナウイルスの影響により、全国の飲食業界、映画業界でも厳しい状況が続く中、映画から食を応援するとともに、食を通して人々が支え合い、食を囲む幸せの日々が続くように願いを込めた本作。新人編集者・静香(土屋太鳳)と共に「本当に美味しいものを本当の言葉で紹介するサイト」の立ち上げを任されることになった良人(EXILE NAOTO)。その矢先、疎遠になっていた母・安江(りょう)が倒れたとの知らせが入る―。幼い頃の母との思い出とともに幻の人気焼肉店「根岸苑」を通して繋がり、食を通して出逢う人々それぞれの想いをのせ、焼いて、食べて、ちょっと泣いて、また食べる、極上の焼肉ハートフル映画。


本作が第33 回東京国際映画祭の特別招待作品部門に出品が決定し、ワールドプレミアとして世界最速上映いたしました。また上映後にはEXILE NAOTO、土屋太鳳、寺門ジモン監督の舞台挨拶を実施いたしました。


■日時:11月4日(水)16:40~17:00 ※上映後舞台挨拶

■場所:EXシアター六本木(港区西麻布1丁目2−9)

■登壇:EXILE NAOTO、土屋太鳳、寺門ジモン監督(敬省略)


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寺門ジモン監督がマイクとトングを間違えるボケをして舞台に登場し、会場が笑いに包まれて舞台挨拶がスタート。寺門監督は「飲食業が大変なことになっているので、この映画で元気になってもらいたい。みなさん、お肉をお楽しみください。」と挨拶があり、続いて主演のEXILE NAOTOより「今回はジモンさんの愛してやまないもの、“食”そして“家族愛”をテーマにした映画になっていますが、普段からおいしいものを食べに連れて行ってもらったり、公私共にジモンさんにはお世話になっています。役作りでも食べ物のことを勉強したんですが、もともと食べることが好きなので、とても幸せな撮影でした。みなさんに少しでも心に温かいものが残ったらいいなというのと、ぜひこの後は焼肉屋に行ってください!」と焼肉映画ならではのアピールをした。土屋太鳳は「難しい状況のなか、貴重な映画祭に参加させていただき感謝しています。本日も通訳の方がいらっしゃるとのことで、この愛する作品を、国境を越えてお届けできて嬉しいです。愛情と感謝を噛み締めて、この映画を皆さまと楽しめたらなとおもいます」と会場に集まった観客に向けて感謝を述べた。


FL-main.jpg焼肉が主役級に活躍する本作にちなみ、NAOTOは「今回、お肉もしっかりと演技をしてもらわないと困るということで、自分達への演技指導はあまりなかったのですが、お肉の焼き方に関してはかなりしっかりと監督から指導していただきました。こだわって撮っているので、お肉もいい演技をしているとおもいます」と寺門監督のお肉への並々ならぬこだわりぶりを明かした。初共演となったNAOTOとの撮影エピソードを尋ねられた土屋は「NAOTOさんは良人とは性格とかは違うんですが、狩人のような眼をしいるところが同じで、目標に向かってちゃんと研究して前に進んでいくところが、良人が覚醒した後の演技にパワーを与えていて素晴らしいなとおもいました」とNAOTO本人と役柄との共通点を挙げて、その演技について誉めた。


映画の中では焼肉を食べるシーンが多い為、撮影中に食べた肉の量を聞かれるとNAOTOは「2時間くらいの撮影で、薄い肉だったら10枚くらいは食べたはず…」というと、土屋は「私はもっと食べてるかも。13、14枚くらいは食べてました」と答え、するとすかさず寺門監督が「ちょっといいですか?撮影以外にも二人、いっぱい食べてますよ!いくらいい肉だからって食べ過ぎですよ!」と被せてコメントし、会場の笑いを誘った。


肉への愛だけでなく、不器用な母と子の物語でもある本作をオリジナルで考えた寺門監督は「もともとお店にはそれぞれのお店ごとに素敵なエピソードを持っているもので、今回の映画に出てくるお店もほとんどが実在しているお店で、その中で起きた素敵なエピソードもあって、今回はそれを忘れないでおきたいということで、オマージュを込めています。親と子というものにはずっと繋がっていく愛情というものがあって、それは食事にも繋がっているなとずっと思っていて。食べるということは生きる事。お母さんの愛情とかが、僕のうざいウンチクと一緒に映画を通じ、皆さんの心に入っていったらいいなとおもってストーリーを作りました」と映画に込めた想いを明かした。


FL-sub1.jpg初監督を務めた寺門監督について、土屋は「この情熱でお肉が焼けてしまうんじゃないかってくらい、すごく熱い情熱を持たれていて、その分撮りたいものがはっきりされているのでテイク数がどんどん増えていったんですが、でもそれは“こだわり”というより“使命感”なんじゃないかなと思いました。食って幸せじゃないと楽しめないことの一つだとおもうんです。食材も、調理する人も、味わう人も、大切な命をいただくので、それをちゃんと描いているなとおもいました」と絶賛し、「すごくいいこと言う!太鳳ちゃんに映画のコメント書いてもらえば良かったよ!」と寺門監督も土屋のコメントに嬉しそうな様子だった。NAOTOは「良人というのは食になった瞬間にスイッチの入る役なので、どうやってそれを演じればいいかなと考えていたときにジモンさんに相談して言われた『このトングが、もしも侍が持つ日本刀だったら。侍が刀を構えるときにスッと力を抜くようにこのトングを構えてみたらどう?』とアドバイスをもらい、その言葉が自分の中でとてもしっくりときて演じることができた」と撮影エピソードを語った。


最後に寺門監督より、これから映画を観る観客に向けてこの映画をより楽しむためのポイントとして「実在のお店で本当にお店で出てくるメニューで撮影させていただいているので、ぜひ“フーディー”と呼ばれる美食家の人たちにも観てもらい、あっ!これはあの店のあれだ!という風に楽しんでもらいたいです。そして普段からおいしいものを食べに行かない人にも、この映画を観るときっと『焼肉おいしそうだな~』と思ってもらえるとおもうので、映画を観る前にお店を予約して、映画を観終わってからお店に食べに行ってほしいです。お肉を食べるアイドリングとして最高の映画だとおもいます」と食と映画への愛が溢れるアピールをして、舞台挨拶は大盛況のうちに幕を閉じた。

 

映画『フード・ラック!食運』は11月20日(金)より全国ロードショー。


【あらすじ】 下町に店を構える人気焼肉店「根岸苑」をひとり切り盛りする母・安江。ひとり息子・良人の毎日の楽しみは、母の手料理を食べることだった。

ある事件がきっかけで店は閉店し、成長した良人は家を飛び出し、うだつがあがらないライターとして自堕落な生活を送っていた。ある日、グルメ情報サイトの立ち上げを任されることになった良人のもとに、疎遠になっていた母が倒れたとの報せが入り…。


原作・監督:寺門ジモン 原作協力:高橋れい子 脚本:本山久美子 音楽:Amar
出演:EXILE NAOTO 土屋太鳳 石黒賢 松尾諭 寺脇康文 白竜 東ちづる 矢柴俊博 筧美和子 大泉洋(特別出演)大和田伸也 竜雷太 りょう 
主題歌:ケツメイシ「ヨクワラエ」(avex trax)
製作・配給:松竹株式会社 / 制作プロダクション:株式会社ギークサイト
コピーライト:(C)2020松竹      

2020年11月20日(金)~全国ロードショー!


(オフィシャル・レポートより)

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あなたの常識と私の常識は違う。コミュニケーションの壁に向き合うため自身にキャメラを向けて。
『友達やめた。』今村彩子監督インタビュー
 
  コロナ禍でリアルに友達と会う機会も減り、改めて本当に会いたい友達って誰だろうと思い浮かべたり、どこか人恋しくなっている人も多いのではないだろうか。11月13日(金)から京都シネマ、11月14日(土)から第七藝術劇場、今冬元町映画館他全国順次公開される『友達やめた。』は、友達とのコミュニケーションの壁に全力で向き合う姿を映し出すドキュメンタリー映画だ。
 
 監督は、自ら自転車で日本一周に挑む様子とその葛藤を描いたドキュメンタリー『Start Line』(16)の今村彩子。生まれつき耳のきこえない今村監督が、自作の上映会で知り合い友達になったアスペルガー症候群のまあちゃんとの関係性を自身のキャメラで映し出す本作では、二人の日常や旅行での出来事を通じて、お互いに対する気持ちの変化や、距離感に対する本音が次第に溢れ出す。友達、家族、夫婦とどんな関係でも一番のベースになるコミュニケーションについて考えるきっかけが詰まった一本。障害を作っている原因や、それを超えるきっかけについても考えたくなる作品だ。
本作の今村彩子監督に、お話を伺った。
 

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■映画づくりの原点は自身の葛藤。

――――本作を撮ろうと思ったきっかけは?
今村:まあちゃんとはお互いに本好きで、家も近いし、年齢も近い。さらに二人とも独身という共通点があり、最初に親しくなった時は話も合うし、すごくいい友達ができたと思ってうれしかった。だけど、一緒に過ごしている時間が長くなってくると、えっと思うことや自分にとって嫌なことをされることが増え、その度に「彼女はアスペだから仕方がない」と気にしないようにしていました。それが我慢できなくなって喧嘩になることもあり、そんな葛藤を一人で抱えているのが嫌になりました。だからみんなを巻き込んで、この映画を作りました。どうしたらまあちゃんと仲良くなれるかを考えたかったのです。
 
――――前作の『Start Line』に続いてのセルフドキュメンタリーで、再び自身にカメラを向けていますが、ドキュメンタリーの被写体として自分にカメラを向けるのは勇気がいる作業では?
今村:『Start Line』の時は初めてのセルフドキュメンタリーだったので、すごく勇気が要りました。でも、今回は私よりもまあちゃんの方が大変だったと思います。まあちゃんが最初「いいよ」と言ってくれた時は私が途中で映画制作をやめるだろうと思っていたそうで、まさか本当に映画になるなんてと今は驚いているみたいです。
 
――――今村監督の周りには今までアスペルガー症候群をはじめとする発達障害を持つ友人はいなかったのですか?
今村:自分がそうだと打ち明けてくれたのは、まあちゃんが初めてです。その時はびっくりするというより、逆にまあちゃんと仲良くなれると思ったし、マイノリティ同士ということで、すごく親しみを感じました。
 
――――シリアスになりがちな題材ですが、飄々とした音楽がとても効果的でした。
今村:『Start Line』を一緒に作った山田進一さんは、とても気が合い、いいアドバイスをもらえて信頼できる人なので、今回も山田さんから音楽や整音担当の方に私のイメージを伝えてもらいました。やはり音楽で感情を煽るドキュメンタリーにはしたくないので、最低限必要なところに入れるようにしました。
 
――――感覚が敏感なまあちゃんにカメラを向けることは、彼女にとってプレッシャーになっていたのでは?
今村:まあちゃんが学校の給食室で働いているシーンがありますが、撮影するときは「撮られるのはいいんだけど、許可をもらうために校長先生とやりとりするのが疲れる」と言われましたね。交渉するのが苦手なまあちゃんに、校長先生にアポイント取りや日程調整をしてもらい、だいぶん負担をかけていたと思います。まあちゃんは本音を言ってくれるので拒否されない限り、手間をかけて申し訳ないと思いつつ「よろしくね」とお願いしていました。
 
――――撮影を通じて、そこまで言い合える仲になったということですね。
今村:実は最初にまあちゃんと仲良くなった時からおもしろいな、撮ってみたいなと思い、映画化を考える前にもキャメラを回したことがあったんです。ただ、まあちゃんが私のことを信頼してくれているからとはいえ、ひたすら自分のことばかりを打ち明けられるとやはりしんどい。気持ちをぶつけられる友達は私しかいないのかなと思うと、それも重荷でした。今、まあちゃんにとってTwitterが本音を吐き出す場所で、吐き出したらスッキリすると言っているので、全て私が抱えなくてもいいんだなと安心しました。
 
――――思いを吐き出すといえば、長野旅行で二人が本音で語りあい、喧嘩ごしになっていくシーンがありますが、あれも自然とそうなったのですか?
今村:なんの断りもなく私の茶菓子をまあちゃんが食べてしまったことから始まったんです。 それが初めてのことなら怒りませんが、度々起こっていて、私も我慢し続けてきた。その積み重ねの結果、あの時に感情が爆発してしまった。周りから見たらお菓子でと思うでしょうが、本当に真面目に喧嘩しましたね。
 
 
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■まあちゃんと接することで、今まで知らなかった自分が出てきた。

――――友達といっても、あそこまで言い合えるのはベースに信頼関係があることの証でもありますね。
今村:私もまあちゃん以外の人とあそこまでの喧嘩をしたことはありません。喧嘩になる原因がないし、あったとしても喧嘩になる前に自分の気持ちを整理して、冷静に自分の気持ちを伝えています。だから今回は、自分でもびっくりしたんです。私はこんなに怒る人ではないと思っていたのに、彼女と接することで今まで知らなかった自分が出てきてしまった。そんな自分を見たくないけれど、どうしたらいい関係を築けるかを考えるためには自分を見つめ直さなくてはいけない。それがすごい葛藤だったし、この映画のエネルギーになりました。
 
――――映画で出てくる二人の日記の文章から、二人の本音が浮かび上がっていましたね。
今村:お互いにずっと日記を書いているんです。私は小学生の時からずっと書いていて、今92冊目ですし、まあちゃんは34歳でうつ病と診断された時、医者からマインドフルネスプログラムの一環として日記を書き始めたそうです。まあちゃんの日記を映画に使わせてと伝えたら、すんなりOKしてくれたのには驚きました。普通は嫌がるところですが、そのあたりの感覚は彼女独自のものだと思います。まあちゃんのOKは裏表がない本気のOKなので、そういうところは好きだし、楽なんですよね。だから旅行もこちらから誘うことができた。疲れたら素直にそう言うだろうし、気を遣わず、旅行を楽しめると思ったんです。
 

■喧嘩した時のまあちゃんの姿に、コミュニケーションを絶ったかつての自分が重なって。

――――まあちゃんとの喧嘩の中で、今村監督が「自分から弱者の立場に立ってるよ」とおっしゃったのがすごく印象的でしたが。
今村:『Start Line』で日本縦断の自転車旅をしていた5年前の自分の姿が、「わかりあうなんてきれいごと、排除でいい」と言い放ったまあちゃんと重なりました。当時の私は自転車旅の初心者で疲れもあって、やるべきことができなかったりして、伴走者にたくさん叱られました。それがだんだん嫌になってきて、伴走者を無視することが増え、コミュニケーションを絶っていたこともあったんです。その時伴走者に「コミュニケーションの映画を撮ると言っているのに、あなた自身がコミュニケーションを切っている」と言われました。その時の私がまあちゃんと重なったんです。ただ今回の私は向き合うことから逃げたくなかった。だから「弱者の立場に立ってるよ」とまあちゃんに投げかけたのです。
 
――――お二人の会話の中には優生思想への考え方や思いがあることに気づかされます。
今村:まあちゃんは元々読書好きで優生思想についても詳しいですし、やまゆり園事件のことも本を読んでいて私以上に詳しい。だからまあちゃんに優生思想について聞いてみたのです。彼女は自分でも優生思想を持っているし、本を読むことでその気持ちをコントロールしていると話していたのが印象に残っています。おそらくまあちゃんは本に救いを求めているのだと思います。自分を救ってくれる言葉を探すために、たくさんの本と出会うのですが、読んでも読んでもその言葉がない。だからすごく切ないし、それだけまあちゃん自身が生きづらさを感じているのだと思います。
 
 
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■自分がマジョリティになったと感じた時に生まれた戸惑いも、映画の中に。

――――生きづらさについても二人の見解は違いますね。
今村:私は障害も自分だけの問題ではなく、人と人の間にあるという考え方なんです。まあちゃんは映画の中でアスペルガー症候群という障害は自分の問題であると言うように、自分の中にも原因があると考えています。発達障害はどこまでが性格で、どこまでが障害なのかが自分でもわからない。そのあたりが同じマイノリティでもすごく違うなと感じます。また、まあちゃんと一緒にいると、私がマジョリティになっていると感じることがあり、それに気づいた時はすごく戸惑いました。マジョリティである自分が我慢すればいいんだ、我慢した方が波風が立たないので楽だとそちらへ流れてしまった。映画を撮りながら本当に色々なことを考えました。
 
――――どのあたりで映画の着地点が見えてきたのですか?
今村:お菓子のことで大喧嘩をした後、二人の常識を考える会を開いたのですが、そこでまあちゃんの行動に関して初めて知ることがたくさんあった。これは一区切りになるなと思いました。
 
――――「二人の常識を考える会」は名案でしたね。人それぞれの常識は違いますから。
今村:私が発案し、自分でもいいなと思って映画を作ったのですが、その後パンフレットに寄せられたまあちゃんの文章を読んで、もしかしたら私の自己満足だったかもしれないと思いました。映画の中で描かれている喧嘩は、私の中では感情が積み重なった結果の行動なのですが、まあちゃんは私がいきなり怒りはじめたように感じる。まあちゃんにとって私はいつ爆発するかわからない“時限爆弾”なので、喧嘩のショックもそれだけ大きかったのです。それでも依然としてまあちゃんは普通にLINEもくれるし、映画制作も応援してくれているので、逆に私の方がまあちゃんの言葉に囚われすぎないようにしようと。目に見える言葉はやはり強いけれど、それよりもまあちゃんの今の行動や表情を信じようと思いました。
 

■「友達やめた」は友達を続けるために必要な言葉だった。

――――タイトルの『友達やめた。』という言葉はとてもインパクトがあるだけでなく、本当に色々なことを考えさせられますね。
今村:この言葉は私が一番悩んでいた時に生まれた言葉です。映画としてはそこが山場になりますが、とにかくまあちゃんに会いたくないし、離れたいし、なんなら映画を撮るのもやめたい。それぐらい本当に葛藤していた時、日記に書いたのが「友達やめた。」という言葉でした。するとすごく気持ちが軽くなったんです。今までの自分は、まあちゃんにとっていい友達でいたいとか、自分がこんな嫌な人間だと認めたくないという気持ちがあったのですが、そんながんじがらめな状況から、一度抜け出すことができたんです。すると心に余裕が生まれて、自然に「まあちゃんと仲良くやっていくにはどうすればいいか」と考えられるようになった。そうやって自分を赦せると楽になりましたね。だからこの言葉は友達を続けるために必要な言葉だったのです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『友達やめた。』
(2020年 日本 84分)
監督:今村彩子 
出演:今村彩子、まあちゃん他 
11月13日(金)〜京都シネマ、11月14日(土)~第七藝術劇場、今冬元町映画館他全国順次公開。期間限定でネット配信も実施中
※京都シネマ、11/14(土)今村彩子監督による舞台挨拶あり
 第七藝術劇場、11/15(日)石橋尋志さん(「さかいハッタツ友の会」主宰)、今村彩子監督によるトークショーあり
公式サイト → http://studioaya-movie.com/tomoyame/
(C) 2020 Studio AYA
 

 

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(2020年10月28日(水)大阪にて)

 

現代のフリーターが、ある日突然平安絵巻『源氏物語』の世界へタイムスリップ!?
平安時代を生きる女たちに学ぶ若きダメンズの成長物語。

 

就職試験59連敗中!? 彼女にはフラれ、出来のいい弟に引け目を感じて家にも居づらい、そんな現代の若者が、突然『源氏物語』の世界へタイムスリップしちゃう!? 光源氏や桐壷帝が登場し、その女御たちが大勢いるあの紫式部が描いた王朝文化の世界へ。しかも、現代人の若者が、嫉妬や陰謀の元凶として悪名高い桐壷帝の第一妃・弘徽殿女御(こきでんのにょうご)の信頼を得て仕えるという、かつてないシチュエーションのSF時代劇。そんなファンタジックな映画『十二単衣を着た悪魔』が11月6日(金)から全国公開される。


本作が長編第二作目となる黒木瞳監督は、宝塚歌劇娘役トップから退団後、多くの映画やテレビドラマで活躍し、さらに演劇やミュージカルと舞台でも座長公演を務めるなど、途切れることなくキャリアを積み重ねてきた大女優である。そんな彼女が満を持して映画監督に挑戦したのが、2016年の『嫌な女』。木村佳乃と吉田羊という演技派女優による意地とプライドを賭けた女の闘いは、女優目線の容赦ない演出が効いた痛快作となった。本作でも、黒木監督らしくキャラクターの特徴を捉えた表情が活かされ、嫉妬や陰謀渦巻く後宮で生き抜く女御たちの悲哀や自信喪失の若者の成長をエモーショナルに活写している。


12hitoe-main.jpg主演の伊藤健太郎にとっては、戦国時代の凛々しい若君ぶりでブレイクしたTVドラマ「アシガール」の逆バージョンとなっているが、本作でも現代のダメンズ・雷から、目元さやけき陰陽師・雷鳴へと、平安貴公子スタイルで魅了する。妻となる倫子(りんし・伊藤沙莉)を迎えた辺りからの感情表現は秀逸で、最後の最後まで心を鷲づかみにされる。弘徽殿女御(三吉彩花)に対しても、若くして帝の心を失い、我が子を帝にするために生きる必死さが嫉妬や陰謀となって、他の女御たちに悪魔のように恐れられた人物として映るようになる。


「可愛い女はバカでもなれる。しかし、怖い女になるには能力がいる!」とまあ、豪快に言い放つ弘徽殿女御のアッパレぶりにもしびれる!
 



黒木瞳監督-①.JPGのサムネイル画像黒木瞳監督のインタビューは以下の通りです。


Q:『源氏物語』の中でも弘徽殿女御を取り上げた理由は?

A:内館牧子先生の小説『十二単衣を着た悪魔』の初版本を読んでとても面白かったので、自分でも弘徽殿女御を演じてみたいなんて思っていました。内館先生は高校生の時に『源氏物語』を読んで、弘徽殿女御が桐壷帝の第一妃でありながら直接的な感情の描写もなく、伝聞としてしか描かれていない事にとても興味を持たれたらしいのです。本当は単なる悪女ではなく違うタイプの女性だったのでは?他の女御たちも本当はかなりしたたかだったのは?と思われて、『源氏物語』の異聞として、現代の若者・雷の成長と弘徽殿女御のイメージとは違う捉え方をした小説をお書きになったそうです。弘徽殿女御には女性の品性があり、とても共感する部分も多く、そのセリフの面白さを活かして映画にしたら、きっと元気の出る映画になるのではと思ったのです。


Q:キャスティングについては?

A:雷のイメージでは伊藤健太郎君だったのですが、TV「アシガール」の逆バージョンなのでちょっと安易すぎるかなと思っていたら、出演が叶って嬉しかったです。弘徽殿女御については、平安時代の女性は意外と背が高かったらしく、他の女御たちを威圧する程背が高く、富士額が美しい若い三吉彩花さんが理想的でした。一番悩んだのは倫子役で、TVドラマで伊藤沙莉さんを見かけて「この娘だ!」とすぐにオファーしました。若い俳優さんたちはオーディションです。光源氏役は満場一致で沖門和玖君に決まりました。最初から出演が決まっていたのは笹野高史さん!(笑)(さすが、名バイプレイヤーですね!)


12hitoe-sub5.jpgQ:伊藤沙莉史上最高に可愛いショットや、目を丸くして驚嘆したり、目を潤ませて切々と訴えたりと目で語れる伊藤健太郎に、不敵な笑みを浮かべながらも毅然とした三吉彩花など、黒木監督らしい演出が随所に見られましたが、撮影方法については?

A:同じ役者として、役者に失敗させたくないという思いが一番強くありました。一人ひとりが輝いて、時には切なく、時には輝いている顔を撮りたいと思っていたのです。月永雄太カメラマンはショートムービーでも撮影を担当して頂いていたので、何となく私の性格を理解した上で、私が何を求めているのか、コミュニケーションをとりながらの撮影はとてもやりやすかったです。勿論お互いプロとして尊重し合いながら、カメラマンにお任せすることもありました。


Q:本作で一番苦労した点は?

A:脚本の段階で何度も何度も推敲を重ね、26年という月日を2時間枠に収めようと皆と協議しました。さらに、『源氏物語』の中の人物の所作や衣装についても、時代考証の専門家に教えて頂いたり、博物館へ行って絵巻物を見学したりとかなり研究しました。そして、後宮内のシーンを絵巻物と同じように屋根のないセットを使って俯瞰で撮る方法を思いついたのです。


12hitoe-sub4.jpgQ:一番こだわった点は?

A:雷がはっきりと「タイムトリップした!」と分かるように、その場面のVFX映像にはこだわりました。それから、美術もそうですが、弘徽殿女御の衣装などの色にもこだわりました。博物館で再現展示物を見て驚いたのですが、御簾で仕切られた後宮の部屋には緑色の敷物が敷いてあったのです。それを基に、弘徽殿女御が年代ごとに着る衣装の色柄や、十二単衣の重ね着の色を決めていきました。煌びやかな王朝絵巻物ですから、衣装だけでなく、季節による色彩などにもこだわりました。是非、スクリーンでお確かめ頂きたいと思います。


Q:女優に甘んじることなく、作品の全責任を負う監督にチャレンジすることについては?

A:女優も大変なんですけどね。劇中で弘徽殿女御が、「身の丈に合って傷付かぬ生き方など小者のすること。人は必ず老い、時代は動く。いつまでも同じ人間が同じ場所に立ってはいられない。必ず若い者の世が来る。その時は潔く退く。それが品位というものです。」と雷鳴に語るシーンがあります。私も「身の丈以上のことを自分の中で求めている」ということでしょうか、僭越ながら(笑)
 


【STORY】

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求職活動も上手くいかず、彼女にもフラれ、出来のいい弟に引け目を感じては家にも居場所がない雷(伊藤健太郎)は、ある日、バイト先の医薬品会社主催『源氏物語』関連のイベント会場で、不思議な緑の光を目にする。『源氏物語』のパンフレットと医療品のサンプルの入ったお土産とバイト料をもらって帰る途中、家の近くで再び緑の光が現れ、雷鳴と共に気を失ってしまう。目が覚めると、そこはなんとあの『源氏物語』の世界!? タイムスリップしてしまったのだ!


すぐに捕らえられるも、高熱で苦しむ女御の病気をサンプルでもらった消炎鎮痛剤で治してしまい、さらに『源氏物語』のパンフレットを見ながらの予見が当たり、陰陽師・雷鳴として桐壷帝の第一妃の弘徽殿女御(三吉彩花)に仕えることになる。現代では居場所のなかった雷も、ここでは皆の信頼も厚く尊重される身分となる。その内、妻・倫子(伊藤沙莉)を迎え、初めて人を慈しむ心に芽生え、この世界で幸せに暮らせると思っていたのだが……。


出演:伊藤健太郎 三吉彩花 伊藤沙莉 田中偉登 沖門和玖 MIO YAE 手塚真生 / 細田佳央太 LiLiCo 村井良大 兼近大樹(EXIT) 戸田菜穂 ラサール石井 伊勢谷友介 / 山村紅葉 笹野高史
監督:黒木瞳
原作:内館牧子「十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬舎文庫)
脚本:多和田久美
音楽:山下康介     雅楽監修:東儀秀樹
制作・配給:キノフィルムズ 制作:木下グループ
Ⓒ2019「十二単衣を着た悪魔」フィルムパートナー
公式サイト:https://www.juni-hitoe.jp/

2020年11月6日(金)~新宿ピカデリーほか全国ロードショー


(河田 真喜子)

 
 
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坂本龍一や松任谷由実らが愛した世界的な名スタジオを通して、もの作りの醍醐味を映し出す。『音響ハウス Melody-Go-Round』相原裕美監督インタビュー
 
坂本龍一、松任谷由実、矢野顕子、佐野元春、葉加瀬太郎からヴァン・ヘイレンのボーカル、David Lee Rothまで、国内外問わずアーティストたちが信頼を置き、最高の音楽を追求し続けている銀座のレコーディングスタジオ「音響ハウス」。昨年、創立45周年を迎え、さらに新しい音楽を生み出し続ける音響ハウスにスポットを当てた音楽ドキュメンタリー『音響ハウス Melody-Go-Round』が、11 月 14 日(土)より渋谷ユーロスペース、11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、12月18日(金)より京都シネマ、今冬元町映画館他全国順次公開される。
 
 監督は『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』の相原裕美。音響スタジオのもの作りを支え続けている各種エンジニアの仕事に密着する他、子連れでレコーディングに臨んだ時のエピソードを語る矢野顕子や、1年間スタジオをおさえ、スタジオに住んでいたと当時の様子を振り返る坂本龍一をはじめ、音響スタジオで自身のキャリアを確立させる名盤を生み出したアーティストたちが続々登場。サディスティック・ミカ・バンドの「WA-KAH! CHICO」や大瀧詠一の多重コーラスが秀逸な「朝日麦酒三ツ矢サイダー`77”」、伝説の忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」など音響ハウスで生まれた名曲秘話も続々披露される。
 
 
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 さらに、長年の名コンビである佐橋佳幸、飯尾芳史が本作の主題歌「Melody-Go-Round」をプロデュース。大貫妙子が作詞を担当、ドラムの高橋幸宏やバイオリンの葉加瀬太郎をはじめ、音響ハウスを愛するミュージシャンたちが集まり、レコーディングする風景も挿入され、もの作りの現場を垣間見ることができるのも本作の醍醐味だ。ベテランミュージシャンに混じり、ボーカルとして奮闘する13歳の新鋭シンガー、HANAの存在感がひときわ光る。
本作の相原裕美監督に、お話を伺った。
 
 
 
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――――テーマ曲「Melody-Go-Round」のレコーディング時に、作曲、編曲、そしてプレーヤーでもある佐橋さんが「みんなで顔を見合わせて(レコーディング)するのが80年代っぽくていいよね」と語っておられましたが、逆に今のレコーディングの主流は?
相原:今はほとんどコンピューターでサウンドを打ち込み、しかもそれを一人でこなしているケースも多いので、みんなでスタジオに集まり、一緒に音を出して作るというのはなかなかないでしょうね。実際に音響ハウスのような大きなスタジオはどんどん潰れてしまい、サンプリングの音を使って誰でも簡単にレコーディングできるようになっています。ただし、生音ではないということですね。
 
――――松任谷正隆さんも、家でレコーディングができるけれど自分の枠を飛び出したいならスタジオに行けとおっしゃっていましたね。
相原:音響ハウスに限らずですが、他のミュージシャンと一緒にレコーディングをすることで新しいアイデアをもらうこともあるし、自分の考えていたものとは違うけれどもっと面白いものができる。それがものづくりの醍醐味でもあります。
 
――――音響ハウスを支える人、音響ハウスで音楽をつくってきたミュージシャンや彼らと共にその楽曲を世に送り出してきたプロデューサーなど、多くの人たちのインタビューが満載ですが、どうやって人選をされたのですか?
相原:プロデューサーでもある音響ハウス社長の高根護康さんが音響ハウスの技師や、音響ハウスでレコーディングしていたミュージシャンの皆さんをリストアップしてくれました。主題歌「Melody-Go-Round」は、この映画を作るにあたって佐橋さんとミーティングをしているうちに曲を作った方がいいのではという話が浮上し実現したもので、レコーディングに参加したミュージシャンたちは、佐橋さんが人選してくださいました。
 
 
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――――「Melody-Go-Round」のボーカルに13歳のHANAさんを抜擢しています。ボーカル選びは一番の肝だったと思いますが、HANAさんを選んだ理由は?
相原:この映画は決して懐古主義の作品ではありません。スタジオの歴史を振り返って賞賛するだけではつまらないし、音響ハウスはまだこれからも続いていくわけですから。今も続いているものを入れるということで主題歌を作ることにし、そのミュージシャンとしてドラムの高橋幸宏さんをはじめ音響ハウスをよく利用し、音響ハウスをすごく好きな方々に集まってもらいました。ただそこにベテランのボーカルを入れてしまうと一気に古い感じになってしまうので、そこに新しい血を入れて未来に繋げる形にしたいという狙いで若いボーカルを探し始めたんです。HANAさんは「Melody-Go-Round」を佐橋さんと共同編曲した飯尾芳史さんの事務所に所属しているシンガーで、一度歌ってもらったのを聞いてオファーしました。
 
――――多くの方のインタビューを通して、相原監督ご自身が音響ハウスに対して見出したことは?
相原:劇中でも終盤のコメントに出てきますが、音も含めてすごく真面目なスタジオなんですよね。音楽業界は派手な印象がありますが、冒頭登場する音響ハウスのベテランメンテナンスエンジニアの遠藤誠さんのような職人のみなさんがしっかり業界の土台を支えているのです。
 
――――音響ハウスでレコーディングすると「エンジニアの作業が狂わない」というコメントもありました。
相原:音響ハウスに限らず、最終的に音楽は録音後ミックスという作業が入ります。歌やギター、ドラムなどチャンネルがバラバラなものを、最終的にステレオにしてバランスを取る作業なのですが、よくあるのがラジオで聞くと歌が小さいとか、全体的なレベルが小さいという現象です。そういう部分が「狂わない」ということで、スタジオで聞いたものと、一般的に聞くものとの差があまりないという意味でしょうね。
 
――――音響ハウスが海外の有名ミュージシャンにも愛されていることがよくわかるエピソードとして、ヴァン・ヘイレンのボーカル、David Lee Rothさんも登場しています。
相原:映画のために収録したのではないのですが、David Lee Rothさんが音響ハウスでレコーディングをしていた時のことを自身のYoutubeチャンネルにアップしていたんです。音響ハウスから映画に入れることを許可していただいて、実現したシーンですね。
 
 
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――――最後に「いい音とは?」という質問を投げかけた時、みなさんそれぞれの個性が滲む言葉が紡がれ、非常に興味深かったです。特に佐野元春さんが「売れる音」と即答したのにはプロだなと目を見開かされました。
相原:強力だし、すごくいい言葉で、ある意味本当に素直ですよね。映画の構成として、いい音を聴かせることを後半にまとめています。曲を作る過程をみせる。今までの音響ハウスのエピソードを語ってもらうということに加えて、ミュージシャンのいい音を聴かせる。ただ実際に「いい音」と言われても漠然としていますよね。だからこそ、その人の本質が出やすいのではないかと思い、そのような質問を投げました。坂本龍一さんは本気で悩んでいましたし、本当に多様な「音」への思いが出てきたと思います。
 
――――登場したミュージシャンのみなさんは音響ハウスのレコーディングを振り返る時非常にうれしそうに語っておられましたが、特に壁のシミになるぐらいずっと住んでいたという坂本さんは、本当に嬉々としておられましたね。
相原:坂本さんは今ニューヨーク在住ですが、来日した時にお時間をいただき、インタビューをするなら音響ハウスのスタジオが絶対にいいと思い、当時使っていたスタジオで撮影させていただきました。松任谷正隆さん、由実さんも第一スタジオに入ると当時のことが思い出されるようでしたね。
 
 
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――――最後に、これからご覧になるみなさんにメッセージをお願いいたします。
相原:もの作りは音楽業界に限らず、映画や絵画のようなアート系から町工場で作るような産業系まで様々ありますが、共通しているのはものを作るクリエイティブな気持ちだと思います。若い人にも観ていただき、クリエイティブなところに飛び込んでほしい。一人でもの作りをするのもいいけれど、大勢と何かを作る場所に飛び込んでほしい。そういうことの大事さが伝わればうれしいです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『音響ハウス Melody-Go-Round』
(2019年 日本 99分)
監督:相原裕美
主題歌 Melody-Go-Round / HANA with 銀音堂
作詞:大貫妙子 作曲:佐橋佳幸 編曲:佐橋佳幸、飯尾芳史 ブラス編曲:村田陽一 
出演:佐橋佳幸、飯尾芳史、高橋幸宏、井上鑑、滝瀬茂、坂本龍一、関口直人、矢野顕子、吉江一男、渡辺秀文、沖祐市、川上つよし、佐野元春、David Lee Roth、綾戸智恵、下河辺晴三、松任谷正隆、松任谷由実、山崎聖次、葉加瀬太郎、村田陽一、本田雅人、西村浩二、山本拓夫、牧村憲一、田中信一、オノセイゲン、鈴木慶一、大貫妙子、HANA、笹路正徳、山室久男、山根恒二、中里正男、遠藤誠、河野恵実、須田淳也、尾崎紀身、石井亘 <登場順> 
11 月 14 日(土)より渋谷ユーロスペース、11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、12月18日(金)より京都シネマ、今冬元町映画館他全国順次公開!
公式サイト →:onkiohaus-movie.jp
©2019 株式会社 音響ハウス
 
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稲垣吾郎と二階堂ふみが魅せる、美しくエロティックな「大人の純愛映画」
『ばるぼら』手塚眞監督インタビュー
 
 手塚治虫の作品の中でも禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど様々なタブーに挑戦し評価が高い一方、映像化は難しいと言われてきた「ばるぼら」を、長男の手塚眞監督が映画化。昨年の東京国際映画祭コンペティション部門で世界初上映後、世界の映画祭で話題を呼んだ映画『ばるぼら』が11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショーされる。
 
 成功を手に入れたものの、それを失い、堕ちていく作家の美倉洋介を稲垣吾郎が美しく熱演。美倉の運命を狂わせる謎のフーテン女、ばるぼらを演じる二階堂ふみの表情豊かな演技にも魅せられる。撮影にはその映像美で見るものを魅了するクリストファー・ドイルを招聘し、舞台となる新宿の喧騒を印象的に捉えている。美しくエロティックな大人の幻想物語は、リモート生活に慣れつつある今、強烈な余韻を残すことだろう。
 
 本作の手塚眞監督にお話を伺った。
 

 

■クリストファー・ドイルにキャスティング前からオファー、企画実現へ強い後押しをしてくれた。

―――手塚監督の代表作『白痴』(公開20周年記念デジタルリマスター版を10月31日よりシネ・ヌーヴォで公開)は巨大なオープンセットで自由にビジュアルを構築していましたが、『ばるぼら』はセットの部分が少ない一方、現代の新宿がまさにセットになっていました。名キャメラマン、クリストファー・ドイルさんが街を切り取ることで、作品に新しい魅力が生まれています。
手塚:この作品は非常にエロティックな映画です。通常日本でエロティックな映画といえば汗臭いとか、泥臭いものになりがちですが、僕は昔のヨーロッパ映画のような品のあるニュアンスを持つ、綺麗なものにしたいと思っていました。それには人間だけでなく街、しかも新宿の隈雑な雰囲気がする場所を綺麗に撮れる人が必要でした。そこで真っ先に思い浮かんだのがドイルさんで、出演者が決まる前にキャメラマンを彼にと決めていました。
 
―――キャスティング前の段階で、まずはドイルさんにオファーされていたんですね。
手塚:当時、映画会社や色々なプロデューサーに企画をプレゼンテーションしても、『ばるぼら』の実写映画化に対して、みなさん及び腰になっていたんです。「原作は面白いけれど、映画にするのはちょっと難しい」と方々から断られてしまった。さすがに僕もこれは映画化するのは無理かもしれないと気落ちしてきた時に、ドイルさんだけは「絶対俺が撮るから、絶対やろう!」と言ってくれたんです。彼一人が味方についてくれているだけで、僕もこの企画をなんとしてでも実現させようと思えました。
 
―――ドイルさんの参加が決まったことで、映画会社の風向きも変わったのでは?
手塚:ドイルさんご自身もそのことが分かっていて、一緒にやろうと言ってくれたのだと思います。釜山国際映画祭の映画マーケットに足を運んで、セールスエージェントを見つけは話を聞いていただいていたんです。すると通りがかりのアジアの女性監督が企画書を見て「『ばるぼら』だ!」と。なぜ知っているのかとお聞きするとドイルさんから聞いたというのです。ドイルさんは自分の仲間やアジアの映画人たちに、日本で『ばるぼら』を撮ると宣伝してくれていたようで、それぐらいドイルさんもやりたいと思ってくださっていた。周りからはこだわりが強いという部分で他のキャメラマンを推す声も少なくなかったのですが、僕はドイルさんしか思いつかなかったので、それらの声を振り切りました。
 
 
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■子どもの頃から好きだった父親の大人向け漫画。現実と非現実を行き来する感覚が面白かった。

―――ちなみに手塚監督が原作漫画の「ばるぼら」を初めて読んだのはいつ頃でしたか?
手塚:父親が連載中に読んでいたので、12歳ぐらいだったと思います。父親が描いた漫画本は家の中に普通に置いてあったので、どれを手にとって読もうが自由だったんです。だから父親が描いていた大人向けの漫画は全部読んでいたし、むしろそちらの方に僕の興味が向いていました。明らかに子どもを意識した漫画は当時あまり興味がなかったのです。
 
―――芸術とはという問いかけや、根源に深い問題を内在する作品ですが、当時の感想は?
手塚:第一印象は「不思議な話だな」。悩む小説家の描写も出てきますが、幻覚の中に入ったり、どこまでが夢でどこまでが現実かわからないという感覚が面白いと思ったんです。僕はもともと現実と非現実の境界が曖昧であったり、もしくはそこを行き来する物語が好きで、その中で人間が振り回されながらも成長していく姿に興味がありましたから、「ばるぼら」は特に印象に残っていたんですね。
 
 

■これまでの自分の作品ともつながる「ばるぼら」、コンパクトな作品にできると思った。

―――映画化を構想したのはいつ頃ですか?
手塚:一般的に手塚治虫の作品を映画化するなら「ブラック・ジャック」や「リボンの騎士」といった有名な作品から始まるのでしょうが、5年前に純粋に次に自分がどんな作品を作りたいかと考えたとき、ふと「ばるぼら」のことを思い出しました。それまで自分が作ってきた映画たちともすんなりと繋がっていく感じがしましたし、内容的にも自分の好きな世界だと思いました。もう一つ思ったのは、『白痴』と比べて非常にコンパクトな作品にできるということ。ストーリー的にもそうだし、登場人物も小説家の美倉と少女ばるぼらに絞り込める。場所も新宿に絞り込めるので作りやすくなります。いつも僕の作品はあれもこれも盛り込み、2時間を超えるのが普通だったので、もっと短くてシンプルな映画を作るのにちょうどいい題材でもあったのです。
 
―――原作の魔女や黒魔術という要素を、本作ではあまり強調していませんね。
手塚:オカルティックな要素は今まで散々やりましたし、自然に出てしまうでしょうから、むしろそれを抑えめにして、インテリジェンスな表現を心がけました。オカルティックなシーンには日本で一番魔術に詳しい方に監修者として参加していただき、儀式や道具立を検証していただきました。原作では「エコエコアザラク」という正統的な魔術の呪文を使っていますが、別の作家による同名の漫画があるので、映画では実際に儀式で使われている別の呪文を用意していただきましたし、原作にあっても正確ではない要素を外すこともありました。
 
 
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■稲垣さん、二階堂さんは非常に聡明、何の躊躇もなく演じてくれた。

―――やはり稲垣吾郎さん演じる美倉と二階堂ふみさん演じるばるぼらが素晴らしく、この二人に魅せられました。こだわりのキャスティングだと感じましたが。
手塚:キャスティングは一番大変で、このお二人に決まるまで時間がかかりました。最初から稲垣さん、二階堂さんは候補に上がっていたのですが、企画したのは5年近く前の話ですからそれぞれに事情があり、プレゼンテーションするのが難しかったのです。それから時間が経ち、やはりこの二人しかいないとオファーをしたところ、お二人とも一も二もなく「やります」とおっしゃってくださり、うれしかったですね。稲垣さん、二階堂さんは、脚本を読んで内容を理解したら、あとは演じるだけというスタンスで、非常に難しいシーンやデリケートなシーンも何の躊躇もなく、疑問も抱かず演じてくださいました。素晴らしかったです。
 
―――インテリでモテ男の美倉はまさに稲垣さんのはまり役ですね。
手塚:芸術家きどりの作家で、インテリでモテる男である美倉と、稲垣さんのパブリックイメージとは重なる部分がありますね。実際にかなりインテリな方なので、美倉役は似合うのではないかと思ったし、そんな美倉がだんだん内面をさらけ出し、ある意味堕ちていく姿を、稲垣さんなら美しく演じることができると思いました。
 
―――売れっ子作家と呼ばれることへの違和感や真の芸術家を追求するあたりは、稲垣さん自身が歩んできた道にも重なる気がしました。
手塚:稲垣さんの歩まれてきた芸能人性から、そのリアルさが出たのではないでしょうか。稲垣さん、二階堂さん共に非常に聡明で、正しい方向にきちんと演じ、時には僕が思った以上に演じてくださった。クライマックスの場面も二人に任せ、「あそこまでやってくれるんだ」と僕が感心するぐらいの素晴らしい演技をしてくださったので、嬉しかったですね。
 

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■原作からピュアな要素を抜き出し、「純愛を見せつけたかった」

―――稲垣さんが演じた美倉は、原作よりも欲深さをそぎ落とし、ピュアな人物造詣になっていますね。
手塚:原作にもピュアな要素はありますが、今回はあえてそこを抜き出しました。今の時代だからこそ、肉体の触れ合いも含めて、とてもピュアなラブストーリーを作って見せたいと思いましたし、この原作がちょうどそこに当てはまりましたね。今はどうしても相手の裏を詮索したり、どちらかが騙したりという話が多いですが、むしろ純愛を見せつけたいという思いがありました。これは二重の驚きになると感じています。まずは僕が「ばるぼら」を選んだこと、そしてオカルティックな要素があるにも関わらず純愛の映画になっていること。僕の映画をご存知の方にはいい意味で驚きになるのではないでしょうか。
 
―――二階堂さんが演じたばるぼらも非常に魅力的ですが、どのようにキャラクターを作り上げていったのですか?
手塚:最初は原作とは全然違う現代の格好や、ゴシック要素が強いのでいわゆるゴスロリファッションもいいのではないかと考えていたのですが、衣装の柘植伊佐夫さんと二階堂さんから原作のままでいいのではと逆におっしゃっていただきました。二階堂さんは柘植さんの衣装で『翔んで埼玉』を撮っていた頃だったので、漫画をそのままにするとコスプレっぽくなってしまうのではと危惧したのですが、最初の衣装合わせで二階堂さんが原作の格好にオレンジのかつらを被って、部屋の隅に座っているのを見た時、これでいいと実感しました。撮影では、二階堂さんがご自分の私物衣装を「これもばるぼらっぽいのでは」と持参してくださったんです。映画の中でばるぼらが着用している服の半分は二階堂さんの私服です。有名ブランドの服だけど、フーテンのばるぼらの世界観に溶け込んでいる。二階堂さんの着こなしもあるでしょうし、そのチョイスもばるぼららしさが出ていたんでしょうね。
 
 
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■クリストファー・ドイルが手持ちカメラで撮った「ばるぼらの表も裏も見せている」シーン。

―――生々しい現実の中を生きる美倉に対し、ばるぼらはテーマ曲にのって新宿の街を彷徨い歩くシーンが登場し、幻想的な美しさがありました。
手塚:今回の撮影はタイトなスケジュールだったのですが、あのシーンは事前にドイルさんに、「ばるぼらを1日あなたに貸すので、好きなように撮ってください。二階堂さんを自由に演出してください」とお伝えして撮っていただいたものです。実際に新宿は撮影できる場所とできない場所があり、結局限られたものしか撮れず、撮影を終了したのですが、解散した時にドイルさんが「ちょっと待って」と言い出したのです。二階堂さんに戻ってきてもらい、「この道を歩いて」と急に道を歩かせ始め、ドイルさんが手持ちカメラでそれを撮り始めた。10分間ぐらい自由に撮ったのですが、その映像が本当に素晴らしかったのです。予定にない映像でしたが、そこから随分使いました。橋本一子さんの音楽にもぴったり合いましたし、そこに稲垣さんが読むヴェルレーヌの詩を重ねると本当に好きな場面になりました。思ってもいなかった場面ですが、一番自分が撮りたかったのはこれなんだという感じです。演出していないのだけど、ばるぼらの表も裏も見せている。映画は時々このような奇跡が起きる。作っていて一番喜びを覚える瞬間ですね。
 
 

■肌と肌が触れ合うエクスタシーを純愛に取り込む感覚を忘れてほしくない。

―――『星くず兄弟の新たな伝説』の取材で「百年後観てもいい映画を作りたい」とおっしゃっていましたが、『ばるぼら』もそういうお気持ちで作られたのでしょうか?
手塚:今は男性が草食的だと言われ、肉欲的なものから離れていこうとしています。いい面もあるのですが、やはり肌の触れ合いは純愛の中でも大事な要素です。今の若者たちの純愛は手も握らないとか、精神的なニュアンスだけかもしれないけれど、もっと大人の、肌と肌が触れ合うエクスタシーを純愛に取り込むことをこの映画で感じてほしい。それを意識して作りましたし、そういう感覚を忘れてほしくない。スマホが流行った瞬間から、スマホでしかコミュニケーションを取らない風潮もありますが、僕はそれが自然ではない感じがするし、そんなコミュニケーションはセクシーでもエロティックでもない。エロティックは普段悪い意味で使われがちですが、僕はもっとポジティブに考えていくべきだと思っていますし、こういう時代に一番エロティックな『ばるぼら』を作れて良かったです。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『ばるぼら』(2019年 日本・ドイツ・イギリス 100分 R15+)
監督・編集:手塚眞 原作:手塚治虫 撮影監督:クリストファー・ドイル/ 蔡高比
出演:稲垣吾郎 二階堂ふみ 渋川清彦 石橋静河 美波 大谷亮介 片山萌美  ISSAY  / 渡辺えり 
11月20日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき他全国ロードショー
(C)2019『ばるぼら』製作委員会 
※11月3日(火・祝)第21回宝塚映画祭(シネ・ピピア)にてプレミア上映
※10月31日(土)よりシネ・ヌーヴォにて『白痴』ロードショー、【手塚眞実験映画集】【短編集】をはじめ、過去作品を一挙上映する「手塚眞監督特集」も同時開催。
 
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「国の制約がある中でも神戸の人は常に世界に向けて開かれていた」黒沢清監督、神戸の魅力を語る。『スパイの妻』凱旋舞台挨拶
(2020.10.18 神戸国際松竹)
登壇者:黒沢清監督 
 
 第77回ヴェネツィア国際映画祭で見事、銀獅子賞(最優秀監督賞)に輝いた黒沢清監督最新作『スパイの妻<劇場版>』が、10月16日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹他にて絶賛公開中だ。
 
 太平洋戦争前夜を背景に、時代の嵐に翻弄されながら愛と正義の間で揺れ動く夫婦の姿を描き出す歴史ロマン。濱口竜介、野原位の『ハッピーアワー』コンビによるオリジナル脚本は、戦前の神戸をその文化も含めて描き出し、国家による思想統制や監視の強化は現在の不穏な空気にも重なる。高橋一生が演じる優作の、時代の雰囲気に負けない行動力と、蒼井優が演じる妻、聡子が度重なる苦難を経て、強い意志を持ち、時代に立ち向かう姿に心打たれる。黒沢監督が惚れ込んだという神戸・塩屋の旧グッゲンハイム邸が、夫婦二人の住居である福原邸としてロケ地に使われているのも見どころだ。
 
 
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 公開2日目を迎えた10月18日、黒沢監督の出身地であり、本作のロケ地にもなった神戸の神戸国際松竹で凱旋舞台挨拶を行った。満席の観客を前に、初めて手にしたという銀獅子賞受賞証明書を眺めながら、黒沢監督は「残念ながら現地には行けなかったので大層な賞をいただいたという実感はなかったのですが、こうして(証明書を)見ると、『スパイの妻』が映画の歴史の片隅に名を刻めたのかなと感無量です。神戸でもかなりの部分を撮影させていただき、ありがとうございました」と挨拶。神戸を舞台にした映画を作るきっかけとなった東京芸術大学大学院映像研究科で教鞭をとっていた時の教え子である濱口竜介と野原位が脚本を持ってきたときのことを振り返り「神戸を舞台にした時代もののオリジナルストーリーが書かれていて、大変面白かった。お金のことを考えるとダメかと思ったが、NHKや映画プロデューサーらが気に入ってくれ、企画が実現しました」と脚本段階で惚れ込んだことを明かした。
 
 
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 当時の神戸が世界に向いて開かれていたことも、物語の核になったという黒沢監督。「1940年前後、日本はかなり内向きになり、国が外部との間に高い塀を作って行き来を閉ざそうとしていた時代だったが、人の心までは閉ざすことはできなかった。国の制約がある中でも神戸に住む人は常に世界に向けて開かれようとしていた。洋装はしないようにという国からのお達しがあったにも関わらず、神戸は皆洋服を着ていたと聞いている。そんな象徴的な街が神戸なのです」と、映画の登場人物たちの描写を重ね合わせながら神戸の魅力を語った。
 
 
 
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 聡子役の蒼井優の演技は本作の大きな見どころだが、黒沢監督は「本当に(演技が)上手い方。役になりきる憑依型の女優と思われているが、全部計算して演じておられるので、カメラが回る直前までは全く普通なんです。用意スタートがかかった瞬間に福原聡子になり、カットがかかった瞬間に『今のはどうでした』と聞きにきてくれる。撮影現場がすごく楽でした」とその実力に最大限の賛辞を贈る場面も
 
 最後に、神戸市より神戸市芸術文化特別賞が贈られた黒沢監督は「昨年大変撮影でお世話になったので、こちらから(神戸市に)感謝状をもらっていただきたいぐらいです。映画のスタッフ、キャストと共有したいと思います。映画はあそこで終わっていますが、もし余裕がありましたら、登場人物たちがあの後、生き残ってどういう人生を送ったのかと想像を掻き立てていただければ。その先に現在がありますので、そこまで思いを馳せていただくような映画になっていればうれしいです」と現代と地続きの物語であることを示唆し、舞台挨拶を締めくくった。
(江口由美)
 

 
<作品情報>
『スパイの妻<劇場版>
(2020年 日本 115分)
監督:黒沢清 
脚本:黒沢清、濱口竜介、野原位
出演:高橋一生、蒼井優、坂東龍汰、恒松祐里、みのすけ、玄理、東出昌大、笹野高史
10月16日(金)よりシネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹他全国ロードショー
公式サイト → https://wos.bitters.co.jp/
(C) 2020 NHK, NEP, Incline, C&I
 
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主演:草彅剛×脚本・監督:内田監督登壇!
日本外国特派員協会での記者会見10/9(金)
 
 
草彅剛主演、内田英治監督オリジナル脚本映画『ミッドナイトスワン』が9月25日(金)より全国にて公開中。
本作は、トランスジェンダーとして日々身体と心の葛藤を抱え新宿を舞台に生きる凪沙(草彅)と、親から愛を注がれず生きるもバレエダンサーを夢見る少女・一果(服部樹咲)の姿を通して“切なくも美しい現代の愛の形”を描く「ラブストーリー」。

midnaighswan-pos.jpg日本映画界が注目する『下衆の愛』の俊英・内田英治監督が手掛けるオリジナル脚本に、唯一無二の存在感を放つ草彅剛が初のトランスジェンダー役として挑む。さらに、オーディションでバレエの才能を認められ、ヒロイン役を射止めた服部樹咲が本作で女優デビューし、真飛聖、水川あさみ、田口トモロヲが華を添える。ヒロインが躍る「白鳥の湖」「アルレキナーダ」などの名作に乗せて、主人公の母性の目覚めを“現代の愛の形”として描く、常識も性も超えた、感動作が誕生しました。
 
この度、欧米、アジア、中東などの海外メディアから『ミッドナイトスワン』の会見開催を望む声が協会に多数あり、熱烈なオファーを受け、主演:草彅剛と、本作の脚本・監督を務めた内田英治が日本外国特派員協会の記者会見に登壇いたしました。外国記者からの質問からの質問や、世界中で本作を応援しているファンに向けてメッセージを語りました。
 

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冒頭の挨拶で、内田監督は「映画の公開は3週目を迎え、大変多くの人に観ていただいています。オリジナル脚本の映画が、これだけの劇場数で公開され、多くの人に観ていただけるということはなかなかないことです。小説や漫画が原作の映画が多い日本で、たくさんの方にオリジナルの脚本映画を観ていただけているこの状況を、とてもありがたく思っています」とコメント。
 
草彅は「映画は今、公開中ですが、今日のこの会見をいろんな方が見ることで、よりたくさんの方に関心を持っていただき、1人でも多くの方々に作品の魅力が伝わることを願っています。いつもの会見とは少し雰囲気が違うということからも、この作品がいろんな方に注目され、広がっていることを実感しています。『ミッドナイトスワン』が、大きく遠くに羽ばたいているのかなという気持ちです。今日はよろしくお願いいたします」と笑顔で語った。
 
役を引き受けた理由について草彅は「この作品は、監督のオリジナルの脚本です。初めて脚本を読んだときには、トランスジェンダーの役で難しいとは思いましたが、それ以上に、脚本から、今まで感じたことのないような温かい気持ちが込められているのを実感できました。もちろん、すごく難しい役だとは思いましたが、それよりもこの素晴らしい作品に参加したいという気持ちが勝ってしまいました。そして、すぐに撮影に入りたいという気持ちにもなった作品です」と説明した。
 

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トランスジェンダーや、LGBTQの友達がいるかどうか、さらに、役作りにおいて、そういった方々と実際に話をしたかどうかという質問に、草彅は「これまでの芸能活動で知り合った方の中に数人LGBTQの方々がいました。みなさんとても優しい方で、いろいろと僕を助けてくれた方たちです。役作りに関しては、トランスジェンダーをあまり意識せずに、脚本が持っているエネルギーのようなものをのせていきたいと思っていました。僕自身が脚本を読んだときに流した涙は、どんな涙なのか、なぜ涙が流れたのかはよくわかりませんでした。でも、自分自身、とても素敵な涙だと感じました。そのエネルギーや気持ちを役にのせることが一番の役作りだと思い、演じました」と役作りの様子を明かした。
 
トランスジェンダーの役者の起用を検討したかという質問に内田監督は「脚本が出来上がり、次はキャスティングとなった段階には、トランスジェンダーやシスジェンダーの役者など、あらゆる可能性を考えましたし、すごく悩みました。先日の足立区議会厚生委員長・白石正輝氏の性的マイノリティーに対する発言からも分かるように、日本はまだその段階じゃないとも感じていました。トランスジェンダーの役者は非常に少ないし、何よりも、トランスジェンダーに関する世間の意識も低く、まず認知がされていないという状況です。この映画は、多くの方が観てくれる作品にすることがまず大事だと感じていました。そのためには、演技がちゃんとできて、日本で広く認知されている方ということで、草彅さんにオファーさせていただきました。
 
トランスジェンダーの役にはトランスジェンダーの俳優を、という世界的な流れがあるのは十分承知しています。日本もいずれはそうなるべきだと思っていますが、残念ながら、日本はそのスタート地点にも立ってないという状況です。まず、初歩の段階で必要なのは、トランスジェンダーの方で役者をやりたい人が増えることだと思っています。この作品には、トランスの女優である真田怜臣(さなだれお)さんが出ています。彼女は、舞台の経験は多いのですが、映画に出演するのは初めてでした。現場で草彅さんと真田さんの芝居を見て感じたのは、草彅さんの演技に感化されて、どんどん演技が良くなっていくということ。今回の経験を経て、彼女が僕の次の作品にも出演すればいいなと思ったくらいです。これから俳優をやるぞという方たちにとって、草彅さんのような立場の方、影響を与えられる方というのはすごく必要だと感じています。改めて、草彅さんに出演していただいてよかったと思いました」とキャスティング、撮影現場の様子を振り返った。
 

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トランスジェンダーの凪沙に、今までなかった母性が芽生えていく物語。役作りについて訊かれた草彅は「撮影に入る前に監督からトランスジェンダーの方のドキュメンタリーDVDや、監督が自らまとめた資料などをたくさんいただきました。また、トランスジェンダーの方たちとミーティングする機会を設けてくださって、それが役作りに大いにつながった部分はあります。映画の中で、凪沙というキャラクターが、徐々に母性に目覚めていかないといけない。そこはすごく難しいところではあったけれど、“何かを育てる気持ち”というのはジェンダーレスに芽生えるものであって、男性も女性も変わらないと感じました。植物を育てたりとか、工作とか図工で何かを作ったりなど。何かを育てていく、育んでいくという気持ちで演じていくうちに、自分の中で”もしかしたらこれが母性なのかな”と目覚めていった感じです」と解説した。
 
タブーのようなテーマを扱うと決めたときの反応と、難しさを訊かれた内田監督は、「僕自身は、この問題がタブーだとは思っていません。どうしても、トランスジェンダーの映画という形でくくられてしまうけれど、基本的には血は繋がっていない関係に芽生えた母性と愛情の物語。トランスジェンダーはあくまでもキャラクターの背景です。草彅さんとはいつも、凪沙というキャラクターをどう作り込んでいくか、凪沙という主人公の映画をどう展開していくのかについて話していました。映画作りの難しさは、この作品だからという特別なことはありませんでした。ただ、映画公開後には、SNSなどでもとてもたくさんの意見が出てきました。
 
今まで、LGBTQやトランスジェンダーの問題を語ることを怖がっていた、躊躇していた人たちが、シスジェンダー、トランスジェンダーとは、と語るようになりました。日本においては、まだまだジェンダーへの理解度や認識が低い傾向の中で、多くの若い人がこの映画に反応してくれたことをすごくうれしいと感じています。映画館では多くの若い人を見かけます。草彅さん演じる凪沙は、テレビに出ている、いわゆるニューハーフと呼ばれていた方々とは違うと知り、何かを感じてくれただけでも、この映画をやってよかったなと思いました。そして、そういった若い人たちが観るきっかけとなったのは、草彅剛という俳優がいたからこそだと思っています。映画監督としてとてもよろこばしく感じています」と笑顔を浮かべた。
 
改めて、先日の足立区議会厚生委員長・白石氏の性的マイノリティーに対する発言についてどう感じているかという質問を受けた内田監督は「あの発言は、許しがたい発言だと思っています。こういう映画を作っているからではありません。政治家と名乗る方があのような発言をすること自体、言葉にならないくらい許しがたい発言だと思っていますし、抗議したい気持ちでいっぱいです。実際に、彼のインタビューを読んだのですが、とても無知で保守的な考えだと感じました。LGBTQ含め、様々な事柄に無知な部分が多い日本において、これから若い人を中心に一歩一歩進むしかないと思っています。あのような発言をする政治家が急にいなくなることはありません。草彅さんは俳優、僕は監督なので、こういう作品を作ったからといって、こうしなさいという立場ではありません。ですが、この作品が何かを考えるきっかけになるといいと思っています。“あの政治家おかしなことを言ってるんじゃないか”と感じるきっかけになればいいかなと思っています」と訴えた。
 
オリジナル作品が成功するのは難しい日本の映画業界の問題点はどこにあると感じているか、という質問に内田監督は「オリジナル作品は非常に少ないのが現状です。全国規模の作品の中でオリジナル作品が占める割合は、アメリカは4割くらいあるけれど日本は恐らく5パーセント以下じゃないでしょうか。ビジネスとしては、ベストセラー小説や漫画を映画化した方が安心です。日本のプロデューサーは会社員であることが多いので、会社からOKが出る企画、なるべくリスクを取らないものを選びがちです。もちろん、それも大事なことですけれど、個人的には映画はビジネスでもあり、もちろん芸術でもあると思っているので、本人たちの作家性が前面に出たものは、もっとあってほしいのです。リスクを取らないという意味で、オリジナル作品には、新人俳優を起用することも多いのですが、今回は草彅剛という日本のトップスターが出演してくれたことも含めて、意義のある作品になったと思います」と胸を張った。
 
最後の挨拶で草彅は「世界中の皆さんにこの作品を観ていただきたいと思っています。とてもデリケートな問題も描かれていますが、みなさんが考えるきっかけになっていただけたらうれしいなと思っています。自分自身が本当に“いい作品だな”と思える映画に出演できたことがとてもうれしいです。この感動を1人でも多くの方に届けられたらいいなと思っています。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします」と呼びかけた。
 
内田監督は「おかげさまで、興行的にもヒットしていて、大変よろこばしいことと思っています。規模としては決して大きくないけれど作家性の強い作品を、多くの人が観てくれていることがうれしいです。さらに多くの人に観てほしいと思っています。作品の背景にある差別やジェンダーの問題について、少しでも考えるきっかけ、その第一歩になってくれたらいいなと願っています」とアピールし、記者会見を締めくくった。
 

【STORY】
故郷を離れ、新宿のショーパブのステージに立ち、ひたむきに生きるトランスジェンダー凪沙。
ある日、養育費を目当てに、育児放棄にあっていた少女・一果を預かることに。
常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。
理解しあえるはずもない二人が出会った時、かつてなかった感情が芽生え始める。
 
 
出演:草彅剛 服部樹咲(新人) 田中俊介 吉村界人 真田怜臣 上野鈴華 佐藤江梨子 平山祐介 根岸季衣
水川あさみ・田口トモロヲ・真飛 聖
監督・脚本:内田英治(「全裸監督」「下衆の愛」) 
音楽:渋谷慶一郎  
配給:キノフィルムズ   ©2020 Midnight Swan Film Partners

(オフィシャル・レポートより)
 
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©2002 松竹/日本テレビ/住友商事/博報堂/日販/衛星劇場
 
 
毎年秋の京都の風物詩となっている京都ヒストリカ国際映画祭が、新型コロナウィルス対策を万全にし、10月31日(土)から11月8日(日)まで、京都文化博物館とオンライン会場のハイブリッド型で開催される。
 
 
 オープニングには山田洋次監督が松竹京都撮影所で初めて撮った時代劇であり、松竹にとっても記念碑的作品の『たそがれ清兵衛』を上映。山田洋次監督も上映後のトークに登壇予定だ。同じくヒストリカスペシャル作品として最終日の11月8日に世界初上映されるのは、北白川派初の時代劇となる『CHAIN』。東映京都撮影所の全面的な協力のもと、幕末の京都を舞台に新撰組の伊藤甲子太郎惨殺事件に絡んでいく若い隊員たちを描いた時代劇だ。
 

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©北白川派

 10月8日、京都文化博物館にて開催された記者会見では同作の福岡芳穂監督が登壇し、学生たちと作った本作について「時代劇はつい他人事として見てしまいがちだが、歴史は他人事ではない。100年以上経った今、我々にも引き継がれその時間の上にいる。まして京都はそういう場所ではないかと考えながら、映画では冒険的な手法を用いています。観客のみなさんにそれをどう見ていただけるか、これから我々がみつめていきたい」と挨拶。フラメンコギターが鳴り響く予告編も披露された。8日の上映後には、福岡芳穂監督、脚本の港岳彦さんに加え、霊山歴史館の木村武仁さん、映画評論家の山根貞男さんらを招いてのシンポジウムも開催予定だ。(いずれもシアター上映のみ)

 
 
 
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 個性的な歴史映画が楽しめるヒストリカ・ワールドは、今のトレンドともいえるホラー調の歴史映画『荒地の少女グウェン』、ウクライナ出身のクリスティーナ・シボラップ監督初長編作『義理の姉妹』、性差別や人種差別など人を分断する根源を問う、今まさに見て欲しいキューバ・スイス合作映画『魂は屈しない』、第一次世界大戦のモザンビークを舞台にした2020年ロッテルダム国際映画祭オープニング上映作『モスキート』の4本が上映される。(シアター上映後オンライン配信)
 
 
 
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 さらに今年のヒストリカ・フォーカスでは「松竹映画100年」と題し、その軌跡を時代劇から紐解く特別企画となっている。シアターでは大船時代劇の『楢山節考』、松竹の時代劇を語る上で欠かせない傑作『切腹』から、松竹ヌーヴェルバーグの時代劇『暗殺』、そして大島渚監督の遺作となった『御法度』も上映する。配信作品の中には、今回初配信が10本あり、その中には松竹京都の代表作を作り続けてきた大曾根辰保監督作品(『歌う弥次喜多 黄金道中』他)も含まれ、その意義は大きいという。
 
 
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 ヒストリカ・フォーカスのオンライン配信限定企画で、全45本配信するのが「スーパーヒーロー前史 子ども時代劇エボリューション」。『笛吹童子』『里見八犬傳』『紅孔雀』『百面童子』『快傑黒頭巾』から『仮面ライダー対ショッカー』まで、東映の大きな特徴であるスーパーヒーローのアーリーヒストリーを紹介する。ヒストリカ・フォーカスでは作品上映、配信の他に、今の松竹京都撮影所をいくつかの視点から語るスペシャル動画を期間中に配信予定だ。
 
 
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 イタリア文化会館ー大阪連携企画では、今年生誕100年を迎え、代表作が特集上映されているイタリアの巨匠、フェデリコ・フェリーニ の作品より歴史映画の『カサノバ』、『サテリコン』が上映される。京都文化博物館学芸員の森脇清隆さんは、「フェリーニはチネチッタという大きな撮影所で、その奇想天外なイメージから大きなセットを作り上げた。フェリーニの根城であり、そのイマジネーションを支えたのがチネチッタで、東映京都撮影所、松竹京都撮影所がある京都でご紹介する意義があると思っています。豪華なセットとゴージャスな衣装で表現主義的権威をデフォルメしており、歴史劇だからこそできる懐の深さを衣装からも見ていただけるのではないでしょうか」とその魅力を解説した。
 
 
 
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 また、ヴェネツィア・ビエンナーレービエンナーレ・カレッジ・シネマでは、若手育成プログラムのビエンナーレ・カレッジ・シネマより昨年制作された作品を紹介する。今年は、イタリア山間部の過疎地を舞台に、今の若者がどう向き合うのかを描いたイタリア映画『愛することのレッスン』を上映する。
 
 他にも、カムバックサーモン・プロジェクト(『オルジャスの白い馬』)や関連企画をオンラインを活用しながら開催予定だ。
チケットや配信についての詳細は、第12回京都ヒストリカ国際映画祭の公式WEBサイトを参照してほしい。
 
★第12回京都ヒストリカ国際映画祭公式WEBサイトはコチラ
 

『星の子』 - 映画レビュー

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amaiosakede-ivent-550.JPG【日時】10月5日(月)18:20の回(上映前イベント)
【場所】テアトル新宿(新宿区新宿 3-14-20 新宿テアトルビル B1階)
【登壇】大九明子監督、鈴木もぐら(空気階段)、前野朋哉
 
 
映画『甘いお酒でうがい』が、9月25日(金)より公開し、全国にて好評上映中です。シソンヌじろう原作の日記小説を、松雪泰⼦、⿊⽊華、清⽔尋也ら実⼒派キャストで映画化!『勝⼿にふるえてろ』や『美⼈が婚活してみたら』などで⼈⽣を上⼿く渡り歩き切れていない⼥性を撮らせたら右に出る者がいない大九明子が本作の監督を務めました。そしてこの度、大九明子監督と、本作に出演する鈴木もぐら(空気階段)前野朋哉が、今夜、テアトル新宿にてトークイベントを行いました。
 


amaiosakede-pos.jpgお笑いコンビ「シソンヌ」のじろうが長年、コントで演じてきた架空の独身OL・川嶋佳子の物語を日記形式でつづった小説を映画化した『甘いお酒でうがい』。本作の公開を記念して10月5日(月)に東京・新宿のテアトル新宿でトークイベントが開催され、大九明子監督、本作に出演しており、先日の「キングオブコント2020」ではファイナルに進出した「空気階段」の鈴木もぐら、同じく本作に出演している前野朋哉が出席した。
 
この日は大九監督、鈴木さん、前野さんの共通点をテーマにトークが展開。まず最初に、鈴木さんと前野さんの共通点として挙がったのが、共に大阪芸術大学の映像学科に在籍していたということ。鈴木さんは「ドキュメンタリーに興味があって、原一男さん(※『ゆきゆきて、神軍』監督)が(教授で)いるということで」と進学の意外な理由を明かしたが、「大学の近くにパチンコ屋があって、そこに通い詰めてしまい、学費が払えなくなって除籍になりました」とわずか1年未満で除籍となってしまったと告白。
 
鈴木さんよりも1年早く入学していたという前野さんは、このパチンコ屋に「たまに『エヴァ』を打ちに行っていた」とのことで「(店で)会ってたかもしれませんね」と驚いた様子だった。
 

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続いて、大九監督はもちろん、前野さんも「映画監督」として活動しているという共通点に触れ、互いの監督としての魅力について尋ねると、大九監督は「俳優の魅力の引き出し方をわかっていて演出が素晴らしい」と絶賛。一方、大九作品の常連である前野さんは「毎回、映像で(完成した映画を)見たときに、こういう作品だったんだ! とびっくりします」と大九マジックを語る。
 
また前野さんは「僕のことを寄り(アップ)で撮ってくれるのは大九監督だけ」と明かすと、前野さんのことが「大好き!」だという大九監督は「そりゃ寄りで行っちゃうよ!これは」と興奮気味に語る。
 
さらにトークはこの『甘いお酒でうがい』の映画化についてに。大九監督は「じろうさんの原作が本当に美しくて、何度か泣きながら読みました」と明かす。じろうさんは、大九監督の『美人が婚活してみたら』の脚本を担当しているが「じろうさんと2本目を組むなら、絶対にこの原作でやりたいとお願いし、好きなエピソードを組み込んで何事も起こらない映画を作ろうという覚悟で作りました」と思いを語る。
 
前野さんは「黒木華さんの役が、メチャクチャかわいい!現実にこんな子がいたら、好きになっちゃうよねという話をしていました。かわいすぎて、こんな子、いるはずがない!何か裏があるんじゃないかって…」と興奮気味に魅力を語る。
 
鈴木さんも同意見のようで「スクリーンの中にちゃんと存在してるってすごいですよね」とうなずく。撮影現場で、鈴木さんは主演の松雪泰子さん、黒木さんを前に「実在するんですね」と思わず言ってしまったそうで、劇中では松雪さんに触れるシーンも! 「松雪さんを触った手で次の日、パチンコに行ったら当たりました(笑)」と語った。
 

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大九監督と鈴木さんは撮影時が初対面となったが、大九監督は「私が一方的にファンだったので、ドキドキしていました(笑)」と告白。鈴木さんは、当時はいまほど売れておらず「歌舞伎町のカラオケバーで」バイトをしていたそうで「(配給会社である)吉本の社員が(撮影)現場で驚いてました。『なんでいるんですか?』って(笑)」と振り返る。
 
一方で、大九監督は空気階段の飛躍を予期していたそう。本作に続き、大九監督が演出を務めたドラマ「時効警察はじめました」にも鈴木さんは出ているが、昨年のキングオブコントの決勝は、「時効警察」の撮影の翌日だったとのことで、同作にも出演している前野さんは「その日、撮影は(朝の)4時までかかったんです(笑)。『ここから行くんだ? すげぇ!』って思いました」と懐かしそうに振り返る。
 
鈴木さんは「実は、(昨年の)準決勝も撮影の後、すぐに飛び出したんです。逆にそれがよくて、それがなかったら固くなってたと思います」と明かした。
 
大九監督は、今年の結果を受けて鈴木さんに「てっぺんが見えてきましたね」と期待を寄せる。鈴木さんは「てっぺんを見る前に、まずは借金を返さないと…。そこからですね」と笑いを誘っていた。
 
ちなみに、鈴木さんだけでなく大九監督、前野さんも「芸人」として活動していた経験があるというのも意外な共通点。大九監督は養成所のJCAに1期生として通っていたが「私は、グダグダに挫折してしまい、何をしていいかわかんない中で映画だけが趣味で、映画館で映画美学校の1期生の募集を見て、作る側にシフトした人間。完全なる挫折を…」と苦笑する。前野さんが「どんなネタをやってたんですか?」と尋ねると「ピンでえげつないネタをやってて、放送できるネタがあまりなかったんです。何度かTVに出させていただいたんですが、いつも『そこ変えましょうか』って言われちゃう…」と照れくさそうに明かした。
 

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一方、前野さんは映画、ドラマで漫才師の役を演じたことから、プロモーションを兼ねてM-1グランプリにも挑戦し、1回戦を突破した。この挑戦について「いい経験でしたし、芸人さんのことを心の底からすごいなと思うようになりました。決まった時間で笑わせないといけないというのは別次元のスポーツのようでした」と述懐。
 
お笑い芸人でありながら、俳優としても高い評価を得るマルチな才人が増えているが、大九監督は「私が(監督として)ご一緒した方たちはコントの方が多いんですが、手数が多くて、現場で『こう変えましょうか?』と指示を出した時の対応力が素晴らしい。安心して委ねられる」と指摘。
 
前野さんは、「時効警察」での鈴木さんの演技に触れ「オダギリさんたちが来るのを察して、白目になるシーンがあったんですけど、ああいうのは普段、お芝居してて出てこない!」とその瞬発力を大絶賛。大九監督も「あのシーンは、白目にしてなんて言ってないし、ト書きにもないけど勝手にそうなった」と鈴木さんの役者としてのポテンシャルを讃えていた。
 
鈴木さんが、自身(鈴木)を主演に据えて映画を撮るとしたら? と2人に問いかけると、前野さんは「セリフのないタヌキをやってもらいたい」と珍提案! 「悪いタヌキを石橋蓮司さんとかにやっていただいて、もぐらさんは、ちゃんとした“いい”タヌキをやってほしい。捕まって、タヌキ汁にされて、かわいそうに…という感じで」と具体的な物語まで即興で提案する。
 
一方、大九監督は「実はもぐらさん主演で、既にプロットがあります!」とニヤリ。「タイトルも決まってて、何人かのプロデューサーにも話してあって、ショートフィルムの企画が来たら、心に決めている」と既に練られた構想があることを明かす。気になる役柄は「人間ですが、ちょっと変わった人と“何か”の間みたいな感じ」とのこと。
 
鈴木さんは思わぬオファーに「楽しみにしてます!オファーをお待ちしてます!」とノリノリで語り、会場の笑いを誘っていた。
 
最後に、「波風立てないように、じろうさんと細心の注意を払って作った映画なので、静かにひたひたと味わってほしいです。」と大九監督から観客に向けてメッセージが届けられた。
 


amaiosakede-550.jpg≪Story≫
これは私の日記。誰が読むわけでも、自分で読み返すわけでもない、ただの日記・・・
ベテラン派遣社員として働く40代独身OLの川嶋佳子(松雪泰子)は、毎日日記をつけていた。撤去された自転車との再会を喜んだり、変化を追い求めて逆方向の電車に乗ったり、踏切の向こう側に思いを馳せたり、亡き母の面影を追い求めたり・・・。そんな佳子の一番の幸せは会社の同僚である若林ちゃん(黒木華)と過ごす時間。そんな佳子に、ある変化が訪れる。それは、ふた回り年下の岡本くん(清水尋也)との恋の始まりだった・・・
 

出演:松雪泰子(川嶋佳子 役)、黒木華(若林ちゃん 役)、清水尋也(岡本くん 役)ほか
監督:大九明子
脚本:じろう(シソンヌ)
原作:川嶋佳子(シソンヌじろう)『甘いお酒でうがい』(KADOKAWA 刊)
音楽:髙野正樹
製作:藤原寛  エグゼクティブプロデューサー:坂本直彦  スーパーバイザー:黒井和男、古賀俊輔  企画:佐々木基
プロデューサー:高島里奈、大森氏勝、八尾香澄  共同プロデューサー:田中美幸  ライン・プロデューサー:本島章雄
撮影:中村夏葉  照明:渡辺大介  美術:秋元博  録音:小宮元  編集:米田博之  装飾:東克典、奈良崎雅則 
衣裳:宮本茉莉  ヘアメイク:外丸愛  音響効果:渋谷圭介  助監督:成瀬朋一  制作担当:今井尚道
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント  制作:吉本興業、テレビ朝日
製作・配給:吉本興業
2019/カラー/日本/107 分/アメリカンビスタ/5.1ch
<公式ウェブサイト>https://amasake-ugai.official-movie.com 
<公式Twitter>https://twitter.com/AmaiOsakeDeUgai
映倫区分:G コピーライト:©2019 吉本興業

ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか、全国上映中!


(オフィシャル・レポートより)
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