原題 | 原題 Les Sorcieres de l’Orient 英題 The Witches of the Orient |
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制作年・国 | 2021年 フランス |
上映時間 | 1時間40分 |
監督 | ・監督・脚本:ジュリアン・ファロ ・プロデューサー:ウィリアム・ジェアナン ・撮影:山崎裕 ・編集:アンドレイ・ボグダーノフ ・録音:レオン・ルソー ・音楽:ジェイソン・ライトル、K-Raw |
出演 | 河西昌枝、松村好子、半田百合子、谷田絹子、宮本恵美子、磯部サタ、松村勝美、篠崎洋子、大松博文他 |
公開日、上映劇場 | 2022年1月2日(火)~京都シネマ、1月7日(金)~テアトル梅田、1月15日(土)~シネ・ヌ―ヴォ、近日~元町映画館ほか全国ロードショー |
~バレーボールブームを呼んだ、伝説のチームの素顔に迫る~
1964年の東京オリンピックをリアルに覚えている人のほとんどが、高齢者と呼ばれる年齢に達しているかと思うが、「東洋の魔女」という音の響きは、まさに昭和の面影を喚起する。東京オリンピックで優勝した日本代表女子バレーボールチームの活躍は、アニメの『アタックNo.1』や実写ドラマ『サインはV』の人気につながり、多くの少女がクラブ活動でバレーボール部を選んだし、また、“ママさんバレー”が全国展開されていった。
そのチームの根幹となったのが、大阪府貝塚市にあった大日本紡績株式会社貝塚工場のバレーボールチーム「ニチボー貝塚」である。かつてメンバーだった彼女たちも80歳代にさしかかっていて、昔のアーカイブ映像や記憶を掘り起こしながら、そこに在ったものを見つめ直すこのドキュメンタリーは実に興味深いものだ。
監督・脚本を務めたジュリアン・ファロは、フランス国立スポーツ体育研究所(INSEP)で働き、そこに収められている膨大な16mmフィルムのアーカイブと接することができる。その利点を活かしたのか、これまで2本のスポーツ系ドキュメンタリー作品を作ってきたが、“東洋の魔女”と出会うチャンスが訪れ、これが長編3作目。『アタックNo.1』などアニメーションを多用した構成が面白く、年輪を重ねながら今を生きている元選手たちに向けられるカメラには、リスペクトにあふれた熱情が感じられる。
しかしながら、当時の壮絶な練習風景には驚かされる。“スポ根”、つまりスポーツ根性ものが流行った当時は、社会的な意識が未熟であったから、すんなり受け入れられたが、今なら完全にアウトである。仕事が終わってから真夜中あるいは明け方まで猛特訓させられる。レシーブの練習などはほとんどリンチといってもいい。睡眠時間は3時間か4時間、体力と精神力の消耗との格闘である。“鬼の大松”と呼ばれた軍隊帰りの大松博文監督のしごきは半端でないのだが、当時を思い出しながら、彼を父のように兄のように慕っていたと明かす元選手もいるのだ。
見どころは、当時のソビエトに乗り込んで優勝した1962年の世界選手権、それから、やはり1964年の東京オリンピック決勝戦のシーンである。“東洋の魔女”の秘密兵器といわれた回転レシーブや思い切りのいいアタックなど、つい見入ってしまう。258連勝という驚異の大記録を打ち立てたのだが、なぜあれほど強くなれたのか。彼女たちの背後に見え隠れする「敗戦国・ニッポン」の文字と日の丸。これを抜きにして、その答えは見つけられない。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://toyonomajo.com/
公式Twitter:@toyonomajomovie
配給:太秦
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