「AI」と一致するもの

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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、コンペティション部門作品の『ペルシアン・バージョン』が10月29日に丸の内TOEIにて上映された。
 イランからアメリカに移住し、イスラム革命のために帰国できなくなったイラン人家族の中でも母娘の人生に焦点を当て、女性の様々な権利が制限される中、移民として自分の運命を切り開く姿を描くヒューマンドラマ。劇中では80年代に大ヒットしたシンディ・ローパーの「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」を歌って踊るシーンをはじめ、ミュージカル風演出もこらしながら、脚本家の娘、レイラの語りで、長年確執のある母との人生を振り返っていく。レズビアンのレイラの予期せぬ妊娠のゆくえや、祖母から聞いた母と父が移住した本当の理由が徐々に解き明かされ、1960年代イランからはじまる壮大な女性たちの物語をパワフルに描く、勇気をもらえる女性映画だ。
 上映後に登壇したマリアム・ケシャヴァルズは、「2時間もわたしの家族と一緒に過ごしてくれ、大丈夫だったですか?初めての来日は素晴らしい体験です」と語り、Q&Aで本作の背景や自身の作品に通底することについて語った。その模様をご紹介したい。
 

 
―――事実とフィクションの割合など、作品背景を教えてください。
ケシャヴァルズ監督:ほとんど本当のことです。実際にはわたしが24歳のときに父親が亡くなったので、わたしの娘に会うことができなかった。ですから映画では会えるようにしています。また、映画では兄弟が8名になっていますが、実際には7名とそこも少し違います。3世代の女性たちそれぞれに物語があり、その中に真実があります。わたしの映画の作り方から、また真実が見えてきたと思います。
 
 
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■テロリストと思われるイラン人、その家族や伝統を見せることで理解を深めたい。

―――イランの家族の物語をアメリカで描くにあたり、映画を作るにあたってどんな難しさがあったのでしょうか?
ケシャヴァルズ監督:アメリカでこの映画を作ることができたこと時代が奇跡だと思います。アメリカでイラン人はテロリストと思われてしまいますが、それは真実から程遠い。家族や伝統を見せることで、そうではないことをわかってもらえればと思って作った一面もあります。また、アメリカとイランという二つの国、二つの言語を交えて作ったので、そのプロセスの大変さもありました。
ただ、以前から家族の物語を描きたかったのですが、母からは恥だからダメだと言われていたのです。父が亡くなった後、祖母も亡くなり、母が一番年上になったとき、ようやく家族のことを描いてもいいと許可をもらえたのです。以前と違い、今はバイカルチャーの映画がわたしが作る前にも上映され、皆さまに受け入れられたので、そういう作り手が本作の道を作ってくれたと思っています。
 

■祖国を忘れないようにと祖父が送ってくれたスーパー8ミリ映像を参考に、母の生まれ育った環境を描写

―――イランらしい場所をもう少し見ることができるかと思ったのですが、今回のロケーションに関して教えてください。
監督:ニューヨークはシュラーズのコミュニティーがありますが、古いシュラーズはもう存在しないのです。古い建物が破壊され建て替えられているので、古い地域を再現するのは難しく、昔の雰囲気がする曲がりくねった道や広場も探すのが難しかったです。祖父が60年代に家族がアメリカに移民したので、忘れないようにとスーパー8ミリをたくさん送ってくれ、小さい頃はそれをよく見ていたのです。わたしはそれと同じような雰囲気、心情を描きたいと思っていました。出来上がった映画を見て、母も小さい時に育った環境に似ていると、とても驚いていました。
13歳で結婚した母が医師として赴任する父とともに僻地の村で住むシーンでは、トルコのクルド人たちが住んでいる村で撮影しました。ただ当時の写真が全くなかったので、聞いた話から想像しながらの撮影だったのです。その村は実際に20家族だけしかおらず、小さい羊を男の子についていくととてもハードな体験だったので、都会から田舎の小さい村に行くシーンをここなら描けると思いました。大都会との違いの雰囲気が伝わるように心がけて撮影しました。
 

Main_The_Persian_Version©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics.©Sony Pictures Classics.jpg

 

■イラン人女性は、とても強く諦めない

―――イランは女性が差別され、自由がない立場で、女性監督としてどういう点が大変だったか教えてください。
監督:ナルゲス・モハンマディさんのようにノーベル平和賞を受賞したのは本当に素晴らしいと尊敬しております。ムーヴメントはすぐにできるものではなく、何年もかかって自分の信じている道を貫くものです。わたしが今まで作ってきた映画の題材には必ず女性が中心にいます。イランで女性がやりたいことをやるのが非常に難しいことは、映画を通してわかっていただけたと思いますが、わたしの母や祖母からも様々な話を聞き、学んだこともたくさんあります。今のイスラム主義で女性が学校に行くのは非常に難しいのです。それでも学びたい意思を持ち、それをあきらめない。本作で登場する3世代の女性も、自分の信じたものを貫きたいという強い気持ちを持っています。そういうことをイランの女性として描いていきたいと思いましたし、みなさんも本で読んだり、話を聞いたりすると思いますが、とても強く諦めないのがイランの女性だと思います。
もう一つ、女性に自由がない中、なんとかしてその状況を変えていきたいという気持ちもあります。映画で13歳の母役を演じてもらった子をイランでビザを取り、サンダンス映画祭に参加してもらったのですが、アメリカに戻りたいかと聞くと、「わたしはイランに残って、なんとかして物事を変えていきたい」と強い意思を見せたので、イラン人女性の象徴なのかなと思いました。
 
 本編終了後、エンドクレジットに入る前に大きな拍手が巻き起こった、ぜひ劇場公開を望みたい一作だ。
(江口由美)
 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
公式サイト:https://2023.tiff-jp.net/ja/
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『年少日記』が10月28日にヒューリックホール東京で上映された。監督は、本作が初長編となるニック・チェクで、脚本、編集も務めている。学校教諭のチェンを演じるのは、インディペンデント映画からメジャー映画まで出演作が相次ぎ、日本映画『ある殺人、落葉のころに』(三澤拓哉監督)でも印象的な役を演じたロー・ジャンイップ。青少年の自殺が相次ぐ現代社会に一石を投じるとともに、幼少期に受けた大きなトラウマから一歩を踏み出すまでを、回想シーンと現代シーンを行き来しながら真摯に問いかけたヒューマンドラマだ。
上映後に行われたQ&Aでは、ニック・チェク監督と主演のロー・ジャンイップが登壇し、製作の経緯や、演じるにあたって大事にしたことを語った。
 
 
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■「相手が自ら心の悩みを語り出すよう、諦めずにいることを心がけている」(ニック・チェク監督)

 今回で13回目の来日というニック・チェク監督。ストーリーはフィクションだが、自身が体験したことから脚本を作り上げたという。
「2009年、香港で映画を勉強していたとき、ある友人が自殺してしまった。その前に彼と会っていたので、自殺をするとは思いも寄らず、以来頭の中に彼のことが残り、また抱きしめてあげたいと思っていました。ようやく監督になり、映画を撮ることができるようになったので、その友人の話をみなさんに紹介したいと思ったのです」
 
 物語は学校のゴミ箱から自殺願望を記した紙切れを見つけたことから、生徒を助けるためにチェンは動き始めるところから始まるが、悩みを抱えている人が打ち明けるのはハードルが高い中、悩みを話す方も話される方も負担にならない方法を聞かれたチェク監督は、「信頼関係を築くのは非常に時間がかかります。自分も青少年の時に嫌なことがあり、心の中に閉じて黙ってしまうことがあった。チェン先生のように、相手に関心を寄せ、一生懸命助けようとするにあたり、相手を理解することがとても大事だと思うのです。あなたのことを理解していると安心させ、なんとか手助けできないか。世の中にはどうしようもないことがあり、やるせない気持ちになることがありますが、それでも諦めずに働きかけ、相手が自ら心の悩みを語り出すように心がけています」とチェンに託した自らの想いを語った。
 

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■「チェンは前々から知っている友達のような存在だった」(ロー・ジャンイップ)

脚本を読んでの感想や役作りの準備について聞かれたロー・ジャンイップは、
「チェンはずっとその人生において様々な傷をつけられ、最終的には一つのコンプレックスみたいなもの、いわゆる傷の総合体になっていると思いました。脚本を読むと、チェンの役柄は、前々から知っている友達のような存在でした。彼の語りは友人が語ってくれているようでしたし、彼のことを非常によく知っているような気にもなりました。撮影中は彼を演じるというより、彼が隣にいるような気持ちで、チェンの角度からどのように相手や出来事を見ているのか、どのように対処していくのか、過去の経験をどのようにまとめるのか。そのようなことを考えながら演じました」と語り、孤独な役作りというより、そばでチェンに見守られている心持ちで演じていたことを明かした。
 
実際に演じるにあたり、チェンのどこに焦点を絞るのが大事なのかを考えたというロー・ジャンイップ。「チェンがずっといろいろな傷を負ってきたけれど、ようやくそれをまとめて最初の第一歩を踏み出そうとしているわけです。その足を踏み出すところに焦点を絞っていきました」
 

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■「チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない人物として演じた」(ロー・ジャンイップ)

「(映画の中盤までは明かされなかったが、幼い頃に自死した兄の)エリの残像がありながら生きてきたチェンの人物像につながたのではないか」と問われたロー・ジャンイップは、
「脚本の段階で、監督と議論をしましたが、監督からは(ミスリーディングを誘導するため)エリのように演じる必要はなく、そのままチェンを演じてくれればいいと言われました。その際、チェンはどのような人物かを理解することが大事でした。彼も兄が自死してしまってから、頭の中が真っ白になり、自分のアイデンティティすらわからなくなってしまいます。中学生で初恋の人が現れ、好きになりますが、自分の傷が深すぎて、なかなか愛に向かっていくことができない。愛したいけれど怖い気持ちが出ていました。チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない。何かを勝ち取ることがなかなかできない人物として演じたのです」
 
 映画ではチェンが離婚した元妻にも自らの幼少期の話を語っていなかったことが明かされるが、ロー・ジャンイップは、
「彼の中に空白の状態があったわけで、長い間この話を一切語りたくなかった。そういう体験をすると、心の中に深い傷が残るケースが多いのですが、エリと同じように自死したいとも思うし、彼の影を背負っていくことになったのです」と、チェンが一歩を踏み出すまでの空白の状態について自らの解釈を語った。
『年少日記』は、11月1日(水)10:20より、シネスイッチ銀座1にて上映予定だ。
(江口由美)

 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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【日時】10月28日(土) 舞台挨拶/1154

【場所】新宿シネマカリテ(新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F)

【登壇者】倉悠貴、芋生悠、前田弘二監督 



変わり者のトワと、変わり者の園子。二人にしか分からない世界。

二人にしか分からなくていい関係を作り出すラブストーリー。


『まともじゃないのは君も一緒』の監督・前田弘二と脚本・高田亮が贈る〈おかしな二人の物語〉第二弾『こいびとのみつけかた』が、いよいよ全国公開いたしました。


koibitonomitukekata-pos.jpgコンビニで働く女の人・園子に片想いをしている植木屋でトワは、毎日植木屋で働きながら、彼女がどんな人か想像している。なんとか話したいと思った彼がついに思いついたのは、木の葉をコンビニの前から自分がいる場所まで並べて、彼女を誘うことだった。二人は言葉を交わすようになり、周囲にはよく理解できない会話で仲を深めていくのだが、園子にはトワにうまく言い出せないことがあり…。
 

世の中に馴染めない、ちょっぴりエキセントリックな2人が繰り広げる、〈可笑しくピュア〉なラブストーリー。


世の中の〈普通〉に馴染めない、おかしな二人のおかしな会話の応酬で繰り広げる『まともじゃないのは君も一緒』の監督・前⽥弘⼆×脚本・⾼⽥亮コンビの最新作。主演に『夏、至るころ』(20)、『OUT』(23)と主演作が続く倉悠貴、ヒロインに『ソワレ』(20)、『ひらいて』(21)の芋生悠を迎え、成田凌、宇野祥平らが脇を固める。また、川瀬陽太、奥野瑛太、高田里穂、松井愛莉らも名を連ねる。
 

 



映画『こいびとのみつけかた』の公開を記念して10月28日(土)、東京・新宿のシネマカリテにて舞台挨拶が行われ、出演者の倉悠貴と芋生悠、前田弘二監督が登壇した。

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“世になじめない、ちょっと変わった”男女の姿を描いた『まともじゃないのは君も一緒』に続く、前田監督と脚本家・高田亮のコンビによる本作だが、前田監督は「『まともじゃないのは――』が出来上がって、高田さんと初めて一緒に見た時、『次、どうしようか…?』という感じで、おかしな2人の話をもう1回、メロドラマというかラブストーリーみたいな形でやってみたいなと思いました。『まともじゃないのは――』が2人の掛け合いの映画だったので、もう少ししっとりした感じの話ができないかと」と本作の着想の経緯を明かす。


koibitonomitukekata-500-1.jpgその言葉通り、本作のオープニングではわざわざ「これはメロドラマである」という宣言(?)が映し出される。倉さんは「僕はメロドラマが何なのかよくわかんなかったけど(笑)、あそこまで定義されたので『あぁ、メロドラマなんだな…』と思いながら見ました。もちろん、恋愛話ではあるけど、僕としては人間の生き方を描いたヒューマンドラマなんじゃないかと思いました。僕のメロドラマデビューがこれなので、これがメロドラマなんだなと(笑)」と語り、芋生さんも「私もメロドラマがちょっとよくわかってなくて(笑)、これを見て『メロドラマってこれなんだ!』と思いました」と率直な思いを口にする。


前田監督はこのメロドラマ宣言が当初から台本に書かれていたことを明かしつつ、その真意について「(普通のメロドラマは)こういう2人ではないというか、あんまり変わった2人じゃない話が多いですが、ある種のギャグというか『これのどこがメロドラマだ?』と思わせておいて、最終的にメロドラマになっていく――どこかヘンテコだけど、そこに着地していくのが面白いなと思いました」と語る。ちなみに、タイトルを全てひらがなにした意図についても前田監督は「漢字を入れると洋画のロマンチックコメディの邦題みたいだなと思って、それはキライじゃないんですけど、ちょっとひねってみました」と説明。芋生さんは「わかります!」と納得した様子で深く頷いていた。


koibitonomitukekata-500-2.jpg劇中、倉さん演じるトワが、黄色く色づいた葉っぱを道に並べていくシーンが印象的だが、倉さんは「僕もあのシーンは好きです!」と明かしつつ「並べる時に、間違えたことがあって…。(まとめて葉っぱを並べるのではなく)いちいち丁寧に(1枚ずつしゃがんで)置くというやり方をしてしまって、しんどかったです。ハードな1日でした(苦笑)」と撮影での苦労を明かしたが、前田監督は「それが良かったです」と語り、芋生さんも「あの姿、あのほうが絶対に良いです!」と同意。このシーンは初日に撮影され、風で葉っぱが飛んでしまうことが心配されたが、前田監督は「奇跡的に無風だったんです。8日間の撮影でしたが、天候に恵まれました」とニッコリ。ちなみに、葉っぱは前田監督が自ら拾ってきたものだそうで「すぐに色が変わってしまうので、当日の採れたてじゃないとダメで、朝早く起きて、懐中電灯を持って近くの神社で集めました」と明かした。


園子を演じた芋生さんは、お気に入りのシーンとして、トワと園子が公園で餃子とケーキを食べるシーンを挙げ「2人の空気感が、誰も入れない感じがあって、無言でも全然いい! ただ食べているだけでいい! という感じが好きです。あの日は、すごく良い陽気で、公園が気持ちよくて、2人とも風を感じたり、日が暮れてきて『気持ちいいな。ポカポカするな」という感じでした」と心地よい撮影をふり返る。前田監督もこのシーンについて「『餃子とケーキ、どっちが好き?』と聞かれて、食べて、『おいしいね』、『おいしいね』という2人だけで成立しちゃう感じ――2人にしかわからなくて良い感じで、気の利いた言葉とかを全て排除しても成立しちゃう2人が良いなとグッときました」と倉さんと芋生さんが作り出した絶妙な空気感を称賛する。


koibitonomitukekata-500-3.jpgトワと園子が演奏と歌を披露するシーンは、実際に倉さんも芋生さんも楽器を演奏し、歌っているが、倉さんは「一発で撮ってOKになりました。リアルに人前で歌って、緊張して声が震えたり、周りのみんなの顔が温かいから、自然と笑顔になったりしました。『この瞬間は大切にしたいな』と思えるシーンでした」と充実した表情を見せる。これまで楽器の経験がなかったという芋生さんは「難易度が高かったです」と苦笑を浮かべつつ「あの曲、すごく好きなんです。途中でラップも入るし、感情が乗りました」と楽しそうに明かしてくれた。


本作のトワの人物像には、前田監督自身が投影されている部分が大きいようで、倉さんは監督とつながる部分を感じるか? という問いに「つながるどころか、(前田監督は)トワって感じです」と即答し「現場でもいつもニコニコしてて、こんなピュアな人いるのかと思った」と述懐。芋生さんも「(前田監督は)リアル・トワです」と即答し「私たちが歌っているところをモニタで見ながら揺れてました(笑)。かわいすぎません?」と愛らしそうに語る。前田監督は「みんな、トワ的なところってあると思います」と照れくさそうに笑みを浮かべていた。
 

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舞台挨拶の最後に前田監督は「つらい現実や厳しい日常があったり、世の中、おかしなことばかり起きたりして、そこへの不安もあると思います。そういうところからのガス抜きや疲れた日常の筆休みになればと思ってこの映画を作りました。映画を観て、ちょっとでも気持ちが楽になっていただけたらありがたいです」と語る。


芋生さんも「ひとりではどうしようもないくらい、しんどくなったり、つらくなったり、生きづらさを感じる瞬間があると思いますけど、そういう時にこの映画を観ると、自分だけで抱え込まないで、誰かともっと外の世界に飛び出してみようかなと思えたり、そういう人に対して周りも『逃げてる』じゃなく『生きようとしてるんだ』と捉えられて、周りももっと優しくなれたり、そういう優しい世界を望んでいる映画だなと思います。たくさんの人に観ていただき、多くの人を助けられたらいいなと思っています」と呼びかける。


最後に倉さんは「この映画は、悪い人が出てこない温かい作品で、たぶん、僕自身も数十年後とかに観てホッとする気持ちになる映画だと思っています。もしそういう気持ちになれる人がいたら、僕もこの映画に携われてよかったなと思います。まだ公開がスタートしたばかりなので、たくさん広めていただければ幸いです」と語り、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
 


◆監督:前田弘二 脚本:高田亮  音楽:モリコネン
◆出演:悠貴 芋生悠 成田凌 宇野祥平 川瀬陽太 奥野瑛太 高田里穂 松井愛莉
◆2023年/日本/99分/5.1ch/スタンダード 
◆©JOKER FILMS INC. 
◆公式サイト:http://koimitsu.com
◆制作プロダクション:ジョーカーフィルムズ、ポトフ 
◆企画・製作・配給:ジョーカーフィルムズ

2023年10月27日(金)~新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、出町座、シネ・リーブル神戸 ほか全国公開中!


(オフィシャル・レポートより)

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今年は日中平和友好条約締結45周年という記念すべき年です。この素晴らしい一年を祝賀し、日中映画交流をより一層盛り上げるべく、日中映画祭実行委員会は昨年につづき、10月26日(木)から11月1日(水)まで第2回「大阪・中国映画週間」をTOHOシネマズ梅田にて開催いたします。


china2023-relie.jpg上映ラインナップは、今年の東京国際映画祭でジャパンプレミア上映される中国の巨匠チャン・イーモウ監督作『満江紅(マンジャンホン)』、10年前に訪れた長江沿いで暮らす人々の生活を追った、元NHKドキュメンタリーディレクターの竹内亮が手掛けた『再会長江』、中国のトップ俳優ホアン・ボー(黄渤)とワン・イーボー(王一博)が初共演&ダブル主演で贈るサクセスストーリー『熱烈』、映画を見ながら唐詩(中国・唐時代の詩)を暗唱する「勉強を兼ねた映画鑑賞」で話題を呼んだ中国アニメ『長安三万里』や、中国で興収20億元を突破した『封神~嵐のキングダム~』など、バラエティに富んだ計16作品です。


中国映画週間初日10月26日(木)には、開幕式を行います。中華人民共和国駐大阪総領事、中国国家電影局副局長のご挨拶をはじめ、舞踊「長安三万里」、昆劇の披露、そして、オープニング上映作品の『封神~嵐のキングダム~』から監督の烏爾善(ウー・アルシャン)、主演の費翔(クリス・フィリップ)、プロデューサーの羅珊珊(ルオ・サンサン)をはじめ、中国映画週間期間中上映作品の俳優、監督、プロデューサーら総勢12名(予定)が登壇いたします。


■2023大阪・中国映画週間[公式サイト]
 http://cjiff.net/2023osaka.html

上映作品情報 ※東京版ご参照ください
 http://cjiff.net/movies.html


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今では日本産メガネの95%を生産している福井県ですが、明治時代にこのメガネ産業をゼロから立ち上げた兄弟がいました。豪雪地帯のため冬は農作業ができず、収入の道がなくなる村の状況を変えようと奮闘したのが、増永五左衛門(小泉孝太郎)と幸八(森崎ウィン)の兄弟です。そして、その二人を信じて支え、見守り続けた五左衛門の妻・むめ(北乃きい)を主人公に、挑戦と情熱、家族の愛の物語を描いたのが、映画『おしょりん』です。10月20日(金)より福井県先行公開、11月3日(金・祝)より角川シネマ有楽町ほかにて全国公開されます。


この度、全国公開を前に舞台となった福井県で先行公開記念舞台挨拶を実施致しました。主演の北乃きい、共演の森崎ウィン、小泉孝太郎、そして監督の児玉宜久が登壇いたしました!


マスコミ試写でも、感動のストーリー展開やオール福井ロケによる映像美が大きな話題となっており、ついに公開を迎えられる喜びを語りました。


◆日程:10月20日(金)

◆会場:鯖江アレックスシネマ(福井県鯖江市下河端町16-16-1 アル・プラザ鯖江 内)

◆登壇者:北乃きい、森崎ウィン、小泉孝太郎、児玉宜久監督


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人生を懸けてメガネ作りに挑んだ人々の情熱と愛の物語、映画『おしょりん』!11月3日(金)の全国公開を前に、舞台となった福井県での先行公開を記念した舞台挨拶が10月20日(金)に福井県鯖江市の映画館で行われ、北乃きい、森崎ウィン、小泉孝太郎、そして児玉宜久監督が登壇した。天候不良のため飛行機の到着が遅れ、予定の5分遅れでスタートした舞台挨拶だったが、4人が登場すると会場からは万雷の拍手が起こり、会場は熱気に包まれた。


明治時代に福井で眼鏡産業の礎を築いた増永五左衛門、幸八兄弟の挑戦と、2人を支え続けた五左衛門の妻むめの姿を描く本作。増永むめ役の北乃は、「(福井の人は真面目な人が多いと聞きますが)そんな福井の人たちと、真面目な監督と一緒に作った作品です」と笑顔で挨拶。


増永幸八役の森崎は、劇中で演じた増永兄弟が創業した増永眼鏡が作ってくれたというメガネをかけて登壇し、「福井は、他県から来た自分をファミリーのように迎えてくれた温かかったです」と述懐。


oshorin-500-2.jpg開口一番、「かたいけの(=お元気ですか?)」とロケ中に覚えた福井弁を披露して観客の心を鷲掴みにした増永五左衛門役の小泉は、「増永五左衛門という偉大な人物を神奈川県出身の僕が演じていいんだろうか?福井の皆さんは受け入れてくださるのだろうか?とひるんだんです。だけど、福井でいろんな人に“五左衛門さん役、楽しみにしています”と声をかけていただいて僕はスイッチが入りました」と挨拶した。


福井を舞台にした作品は前作『えちてつ物語 ~わたし、故郷に帰ってきました~』に続いて2作目となる児玉監督は、「福井の映画5部作の2作品目です。普通は3部作ですが、私の中では最低限5本は福井で撮るつもりです」と大胆な構想を披露して観客を驚かせた。


和やかなクロストークが繰り広げられた舞台挨拶だったが、意外にも北乃は小泉に緊張をしていたようで、「孝太郎さんにはすごく緊張を与えられて、『あ、よかったな』って孝太郎さんに感謝していました。その緊張感がないと出ない夫婦の距離感がありまして、孝太郎さんのお陰でそれを出すことができました」と、撮影秘話を披露した。
 

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それを聞いた小泉は「北乃さんと一緒の横須賀出身で地元の話とかしたかったんですけど、明治時代の夫婦の役だったのでプライベートの話を控え、あまり会話をしないようにしていたんです。それを感じ取っていただけてよかったです」と笑顔を見せた後、「でも、“緊張する”って言ってますけど、何年か前に僕の実家を覗き見しにきたんでしょ?」と思いがけないエピソードを暴露すると、会場を爆笑させた。


実生活でも長男の小泉が、「五左衛門さんと同じ長男なので、長男の気持ちとか苦労なんて弟にはわからないだろうな~っていう、五左衛門さんの気持ちがよくわかった」と役への共感を語ると、弟役を演じた森崎は、「兄の苦労とかまったく考えていなかったです(笑)。実生活では長男なので、弟役を演じるのは『甘えられる!』って嬉しかったです」と人懐っこく笑いをとっていた。


舞台挨拶の後半には、ロケ地となった福井県の杉本達治知事と、制作委員会の新道忠志委員長が映画の公開を祝して花束ゲストとして登場した。

「屋外のシーンだけでなく、室内のシーンもオール福井ロケで撮影いただき、福井の空気感が非常に出ていました。皆さんが福井人にしか見えなかったです」と杉本知事。


oshorin-500-3.jpg最後に主演の北乃は「13歳からこの仕事をやってきた中で勉強させてもらってきたことや自分が今までいろんな作品で経験したこと、自分のすべてを出し切った作品です。これ以上はもう何もないっていうくらいにこの作品で出し切りました。福井の素晴らしい街並みとか、努力を惜しまずひたむきに1つの目標に向かって諦めず進んでいく福井の人の強さを、福井以外の人に見ていただいて、福井に行きたいなって一人でも多くの方に思ってもらえたらと思っています。皆さんの心に少しでも響いたら嬉しいです。本日はどうもありがとうございました」と挨拶。


また、児玉監督は、「私がこの作品を撮りたいと思ったのは『おしょりん』というタイトルにあります。登場人物たちの生き様を示しているタイトルで、これからご覧になる皆さんにこのタイトルの意味をそれぞれの心の中で感じ取っていただけたらと思います。本日はどうもありがとうございました」と締めくくった。
 


<ストーリー>

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時は明治37年、福井県足羽郡麻生津村(現・福井市麻生津)の庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)と結婚したむめ(北乃きい)は、育児と家事で忙しい日々を送っていた。ある日、五左衛門の弟の幸八(森崎ウィン)が勤め先の大阪から帰郷し、村をあげてメガネ作りに取り組まないかと持ち掛ける。今はほとんど知られていないメガネだが、活字文化の普及で必ずや必需品になるというのだ。成功すれば、冬は収穫のない農家の人々の暮らしを助けることができる。初めは反対していたが、視力の弱い子供がメガネをかけて大喜びする姿を見て、挑戦を決めた五左衛門は、村の人々を集めて工場を開く。

だが、苦労の末に仕上げたメガネが「売り物にならない」と卸問屋に突き返され、資金難から銀行の融資を受けるも厳しく返済を迫られ、兄弟は幾度となく挫折する。そんな二人を信じ、支え続けたのが、決して夢を諦めない強い心を持つむめだった。彼女に励まされた兄弟と職人たちは、“最後の賭け”に打って出る──。


<作品情報>

出演:北乃きい 森崎ウィン 駿河太郎 高橋愛 秋田汐梨 磯野貴理子 津田寛治 榎木孝明 東てる美 佐野史郎 かたせ梨乃 小泉孝太郎
監督:児玉宜久 原作:藤岡陽子「おしょりん」(ポプラ社)
脚本:関えり香 児玉宜久 
エンディング曲:MORISAKI WIN「Dear」(日本コロムビア)
製作総指揮:新道忠志 プロデューサー:河合広栄
ラインプロデューサー:川口浩史 
撮影:岸本正人 
美術:黒瀧きみえ 装飾:鈴村高正 衣装:田中洋子 
制作プロダクション:広栄 トロッコフィルム 
配給:KADOKAWA 製作:「おしょりん」制作委員会
©「おしょりん」制作委員会
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/oshorin/


(オフィシャル・レポートより)
 
 

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これまで日常に潜むグレーゾーンに光を当ててきた森達也監督が自身初の劇映画を監督した作品『福田村事件』。

9月1日に日本公開をし、昨日までの観客動員数は15万人を超え15万1051名、興行収入は2億円(2億255万6千542円)を超えこれまで133劇場で上映をしている。


そして、10月4日に開幕した第28回釜山国際映画祭にて本作はコンペディション部門の一つである、ニューカレンツ部門に選出され、オープニングセレモニーでは主演の井浦新、田中麗奈と向里祐香、プロデューサーの井上淳一がレッドカーペットを歩いた。

そして、本日10月13日に行われた授賞式で、ニューカレンツ賞(ニューカレンツ部門 最優秀作品賞)を受賞いたしました!

 

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受賞式にて森監督は「21年前にこの事件を知ってから、何とか作品にしたいとテレビ局や映画会社に働きかけたけれど、結果的にはすべてダメでした。でも三年前に今のチームと出会い、多くの方からクラウドファンディングで資金協力をしてもらい、さらには素晴らしい俳優たちも参加してくれて、ようやく映画にすることができました。

この映画の重要なポイントは、当時の大日本帝国と、植民地化されていた朝鮮です。その二つの国で公開することができ、多くの人に観てもらっている。とても幸せです。ありがとうございます。」とこれまでを振り返り、喜びのスピーチを行った。
 



また、今回の受賞を受けて主演である井浦新、田中麗奈からも祝福のコメントが届きました!


fukudamura-pusan-iura-240-1.jpgのサムネイル画像◎井浦新 コメント

この作品が立ち上がった一番最初、俳優部は私ひとりだけでした。多様な考え方があるので、もしかしたらキャストが集まらないかもしれない、撮影まで辿り着けないかもしれない、不安はありましたが動き出したら猛者たちが集う素晴らしい組が出来上がりました。

しかし、やはり撮影は過酷で、各部魂を擦り減らし生きている実感を味わいながら皆んなで夢中になって、無事にとはいかないけれどなんとか撮り終えることができました。

今では全国のミニシアターで満席が続き、ご好評をいただけてるだけでも、それだけでも充分ありがたく光栄な事なのに、作品がこのような賞を受賞する事ができ、大変嬉しく思います。 この作品に関わって下さった方々、観て下さった方々、選んで下さった方々に、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 

 

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◎田中麗奈 コメント

 

最初にこの朗報を聞いた時、嬉しさと同時に驚きもありました。それは韓国の方にこの作品がどのように受け止めて頂けるのか、、。少し不安もあったからです。ですが、映画という芸術の世界できっと伝わるはずだという希望を抱き、淡い期待も持っていたのも本音です。

この作品は、大正時代、朝鮮の方々が日本に移り住み踏ん張って暮らしている中、関東大震災という未曾有の事態での混乱の後に起きた出来事。この事実を、韓国の方と共有出来たこと。どんな意見だとしても、私はそれがとても価値のある事だと思います。

一人の俳優として、この映画に参加できたことを誇りに思います。これからも、私たちは映画というフィールドを通して何かを起こせる。そう実感できた、大きな受賞だと思います。釜山からの素晴らしいお知らせをありがとうございました。

 



fukudamura-pusan10.13-240-1.jpg本作は同映画祭開幕前より、韓国内での関心度はとても高かったようで、会期中3度の上映を行い、いずれも大盛況で森監督が上映後Q&Aに参加した10/9、10/11はどちらも満席となり映画祭内でも大きな話題となった。Q&Aでは比較的若い観客の方々から手が上がり、映画製作過程についての質問を投げかけられると小林は「関東大虐殺100周年の2023年9月公開を目指して3~4年前から動いていたが本作に賛同し援助をしてくれる会社と出会うことは困難だったとし「クラウドファンディングを通じて資金を集め2400人以上の方が支援をしてくださり、3千500万円以上集まった。これは歴代映画関連クラウドファンディングで最も多い募金額で、この支援者の方々がいてくれたからその後本作に支援をしてくださる会社が増え、今を迎えられた」と応えた。
 

また、森監督は「人は失敗と挫折を繰り返しながら成長します。それを忘れたり、忘れたふりをして自分の成功だけを覚え続ける人がいたら、その人がどうなるか想像してみてください。 いまの日本は失敗と挫折は完全に忘れて、成功した経験だけを覚えています。本来であれば教育やメディア、そして映画も。どんな失敗と挫折をしたのか、加害行為を犯したのか、負の歴史をしっかりと見てもらえればと思っています。」と不幸だった歴史に直面するというのは韓国にも、日本にも重要なことだとして、今後の韓国での劇場上映がかなえば、と強い期待の言葉を残した。
 


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<作品情報>

『福田村事件』

(2023 日本 136分)
監督:森達也
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、木竜麻生、ピエール瀧、水道橋博士、豊原功補、柄本明他
2023年9 月1日(金)よりシネ・リーブル梅田、第七藝術劇場、MOVIX堺、京都シネマ、京都みなみ会館、9月8 日(金)よりシネ・リーブル神戸、元町映画館、シネ・ピピア、以降出町座で順次公開
公式サイト→https://www.fukudamura1923.jp/
(C) 「福田村事件」プロジェクト2023  

 


(オフィシャル・レポートより) 

 

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◆実施日時:10月12日(木)17:25〜17:55

◆会  場:MOVIX京都 シアター12(京都市中京区桜之町400 新京極商店街内

◆登壇者:くるり 岸田繁、佐藤征史、森信行 ※MC:野村雅夫


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くるり初のドキュメンタリー映画『くるりのえいが』が、いよいよ明日10月13日(金)より、なんばパークスシネマ、MOVIX京都 他全国劇場3週間限定公開&デジタル配信を開始いたします。1996年に結成して、多彩な活動を通じて日本のロック・シーンで異彩を放ってきたくるり。今回新作アルバム制作のために岸田繁と佐藤征史が声をかけたのは、オリジナルメンバーの森信行だった。結成当時のプロモーション映像、ライヴ映像を交えながら、なぜ今、またこの3人による曲作りを選択し、どのように曲が生み出されていったのか、くるりの創作の秘密に迫るドキュメンタリー映画が誕生しました。本作の監督を務めるのは細野晴臣のドキュメンタリー映画『NO SMOKING』、『SAYONARA AMERIKA』を手掛けた佐渡岳利監督。バンドのひたむきな創作の情熱から、音楽を奏でることの面白さを再発見できる必見の作品です!

この度、公開に先駆け10月12日(木)に『くるりのえいが』先行上映会 in 京都を実施いたしました。

くるり・オリジナルメンバーの3人が、彼らのホームである“京都”にて本作の撮影秘話をたっぷりと語りました。
 


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東京に続き、公演前2回目の舞台挨拶となったのは、くるりの地元である京都。この日行われた2回の先行上映会では、150席がそれぞれ完売ということで、人気を伺わせた。10月4日(水)に発売された14枚目のアルバム「感覚は道標」に収録されている「California coconuts」をBGMに、岸田繁、佐藤征史、森信行の3人が登場すると、会場は大きな拍手に包まれる。まず岸田が「こんにちは」と挨拶。舞台挨拶はなかなか慣れていないと断りつつ、「見た目以上に緊張してます」と笑わせると、改めて「ご覧いただきありがとうございました」と会場に感謝を伝えた。


kururi-bu-240-satou.jpg佐藤もまずは感謝のコメント。そしてこの会場に来るのはトム・ハンクス主演の『クラウド アトラス』をメンバーと一緒に観に来て以来10年ぶりくらいと明かすと、岸田が「『クラウド アトラス』越えやね」とツッコミ。佐藤は、「その次(にここへ来たの)が『くるりのえいが』を見てくれた人の前っていうのが、なんか感慨深い感じです」と笑顔を見せた。


森はまず「オリジナルメンバーの森信行です」と挨拶。「僕がいた頃のくるりを知ってる人は?」と会場に問いかけると、8割ほどの観客が挙手する様子に「あ〜、うれしい!」と笑顔を見せつつ、「知らない方もいらっしゃると思うので、それも含めて楽しんでいただければ」と話した。


司会から撮影を通して印象的だったエピソードを聞かれた岸田は、作中に出てきたエビフライに言及。「大きいのが1人3尾ついてたんですわ。その他にもあの日はエビフライと湯豆腐、メインが2つ出てくるんです。それですかね」ときっぱり。岸田は「食べることが大好き」と話すと、ライブやレコーディングの現場でもお弁当などが置いてあるが、「あんなに食事も充実しているレコーディングはしたことがないですよ、ホンマに」と、これまでのバンド歴の中でもかなり印象深かったことを告白。佐藤も、レコーディング中は朝ごはんの味噌汁が何かが一番の楽しみだったと話し、「今日取れたメカブやワカメがごちそうになる伊豆、最高でした」と伊豆レコーディングを振り返った。


kururi-bu-240-kishida.jpgそのレコーディングが合宿形式で行われたことについては、岸田が「同じ釜の飯を食うという言葉があるけど、久しぶりに集まって同じご飯を食べて、同じところに寝て、おはようってレコーディングする、それが音に反映した」とあまり日常的でない感覚が作品に影響を与えたことを示唆。森も合宿だったことは大きかったと振り返ると、「くさい言い方になるかもしれないけど」と断りを入れつつ、「感動を共有するみたいな、リフレッシュで伊豆の海に行って風が気持ちいいな、海がきれいだな、今日は暑いな、ご飯がおいしいな、そういう感覚を共有できるのがチームワークにつながるような気がしていて、それが映画の中に入ってる気がします」と話した。


「コロナ禍ではリモートで音楽制作をしていたこともある」と岸田。3人でセッションしたことについては「3人で集まって、貴重というか、懐かしくもあるんやけど、人と集まって音楽作るのが楽しいなっていう気持ちでした」と改めてバンドで音を出すということのよさを実感した様子。森も3人いっしょにモノを作ることについて「インスピレーションの仕掛けあいも、こう来たらこう出てみたいなやりとりがすごい楽しかったですね」と振り返った。そして「久しぶりに制作して(昔と)いっしょやなというところもあるし、すごく成熟している新しい形も見られて、それは新鮮な体験でした」と心境を吐露。オリジナルメンバーである森に関して佐藤は「瞬発力のすごい人やな」と評すると「4小節だけのギターリフのイントロが流れただけで、自分のなかの道筋を作って、疑いなくこれ正解ですというのが出てくる、だから曲が進んでいく」とベタ褒め。そして以前は話したことのなかったという、ドラムに対してどういう気持で臨んでいるのか、といった話もしたと明かした。レコーディングについては、曲が生まれた瞬間からレコーディングまでがむちゃくちゃ短かったと話し、「曲の良さをみんなが忘れてないうちに、じゃあ録ってみようってできたっていうのが一番良かったのかなと思います」と、やはり3人が顔を合わせてのスピード感、ライブ感が今回のレコーディングで大きなウエイトを占めていたことを話した。


kururi-bu-500-3.jpgニューアルバムの「感覚は道標」の反響について岸田は、SNSなどでいろんな声を見聞きして、「ありがとうございますというのがいっぱいある」と明かすと「曲は少しずつ育っていくものだと思うので、最初にすごく祝福していただいた感覚」と笑顔。作中でも登場する拾得でのライブについて話題が及ぶと、そのライブに行っていたという観客が多数挙手するひと幕も。岸田が「いっぱいいっぱいではあったんですけど、楽しんで演奏したと記憶しています」と話すと、佐藤も「最近のライブの平均よりBPM20くらい上がってたんちゃうかな」とうなずいていた。


kururi-bu-240-mori.JPG森は今後について「映画のなかでできたものはオギャーと生まれた瞬間の感じ、その瞬間が映画に映っているのでそれをまず楽しんでいただいて、アルバムに入っているのは実はちょっとそこから青年くらいに成長してる、次はツアーで大人になった曲が見られるかもしれない」と、曲が生き物であることを伝えると、岸田が「グレんようにしないと」と合いの手。森も「ぜひツアーに足を運んでいただいて」とアピールした。佐藤は「森さんといい付き合い方をしていけたらと思ってる」と笑わせ、過去に森と共にした「チミの名は。」というツアーを挙げると、それ以上に楽しんでいければと期待を込めた。


ここで森からツアー名が発表されることに。しかし森は「えっとなんやったっけ……」と一旦ボケてからハードにキマる!つやなし無造作ハッピージェル》というツアー名を明かすと、岸田から「どういう意味なんですか、それは?」とツッコミが。その岸田は、今後についてたまに考えると話すと、「ケセラセラでございます」。さらに「さっきもっくん(森)も言うてはりましたけど、オギャーから成長の過程で、作者である自分たちが得ていくものもあると思うんで、見守りながら育てながら、ケセラセラ、ですかね」とさらり。最後に改めて会場に感謝を伝えると「この映画は音楽作品でもあるので、繰り返し見ていただくといろんな発見があるんちゃうんかな、長く付き合ってください」と締めくくった。
 


『くるりのえいが』

出演:くるり 岸田繁 佐藤征史 森信行
音楽:くるり 主題歌:くるり「In Your Life」 オリジナルスコア:岸田繁
監督:佐渡岳利 
プロデューサー:飯田雅裕 
配給:KADOKAWA 
公式サイト:vb-eigaeigyo@ml.kadokawa.jp 

2023年10月13日(金)より全国劇場3週間限定公開&デジタル配信開始


(オフィシャル・レポートより)

 
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 20世紀を代表する建築家で、母国フィンランドのみならず、世界中に「アアルト建築」と呼ばれる建築を作り上げてきたアルヴァ・アアルトと、彼と共に建築、内装、家具の分野で多大な貢献をしてきたアイノ・アアルトの人生やその仕事を描くドキュメンタリー映画『アアルト』が、10月13日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、アップリンク京都にて公開される。
 アルヴァとアイノが手がけてきた建築や家具たちも続々と登場。ドイツのバウハウスなど、建築に新しい風が吹いていた時代、万国博覧会のフィンランド館を手がけたことから時代の寵児となり、アメリカでも人気を博していく様子や、戦争による復興需要により、新しいまちづくりに取り組んでいく姿は、建築家が果たす役割の大きさを実感させられる。人たらしで、パトロンを得て外での仕事を楽しむアルヴァと、家具の会社の経営から子育て、そして自身のクリエイティブワークまで黙々とこなしていたアイノ。50代でアイノが病死し、アトリエで勤めていたエリッサと再婚してから、人生の最晩年までアルヴァの老いもしっかりと見つめた稀有なドキュメンタリーだ。
 本作のヴィルピ・スータリ監督にお話を伺った。
 

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■小学校時代に通ったアアルト設計の図書館は「特別だった」

――――スータリ監督は小学校時代からアアルトがデザインした図書館が好きで訪れていたそうですが、その当時その場所でどんな気持ちを抱いたのでしょうか。
スータリ監督:幼いからこそ世界が新鮮に見えるし、幼い時の記憶ほど長く自分のなかに残るものです。子どものころ、アアルトがデザインした図書館は日常の生活に何気なくあるものでしたが、なぜわたしがそんなに特別だと思ったのかを追求したいという気持ちが、この映画を作るきっかけになったと思います。当時、わたしの故郷の冬はマイナス30度ぐらいまで気温が下がり、とても寒かったのですが、とても特殊な形をした図書館の取っ手を引いて中に入ると、素晴らしい空間が広がっていたのです。ここはまさにわたしのリビングルームだと感じました。アアルト&アイノの作品は触らずにはいられなくなるような感覚に訴えてくる美しさを備えており、レンガの壁を触ってみたり、革張りの椅子に座ってみたり、真鍮のランプが照らす中読書をしたりと、リビングのように過ごしました。
 
――――それは特別な体験ですね。
スータリ監督:でも当時のわたしには、何が特別なのかを理解することができなかった。映画を撮るということは、当時毎日触れているものが、なぜそんなに特別だったのかを解き明かすという試みでもあったのです。アルバート・アアルトは、わたしの父母世代は建築家として敬愛していました。
 
 
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■アアルト夫婦の間で取り交わされた書簡をみつけ、映画化を確信

――――なるほど。他にも本作を作る動機になったことはありますか?
スータリ監督:当時、わたしの故郷は戦争によって完全に焼け落ちてしまい、本当に醜い状態でした。そこで復興を急ぐため、アアルトら建築家が招聘され、都市計画を立てて、新しい建築物を作り、焼け出されてしまった人たちの尊厳を取り戻したのです。そんないろいろなことがわたしの頭の中にあり、この作品を作ろうと思ったのです。それまでにドキュメンタリー作家として30年のキャリアを積んでいたので、わたしは建築家ではありませんが、建築家アアルトの作品になぜ感銘を受けたのかを語っていこうと思いました。実際に、彼がどんな人物であったかを具体的に知らなかったのですが、取材を通じて妻、アイノ・アアルトという非常に興味ふかい人物を見出しましたし、ふたりの間で取り交わされた書簡をみつけたことで、映画が作れると確信したのです。
 
――――まずは調査が必要ですが、まずはどんなことから始めたのですか?
スータリ監督:4年間製作に携わり、2年間はフルタイムでかかりっきりとなって、大量の資料を形にするわけですから思い出すのも大変なぐらい(笑)。調査を進める中で、100名以上の人間が関わってくる、一種の前世紀の文化研究に近いリサーチが必要だったのです。ロックフェラー財団所有の資料や、国連が持っている資料など世界中の資料保存場所にアクセスしましたし、家族が保管している手紙や写真も一番大事でした。そこで重要だったのは、人と人との研究者同士のネットワークを、網の目のように広げ、背景についてインタビューしたことで、それも大きな仕事でした。様々な人の解釈を組み上げていくのは大変でしたが、ゆっくりと時間をかけて取り組むというアプローチをとり、アアルトの家族からの信頼も時間をかけて築き上げていきました。ちなみに編集のユッシ・ラウタニエミさんは、フィンランド版アカデミー賞の編集賞を受賞したので、苦労が報われたと思いますよ。
 
 
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■記録映画ではないシネマ性を出すことを意識して

――――それは、おめでとうございます。ちなみに編集では特にどんな点に苦労したのでしょうか?
スータリ監督:建物はそもそも動かないし、家具も動かない。登場人物も亡くなっている方ばかりで、生きて動いているものが一つもない状態で撮影するのは、非常に難しかったです。フィルムの中で物語の流れを感じさせ、有機的かつイキイキとした感じを出すのが大変で、編集も大変でした。記録映画ではないシネマ性をきちんと出すことを意識しましたね。専門家や関係者のインタビューを出すのではなく、たくさんの人の話を取り入れながら、ひとりのナレーターが話をする形にしました。そういう考えのもと、アルヴァやアイノをいきいきと描くことに心を砕いたのです。
 
 
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■フィンランド人でも知らなかった建築家、アイノ・アアルトに光を当てる

――――アルヴァ・アアルトを調べるうちに、アイノ・アアルトという興味深い人物に出会ったとおっしゃいましたが、スータリ監督はアアルトをどんな人物と捉えたのですか?
スータリ監督:アイノに、今スポットライトを当てるべきだと思ったのです。フィンランド人でさえ、彼女のことを知りませんでしたから。ただアイノはアルヴァと若い時に知り合い、いろんなことを一緒に発見するなど対等な立場にいましたし、ドイツのバウハウス運動にも関わり、有機的なモダニズムを一緒に生み出していました。アアルトの世界観の土台はふたりで作り上げたもので、その上にアルヴァが建築していったのです。実際、アルヴァの建築の内装は、ほとんどアイノが手がけており、バウハウス運動のように建物も含めた全体性としてのアートを成し遂げる上で、非常に重要な役割を果たしていました。ですから、映画の中でも、まずアイノが建築家であることを盛り込みたいと考えていたのです。
 
――――日本でも展覧会「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド-建築・デザインの神話 AINO and ALVAR AALTO: Shared Visions」でアイノのことを知った人も多かったと思います。
スータリ監督:アイノは並々ならぬ審美眼を持っており、アルヴァは自分が何かを作る際はまずアイノに見せて、意見を求めていたそうで、そういう点でも全幅の信頼を置かれていました。ただアイノは寡黙で、いつも周りの観察しているような人だったのに対し、アルヴァはとても外交的で誰とも友達になれる魅力的な人物でした。ふたりは愛し合っていたので良いと思うのですが、わたしがアルヴァを夫にすることは、あり得ないですね。アイノの死後に再婚した若いエリッサに対し、自分の好きな髪型や服に変えさせるような束縛的なことをしていたこともありましたから。ただ、アルヴァの魅力にわたし自身が恋をした部分もあるのです。でもそれ以上に100年前の女性でありながら、現在にも通じるようなアイノの建築家や大工としてのスキルを持ち、家具会社の運営をし、ふたりの子どもを育て、何よりも扱いが複雑な夫アルヴァの世話をする、とても先進的かつエネルギッシュな女性でしたから、大きなインスピレーションを得ることができました。ちなみにアルヴァの声を演じたのはわたしの夫ですが、彼はアルヴァのような「ありえない」夫ではないことを付け加えたいです(笑)
 
 
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――――晩年はお酒で身を滅ぼすような部分もあったアルヴァですが、いずれにせ、アルヴァのあらゆる部分を描き出していましたね。
スータリ監督:アルヴァが人として抱えていた問題を、しっかりと映しだそうと思っていました。彼は晩年になると若い世代とコミュニケーションが取れなくなり、恐竜の生き残りのように扱われました。昔は先鋭的な建築家だったのに、最後は自分の殻の中に閉じこもり、余計にアルコールのせいで悪循環を招いてしまったのです。ドキュメンタリーで人物を描くにあたり、フォーカスする人物を聖人君主化はしません。人としてのアアルトを出していくわけです。最後に、アルヴァは、「人は悲劇と喜劇との組み合わせである」と語っていたのですが、まさにそれを映画に反映させたかったのです。
(江口由美)
 

<作品情報>
『アアルト』”AALTO”(2020年 フィンランド 103分) 
監督・脚本:ヴィルピ・スータリ 
出演:アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト他
2023年10月13日(金)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、アップリンク京都にて公開 
配給:ドマ
公式サイト https://aaltofilm.com/
(C) FI 2020 - Euphoria Film
 
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