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2024年3月3日、ホテルエルセラーン大阪のエルセラーンホールにて《おおさかシネマフェスティバル2024》が開催された。午後の表彰式では、90歳を迎えた映画伝道師の浜村淳が総合司会を務め、司会の簫秀華や受賞者と絶妙な掛け合いをみせ、今年も笑いの絶えない式となった。俳優部門を中心に受賞者の主なコメントをご紹介したい。
★主演女優賞:松岡茉優『愛にイナズマ』
(浜村から『ちはやふる』の演技を褒められ)『ちはやふる』と『愛にイナズマ』はプロデューサーが同じ。折村花子のキレ具合や泥臭さに共感しながら演じていた。映画を観て、悔しい想いや理不尽な目に遭った思い出を話してくださる方がたくさんいるとわかった。映画を観て、花子に熱いエールをもらってほしい。
★主演男優賞:鈴木亮平『エゴイスト』
(ビデオメッセージにて)
『エゴイスト』は、愛とエゴの話で、私にとっては人間ってなんと素晴らしいのかと思える人間賛歌の映画。大阪で映画を撮ることがあれば、ぜひ協力していただきたい。
★助演男優賞:磯村勇斗『月』
17歳で役者をやりたくて友達同士で映画を作り、それがきっかけでこの業界を目指し、小劇場活動時代に今の事務所に声をかけられた。『月』という作品は非常に難解で、社会的テーマが強いので、どういう風に届くのかと思っていたが、みなさんの心や脳内に届いていることを実感している。
★助演女優賞:中村久美『高野豆腐店の春』
いい人しか出て来ない映画。相手が藤竜也さんなので、素晴らしいなと思ってそのままの気持ちで、やらせていただいた。俳優歴45年で初めて賞をいただいた。三原監督と藤竜也さんのタッグ3本目で、最小限の日程、人数で大急ぎで撮り、和気藹々とした信頼のもとで作り上げた映画です。
★新人男優賞:黒川想矢『怪物』
大阪でも映画『怪物』を好きな人がたくさんいるとは知っていたが、このような賞をいただけて、嬉しい。『怪物』に出る前まではこのような奇跡を起こすことはできなかったので、是枝組や映画『怪物』に感謝している。
★新人男優賞:柊木陽太『怪物』
出身が京都で、関西で受賞できるのはすごく嬉しい。本当にありがとうございます。
★新人女優賞:サリngROCK『BAD LANDS バッド・ランズ』
演劇も映画も、すべての要素が掛け算になっていて、この賞を私に撮らせてくださった作品への賞だと思っている。
(サリngROCKさんは自身で立ち上げられた劇団《突撃金魚》で脚本・演出を手掛けておられ、俳優としての映画出演は初めて。)
★新人女優賞:中野有紗『PERFECT DAYS』
何もかもが初めて、外国の監督で不安でしたが、言葉の壁を超えて心が通じ合うものがあった。(ヴィム・ヴェンダース監督は)ありのままの私を受け入れ、私そのままでいさせてくれた。初めての映画でこのような素晴らしい賞をいただくことができたのは『PERFECT DAYS』チームのみなさんのおかげ。観てくださった方の心や記憶に残る演技ができればと思っている。
★監督賞:石井裕也『月』
いつも見ることのない、見ようとしない世界を描いているので、どう広く、深く見せるかに一番苦労した。いろんな大変なこともありましたが、作ることができて今は本当に良かった。
武部好伸(作家・エッセイスト)のコメント
御大・浜村淳さんのアドリブ感と(状況を鑑みない)マイペース感にますます拍車がかかり、それを巧みに(必死に?)フォローする簫秀華(しょうしゅうか)さん。2人の息の合った絶妙なる司会ぶりに会場は常に笑いの渦。こんな飾りっ気のない映画祭は他にはありません。受賞者にもこの雰囲気が伝染し、皆さん、リラックスムードに。主演女優賞の松岡茉優さんと浜村さんの掛け合いは漫才そのものでした。これが「おおさかシネマフェスティバル」の醍醐味! いやぁ、ええ塩梅でした。
河田真喜子(シネルフレ編集長)のコメント
TBSが魂を揺さぶる良質のドキュメンタリー映画の発信地となるべく⽴ち上げた、新ブランド「TBS DOCS」 のもと、今年も 『TBSドキュメンタリー映画祭 2023』 を開催しております。
⼤阪での開催初⽇となる 3 ⽉ 24 ⽇、かつては治療が可能な精神疾患とされてきた同性愛の歴史を紐解きながら、“93 歳のゲイ”である⻑⾕忠さんの⽣活にカメラを向けたドキュメンタリー映画『93 歳のゲイ』が上映され、吉川元基監督と主⼈公 ⻑⾕忠さんが舞台挨拶を⾏いました。
登壇し席に着くや否や、⻑⾕さんは「⽣き返った。」とまず⼀⾔。会場は温かい笑いが沸き起きおこり、⻑⾕さんのチャーミングな⼈柄で雰囲気は⼀気に和やかになりました。
吉川監督は観終わったばかりのお客様を前に、「本⽇は本当にありがとうございました。普段は⽇曜深夜に放送されているドキュメンタリー映像シリーズの番組ディレクターを担当しております。映画化というのが本当に想像つかなかったのですが、テレビの場合は視聴者が近いようで遠い存在で、⾒ている⼈の表情であったりかどう反応されているかが分からないのですが、映画は、映画を観るためにこのように集まってくださって、最後まで⾒てくださったことに⾮常に感謝の気持ちでいっぱいです。今回⻑⾕さんを含めて出演者の⽅に覚悟や勇気を⼤変ありがたく思いますし、その思いを映画で届けることができれば、と思っています。」と熱い挨拶をしました。
司会者より 3/15 に誕⽣⽇を迎え94歳になったことを告げられると、⻑⾕さんは「すみません、⻑⽣きして。」と返し、再び会場に笑いが。
映画を観た⻑⾕さんは作品の完成度について「よかったですよ。ものすごくよかった。梅⽥さん(同じくゲイを公表している⻑⾕さんのケースワーカー)とか知っている⼈がでてきたしね。」と感想を述べました。
吉川監督は「『93 歳のゲイ』は映像シリーズで去年の6⽉26⽇に放送しました。放送の⼆⽇後に梅⽥さんにお会いして、お礼をさせていただいたのですけど、その時印象的だった⾔葉が、『⾃分はゲイに⽣まれて良かったと思う。普通に私たちのように⾝近で暮らしているようなゲイの⼈を扱ったものがなかったので、こういう作品を世の中に広めてほしい』とおっしゃっていました。⻑⾕さんの思いや梅⽥さんの⼈⽣をしっかり伝えるのは映画しかないと思いました。」と映画製作に⾄った思いを語りました。
また最初に⻑⾕さんの取材することに⾄った経緯について、「⻑⾕さんを知った時に93歳のゲイの⽅がいらっしゃるのが驚きだったのですが、その⾃分の考えが間違っていて、昔から存在していたのに存在がなかったかのようにされてきた⼈なんだな、と実感しました。存在されて、戦ってこられた⼈なんだと思い、ぜひ番組にしたい、作品にしたいと思いました。」と話しました。
⻑⾕さんは「政治家の⽅々にもご覧いただいて、差別されてきた⼈たちがいて、そこで戦ってきた⼈たちがいたことをみていただきたい」と語り、最後に「今は昔と違って、政治にも取り上げられるようになって開けてきていると思う。外国の⽅はもっと開けてますけど、⽇本はまだ保守的なところがあるかもしれませんが、それでも僕らの若い頃からみたらだいぶと⾃由になっています。そういう⽅⾯に皆さん気かうようになってほしいと思います。」と話しました。
吉川監督は最後に「この映画を通して、(LGBTQ の⽅が)こんなに⾝近な存在なんだ、すぐ隣にいるかもしれない、ということを知っていただきたいです。また、⻑⾕さんの⼈⽣はまだまだこれからだと思っていますので、引き続き⻑⾕さんに取材させていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。」と引き続き⻑⾕さんへの取材オファーをし、和やかな雰囲気で舞台挨拶は終了しました。
2023年3⽉24⽇(⾦)〜4⽉6⽇(⽊)シネ・リーブル梅⽥にて開催
(オフィシャル・レポートより)
TBSが魂を揺さぶる良質のドキュメンタリー映画の発信地となるべく⽴ち上げた、新ブランド「TBS DOCS」 のもと、今年も 『TBSドキュメンタリー映画祭 2023』 を開催しております。
⼤阪での開催初⽇となる 3 ⽉ 24 ⽇、ミステリアスな仮⾯をかぶり、L.A.メタルブームに沸くミュージックシーンのど真ん中でギタリストとしての地位を築き上げた謎の⽇本⼈ギタリスト KUNI の軌跡に迫るドキュメンタリー映画『KUNI 語り継がれるマスク伝説〜謎の⽇本⼈ギタリストの半⽣〜』が上映され、佐藤功⼀監督と⾳楽評論家の伊藤政則が上映後に舞台挨拶を⾏いました。
まず最初に本来だったらここに来るはずだった KUNI さんから「⼤阪は⼈懐っこいのかなれなれしいのか、すぐに声をかけてくるんで(笑)、ちょっと⼾惑う時もあるんですが、愛すべき街です。」と⼤阪へのお客様へのビデオメッセージが流れると、映っていた背景について「なんかいいところ住んでるね。後ろに⽵があって。」と突っ込みを⼊れる伊藤に、「これは彼の住んでいる⾃宅の近くです。」と返す監督。舞台挨拶冒頭から三⼈の仲の良さを伺わせつつ、劇場の席が⼀列⽬から埋まっていることについて触れ「恐れ多い」と恐縮する⼀幕も。
本作の製作に⾄った思いについて監督は「以前から私と KUNI は表裏⼀体だと話していました。KISS が来⽇した時、私と KUNI はお互いの存在は当然知らなかったんですけど、KUNI も私も KISS のポール・スタンレーにあこがれて、そしてデトロイト・メタルシティを聞いて、ハードロックの虜になりました。今映画でもご覧いただいたように、KUNI はポールに憧れながらロックミュージシャンの道を歩んで⾏きますが、私は進学をし、そして就職をして全く違う⼈⽣を歩んでまいりました。私が今年の⼀⽉で TBS を定年退職し、⼀つ違いの KUNI も来年還暦を迎えます。今このタイミングで『映画の製作を通じて今しかできないことはなんだろう、⾃分にしかできないことはなんだろう』と考え、『それだったら単⾝アメリカに渡って成功した KUNI を世の中に紹介しよう︕』と思いました」と振り返る。
伊藤は「実は KUNI のお⺟さんが亡くなった時に献杯の会をやることになって、『4⼈ぐらいでお袋を送りたい』とのことだったので、4⼈くらいならいいかなと思って⾏ったら40⼈ぐらいいるんですよ。(笑)静かに送るんじゃないの︖みたいな。その時に佐藤監督とは初めて会ったんだよね。」と監督との出会いのエピソードを披露し、「その後番組を作ろうと、企画書とか出さずに予算をかけずに、すぐ結果出そうと。それでレコードのアートワークジャケットを語って、それを編集してやろうと。で 11 ⽉頃に番組収録を1⽇で4本撮り終わったところで、佐藤監督と TBS の報道の⽅が来て、『KUNI ちゃんはやはり伊藤さん周りのところなんだよね』っていうから、『そうだけど、なに︖』て⾔ったら、『KUNI のドキュメンタリー撮る』って⾔われて。それ⼤丈夫かい︕︖となったんだけど、だけどやる以上は協⼒は惜しまないということは約束したんですよ。」と本作に関わるきっかけを述懐。
映画の前半部のインタビュー中⼼の構成について監督は「映像を使うとなると、あらゆる⽅の許諾をとらなくてはいけなくて・・・時間的に厳しいのと、予算不⾜、⼈不⾜、とどこにでもある話です。」と製作の苦労をにじませつつも、「構成的に前半は KUNI がアメリカに渡って成し遂げた偉業をまとめて、後半はドキュメンタリーですから彼のありのままの姿を描きたい。それを 72 分という尺に収めると(インタビューとライブシーンの⽐率が)そういう作りになるので、この結果になったと思っています。」と回答。
また監督は若くして単⾝アメリカに渡った KUNI さんについて「この映画は 1980 年、今でいうと 40 年前のロサンゼルスが舞台になっているわけで、ネットも携帯もない、今じゃ考えられない時代ですよね。その中で KUNIはアメリカに⾶んで⾏っている。今WBCが話題ですから野球に例えると、野茂選⼿がアメリカに⾏かれたのが 95 年。KUNIはその 10 年も前からアメリカに⼀⼈で旅⽴っているわけですから、⽴場は違いますけど、そういった意味ではKUNIはある意味無鉄砲なんだけどすごいやつだな、と思います。」とコメント。
伊藤は「すごい⼈に好かれるっていいことだなと思うよね。KUNI と働いた⼈の多くは『いい加減なやつ』って⾔う⼈も多いんだよ。超いい加減な男ではあるけれど、⼈に愛される⼈なんですよ。だからビリー・シーンとかジェフ・スコット・ソートとかエリック・シンガーとか本作のインタビューに応じてくれたのも KUNI の⼈徳なんじゃないでしょうか。“ミュージシャンとミュージシャン”じゃなく⼈間として付き合いがあることも、今回の取材に応じてくれたんじゃないかな。やっばりね、愛されたら得だな。」と KUNI さんの魅⼒について語りました。
監督は「(今回取材ができて)⼀番うれしかったのは KISS のエリック・シンガーさん。彼は今⽇⽇本にいたと思ったら次の⽇にメキシコにいるような⼈ですから。そんな⽅がなんとかスケジュールを駆使して『ここの 20 分ならいいよ』と取材対応してくれました」と KUNI が⼀流ミュージシャンたちにいかに愛されているか語る。
KUNI さんのギターテクニックについて聞かれると伊藤は「はっきり⾔って KUNI よりうまい⼈はいます。KUNI はステージで上⼿いふりするのは上⼿でしたよ。うまく⾒せるというのかな。やっぱり存在感なんだと思う。ステージの存在感。KUNI はそういうのがとても上⼿だったよ。」と KUNI さんのパフォーマンスについて⾔及。
また KUNI さんが出したアルバムについて伊藤は「やはりファーストアルバム『マスク』は本当に印象に残っていて。当時はロックの⼤⼿メディアが少なかったわけで、⼝コミで広がっていったんだよね。やっぱり⼝コミって⼀番強いんだと思うんだよね。⼈から⼈へ伝わることがこうバズっちゃう。KUNI はファーストアルバムでそうなったからね。」と語ると、監督は「アルバムが出た 86 年、⼤学⽣でレコードショップで物⾊していた時に⼿の中に KUNI の『マスク』が⼊っていたんです。ミステリアスなジャケットでジャケ買いしました。(笑)」というエピソード披露。
最後に監督から「今⽇、この映画をきっかけにぜひ KUNI にもっと関⼼を持っていただいて、彼が本当にまたギターを持って復活するかどうかちょっと私も分かりませんけれど、ぜひその⽇を願って応援をしていただければと幸いだと思っております。」とメッセージ。伊藤は「まさかKUNI のドキュメンタリーが皆さんと⼀緒に楽しめると思っていなかったんですけど、KUNI というギタリスト、⼈間について、また当時の⾳楽シーンについていろいろ考えることがあります。本当にいい時代だったと単に振り返るだけでなく、作り⼿のパッションみたいなものが、今もどこかにあるはずだと思いながら仕事をしていきたいと思います。」と締めくくり、舞台挨拶は終了しました。
2023年3⽉24⽇(⾦)〜4⽉6⽇(⽊)シネ・リーブル梅⽥にて開催
(オフィシャル・レポートより)
娘を殺された元夫婦と、犯行時に未成年だった加害者の女性・夏奈。癒やしようのない苦しみに囚われた3人の葛藤を見すえ、魂の救済、赦しという深遠なテーマに真っ向から挑んだ問題作『赦し』。いよいよ 3月18日(土)より、ユーロスペース、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開、関西ではシネ・リーブル梅田ほかにて3月24日(金)より公開となります。
怒りと憎悪の呪縛に囚われた主人公、克を演じるのは、フィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサと組んだ主演作『義足のボクサー GENSAN PUNCH』が記憶に新しい尚玄。元妻の澄子に扮するのは、第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞したMEGUMI。そして、映画デビュー作『渇き。』などで独特の存在感を示してきた新進女優、松浦りょうが夏奈役に大抜擢。監督は世界各国の映画祭で話題を呼んできた日本在住の気鋭のインド人監督アンシュル・チョウハンの最新作です。
【日時】 3月11日(土) 12:00回終了後(13:38~13:50)
【場所】 シネ・リーブル梅田
(大阪市北区大淀中1丁目1−88 梅田スカイビル タワーイースト3・4階)
【登壇者】 尚玄、松浦りょう、アンシュル・チョウハン監督 ※敬称略
そんな本作の公開に先立ち、3月11日(土)に大阪アジアン映画祭 コンペティション部門で上映され、主演の尚玄さん、夏奈役に抜擢された松浦りょうさん、監督のアンシュル・チョウハンが登壇し、舞台挨拶とQ&Aを行いました。
まずは、監督が「ご来場いただきありがとうございます。大阪アジアン映画祭で上映でき、皆さんの前で挨拶できることを嬉しく思っています。皆さんにこの映画を楽しんでいただけたのか気になっているので、Q&Aを楽しみにしています」、尚玄さんは「ジャパンプレミアで大阪アジアン映画祭に戻ってこられて嬉しいです」と挨拶し、Q&Aに。
最初に、「大変興味深く拝見させていただきました。観た人それぞれの視点がある作品だと思います。特に、ポスターにも使われている松浦さんの振り返りのショットが印象的でした。彼女の表情にどのような演出をされたのでしょうか」という質問に対して監督は、「これは12テイク目でした。こういうものにしたいというイメージが自分の中にあったので、テイクを重ねて彼女の肩の位置や傾き加減など細かく指示をしました」と明かし、「映画の中でも特に大事なシーンになるので、観客の皆さんを見ているのか見ていないのか絶妙なバランスを意識して、自分の目指すイメージを意識して撮影しました」と、重要なシーンをどう見せるかへのこだわりを語りました。
次に、「当初の脚本から撮影時の脚本に落とし込むまでに大きく変わったことはありますか?」という質問に対して監督は、「2018年に初めて脚本を読んだ時は映画化する気持ちまで持っていけなかった」そうですが、その後、「コロナになって誰もが家に閉じこもるようになった時に読み返して、これは映画化すべきだと思いました。そこから日本で撮影できるように、少年法など日本の法律に沿って変わった部分や実際に裁判へ赴いて細かいところ調査しながら脚本を改正していきました」と時流や日本に合わせた脚本の変遷について明かしました。
最後に、尚玄さんと松浦さんへの「役作りの過程で一番難しかったこと」という質問について尚玄さんは、「全てが大変でした」と前置きし、中でも「僕は当事者ではないので、当事者じゃない人間がその人が抱えているものをリアルに表現できるのかということにすごく真摯に向き合いました」と役作りへの思いを語り、「(松浦)りょうちゃんと対峙している場面は芝居ではなかったから、監督の指示もありましたし、撮影が終わるまで一言も話さなかったです」と緊張感が漂っていた対峙シーンの裏側を明かしました。さらに、続けて「監督が早い段階で衣装を用意してくれたことがすごく幸運でした」と話し、「3週間前から衣装を着て、克として生活していました」と真摯に役に向き合い続けた日々を明かしました。
そして、松浦さんは、「私も、殺人を犯したことも刑務所に入ったこともないので、役作りとして経験できることではないし、殺人を犯してしまった方のインタビューを見て、役に落とし込んで考えました。その上で、刑務所の生活にできるだけ近い生活をして孤独を知ることで役を作り上げていきました。その時間が一番しんどかったです」と役作りについて明かしました。
観客から大きな拍手で見送られ、舞台挨拶は終了しました。
■監督・編集:アンシュル・チョウハン(『コントラ KONTORA』
■撮影:ピーター・モエン・ジェンセン 音楽:香田悠真
■出演:尚玄 MEGUMI 松浦りょう 生津徹 藤森慎吾 真矢ミキ
■プロデューサー:山下貴裕 茂木美那 アンシュル・チョウハン
■エグゼクティブ・プロデューサー:サイモン・クロウ ランカスター文江
■アソシエイト・プロデューサー:前田けゑ 澤繁実 岡田真一 木川良弘
■脚本:ランド・コルター
■助成:文化庁
■製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS
■配給:彩プロ
■2022年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98分
■原題(英語題):DECEMBER
■©2022 December Production Committee. All rights reserved
■公式サイト:https://yurushi-movie.com/
3月18日(土)より、ユーロスペース、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
3月24日㈮より、シネ・リーブル梅田/シネマート心斎橋/アップリンク京都/シネ・リーブル神戸にて
(オフィシャル・レポートより)
今年で通算47周年を迎える大阪の映画ファンによる映画まつり、《おおさかシネマフェスティバル》(実行委員長:高橋聰)が、3月5日(日)、ホテルエルセラーン大阪5階のエルセラーンホールで開催された。
メインイベントとなる午後の表彰式では、総合司会の浜村淳が登壇。デビュー30周年で初の受賞となった主演男優賞の村上淳(『夕方のおともだち』)は、浜村に自ら距離を縮めるパフォーマンスで先制パンチ。地元大阪での受賞に「心から感謝申し上げます」と感激の表情を浮かべた。廣木監督とは13本のタッグを組み、ようやく主演作でマゾヒスティックな性癖が醒めかかっている男という難役にチャレンジ。「撮影でSMに目覚めればラッキーぐらいに思って臨んだが、痛かっただけ」とハードな撮影を振り返った。
『ハケンアニメ!』で主演女優賞を受賞した吉岡里帆は、映画まつりの盛り上がりに驚いた様子。浜村も同じ京都の太秦出身ということで、吉岡への注目度の高さを伺わせた。撮影では、監督の意見とプロデューサーの意見が食い違っているときに難しさを感じたという吉岡。関西出身の受賞者に囲まれ、笑顔が絶えなかった。
菅田将暉とW主演男優賞を受賞した『火花』でも会場を大いに沸かせた桐谷健太は、『ラーゲリより愛を込めて』で見事、助演男優賞を受賞。「監督、キャスト、一緒にシベリアに抑留された役者さんたちの力なので、共に分かち合えたらうれしい」と一気に挨拶。撮影しているときに映画の世界観に入り込みすぎて、絶望を感じ、セリフが言えなくなりそうになったこともあると明かしながら、「少しでも戦争が嫌だとか、幸せな方がいいと思ってもらえれば。それが演じる中の心の糧だった」と、浜村とのお笑いトークバトルの間を縫って、映画に込めた思いを語った。
新人賞、助演賞、そして昨年の主演女優賞と当映画祭常連俳優といえる尾野真千子は、『サバカン SABAKAN』で、今年も助演女優賞に輝き「こういう賞は何度いただいても嬉しいもので、昨年に引き続き2度目。嬉しいです!」と喜びを表現。家中トロフィーや賞状だらけでは?という浜村に「そうですよ」とニヤリ。最近のオファーは100%母親役だというが、「番家兄弟で息子役をしていたので、演じる上ではちょっとラクだった」と余裕の笑みを浮かべた。
新人男優賞の番家一路と原田琥之佑は、共に受賞作『サバカン SABAKAN』が映画初出演。客席に本作の金沢知樹監督がいることを意識しながら、「金沢監督がいるので緊張しなかった」「ここに立てているのは金沢監督のおかげ」と、監督への感謝の言葉を口にした二人。途中からは監督も壇上に上がる一幕もあり、撮影さながらの和気藹々とした雰囲気に。浜村からも「感性豊かな演技」と大絶賛だった。
新人女優賞を受賞した『マイスモールランド』の嵐莉菜は、「5カ国のミックスルーツを持つ自分が経験したことのある葛藤が脚本に描かれていたので、早く現場に入って撮りたいと思った」と本作の出会いを語り、川和田恵真監督との受賞に喜びいっぱいの表情を浮かべた。また新人監督賞を受賞した川和田恵真監督も、「社会的な面がある一方、高校生の主人公とその家族の視点で描いた青春映画として楽しんでいただける作品。主演の嵐さんとは、ミックスルーツとして日本で生きて感じてきたことを共に話し合った中で、彼女ならこの作品を一緒にやっていけると感じた」と嵐の起用理由を語り、内容面など様々な撮影のサポートを行ったクルド人コミュニティの方々に感謝の意を表した。
監督賞は、『夜明けまでバス停で』の高橋伴明監督。「制作側からの過酷な条件をスタッフ、キャストが受け入れ、努力、その熱い想いがこの賞につながった」と挨拶。封印してきた怒りを解いて作ったという本作が高評価を受けたことで、次への意識が高まった様子で「この機会に浜村さんを見習って、生涯現役をやってみようと思った。次回作は沖縄問題に取り組みたい」と力を込めた。脚本賞の梶原阿貴も、「社会的な背景がある事件で、社会性と娯楽性のバランスをとるのが難しかった」と苦労を語る一方、実在の事件を元にはしているが映画の魔法で彼女を死なせないという選択をしたという。「(映画で描写するなら)若い女性の方がいいという風潮には抗いたい」と旧態依然とした映画界の女性描写の風潮にも異議を唱えた。
新人監督賞の山﨑樹一郎監督(『やまぶき』)、ワイルドバンチ賞の辻凪子監督、大森くみこ弁士(『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』)も登壇。地元関西での受賞を喜んだ。
他、2022年度の受賞結果は以下のとおり。
【2022年度・個人賞】
◆日本映画
主演男優賞 村上淳 『夕方のおともだち』
主演女優賞 吉岡里帆 『ハケンアニメ!』
助演男優賞 桐谷健太 『ラーゲリより愛を込めて』
助演女優賞 尾野真千子 『サバカン SABAKAN』
新人男優賞 番家一路 『サバカン SABAKAN』
原田琥之佑 『サバカン SABAKAN』
新人女優賞 嵐莉菜 『マイスモールランド』
監督賞 高橋伴明 『夜明けまでバス停で』
脚本賞 梶原阿貴 『夜明けまでバス停で』
撮影賞 斉藤幸一 『とんび』
音楽賞 大島ミチル 『サバカン SABAKAN』
新人監督賞 川和田恵真 『マイスモールランド』
山﨑樹一郎 『やまぶき』
ワイルドバンチ賞 『I AM JAM ピザの惑星危機一髪!』
監督:辻凪子 活動弁士:大森くみこ
◆外国映画
監督賞 マイク・ミルズ 『カモン カモン』
主演男優賞 トム・クルーズ 『トップガン マーヴェリック』
主演女優賞 エミリア・ジョーンズ 『Coda コーダ あいのうた』
助演男優賞 トム・ハンクス 『エルヴィス』
助演女優賞 ケイト・ブランシェット 『ナイトメア・アリー』
(江口 由美)
今年は中日国交正常化 50 周年という節目の年であり、中日両国の友好交流の歴史を振り返るチャンスであると同時に、中日関係が未来に向けて発展するための新たなスタートラインでもあります。2000 年以上に及ぶ文化の交流と 50 年にわたる中日関係の発展という「大きな軌跡」の中で、映画を通じて行われた活発な両国間交流は、まさに「小さな奇跡」ともいえます。
「民を以って官を促す」、中日交流の歴史において数々の美談を残し、両国映画交流史上多くの名作の舞台として輝いた代表地・大阪で 11 月 11 日(金)から 11 月 17 日(木)の期間、「2022 大阪・中国映画週間」が初開催されることが決定いたしました。最新の中国映画の上映を通じて、中日両国の文化交流をより一層盛り上げたいと考えています(合計8作品・計 11 回上映)。
■ 上映期間 : 2022 年 11 月 11 日(金)〜11 月 17 日(木) 8 作品(計 11 回)
■ 上映会場:TOHOシネマズ梅田アネックス SCREEN9、10
■ チケット販売:金額 1,500 円(税込)
■ 販売サイト:TOHO シネマズ梅田
(URL:https://www.tohotheater.jp/theater/037/info/event/cjiff2022umeda.html)
■ 公式サイト: http://cjiff.net/2022osaka.html
■ ©NPO 法人日中映画祭実行委員会
【上映作品タイトル】
(オフィシャル・リリースより)