映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

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10月28日(月)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開幕したアジア最大級の映画の祭典である第37回東京国際映画祭が、11月6日(水)に閉幕を迎え、TOHOシネマズ 日比谷スクリーン12にてクロージングセレモニーと東京日比谷ミッドタウンLEXUS MEETS...にて受賞者記者会見を行いました。


セレモニーでは、各部門における審査委員からの受賞作品の発表・授与。主演男優賞(長塚京三)最優秀監督賞(吉田大八)【東京グランプリ/東京都知事賞】に吉田大八監督の『敵』が選出され3冠を達成し、審査委員長トニー・レオンよりトロフィーを授与されました。日本映画がグランプリに輝くのは第18回の根岸吉太郎監督作『雪に願うこと』以来19年ぶりの快挙となります(当時の名称は東京サクラグランプリ)。また、長塚京三さんは東京国際映画祭主演男優賞の最高齢(79歳)となりました。その他、主演女優賞は『トラフィック』のアナマリア・ヴァルトロメイが、審査員特別賞『アディオス・アミーゴ』が、最優秀芸術貢献賞『わが友アンドレ』が、そして観客賞『小さな私』がそれぞれ受賞致しました。


小池百合子東京都知事に代わり東京都副知事 松本明子より麒麟像の授与を行い、最後に安藤チェアマンによる閉会宣言により第37回東京国際映画祭は閉幕。


<第37回東京国際映画祭 クロージングセレモニー実施概要>

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開催日:2024年11月6日(水)17:00-18:30
会場:TOHO シネマズ日比谷 スクリーン 12
登壇者 各賞の受賞者:(別途、下記リストにてご確認ください)

アジアの未来部門 審査委員:ニア・ディナタ、山下宏洋、横浜聡子
コンペティション部門国際審査委員長:トニー・レオン
コンペティション部門国際審査委員: エニェディ・イルディコー、橋本愛、キアラ・マストロヤンニ、ジョニー・トー
クロージング作品『マルチェロ・ミオ』:キアラ・マストロヤンニ
ゲスト:東京都副知事 松本明子
安藤裕康チェアマン
MC:仲谷亜希子    ※敬称略


<受賞者記者会見>

開催日:2024年11月6日(水)18:45-20:10
会場:LEXUS MEETS...
登壇者 :コンペティション作品各賞の受賞者

(吉田大八監督、長塚京三、ヤン・リーナー監督、イン・ルー(プロデューサー)、ドン・ズージェン監督、リウ・ハオラン、テオドラ・アナ・ミハイ監督、イバン・D・ガオナ監督、エミネ・ユルドゥルム監督)


第37回東京国際映画祭 各賞受賞作品・受賞者

コンペティション部門

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東京グランプリ/東京都知事賞 『敵』(日本)

審査員特別賞 『アディオス・アミーゴ』(コロンビア)

最優秀監督賞 吉田大八監督(『敵』、日本)

最優秀女優賞 アナマリア・ヴァルトロメイ(『トラフィック』、ルーマニア/ベルギー/オランダ)

最優秀男優賞 長塚京三(『敵』、日本)

最優秀芸術貢献賞 『わが友アンドレ』(中国)

観客 『小さな私』(中国)

アジアの未来 作品賞 『昼のアポロン 夜のアテネ』(トルコ)

東京国際映画祭 エシカル・フィルム賞 『ダホメ』(ベナン/セネガル/フランス)

黒澤明賞 三宅唱、フー・ティエンユー

特別功労賞 タル・ベーラ



第37回東京国際映画祭 動員数 <速報値・6日は見込み動員数>

■上映動員数/上映作品本数:61,576人/208本 *10日間 
(第36回:74,841人、82.3%/219本、95.0% *10日間)

■上映本作品における女性監督の比率(男女共同監督作品含む):21.9%
 (208本中37本、同じ監督による作品は作品の本数に関わらず1人としてカウント)

■その他リアルイベント動員数:96,866人
■ゲスト登壇イベント本数:178件 (昨年169件、105.3%)
■海外ゲスト数:2,561人(昨年2,000人、128.1%)
■共催提携企画動員数:約 44,700人


クロージングセレモニー

<アジアの未来>

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作品賞受賞 『昼のアポロン 夜のアテネ』 エミネ・ユルドゥルム(監督) コメント

東京国際映画祭でこのような賞をいただけて、とても光栄です。審査員の皆様、観客の皆様、そしてこの作品の制作に関わったスタッフに感謝を伝えたいです。


<コンペティション>

観客賞受賞 『小さな私』 ヤン・リーナー(監督) コメント:

この映画の持つ物語が最終的に皆さんの心に刺さることがあればいいなと思います。皆さんの映画に対する愛に感謝します。この作品は障害を持つ青年の成長を描いた作品ですが、主人公は普通の人間です。映画の製作に関わったすべてのクリエイターに感謝したいです。


最優秀芸術貢献賞受賞 エニェディ・イルディゴー 講評:

現実を強烈な内なる風景へと変える、大胆なビジョンを見せてくれました。


最優秀芸術貢献賞受賞 『わが友アンドレ』 ドン・ズージェン(監督) コメント:

この場を借りてこの作品に関わったスタッフの皆さんに心から感謝を申し上げたい。この映画は私のデビュー作ですが、周りの友人たちとともに作り上げました。劇中に大雪の場面があったと思いますが、私の心の中の悩みや暗い気持ちを覆ってしまうような気がしていましたが、雪はいつか溶けて太陽があらわれる。希望に満ちているんです。これからも努力していい映画を作っていきたい。


最優秀男優賞受賞 トニー・レオン 講評:

スクリーンに登場したその瞬間から、その深みと迫真性で私たちを魅了しました。


最優秀男優賞受賞 『敵』 長塚京三(俳優) コメント:

ちょっとビックリして、まごまごしています。『敵』という映画は、年を取って一人ぼっちで助けもない。そして敵に閉じ込められるという内容で。でもこういう場に立たせてもらい、結構味方もいるんじゃないかと気を強く持ちました。ボチボチ、引退かなと思っていたので、奥さんはガッカリするでしょうけど、もう少し、この世界でやってみようかな。東京国際映画祭、ありがとう。味方でいてくれた皆さん、ありがとう。 


<クロージング作品>

キアラ・マストロヤンニ コメント:

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35年ぶりの日本で、東京での10日間は素晴らしい経験でした。また来ることが出来て嬉しいです。審査委員同士、全く異なる背景の私たちでしたが、色々な感情を共有することができましたし、映画祭でなければ出会えなかった作品や人々に出会えて、映画祭を通して様々な発見ができて良かったです。『マルチェロ・ミオ』について初めて聞いたときは奇妙な映画と思い一つの賭けでしたが、興味を持ち何か異なるもの新しいものを体験することは大事だと思いました。大切な人を亡くしたことがある方は共感できる映画だと思います。真面目でシリアスな作品ではなく、ハッピーな作品です。楽しんでいただければと思います。


安藤裕康チェアマン コメント:

例年に劣らず、盛況の内に終わりを迎えることができました。沢山のゲストを迎え入れることができ、去年より2割の増加となっています。東京国際映画祭での日本映画の受賞は2005年の第18回以来、19年ぶりです。この受賞が、日本映画がますます発展していくきっかけになればと思います。


名称:第 37 回東京国際映画祭

開催期間:2024 年 10 月 28 日(月)~11 月 6 日(水)

会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区


(オフィシャル・レポートより)

高橋一生、水川あさみが台湾ドラマに初めて参加!!日本での記者会見にメッセージ映像でコメント! 高橋一生「日本ではなかなか難しい政治的な問題を背景にした人間ドラマを、エンターテインメントとしてつ くることに面白味を感じた」水川あさみ「難しいテーマ性のものをしっかりとエンターテイメントとして落と し込んだ今回の作品に参加できたことをとても光栄に思う」とコメント!

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開催中の東京国際映画祭に併設されているマルチコンテンツマーケット「TIFFCOM2024」にて10月30日(水)、台湾ドラマ「零日攻撃 ZERO DAY」の記者発表会が行なわれ俳優のロイ・チャンリエン・ユーハンプロデューサーのチェン・シンメイが出席した。



TFF-零日攻撃-高橋-500.jpg会見の冒頭には予告編に加えて、日本から本作に参加した高橋一生と水川あさみからのビデオメッセージも上映された。第2話に出演する高橋さんは、本作への出演を決めた理由について「日本ではなかなか難しい政治的な問題を背景にした人間ドラマを、エンターテインメントとしてつくることに面白味を感じたからです。そして、脚本が面白かったこと、全編台湾ロケで、スタッフ、キャストも台湾の方だということにも興味を持ちました」と説明。さらにプロデューサーとのやり取りの中で「『“平和が最も大事だ”というメッセージを届けたい』と言われたことにも背中を押されました」と明かした。


TFF-零日攻撃-水川-500.jpgのサムネイル画像水川さんは、台湾華語での挨拶を交えつつ「難しいテーマ性のものをしっかりとエンターテイメントとして落とし込んだ今回の作品に参加できたことをとても光栄に思っています。日々、スタッフとキャストの方たちとコミュニケーションを取りながら、ディスカッションしながら撮った作品が、どんなものになっているのか、出来上がりをとても楽しみにしています」と笑顔で語った。


続いて、ロイさん、リエンさん、チェンプロデューサーが大きな拍手に迎えられて会見に登場。ロイさんとリエンさんは日本語で挨拶し、会場を沸かせる。

現在も撮影が続く「零日攻撃 ZERO DAY」だが、チェンプロデューサーは本作について「台湾海峡における戦争という非常に厳粛なテーマを描いています。そして、台湾海峡における戦争が起きる前に、台湾で起きる様々なことが描かれます。中でも、台湾における中国の浸透が中心のテーマであり、私たちの敵がいろいろな情報戦を仕掛け、地方における選挙戦、あるいは私たちの生活に様々な影響を与える中で、台湾の人々がどのような選択をするのかを描いています」と説明。


TFF-シンディ-240.JPGリエンさんは第2話にニュースキャスター役で出演しており、台湾海峡が危機にある状況下でのメディアの在り方を問うエピソードの中で、ジャーナリストとして葛藤するさまが描き出される。

リエンさんは、今回のオファーについて「嬉しいというのが最初の反応でした」と述懐。これまで時代劇への出演が多かったこともあり「久しぶりに現代の役を演じられるのが嬉しかったです」と笑顔を見せる。撮影については「非常にやりがいのある挑戦でした。これまでニュースキャスターの訓練を受けたことないし、報道の現場に行ったこともなかったので、プロのニュースキャスター方からいろいろと勉強し、テレビ局の現場にも足を運びました」とふり返った。


TFF-零日攻撃会見2-550.jpg一方、ロイさんは第5話で、子どもの頃に台湾に移り住み、警察官になった男性を演じており、自身のアイデンティティに葛藤する様子が描かれる。ロイさんは今回のオファーについて「僕が出演したのはブラックユーモアを描いたエピソードでしたが、そもそもコメディ自体に出演したこともなかったので、新しい挑戦できると思って嬉しかったです」と明かす。

ロイさんは水川さんと共演しているが「水川さんと楽しい時間を過ごさせていただきました。前から台湾で水川さんの作品を見ていて、実は水川さんのファンでもありまして(笑)、ご一緒できて夢がかないました。でも、ファンだったので、水川さんと目が合うと緊張してセリフを忘れてしまったり、間違えることがよくありました(苦笑)。水川さんは素晴らしい女優さんで非常に強い眼力をお持ちなので、目が合うだけで緊張してしまうことがよくありました」とユーモアたっぷりにふり返った。


TFF-高橋 学生.jpg一方、リエンさんは高橋さんと“元恋人”という関係性で共演しているが、高橋さんの印象について「まず非常にプロフェッショナルな俳優さんで、撮影が始まる前に一緒に脚本の読み合わせをして、背景などについて真剣に議論し、本番前に練習やリハーサルもさせていただきました。おかげで撮影はスムーズに進みました。もちろん、私たちの間には言葉の壁がありましたが、俳優として実際に役になり切って、役の中で交流する中で、言葉の壁など問題ないんだと思いました」語り「私も高橋さんの作品をずっと見てきたので、楽しい時間、毎日ワクワクした時間を過ごすことができました。本当に夢がかないました」と笑顔を見せた。

撮影が充実した時間だったのか、終始笑顔で和やかに会見は終了した。

「零日攻撃 ZERO DAY」は、7月の台北での会見以降、台湾、そして海外メディアの注目を集めている。2024年3月に撮影が開始され、今月11月末に撮影が終了予定。2025年春に完成予定。日本での放送は未定。


◆作品概要

【STORY】

物語の舞台は、総統選挙を終えた台湾。中国が軍事演習を拡大、台湾海峡情勢が緊迫化する中、南シナ海を横断した中国の偵察機Y-8が東台湾沖の太平洋に墜落、消失。中国はその捜索と救助の名目で、南シナ海と東シナ海に向け大量の海軍と空軍を投入した。それに伴い台湾島内では社会不安が日に日に高まり、中国軍が台湾に上陸する「Zero Day」へのカウントダウンが始まる。総統はいまだ力が弱く、さらには台湾内でも反戦デモと、中国を支持する勢力の台頭の脅威に直面し、正式に宣戦布告するかどうかの決断を迫られている。アメリカ、日本、韓国が固唾をのんで台湾の行方を見守る中、台湾に生きる人々は、自分たちの未来の運命を果たしてどのように決めるのだろうか…。


【CREDIT】

エグゼクティブ・プロデューサー:林錦昌(リン・ジンチャン)
プロデューサー・脚本コーディネーター:鄭心媚(チェン・シンメイ)
総合制作プロデューサー:林仕肯(リン・シーケン)
監督:洪伯豪(ホン・ボーハオ)、蘇奕瑄(スー・イーシュエン)、趙暄(チャオ・シュエン)、季恩(ウー・チーエン)、劉易(リウ・イー)、鄭心媚(チェン・シンメイ)、羅景壬(ルオ・チンレン)、林志儒(リン・チールー)/AKIRA


【CAST】

謝怡芬(Janet)/游安順(ヨウ・アンシュン)/高橋一生/連俞涵(リエン・ユーハン)/陳妤(チェン・ユー)/孫沁岳(ヨーク・スン)/杜汶澤(チャップマン・トウ)/謝章穎(シエ・ジャンイー)/水川あさみ/張洛偍(ロイ・チャン)/藍葦華(ラン・ウェイホア)/楊富江(ヤン・フージアン)/戴立忍(レオン・ダイ)/潘慧如(エイダ・パン)/莊凱勛(カイザー・チュアン) /侯彥西(ホウ・イエンシー)/李冠毅(リー・グアンイー)

2025年/台湾/テレビドラマ/全10話 @ZeroDay Cultural and Creative Company Limited.


(オフィシャル・レポートより)

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第37回東京国際映画祭 ついに開幕!

総勢228人の豪華ゲストが登場

レッドカーペット&オープニングセレモニー

 

本日10月28日(月)日比谷にて第37回東京国際映画祭が開幕となりました。

今年は、国内でも多くの映画人が登場し、海外からも多くのゲストを招き、世界的な国際交流の場として華やかな幕開けとなりました。


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TIFF2024-op-240-ayase.jpg東京ミッドタウン日比谷のステップ広場から日比谷仲通りにかけて敷かれた162mのレッドカーペットには、トップバッターとしてオープニング作品の『十一人の賊軍』から白石和彌監督山田孝之、仲野太賀ら10名が登場。その後、フェスティバル・ナビゲーターの菊地凛子が登場すると会場からは歓声が上がった。そのほか『外道の歌』の亀梨和也、『雪の花 -ともに在りて-』の松坂桃李、『劇場版ドクターX』の米倉涼子、『ルート29』の綾瀬はるか、『オラン・イカン』のディーン・フジオカ、『サンセット・サンライズ』の菅田将暉、『Spirit World』の堺正章、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の河合優実、エシカル・フィルム賞審査委員長の齊藤工、海外から『チャオ・イェンの思い』のチャオ・リーイン、『娘の娘』のシルヴィア・チャンら豪華ゲストが煌びやかな衣装で観客を魅了し、終盤には今年度のコンペティション部門審査委員長であるトニー・レオンが登場し、会場のボルテージも最高潮に達した。国内外からは228名の豪華ゲストがカーペットを彩り、国内外のマスコミと多くの観客による熱気に包まれ、大いに盛り上がりを見せるレッドカーペットとなった。


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レッドカーペットイベント終了後、東京宝塚劇場にて行われたオープニングセレモニーでは、オープニングアクトとしてVirtual Singerの花譜-KAF-が登場し、スペシャルパフォーマンスでドラマーの大井一彌、琴アーティイストのLEO、ダンサーの池田美佳鈴木陽平、歌手・ヴァイオリニストのサラ・オレインと一緒に演奏、部門紹介のMCも務めた。武藤容治経済産業省経済産業大臣の祝辞と石破茂首相のビデオコメントが届けられ、その後今年のナビゲーターの菊地凛子が登場し映画と映画祭の素晴らしさについて熱く語った。さらに、今年の審査委員が紹介され、コンペティション部門の審査委員長であるトニー・レオンの挨拶では、審査委員チームの一員になることができ光栄です、ベストを尽くします、と審査に対しての思いを語った。オープニング作品の『十一人の賊軍』からは、監督の白石和彌、山田孝之ら総勢8人が登場し、映画の見どころについて明かした。最後はチェアマンの安藤裕康による開催宣言で締めくくり、会場には大きな拍手が鳴り響き、イベントは終了。


開催日:2024年10月28日(月)
①レッドカーペット 会場:東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場・日比谷仲通り

開始時間:15:00〜

②オープニングセレモニー 会場:東京宝塚劇場 開始時間:17:00〜

【オープニングセレモニー】登壇者
第37回東京国際映画祭フェスティバル・ナビゲーター:菊地凛子
オープニングアクト:花譜-KAF-、サラ・オレイン、LEO、大井一彌、池田美佳、鈴木陽平
経済産業省経済産業大臣:武藤容治
コンペティション部門国際審査委員 審査委員長:トニー・レオン
コンペティション部門国際審査委員 審査委員:エニェディ・イルディコー、橋本愛、
キアラ・マストロヤンニ、ジョニー・トー
オープニング作品:『十一人の賊軍』
 監督:白石和彌
 出演者:山田孝之、鞘師里保、千原せいじ、一ノ瀬颯、野村周平、小柳亮太、本山力
※敬称略

レッドカーペット参加ゲスト:国内外 228名

レッドカーペット&セレモニーのご取材マスコミ数:国内外 173名

レッドカーペットの長さ:計162m

セレモニーの参加客数:742名

本年度の上映本数:計208本

男女共同監督を含めた女性監督作品は43本(女性のみ37本、男女共同6本)で全体の中での比率は21.9%(昨年は22.4%、同じ監督による作品は作品数に関わらず1人としてカウント)



★石破茂 内閣総理大臣ビデオメッセージ

皆様こんにちは。内閣総理大臣の石破茂です。
東京国際映画祭はアジアを代表する国際的にも注目を集める映画祭です。
映画の発展に貢献されてきた皆様の創意工夫とご尽力により、本日第37回の東京国際映画祭が開催されますことを心よりお慶び申し上げます。

日本のコンテンツ産業は鉄鋼や半導体産業に匹敵する輸出規模があり、その競争力の源泉は会社と共に映画監督や製作現場の方といったクリエイター個人の皆様にあります。日本のコンテンツ産業のさらなる発展のために政府としても次世代を担うクリエイターの育成支援や取引の適正化といった環境の整備を図ってまいります。

本年の8月には日伊、日本イタリア映画共同製作協定が発効し、いよいよ共同製作作品の募集も開始となりました。今年生誕100年となるイタリアの有名俳優マルチェロ・マストロヤンニ氏や、有名監督の作品に関する特集が上映されると聞いております。改めて過去の名作の魅力が再認識され、新たな作品の製作に向けた皆様方の出会いや交流の場となりますことを心より期待いたしております。

最後になりますが、この映画祭の成功と我が国の映画産業の益々の発展を祈念いたしまして、わたくしのご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 

★第37回東京国際映画祭フェスティバル・ナビゲーター:菊地凛子 コメント

東京国際映画祭に初めての参加で、このような身に余るお仕事をいただき、この場所に立つことができました。映画を通じて多くの方々と繋がっていきたいと思っております。

Q.東京の並木道を活かしたレッドカーペットを歩いてみていかがでしたか?

東京という凄くユニークな都市の真ん中でこのようなレッドカーペットがあるんだと、歩かせていただいて実感したとともに、本当に沢山の方々がいらっしゃって、映画を観て楽しんでいるんだろうなというのを肌で感じることができました。
 

Q. 菊地さんにとって映画祭の楽しさはどんなところでしょうか?

映画は一つの共通言語として色んな国の方々と繋がることができる方法だと思っています。映画をもって、会話ができるというのは凄く素敵なことだと思います。


Q. 海外の作品でも活躍されている菊地さんですが、邦画洋画に関わらず、菊地さんの思う映画の良さはどんなところですか?

映画で自分の人生が変わるような、衝撃を受ける作品に出会ってきました。映画の中の登場人物が傷ついたり泣いたり希望を持って生きようとしたりと、その中で一緒になって傷ついたり喜んだりすることで、映画館を出るころにはすっかり元気になって、明日も頑張ろうという風に思えます。子どもの頃から見てきた映画と共に、自分も映画の世界に入って、映画を通じて沢山の人々に色んなことを伝えていけたらいいなという希望を持って日々頑張ろうと思います。

 

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★コンペティション部門 審査委員長:トニー・レオン

今年、この審査委員チームの一員になることができ光栄です。私たちの審査が皆さんに満足していただけるものになることを願っています。簡単なことではありませんが、ベストを尽くしたいと思います。皆さんすてきな夜をお過ごしください。

 

『十一人の賊軍』:白石和彌監督 コメント

『十一人の賊軍』をオープニング作品に選んでいただきありがとうございます。撮影は去年8月から11月までみんな必死に泥まみれになりながら撮影したのですが、ここにいるキャストの皆さんの姿を見て誇らしい気持ちでいっぱいです。映画ではかっこよく汚れているのですけど、この場では綺麗な姿を見れて感無量です。映画を楽しみにしてください。

 

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『十一人の賊軍』:山田孝之 コメント

昔の設定ではありますが、昔の人たちの行動や考えは現代においても同じだと思います。見る視点によって悪だなと思うこともあるかもしれませんが、結局自分だったり周りの人たちを少しでもいい状況にしようと動いている人たち。そこを自分や自分の周りに落とし込んで重ねて観ていただければ響くのではないかと思います。

 

安藤裕康チェアマンによる開会宣言

朝方から雨が降っており、レッドカーペットを特に心配していましたが、天が味方をして午後には雨が上がり、レッドカーペットも大変華やかに行うことができました。今年はレットカーペットにお越しいただいた方が20%くらい増えましたし、楽しんでいだたいたお客様も昨年の倍以上いらっしゃいました。そしてオープニングセレモニーにも昨年を上回る方々に来ていただきました。大変喜んでおります。今年の映画祭も多様な作品を多数集めて皆様方にお見せしようという風に思っておりますし、イベントの数も増えてより楽しんでいただけるのではないかと思っております。どうぞ東京国際映画祭を支えていただいて、盛大な映画祭となりますよう皆様方のご支援を申し上げます。それでは第37回東京国際映画祭開会を宣言いたします。


名称:第37回東京国際映画祭

開催期間:2024 年 10 月 28 日(月)~11 月 6 日(水)

会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区  公式サイト:www.tiff-jp.net

コピーライト:©2024 TIFF


(オフィシャル・レポートより)

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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、コンペティション部門作品の『ペルシアン・バージョン』が10月29日に丸の内TOEIにて上映された。
 イランからアメリカに移住し、イスラム革命のために帰国できなくなったイラン人家族の中でも母娘の人生に焦点を当て、女性の様々な権利が制限される中、移民として自分の運命を切り開く姿を描くヒューマンドラマ。劇中では80年代に大ヒットしたシンディ・ローパーの「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」を歌って踊るシーンをはじめ、ミュージカル風演出もこらしながら、脚本家の娘、レイラの語りで、長年確執のある母との人生を振り返っていく。レズビアンのレイラの予期せぬ妊娠のゆくえや、祖母から聞いた母と父が移住した本当の理由が徐々に解き明かされ、1960年代イランからはじまる壮大な女性たちの物語をパワフルに描く、勇気をもらえる女性映画だ。
 上映後に登壇したマリアム・ケシャヴァルズは、「2時間もわたしの家族と一緒に過ごしてくれ、大丈夫だったですか?初めての来日は素晴らしい体験です」と語り、Q&Aで本作の背景や自身の作品に通底することについて語った。その模様をご紹介したい。
 

 
―――事実とフィクションの割合など、作品背景を教えてください。
ケシャヴァルズ監督:ほとんど本当のことです。実際にはわたしが24歳のときに父親が亡くなったので、わたしの娘に会うことができなかった。ですから映画では会えるようにしています。また、映画では兄弟が8名になっていますが、実際には7名とそこも少し違います。3世代の女性たちそれぞれに物語があり、その中に真実があります。わたしの映画の作り方から、また真実が見えてきたと思います。
 
 
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■テロリストと思われるイラン人、その家族や伝統を見せることで理解を深めたい。

―――イランの家族の物語をアメリカで描くにあたり、映画を作るにあたってどんな難しさがあったのでしょうか?
ケシャヴァルズ監督:アメリカでこの映画を作ることができたこと時代が奇跡だと思います。アメリカでイラン人はテロリストと思われてしまいますが、それは真実から程遠い。家族や伝統を見せることで、そうではないことをわかってもらえればと思って作った一面もあります。また、アメリカとイランという二つの国、二つの言語を交えて作ったので、そのプロセスの大変さもありました。
ただ、以前から家族の物語を描きたかったのですが、母からは恥だからダメだと言われていたのです。父が亡くなった後、祖母も亡くなり、母が一番年上になったとき、ようやく家族のことを描いてもいいと許可をもらえたのです。以前と違い、今はバイカルチャーの映画がわたしが作る前にも上映され、皆さまに受け入れられたので、そういう作り手が本作の道を作ってくれたと思っています。
 

■祖国を忘れないようにと祖父が送ってくれたスーパー8ミリ映像を参考に、母の生まれ育った環境を描写

―――イランらしい場所をもう少し見ることができるかと思ったのですが、今回のロケーションに関して教えてください。
監督:ニューヨークはシュラーズのコミュニティーがありますが、古いシュラーズはもう存在しないのです。古い建物が破壊され建て替えられているので、古い地域を再現するのは難しく、昔の雰囲気がする曲がりくねった道や広場も探すのが難しかったです。祖父が60年代に家族がアメリカに移民したので、忘れないようにとスーパー8ミリをたくさん送ってくれ、小さい頃はそれをよく見ていたのです。わたしはそれと同じような雰囲気、心情を描きたいと思っていました。出来上がった映画を見て、母も小さい時に育った環境に似ていると、とても驚いていました。
13歳で結婚した母が医師として赴任する父とともに僻地の村で住むシーンでは、トルコのクルド人たちが住んでいる村で撮影しました。ただ当時の写真が全くなかったので、聞いた話から想像しながらの撮影だったのです。その村は実際に20家族だけしかおらず、小さい羊を男の子についていくととてもハードな体験だったので、都会から田舎の小さい村に行くシーンをここなら描けると思いました。大都会との違いの雰囲気が伝わるように心がけて撮影しました。
 

Main_The_Persian_Version©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics.©Sony Pictures Classics.jpg

 

■イラン人女性は、とても強く諦めない

―――イランは女性が差別され、自由がない立場で、女性監督としてどういう点が大変だったか教えてください。
監督:ナルゲス・モハンマディさんのようにノーベル平和賞を受賞したのは本当に素晴らしいと尊敬しております。ムーヴメントはすぐにできるものではなく、何年もかかって自分の信じている道を貫くものです。わたしが今まで作ってきた映画の題材には必ず女性が中心にいます。イランで女性がやりたいことをやるのが非常に難しいことは、映画を通してわかっていただけたと思いますが、わたしの母や祖母からも様々な話を聞き、学んだこともたくさんあります。今のイスラム主義で女性が学校に行くのは非常に難しいのです。それでも学びたい意思を持ち、それをあきらめない。本作で登場する3世代の女性も、自分の信じたものを貫きたいという強い気持ちを持っています。そういうことをイランの女性として描いていきたいと思いましたし、みなさんも本で読んだり、話を聞いたりすると思いますが、とても強く諦めないのがイランの女性だと思います。
もう一つ、女性に自由がない中、なんとかしてその状況を変えていきたいという気持ちもあります。映画で13歳の母役を演じてもらった子をイランでビザを取り、サンダンス映画祭に参加してもらったのですが、アメリカに戻りたいかと聞くと、「わたしはイランに残って、なんとかして物事を変えていきたい」と強い意思を見せたので、イラン人女性の象徴なのかなと思いました。
 
 本編終了後、エンドクレジットに入る前に大きな拍手が巻き起こった、ぜひ劇場公開を望みたい一作だ。
(江口由美)
 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
公式サイト:https://2023.tiff-jp.net/ja/
©2023TIFF
©Yiget Eken. Courtesy of Sony Pictures Classics
 
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『年少日記』が10月28日にヒューリックホール東京で上映された。監督は、本作が初長編となるニック・チェクで、脚本、編集も務めている。学校教諭のチェンを演じるのは、インディペンデント映画からメジャー映画まで出演作が相次ぎ、日本映画『ある殺人、落葉のころに』(三澤拓哉監督)でも印象的な役を演じたロー・ジャンイップ。青少年の自殺が相次ぐ現代社会に一石を投じるとともに、幼少期に受けた大きなトラウマから一歩を踏み出すまでを、回想シーンと現代シーンを行き来しながら真摯に問いかけたヒューマンドラマだ。
上映後に行われたQ&Aでは、ニック・チェク監督と主演のロー・ジャンイップが登壇し、製作の経緯や、演じるにあたって大事にしたことを語った。
 
 
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■「相手が自ら心の悩みを語り出すよう、諦めずにいることを心がけている」(ニック・チェク監督)

 今回で13回目の来日というニック・チェク監督。ストーリーはフィクションだが、自身が体験したことから脚本を作り上げたという。
「2009年、香港で映画を勉強していたとき、ある友人が自殺してしまった。その前に彼と会っていたので、自殺をするとは思いも寄らず、以来頭の中に彼のことが残り、また抱きしめてあげたいと思っていました。ようやく監督になり、映画を撮ることができるようになったので、その友人の話をみなさんに紹介したいと思ったのです」
 
 物語は学校のゴミ箱から自殺願望を記した紙切れを見つけたことから、生徒を助けるためにチェンは動き始めるところから始まるが、悩みを抱えている人が打ち明けるのはハードルが高い中、悩みを話す方も話される方も負担にならない方法を聞かれたチェク監督は、「信頼関係を築くのは非常に時間がかかります。自分も青少年の時に嫌なことがあり、心の中に閉じて黙ってしまうことがあった。チェン先生のように、相手に関心を寄せ、一生懸命助けようとするにあたり、相手を理解することがとても大事だと思うのです。あなたのことを理解していると安心させ、なんとか手助けできないか。世の中にはどうしようもないことがあり、やるせない気持ちになることがありますが、それでも諦めずに働きかけ、相手が自ら心の悩みを語り出すように心がけています」とチェンに託した自らの想いを語った。
 

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■「チェンは前々から知っている友達のような存在だった」(ロー・ジャンイップ)

脚本を読んでの感想や役作りの準備について聞かれたロー・ジャンイップは、
「チェンはずっとその人生において様々な傷をつけられ、最終的には一つのコンプレックスみたいなもの、いわゆる傷の総合体になっていると思いました。脚本を読むと、チェンの役柄は、前々から知っている友達のような存在でした。彼の語りは友人が語ってくれているようでしたし、彼のことを非常によく知っているような気にもなりました。撮影中は彼を演じるというより、彼が隣にいるような気持ちで、チェンの角度からどのように相手や出来事を見ているのか、どのように対処していくのか、過去の経験をどのようにまとめるのか。そのようなことを考えながら演じました」と語り、孤独な役作りというより、そばでチェンに見守られている心持ちで演じていたことを明かした。
 
実際に演じるにあたり、チェンのどこに焦点を絞るのが大事なのかを考えたというロー・ジャンイップ。「チェンがずっといろいろな傷を負ってきたけれど、ようやくそれをまとめて最初の第一歩を踏み出そうとしているわけです。その足を踏み出すところに焦点を絞っていきました」
 

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■「チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない人物として演じた」(ロー・ジャンイップ)

「(映画の中盤までは明かされなかったが、幼い頃に自死した兄の)エリの残像がありながら生きてきたチェンの人物像につながたのではないか」と問われたロー・ジャンイップは、
「脚本の段階で、監督と議論をしましたが、監督からは(ミスリーディングを誘導するため)エリのように演じる必要はなく、そのままチェンを演じてくれればいいと言われました。その際、チェンはどのような人物かを理解することが大事でした。彼も兄が自死してしまってから、頭の中が真っ白になり、自分のアイデンティティすらわからなくなってしまいます。中学生で初恋の人が現れ、好きになりますが、自分の傷が深すぎて、なかなか愛に向かっていくことができない。愛したいけれど怖い気持ちが出ていました。チェンは自分に自信をも持てず、自分も周りも愛していない。何かを勝ち取ることがなかなかできない人物として演じたのです」
 
 映画ではチェンが離婚した元妻にも自らの幼少期の話を語っていなかったことが明かされるが、ロー・ジャンイップは、
「彼の中に空白の状態があったわけで、長い間この話を一切語りたくなかった。そういう体験をすると、心の中に深い傷が残るケースが多いのですが、エリと同じように自死したいとも思うし、彼の影を背負っていくことになったのです」と、チェンが一歩を踏み出すまでの空白の状態について自らの解釈を語った。
『年少日記』は、11月1日(水)10:20より、シネスイッチ銀座1にて上映予定だ。
(江口由美)

 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
公式サイト:https://2023.tiff-jp.net/ja/
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第36回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『白日の下』が10月25日にヒューリックホール東京で上映された。
香港で実際に起きた私営福祉養護施設での虐待、性的加害事件をもとに、正義感の強い新聞記者のシウリンが、施設の入居者で身寄りのない老人ヒウケイに孫のふりをして潜入取材を行い、施設での驚くべき実態を明かす様子を、入居者たちとの交流や、新聞社での様々な駆け引きや上司とのぶつかり合いを交えながら描き出す社会派ヒューマンドラマ。知的障害を持つ入居女児に対する自らも視覚障害のある施設長の性加害が、過去に何度訴えられても実刑を免れてきたくだりなど、「疑わしきは罰せず」で社会が黙認してきた実情を浮かび上がらせる。決して他人事とは思えない、重い問題を投げかけながらも、声を上げることをあきらめないジェニファー・ユー演じるシウリンの姿勢に勇気付けられる秀作だ。
上映後に行われたQAでは、監督・共同脚本のローレンス・カン、主演のジェニファー・ユー、作曲のワン・ピン・チューが登壇し、日本語の挨拶を交えながら作品の舞台裏や、本作に込めた想いを語った。
 
 
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■報道当時香港が大騒ぎとなった実在の事件を扱う中で、大事にしたのは人間性(ローレンス・カン監督)

 映画では2015年と記されているが、ニュース報道された当時は香港中が大騒ぎし、非常に記憶にあるものだったというローレンス・カン監督。当時取材した記者たちに実際に会い、彼らの話を聞いた上で脚本を書いたという。また、スーパーヒーローではなく、現実的に存在する人間、しかも絶望的に悲しい時でも前を向いて歩く人間を描く物語を作りたいと思ったそうで、脚本を書く上でもその点に心を砕いたという。題材的には重いものを扱っているが、社会派作品であっても根本的に大事な部分は人間性だとし、「本作でもキャラクターとキャラクターの間に感情を入れて描いていきました」。
 さらにタイトルの「白日」について聞かれたローレンス・カン監督は、「一般的に悪いことは夜起こると考えられていますが、実は夜だけでなく、昼間に起こることが多いのではないか。自分たちの身近な場所で悪が行われているのではないかと考え、白日(昼間)をタイトルに入れました。映画の中で日光も非常に重要なキャラクターになっています」と、映画のタイトルの重要な意味を解説した。
 

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■こんないい脚本にはなかなか出会えない。監督が5年かけて作った脚本を無駄にしたくなかった(ジェニファー・ユー)

 侵入取材をする新聞記者を演じたジェニファー・ユーは、「記者という仕事になじみがなく、よくわからなかったので、当時の記者の方にお話を聞き、心構えなどを学びましたし、自分でも事件を色々調べ、記者と同じようなことを行いました。最後は現地に足を運ぶことまでやったので、本当に現地に侵入しているようでした」と役作りを振り返った。
 また「脚本を読んだとき、俳優としてはなかなかこんなにいい脚本に出会うことはないだろうし、監督が5年かけて作った脚本を無駄にしたくないと思いました。ただ一個人として読んだ時、非常に怒りを覚えました。今でもこういう事件は起こり続けており、映画を観るるたびに怒りがこみ上げてきます。できれば、この映画をきっかけに、そのようなことがなくなるようになってほしいと願います」と、報じられても未だ変わらずに行われている虐待や性加害について自身の気持ちを表現。最後に日本の観客に、施設の入居者で多くの香港人俳優が出演していること、彼ら彼女らの演技の素晴らしさをぜひ知ってほしいと呼びかけた。
 
 
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■人間性のある音を目指し、エンリオ・モリコーネが使っていたイタリアのスタジオで収録した音楽(ワン・ピン・チュー)

時には無音な箇所もあり、ここぞという場面での音のつけ方が非常に印象的だった本作。作曲を担当したワン・ピン・チューは監督とも相談を重ね、音楽によって観ている人の感情を押し流すようなことはしたくなかったと明言。実際に映像を観たときのことを聞かれると、「作曲家という立場で、どのような角度から映画に音楽を入れるアプローチをしようかと考えさせられました。俳優のみなさんのお芝居が良すぎるので、軽い音楽を入れるだけで十分にエネルギーを押し出すことができる。特に施設長が知的障害のある若い入居者女性に性加害を行うところも、あえて残酷な音楽ではなく、本当に静かな音楽で男性を示すコントラバスと女性を示すチェロの2本を使い、違いをつけていきました。あと大事にしたのは人間性で、録音をしにイタリアまで行きました。最近はパソコンを使って音を出すこともできるけれど、わたしはエンニオ・モリコーネさんが使っていたスタジオで、人間性のある音を作り上げました。その音楽が、監督が作った作品の後押しとなればという想いがあったのです」と本作における音楽のあり方について語った。
 映画の最後に、本作で描かれていたことは氷山の一角であり、まだ香港で私営福祉養護施設での様々な問題が未解決であることを訴えた本作。新世代の香港映画作家から社会派作品が相次ぐ中、日本での劇場公開を熱望したい作品だ。
 『白日の下』は10月31日(火)19:00より、シネスイッチ銀座1にて上映予定。
 
第36回東京国際映画祭は、11月1日(水)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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  第35回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月2日に開催され、コンペティション部門他各賞の発表が行われた。東京グランプリ/東京都知事賞は、息子が失踪した母の苦悩を描き高い評価を得た『おもかげ』のロドリゴ・ソロゴイェン監督最新作、『ザ・ビースト』が受賞した。同作からはロドリゴ・ソロゴイェン監督が最優秀監督賞、主演のドゥニ・メノーシェが主演男優賞と、見事3冠獲得の快挙を達成した。 

 

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 審査委員長のジュリー・テイモア監督は、「心理スリラーであり、深く感動的なラブストーリーであると同時に、階級の格差や外国人排斥、都市と農村の間の隔たりについて、重層的に解説する並外れた映画」とグランプリ作品の評価すべき点を挙げ、実際の出来事を元にした脚本のみならず、あらゆるレベルで優れていることに触れた。さらに、「監督は重荷を背負った獣が、男同士の戦いに挑むという非常に刺激的で感情的な作品に仕上げてくれた」と作品の感情を動かす力にも言及した。
 
 
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 『ザ・ビースト』は、スペイン、ガリシア地方の人里離れた山間の村を舞台に、移住して農耕生活を始めたフランス人の中年夫婦が、隣人で地元の有力者の一家との軋轢から対立が深まり、思わぬ事態を迎える重厚な心理スリラー。排他的な地域で理想を貫こうとする主人公夫婦と、貧しい地域で今の暮らしにうんざりしている隣人たち。最優秀男優賞を受賞したドゥニ・メノーシェが演じる主人公だけでなく、その妻を演じたマリーナ・フォイスの底力が、本作を単なるジャンル映画ではなく、より深いヒューマンドラマに導いている。劇場公開を熱望する一作だ。
 
 
 
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  また審査員特別賞には、ヒトラー役の俳優の代役で急遽ヒトラー役として演じる羽目になった日雇い労働者の男がたどる運命に、格差社会や映画制作現場の実情を皮肉をにじませ描く、イランのホウマン・セイエディ監督作『第三次世界大戦』が選ばれた。ホウマン・セイエディ監督から寄せられたメッセージでは、現在日本に来ることができない状況にあることや本作への思いが語られた。
 
 
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 また観客賞には、稲垣吾郎主演の今泉監督最新作『窓辺にて』が選ばれた。今泉監督は何回も参加経験のある東京国際映画祭で初めての観客賞受賞に、壇上で喜びを語った。その他の受賞結果は以下のとおり。
 
 
■最優秀女優賞  アリン・クーペンヘイム『1976』
 
■最優秀芸術貢献賞 『孔雀の嘆き』監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
 
■アジアの未来 作品賞  『蝶の命は一日限り』監督:モハッマドレザ・ワタンデュースト
 
■Amazon Prime Videoテイクワン賞  該当なし
 

 

 
<第35回東京国際映画祭 開催概要> 
■開催期間: 2022年10月24日(月)~11月2日(水) 
■会場:日比谷・有楽町・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net
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現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第35回東京国際映画祭(以降TIFF)で、ワールド・フォーカス部門作品の『エドワード・ヤンの恋愛時代 [レストア版]』が上映された。TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン12で上映後に行われたトークショーでは濱口竜介監督が登壇。市山尚三プログラミング・ディレクター(以降PD)が聞き手を務め、長らく日本で上映されることのなかった同作品の魅力を語った。
 

■念願の上映実現

1994年当時もTIFFでプログラムを担当していた市山PDは、東京国際映画祭京都大会で、アジア秀作映画週間のオープニング作品として本作を上映。同じくオリヴィエ・アサイヤス監督の『冷たい水』が上映された際に、来場していた主演のヴィルジニー・ルドワイヤンとエドワード・ヤンが出会ったことから、ヤン監督の次回作『カップルズ』への出演につながったと思い出を紹介。
 
さらに権利関係が複雑で、かなり長い間台湾でも上映されていなかったところ、今年のヴェネチア国際映画祭でこのリストア版が上映されたことから、権利関係がクリアになったと判断。ヤン監督の妻にぜひとも上映したいと連絡し、今回の上映が実現したことを明かした。
 

■『牯嶺街少年殺人事件』後の大きな飛躍となる作品

濱口監督が『エドワード・ヤンの恋愛時代』を初めて鑑賞したのは、2000年代の初め、遺作となった『ヤンヤン 夏の想い出』以降で、それまで観ていたヤン監督作品とは違う異質さを感じたという。市山PDからはヤン監督がウディ・アレンのような映画を撮るという話を台北で聞いたエピソードを披露。一方、濱口監督は「全ての長編を見直すと、ヤン監督は1作1作大胆に自分自身を更新する作家。クロノロジカルな視点から見て感じた」とフィルモグラフィーから作家性を分析。さらに、「『牯嶺街少年殺人事件』は大傑作で、映画史上に残るマイフェイバリットの1本で、その後に作るのは本当に大変だったと思うが、そのことがあって、この作品が生まれているのだろうなと思った」と昨年『ドライブ・マイ・カー』で世界的な評価を得た濱口監督らしい切実なコメントも語られた。
 
 
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■『エドワード・ヤンの恋愛時代』でモダンな台北を描く裏にある狙い

市山PDが、「こんなにおしゃれな映画を撮る人だったのかと驚いた」と『牯嶺街少年殺人事件』以前や『台北ストーリー』のセンスとも違うことを指摘すると、濱口監督は本作がヤン監督にとって本当に大きな飛躍であったことを説明。「ヤン監督も台北にこだわり続けて映画を作ってきたが、本作では全く違う台北を描こうとしている。彼自身も、台北自身もこの10年で変わったので、軽佻浮薄な感じの恋愛コメディのように見える映画を作ったのではないかと思う」と、台北の描き方の時系列での変化を分析した。
 
今回のTIFFではツァイ・ミンリャン監督の台北を舞台にしたデビュー作『青春神話』も上映されるが、市山PDは「『青春神話』は『恋愛時代』の2年前に撮られた作品だが、同じ街とは思えないほど古い繁華街がでてくる。それが取り壊され、新しい建物ができている台北の歴史上の転換点で、今は完全に近代的な都会になっている」と同時代の2作品を比較。
 
濱口監督は、都市の中に新旧の要素が混在している中で、ヤン監督はモダンな台湾を描くことを選んだと指摘。今回の上映での観客の反応を例に取りながら「ウディ・アレンみたいな映画を作りたいという気持ちはあるが、コメディのように見え、笑っていない人もたくさんいた。それはこの街のモダンな側面な中にある、ある種の病、都市特有の人間性が阻害されている部分に焦点を当てたかったのではないか」とその狙いに触れた。
 
 
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■『牯嶺街少年殺人事件』と真逆の構造

さらに『牯嶺街少年殺人事件』と比較してまず驚いたのが、登場人物の顔がちゃんと見えることだと語った濱口監督。「『牯嶺街少年殺人事件』は顔が遠くに見えたり、わかりにくかったが、映画の最初からキャラクター全員の顔が把握できるし、そういうカメラポジションを選んでいると思った」とその特徴に触れた上で、見ていたい顔かといえば、必ずしもそうではないと話は思わぬ展開に。「みんな何かに駆り立てられていて、コミュニケーションをしているようで、お互いに相手をどなりつけているだけ。顔がはっきりと入ってくるけれど、
エドワード・ヤンの登場人物が持っていた神秘や謎が、最初は持たずに登場してくる」と様々な意図のもと行われている演出であることを指摘した。
 
さらに、顔がわかりやすくはなったが、情報が入りやすくなったという状況ではなく、彼らの深層にあるような乾きが叫びとして出てくる状況になっていると説明。「結果として彼らはどうなっていくのか。最初は顔が見えるが、後半にいくにつれて顔が見えなくなり、都市の光が届かない場所でコミュニケーションしはじめる。親密な、彼ら自身が本当に思っていたことを喋り出すわけで、黒い画面とともに今までと違う声が生まれてきた。人間性が最終的には回復されていくのが、『牯嶺街少年殺人事件』との最も大きな構造の違い」と真逆の構造を解説。悲劇的な大傑作を撮ったあとで、絶望的な状況から、楽観的なものを取ろうとするトライがここからはじまっていると力を込めた。
 
 
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■配給を熱望。原題『独立時代』の意味を忘れないで

今回、改めて『エドワード・ヤンの恋愛時代』を見て思ったことを聞かれ、「どこか配給してほしい」と即答した濱口監督。「エドワード・ヤンは、人生の絶望的な状況も描かれているが、そこからどうやって人生で生きるに値するものを見つけるかを、フィルムグラフィーを通じて追求した作家。全作品が上映されることを望みたい」と熱望した。
 
ヤン監督は映画を作るにあたって、予算オーバーしてしまうので、その都度出資者を募り、その結果、現在権利関係がややこしくなっている事情を市山PDが明かすと、濱口監督は「色々な出資者がいるとはいえ、ヤンは基本的にはインディペンデントな志を持って作っていた人。『恋愛時代』という邦題は配給するにはいいタイトルだと思うし、多くの人が三角関係、四角関係になる話ではあるが、恋愛を楽しく賛美している映画に見えて、実際そうではないように見える」とし、原題『独立時代』について「チチとミンがよりを戻すが、自分を信じることを決め、ミンといつでも別れることができるという境地に達したから、戻ることができると感じているのではないか。どのキャラクターも自分が属しているところから離れ、自分の時間を回復していく物語なので『独立時代』というタイトルも忘れないでほしい」とタイトルに込めたヤン監督の狙いを思い測った。
(江口由美)
 
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  第34回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月8日に開催され、2年ぶりのコンペティション部門他各賞の発表が行われた。東京グランプリ/東京都知事賞は、コソボ出身、カルトリナ・クラスニチ監督の初長編作『ヴェラは海の夢を見る』(コソボ/北マケドニア/アルバニア)が見事輝いた。
審査委員長のイザベル・ユペールは、
「この映画は、夫を亡くした女性を繊細に描くとともに、男性が作った根深い家父長制の構造に迫る映画でもあり、監督は国の歴史の重みを抱えるヴェラの物語を巧みに舵取りしています。歴史の重みは静かに、しかし狡猾にも社会を変えようとする者に暴力の脅威を与えるのです。確かな演出と力強い演技、撮影が、自信に満ちた深い形で個々の集合的な衝突を映画の中で生み出しています。コソボの勇気ある新世代の女性監督たちの一作が、新たにコソボの映画界に加わったと言えます」と講評。
 
 
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 また、池松壮亮、伊藤沙莉主演の松居大悟監督『ちょっと思い出しただけ』が、スペシャルメンションと観客賞のW受賞を果たした。松居監督はセレモニー後の記者会見で、「言語化できない感情や想いを伝えたくて映画をつくっているので、今回、なかったはずの“スペシャルメンション”という特別な賞を作っていただけで、とても嬉しかったです」。さらに観客賞については「お客さんに観てもらって映画は完成すると思っているので、観てもらって選んでもらったので、この賞を貰って一番うれしいです」と喜びを語った。
 
全受賞結果と、審査委員長スピーチは次の通り。
<コンペティション部門>
●東京グランプリ/東京都知事賞『ヴェラは海の夢を見る』(カルトリナ・クラスニチ監督)(コソボ/北マケドニア/アルバニア)
●審査委員特別賞『市民』(テオドラ・アナ・ミハイ監督)(ベルギー/ルーマニア/メキシコ)
●最優秀監督賞ダルジャン・オミルバエフ監督『ある詩人』(カザフスタン)
●最優秀女優賞フリア・チャベス『もうひとりのトム』(メキシコ/アメリカ)
●最優秀男優賞アミル・アガエイ、ファティヒ・アル、バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥ『四つの壁』(トルコ)
●最優秀芸術貢献賞『クレーン・ランタン』(ヒラル・バイダロフ監督)(アゼルバイジャン)
●観客賞『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)(日本)
●スペシャルメンション『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)(日本)
 
<アジアの未来部門>
●作品賞『世界、北半球』(ホセイン・テヘラニ監督)(イラン)
●Amazon Prime Videoテイクワン賞『日曜日、凪』(金允洙⦅キム・ユンス⦆監督)
●Amazon Prime Videoテイクワン賞審査委員特別賞『橋の下で』(瑚海みどり監督)
 
審査委員長イザベル・ユペールさんスピーチ
「私たちが拝見した15作品で感じたのは、映画の多様性の豊かさです。コンペディション作品の一部には言語の多様性、言語の違いがテーマになっている作品もありました。世界には多くの言語が消滅の危機にあると嘆くシーンが描かれていた反面、『ちょっと思い出しただけ』では世界の人が皆おなじ言葉を話したらいいのではないかとも話しています。詩もコンペティション部門では多くテーマとなっていました。
その他、非言語的な映画芸術も含め、あるいは音楽、演劇、舞踊、映画そのものという表現も取り上げています。私たち審査委員はコンペティション部門の審査で、現代文化における映画の位置づけについて考えることを求められました。もうすでに地位を確立しているアーティストと新しいアーティストの声、世界の多様なコミュニティを扱っている作品に対面することになりました。社会の現状を観る事ができました。こうした作品の社会のイメージの現代的なものに感動しました。以前は文化を民族的なフォークロアなものとして観る事が多かったのですが、今年の東京ではそうしたことはありませんでした。
また、コンペティション部門では多くの女性が描かれていました。ここで3作品だけ挙げると、『ヴェラは海の夢を見る』と『市民』、『もうひとりのトム』。これらの作品の登場人物は途方もない苦境、犯罪、暴力、虐待に直面しています。どの映画でもこうした社会の問題と人々を抑圧し続ける過去のレガシーを描いています。それでありながら、3作の主人公ともに、被害者としては描かれず、一人ひとりが敵を見極め対峙していくことができるようになっていく。最後に戦いの勝ち負けに左右されず、これらの作品は未来へ向かっていきます。こうした15作品と、世界を様々に探求していくのは楽しいことで、こうして審査委員として携われたことを大変光栄に思います」
 

 
<第34回東京国際映画祭 開催概要> 
■開催期間: 2021年10月30 日(土)~11月8日(月) 
■会場:日比谷・有楽町・銀座地区
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 現在日比谷・有楽町・銀座地区で開催中の第34回東京国際映画祭で、コンペティション部門作品の『三度目の、正直』が世界初上映された。角川シネマ有楽町で上映後に行われたQ&Aでは野原位監督、共同脚本、出演の川村りら、出演の小林勝行が登壇した。
 
 『ハッピーアワー』『スパイの妻』と、濱口監督との共同脚本を手がけてきた野原監督は、劇場デビュー作の世界初上映を前に「とても緊張していた」と、ホッとした表情を見せれば、『ハッピーアワー』主演俳優の一人で、今回は共同脚本も担当した川村りらは、
「神戸の小さな街で、仲間と一緒に作った映画を上映していただけて本当に光栄です」と喜びを表現し、川村演じる春の弟でラッパーの毅役、小林勝行は、
「本当にありがとうございます。充実しています」と感無量の様子。
 

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 まず脚本の準備について聞かれると野原監督は、撮影の直前でも脚本が未完成だったことを明かし、
「撮りながら、脚本を直しながらだったし、(共同脚本の)川村さんは演じながらの執筆だったので、とても大変だったと思いますが、最後まで粘れたと思います」と川村の奮闘をねぎらった。
寝る暇がなかったという川村は、
「演じている時間以外を打ち合わせとシナリオの改稿に費やし、物理的に大変でした。演じることにどれぐらい影響しているのかはまだわからないですが、もう少し時間が経てばそれがどんな作業だったのかがわかると思います」と撮影時のことを振り返った。
もともとは別企画で脚本をメインに担当する予定だったが、結果的に予想外の分量を演じることになったという川村。東京から駆けつけたキャストやスタッフと合宿状態での撮影だったため、撮影準備や撮影中もお互い空いている時間に脚本を渡して直しを入れてもらい、改稿作業をしていたという。
 
 
 

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 本作で感じる「演技らしい演技ではない」ところから演出について話が及ぶと、野原監督は、
「この映画は『ハッピーアワー』に出演していたキャストが多いので、僕の感覚としては彼らにある基礎体力に寄せていく形になりました。現場で動きはつけますが、こう言ってくださいとはいわなかった。キャストたちが『ハッピーアワー』出演を経験した中で、お互いに言葉で言わなくても分かり合える部分が多かったのだと思います」と、『ハッピーアワー』を通じてできあがった信頼と経験値について言及。
 
 
 

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 一方、『ハッピーアワー』出演組の中で、異彩を放つ小林勝行は、自身のセカンドアルバムのメイキングから端を発した記録映画『寛解の連続』(光永惇監督)に続いての映画出演。野原監督が同作に出演したことが縁で、今回のオファーにつながったという。
現場でも空気を変える存在だったという小林。川村は先に小林がクランクアップしたことで「カッツンロスになった」と告白。一方、野原監督は、
「毅が歌ったラップの歌詞を、妻の美香子が書き起こしをするシーンで、(クランクイン前の)本読みの時は今とは全然違う感じで、メロディーのあるようなものをやられていたのですが、本番では一語、一語のものが出てきた。本番ではリズムがあったので、その場で感じたことを元に演じてくださったし、それが正解なのだと、その時小林さんに教わった気がします」と小林の演技に逆に気付かされたエピソードを語った。
純度100%の神戸映画は、街の様子も俳優たちの佇まいも、そして彼らが抱える悩みも『ハッピーアワー』からの時の流れをじわりと感じさせる。諦めたくない「我が子」への想いやそこから派生する家族関係の歪み。その不確かさをぶち壊すように存在する生命力のある歌声。日常の中に潜む狂気が見え隠れするような、一筋縄ではいかないヒューマンドラマ。ぜひ公開を楽しみにしてほしい。
 
『三度目の、正直』は、2022年1月下旬、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
(江口由美)
 

 
第34回東京国際映画祭は、11月8日(日)まで日比谷・有楽町・銀座地区ほかで開催中
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