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『グレートデイズ!-夢に挑んだ父と子-』ティーチイン《フランス映画祭2014》

greatdays-b-550.jpg『グレートデイズ!-夢に挑んだ父と子-』ティーチイン レポート 《フランス映画祭2014》

 

■日時:2014年6月27日(金)20:00
■場所:有楽町朝日ホール
■登壇者:ニルス・タヴェルニエ監督 ファビアン・エロー(ジュリアン役) 
フィリップ・ボエファール(プロデューサー)

『グレートデイズ!-夢に挑んだ父と子-』 
(2014年 フランス 1時間30分)
監督:ニルス・タヴェルニエ(『エトワール』『オーロラ』)
出演:ジャック・ガンブラン(『クリクリのいた夏』『刑事ベラミー』『最初の人間』)、アレクサンドラ・ラミー(『Rickyリッキー』『プレイヤー』)、ファビアン・エロー
提供:ギャガ/カルチュア・パブリッシャーズ  配給:ギャガ
2014年8月29日(金)~全国ロードショー

★作品紹介⇒ 映画レビュー
★公式サイト⇒ http://greatdays.gaga.ne.jp/

(c)2014 NORD-OUEST FILMS PATHE RHONE-ALPES CINEMA


  

~澄んだ瞳が導く、家族の再生と夢の実現~

 

greatdays-550.jpg 《フランス映画祭2014》のオープニングを飾った『グレートデイズ!-夢に挑んだ父と子-』は、障害を抱えながらも夢に挑むことで崩壊寸前の家族を再生させ、またいろんな障害を持つ仲間たちに勇気を与えた感動作である。ストーリーだけを追う人にとっては、親子でハンディを乗り越えてアイアンマンレースに挑むというシンプルな構成を、ありふれた物語と捉えてしまうかもしれない。だが、この映画の素晴らしさは、一人一人の感情を瑞々しい映像で丁寧に綴って、見る者の心に新鮮な感情を浸透させていることだ。

 この映画は、ニースで開催されるアイアンマンレースのスタートから始まる。緊張みなぎる海岸に多くの出場者が黒い塊として登場し、それが一斉に海に飛び出していく。迫力ある空撮シーンから一転して、1年前のスイスと隣接する風光明媚なローヌアルプ地方のアヌシーに舞台が移る。仕事で留守がちの父親が車椅子生活を送る息子ジュリアンと正面から向き合えないでいるのに対し、いつまでも子供扱いをする母親は夫に苛立ち、夫婦関係にも溝が入る。そこで、家庭崩壊寸前を鋭く察知したジュリアンがある突飛なことを思いつく。

 親子でアイアンマンレースに出場するなんて!当然大反対する両親。それを、「ジュリアンに励まされて生きてきた」と言ってくれた姉や、ジュリアンの仲間たちがあの手この手で説得する様子が微笑ましい。特に、「夢を学ぶために学校にきている。泳ぐこと、走ること、飛ぶこと、そんな夢をジュリアンが叶えてくれる」と、いろんな障害を抱えたジュリアンのクラスメートが父親を説得するシーンがいい。

greatdays-4.jpg 体の不自由なジュリアンを引いて3.8km泳いで、180kmを自転車で走って、さらに42.195kmをランニングするなんて、過酷過ぎる。それでもトレーニングを重ねる親子は、次第に信頼し合えるようになる。今までジュリアンを保護してきたつもりが、いつの間にかジュリアンに助けられていることに気付いていく両親。家族にとって守護天使のようなジュリアンの澄んだ瞳に、心が洗われるような清々しい映画だ。
 


 本編上映終了後、舞台上にニルス・タヴェルニエ監督、主人公ジュリアンを演じたファビアン・エロー、そして、プロデューサーのフィリップ・ボエファールが登場。満席の客席から大きな拍手で歓迎を受け、和やかな雰囲気の中、Q&Aが始まった。

 
――― 本作の企画経緯について?
タヴェルニエ監督:トライアスロンは美術的に美しく、まず、息子と父がスポーツを通して何かすることを思いつきました。脚本執筆後、キャスティングには必ず実際にハンディキャップを持つ青年を起用したいとプロデューサーに伝えていました。

プロデューサー:私は監督に信頼を置いていました。彼は数年前に障害をもった人たちに関するドキュメンタリーを撮っており、今回フィクションを撮るにしても、そういう方たちに対する誠実さがあると感じたのです。彼の提案から本物の誠実さやパワー、真実から感動が生まれると思いました。ファビアンには障害があるけれど、そこから真実が生まれたのです。

greatdays-b-2.jpg――― 転ぶシーンはスタントなしだったのですか?レースのための特訓や、レース中のシーンに関して?
ファビアン:転ぶシーンはスタントを使って撮ってもらいました。もし本当に僕が演じていたら、ここには居なかったでしょう(笑)。大変でしたが、喜びでもありました。スタッフも助けてくれましたし、僕自身が努力した結果がスクリーン上に表れていると思いませんか?――(会場から拍手)

――― ファビアンをキャスティングした理由は?
タヴェルニエ監督:彼は並外れた青年です。ベルギー国際映画祭で、ベテラン俳優を差し置いて主演男優賞を受賞したのです。5か月かけてようやくファビアンに出会い、役者としての演技に到達するまで4か月の演技指導を受けてもらいました。もしこの会場に映画監督がいたら、ぜひファビアンを起用してください(笑)。彼は時間に正確だし、セリフもしっかり覚えて来る、とても優秀な俳優です。

greatdays-b-3.jpg――― それぞれの印象に残っているシーンについて?
タヴェルニエ監督:申し訳ないですが、ひとつの場面だけには絞れないですね(笑)何よりも幸せだと思うのは、今ファビアンと一緒にこの舞台に上がっていることです。そして、もうひとつ誇りに思うのは、プロデューサーのフィリップが私を信じて支えてくれたことです。この映画のために資金を集めて、「製作できるよ」と言ってくれた時は、とても感動しました。

ファビアン:ジュリアンが両親に反発して家出するシーンですね。あの場面を演じるのは難しかったです。迎えにきた父親に対して「自立するんだ!」という強い想いを吐き出さなければならなかったのです。それまでの人生ではあまりない経験だったので難しいシーンでしたが、忘れられない場面になりました。

プロデューサー:一番初めに撮影したアイアンマンレースのスタートシーンです。実際のレースを利用して撮影を行なったのですが、朝の6時、2700人の参加者が待機している緊張する中で、ファビアンも埋もれて座っていました。映画初体験のファビアンをスタッフ一同が見守る中、(父親役の)ジャック・ガンブランとファビアンが交わした視線が素晴らしい力強さで、「なんて感動的なんだ!」と言うくらい本当の親子のような関係が生まれたと感じました。

(河田 真喜子)