2012年に開催され、大好評を博した『ポーランド映画祭2012』が、ポーランドの名匠イエジー・スコリモフスキ監督による監修で『ポーランド映画祭2014』として再び特集上映が行われる。シネ・ヌーヴォでは1月11日(土)より、京都みなみ会館では2月8日(土)より開催される同映画祭では、「アンジェイ・ワイダの軌跡」と題して、戦後ポーランド映画を牽引し、今春最新作『ワレサ』が劇場公開予定の巨匠アンジェイ・ワイダ監督の社会派作品群を網羅。『大理石の男』(ジャーナリスト今井一さんによるトークあり)、『鉄の男』を上映する他、傑作『地下水道』、『灰とダイヤモンド』をアンコール上映する。イエジー・スコリモフスキ監督作品も多数ラインナップ、アンジェイ・ムンク、タデウシュ・コンヴィッキら世界の映画人に影響を与えたポーランド映画を一挙に鑑賞できるまたとない機会だ。
『ポーランド映画祭2014』開催に先駆け、イエジー・スコリモフスキ監督、アグニシェスカ・オドロヴィッチ氏(ポーランド・フィルム・インスティテュート<ポーランド映画協会>)が来阪、記者会見ではポーランド映画祭や日本映画界との関係、ポーランドの映画制作支援の環境、そしてアンジェイ・ワイダ監督について語ってくれた。その模様をご紹介したい。
―――ポーランド映画祭が日本で開催されることについて
イエジー・スコリモフスキ監督(以下スコリモフスキ):ポーランド映画界と日本映画界の関係がどんどん密接になってきているように思います。実際に、ポーランド映画祭開催と並行して、ポーランドでも日本映画祭を開催しております。開催にあたっては、マーメイドフィルムの村田信男さんが協力してくださり、13年6月ワルシャワにて開催しました。
―――スコリモフスキ監督は、日本映画をどう捉えているか?
スコリモフスキ:ポーランドで日本映画は高い評価を得ています。特に映画ファンには人気があり、クロサワの名前を知らない人はいないでしょう。オオシマやもっと若い世代の監督も人気があります。
―――日本は特定秘密保護法案が成立したが、ポーランドのように言論の自由がない中で作品を作ってきたスコリモフスキ監督にとって、言論の自由をどう獲得しようと努めているのか?
スコリモフスキ:政府の管理に対する反抗は、政府の力が強くなればなるほど、創造的な反抗になるということです。
―――ポーランド60年代の作品は、フランスのヌーヴェルヴァーグの状況と重なるが、スコリモフスキ監督はヌーヴェルヴァーグをどう感じていたのか?
スコリモフスキ:映画の作り方が大きく変わったと言えます。それまでは、お金、人員、機材が大規模でしたが、フランスのヌーヴェルヴァーグでは映画の作り方がそれまでのものから自由になり、手持ちカメラで外に出て行き、既にあるロケーションを活かしました。音声も完璧に収録するのではなく、台詞が聴きづらくてもいいといった感じでしたし、役者もアマチュアを採用する等、映画を作る上での民主主義になっていったのです。
―――次回作について
スコリモフスキ:2014年春、新しい作品を撮る準備をしています。脚本も自分で書きましたし、ロケ場所やキャストも大体決まっています。キャメラマンは今回初めて若い人を起用する予定です。
アグニシェスカ・オドロヴィッチ氏(以下オドロヴィッチ):11分の中で色々な人の人生の中での出来事が展開し、それらが絡み合う中で人生が変わっていくというストーリーです。スコリモフスキ監督の作品ですから単純なところは一切ありません。
―――今のポーランドは映画を作りやすい状況になっているのか?
スコリモフスキ:ポーランド映画協会が設立されてから、映画が作りやすい環境になってきました。次回作も同協会から製作費の半分の支援を受けています。
オドロヴィッチ:共産主義から資本主義に転換する際、映画を含む文化支援は完全に無視されていました。その時期は教科書に出てくるような小説の映画化や、絶対に儲かる題材の映画化しかされていなかったのです。私が文部省副大臣をしていたときに映画を支援する法律整備に力を入れ、05年にポーランド映画協会を発足させ、ポーランド映画界は新しい時代を迎えました。ポーランドで作られるほとんどの映画が製作費の半分までの支援を受けることができるようになりました。今ポーランドでは大体年間50本程度の映画が製作されていますが、そのほとんどが映画協会の支援を受けています。今、ポーランドで製作された映画はかなり人気があり、ポーランド全体の映画館興行収入の32%が国産映画です。ただ、明らかに利益目的の作品や芸術性の低い作品は支援ができません。
―――アンジェイ・ワイダ監督について
スコリモフスキ:一言で言わせていただければ、長きに渡り素晴らしい映画を作り続けていらっしゃることが何よりもうれしいです。ワレサ元大統領の半生を描いた最新作『ワレサ』も、ベネチア国際映画祭でのワールドプレミアを経て、今春日本で上映されると聞いています。お元気で、これからも良い作品を作り続けて下さることを期待しています。私たちにとってワイダ監督は師匠のような存在で、現在も自らの映画学校を経営し、若い監督たちを指導し続けています。そのようにして、若い監督たちがワイダ監督の魂をたどり、展開していってくれると思います。
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