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2013年6月アーカイブ

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2012年東京・オーディトリウム渋谷で開催された濱口竜介初の大規模特集上映「濱口竜介レトロスペクティヴ」が、さらにスケールアップし、今後の活動を見据えた「濱口竜介プロスペクティヴ」として関西に登場した。第七芸術劇場(6/29~12)、神戸映画資料館(6/29~6/8)、京都シネマ(7/13~19)、元・立誠小学校特設シアター(7/8~19)、京都みなみ会館(7/13オールナイト)の京阪神5館という前代未聞の規模で一挙上映されている。

2003.年の『何くわぬ顔』(short version/long version)から、染谷将太、渋川清彦主演の最新作で、『親密さ』以来の劇映画となった『不気味なものの肌に触れる』まで特別上映を交えての全16本を一挙公開。男と女の感情の揺らぎと、一瞬の感情の爆発を見事に捉えた劇映画から、被写体に真正面から向き合い、真摯に対話する中でドキュメンタリーを超えた何かを紡ぎだす濱口流ドキュメンタリー、そして劇中映画だけでも映画を成立させてしまう劇映画の中のリアルの具現化まで、未だ体験したことのないような衝撃を味わえる濱口竜介という映像作家にぜひ出会ってほしい。

濱口竜介プロスペクティヴ in Kansai 公式サイト http://prospective.fictive.jp/

【濱口竜介プロフィール】

hamaguchi_naminooto.jpg1978年、神奈川県生。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も日韓共同製作『THE DEPTHS』(2010)、東日本大震災の被災者へのインタビューから成る映画『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(2011~2013/共同監督:酒井耕)、4時間を越える長編『親密さ』(2012)を監督。精力的に新作を発表し続けている。

 

 


【各劇場からのメッセージ】

hamaguchi_shinmitsusa-shotver.tif第七藝術劇場/松村厚
  映画『親密さ(short version)』で、ジャック・リベットの映画『彼女たちの舞台』やジョン・カサヴェテスの映画『オープニング・ナイト』を想起させ、映画『はじまり』という13分の短編で、相米慎二監督の長廻し撮影を想起させてくれた濱口竜介監督は、私にとって映画を観るという行為の中で<驚き>という体験をさせてくれる映画監督である。
映画誕生のリュミエールの『列車の到着』がグランカフェの観客を驚かせたように映画は原初からアメージングな体験であったのだ。濱口竜介の作品が、様々な優れた映画作家たちの影響を受けているのが明らかであろうともそれらの作品は紛れもなく濱口竜介でしか撮りえない作品であると確信している。濱口竜介が劇映画からドキュメンタリー映画までの違ったジャンルをその撮影の拠点を東京、東北と軽々とした身のこなしで移して来たように易々と<驚き>と共に乗り越えてしまう。そんな彼が今度は神戸にその拠点を移して映画的策謀を張り巡らそうとしているのだ。そのことを私たちは歓迎し、祝福するために『濱口竜介プロスぺクティブin KANSAI』を大阪、神戸、京都の5館で開催することは映画的な正しい所作だと思う。
このあまりにも映画的な快挙に私たちは喝采し、映画的な発見に身を委ねてみようではないか。

 

hamaguchi_PASSION1.tif神戸映画資料館 田中範子
  神戸映画資料館では2009年に『PASSION』を上映しましたが、その時から、この濱口竜介という監督は、すぐに次のステージに上がり日本映画界の中核として活躍されることを確信しました。的確な映画術によって生み出されるエモーション。255分もの『親密さ』を撮ったり、東北でドキュメンタリーを連作したりと、ミニシアター向け──大多数の支持は得られないが、一部の人には愛される──の映画作家と思われても無理はありませんが、そこに止まらない力の持ち主です。
神戸映画資料館は、新旧、商業非商業の区別なく上映活動を行い、“小さな”映画を大事にしています。“大きい”“小さい”に優劣は無いという立場ですが、それでも、濱口監督の作品はもっと注目され広く見られるべきだと考えています。このような映画作家はほかに思い当たりません。将来像を含めてイメージするのは大島渚監督。彼もまた、独立プロダクションを立ち上げたり、国際的な資本で撮ったりと、模索し続けた監督でした濱口監督も黙々と作品を作り続け、それを可能にする道を神戸で切り開こうとしています。
濱口竜介監督の「これから」の「はじまり」としての大特集上映にご注目いただきたいと思います。

 

hamaguchi_utauhito.tif元・立誠小学校特設シアター 田中誠一
「フィクション映画」で奇跡的な偶然=必然の瞬間を立ち上がらせ、「ドキュメンタリー映画」で劇的なエモーションを浮上させる。映画が持つ(とされている)枠組を融解させ、映画それ自体の新しい可能性を見せてくれる。しかしそれは、まったく新しいようでいて、実は映画それ自体が本来持つおもしろさなのだと、観た後に気づく。濱口竜介が現在の日本で最も優れた映画作家の一人であり、今後遠くない未来に世界の巨匠たりうる映画作家であることを私が確信しているのは、そうした理由からだ。
濱口竜介が今、必要としているのはただひとつ。彼の作品が少しでも多くの観客に観られること。観られさえすれば、この新しさと面白さに、誰もが気づくはずだ。
映画作家として充実の時期に差し掛かっているこの時期に、彼が関西に住み、活動を開始するということを、我々はこのうえない喜びと期待で受け止め、関西の観客に、濱口作品の新しさと面白さを伝えたいと強く思う。
濱口監督は現実に出会うと、ひょうひょうとした風貌に福々しい笑顔をみせる。むこう数年、我々は関西で、その笑顔の奥にある映画の未来に日常的に出会うことができるのだ。 今回の「濱口竜介プロスペクティブ」関西5館同時開催は、その喜びと期待の実現である。 みなさんもぜひ、そこに立ち会い、共有してください。切にそう願っています。

 

京都みなみ会館 吉田由利香
濱口竜介監督の作品を観終わった後、観客は何を思うだろうか。否、「誰」を思うだろうか。彼の作品には、ふっと大切な人の顔を思い起こさせる爽やかな力がある。映画の登場人物の中に、自分を発見し、自分にとっての重要な他者を発見する。語られている事は、ある意味ありふれた出来事で、役者の話す台詞の中に自分を、行動の中に他者を発見できたりする。我々は、はたっと自身を振り返る。
『親密さ』は、ここ最近観た作品の中でも、群を抜いて私の心の中に突き刺さった作品である。4時間を越えるこの大作を、当館で上映出来る事がとても嬉しい。観客が、どのような顔で劇場を後にしてくれるか、今からとても楽しみである。
京阪神、どこでもいい。是非、濱口竜介の世界に劇場で出会ってほしい。この貴重な機会の目撃者となって欲しい。そして、劇場からの帰り道、大切な人の事をそっと思い出して、すこし、やさしい気持ちになってくれたらいい。

小津チラシomote1.jpg 今年で生誕110年、没後50年を迎え、日本の監督だけでなく、ヴィム・ヴェンダース、ジム・ジャームッシュ、ホウ・シャオシュンなど世界の名匠にも大きな影響を与え続けている小津安二郎監督。その現存する37作品を一挙上映する特別上映が、6月22日(土)からシネ・ヌーヴォで開催されている。

  無声映画時代の『生れてはみたけれど』(32)、『出夾ごころ』(33)、『浮草物語』(34)から、戦時下に撮った『父ありき』(42)、紀子三部作と呼ばれる『晩春』(49)、『麦秋』(51)、『東京物語』(53)、宝塚映画に出向して撮った『小早川家の秋』(61)、そして男手ひとつで育てた娘を嫁に出す父親の心情や家族模様を綴った遺作『秋刀魚の味』(62)まで、小津安二郎が生み出した作品群は時にはユーモアを交えながら、時代を超えた家族というテーマを丹念に撮り続けた。今年の夏は、ぜひ小津安二郎の世界を堪能してほしい。


巨匠・小津安二郎の世界@シネ・ヌーヴォ【6/22~】詳細はコチラ