映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

《TBSドキュメンタリー映画祭 2023》『KUNI 語り継がれるマスク伝説〜謎の⽇本⼈ギタリストの半⽣〜』舞台挨拶@シネ・リーブル梅田

 

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TBSが魂を揺さぶる良質のドキュメンタリー映画の発信地となるべく⽴ち上げた、新ブランド「TBS DOCS」 のもと、今年も 『TBSドキュメンタリー映画祭 2023』 を開催しております。


⼤阪での開催初⽇となる 3 ⽉ 24 ⽇、ミステリアスな仮⾯をかぶり、L.A.メタルブームに沸くミュージックシーンのど真ん中でギタリストとしての地位を築き上げた謎の⽇本⼈ギタリスト KUNI の軌跡に迫るドキュメンタリー映画『KUNI 語り継がれるマスク伝説〜謎の⽇本⼈ギタリストの半⽣〜』が上映され、佐藤功⼀監督と⾳楽評論家の伊藤政則が上映後に舞台挨拶を⾏いました。


まず最初に本来だったらここに来るはずだった KUNI さんから「⼤阪は⼈懐っこいのかなれなれしいのか、すぐに声をかけてくるんで(笑)、ちょっと⼾惑う時もあるんですが、愛すべき街です。」と⼤阪へのお客様へのビデオメッセージが流れると、映っていた背景について「なんかいいところ住んでるね。後ろに⽵があって。」と突っ込みを⼊れる伊藤に、「これは彼の住んでいる⾃宅の近くです。」と返す監督。舞台挨拶冒頭から三⼈の仲の良さを伺わせつつ、劇場の席が⼀列⽬から埋まっていることについて触れ「恐れ多い」と恐縮する⼀幕も。


本作の製作に⾄った思いについて監督は「以前から私と KUNI は表裏⼀体だと話していました。KISS が来⽇した時、私と KUNI はお互いの存在は当然知らなかったんですけど、KUNI も私も KISS のポール・スタンレーにあこがれて、そしてデトロイト・メタルシティを聞いて、ハードロックの虜になりました。今映画でもご覧いただいたように、KUNI はポールに憧れながらロックミュージシャンの道を歩んで⾏きますが、私は進学をし、そして就職をして全く違う⼈⽣を歩んでまいりました。私が今年の⼀⽉で TBS を定年退職し、⼀つ違いの KUNI も来年還暦を迎えます。今このタイミングで『映画の製作を通じて今しかできないことはなんだろう、⾃分にしかできないことはなんだろう』と考え、『それだったら単⾝アメリカに渡って成功した KUNI を世の中に紹介しよう︕』と思いました」と振り返る。


伊藤は「実は KUNI のお⺟さんが亡くなった時に献杯の会をやることになって、『4⼈ぐらいでお袋を送りたい』とのことだったので、4⼈くらいならいいかなと思って⾏ったら40⼈ぐらいいるんですよ。(笑)静かに送るんじゃないの︖みたいな。その時に佐藤監督とは初めて会ったんだよね。」と監督との出会いのエピソードを披露し、「その後番組を作ろうと、企画書とか出さずに予算をかけずに、すぐ結果出そうと。それでレコードのアートワークジャケットを語って、それを編集してやろうと。で 11 ⽉頃に番組収録を1⽇で4本撮り終わったところで、佐藤監督と TBS の報道の⽅が来て、『KUNI ちゃんはやはり伊藤さん周りのところなんだよね』っていうから、『そうだけど、なに︖』て⾔ったら、『KUNI のドキュメンタリー撮る』って⾔われて。それ⼤丈夫かい︕︖となったんだけど、だけどやる以上は協⼒は惜しまないということは約束したんですよ。」と本作に関わるきっかけを述懐。


映画の前半部のインタビュー中⼼の構成について監督は「映像を使うとなると、あらゆる⽅の許諾をとらなくてはいけなくて・・・時間的に厳しいのと、予算不⾜、⼈不⾜、とどこにでもある話です。」と製作の苦労をにじませつつも、「構成的に前半は KUNI がアメリカに渡って成し遂げた偉業をまとめて、後半はドキュメンタリーですから彼のありのままの姿を描きたい。それを 72 分という尺に収めると(インタビューとライブシーンの⽐率が)そういう作りになるので、この結果になったと思っています。」と回答。


また監督は若くして単⾝アメリカに渡った KUNI さんについて「この映画は 1980 年、今でいうと 40 年前のロサンゼルスが舞台になっているわけで、ネットも携帯もない、今じゃ考えられない時代ですよね。その中で KUNIはアメリカに⾶んで⾏っている。今WBCが話題ですから野球に例えると、野茂選⼿がアメリカに⾏かれたのが 95 年。KUNIはその 10 年も前からアメリカに⼀⼈で旅⽴っているわけですから、⽴場は違いますけど、そういった意味ではKUNIはある意味無鉄砲なんだけどすごいやつだな、と思います。」とコメント。


伊藤は「すごい⼈に好かれるっていいことだなと思うよね。KUNI と働いた⼈の多くは『いい加減なやつ』って⾔う⼈も多いんだよ。超いい加減な男ではあるけれど、⼈に愛される⼈なんですよ。だからビリー・シーンとかジェフ・スコット・ソートとかエリック・シンガーとか本作のインタビューに応じてくれたのも KUNI の⼈徳なんじゃないでしょうか。“ミュージシャンとミュージシャン”じゃなく⼈間として付き合いがあることも、今回の取材に応じてくれたんじゃないかな。やっばりね、愛されたら得だな。」と KUNI さんの魅⼒について語りました。


監督は「(今回取材ができて)⼀番うれしかったのは KISS のエリック・シンガーさん。彼は今⽇⽇本にいたと思ったら次の⽇にメキシコにいるような⼈ですから。そんな⽅がなんとかスケジュールを駆使して『ここの 20 分ならいいよ』と取材対応してくれました」と KUNI が⼀流ミュージシャンたちにいかに愛されているか語る。


KUNI さんのギターテクニックについて聞かれると伊藤は「はっきり⾔って KUNI よりうまい⼈はいます。KUNI はステージで上⼿いふりするのは上⼿でしたよ。うまく⾒せるというのかな。やっぱり存在感なんだと思う。ステージの存在感。KUNI はそういうのがとても上⼿だったよ。」と KUNI さんのパフォーマンスについて⾔及。


また KUNI さんが出したアルバムについて伊藤は「やはりファーストアルバム『マスク』は本当に印象に残っていて。当時はロックの⼤⼿メディアが少なかったわけで、⼝コミで広がっていったんだよね。やっぱり⼝コミって⼀番強いんだと思うんだよね。⼈から⼈へ伝わることがこうバズっちゃう。KUNI はファーストアルバムでそうなったからね。」と語ると、監督は「アルバムが出た 86 年、⼤学⽣でレコードショップで物⾊していた時に⼿の中に KUNI の『マスク』が⼊っていたんです。ミステリアスなジャケットでジャケ買いしました。(笑)」というエピソード披露。


最後に監督から「今⽇、この映画をきっかけにぜひ KUNI にもっと関⼼を持っていただいて、彼が本当にまたギターを持って復活するかどうかちょっと私も分かりませんけれど、ぜひその⽇を願って応援をしていただければと幸いだと思っております。」とメッセージ。伊藤は「まさかKUNI のドキュメンタリーが皆さんと⼀緒に楽しめると思っていなかったんですけど、KUNI というギタリスト、⼈間について、また当時の⾳楽シーンについていろいろ考えることがあります。本当にいい時代だったと単に振り返るだけでなく、作り⼿のパッションみたいなものが、今もどこかにあるはずだと思いながら仕事をしていきたいと思います。」と締めくくり、舞台挨拶は終了しました。

 

2023年3⽉24⽇(⾦)〜4⽉6⽇(⽊)シネ・リーブル梅⽥にて開催


(オフィシャル・レポートより)