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第33回東京国際映画祭開幕!フェスティバル・アンバサダーの役所広司、観客賞に期待を寄せる。

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 新型コロナウィルスの影響で世界中の国際映画祭がリアルでの開催を見送ったり、席数制限を行い、規模を縮小しての開催を余儀なくされる中、日本最大級の国際映画祭、第33回東京国際映画祭(TIFF)が席数制限のないリアル開催で、10月31日に開幕した。例年なら六本木ヒルズアリーナでのレッドカーペットイベントで華々しく開幕を飾るところだが、今年はそれに代わるイベントとして東京国際フォーラムホールCのロビーにてレッドカーペットを模した「レッドカーペットアライバル」を実施。総勢56名の豪華ゲストが映画祭を彩った。
 
 続いて行われたオープニングセレモニーでは、リアルでの開催を決断したTIFFに向けて、俳優のロバート・デ・ニーロ氏から日本語で「オメデトウゴザイマス!」と茶目っ気たっぷりなメッセージが届いた他、
「このような厳しい時期に、皆さんが大きなスクリーンで映画を観ることをたたえ、そして楽しむ道を見出してくれたことは、私にとって、そして世界中の映画製作者にとってインスピレーションの源となります」(クリストファー・ノーラン監督)
「世界中の人々に観てもらいたいという期待を抱きながら映画を製作する映画人を励ますと同時に、観客の皆様も勇気づけられることでしょう」(カンヌ国際映画祭総代表、ティエリー・フレモー氏)
と海外の映画人からも応援のメッセージが到着。
 
 今年のフェスティバル・アンバサダーを務める役所広司も登壇し、「今回の映画祭の開催はこれまでとは異なる形ですので、実行委員の皆様はとても苦労されたかと思います。いよいよ今日から始まります映画祭、観客の皆様と頑張っていきたいと思います」と“映画祭の顔”らしく堂々と挨拶。今年は例年とは違い、部門を統合、コンペティション部門や、日本映画スプラッシュ部門、アジアの未来部門は「東京プレミア2020」に統合。各部門別に審査員、賞の授与が行われていたが、「東京プレミア2020」での観客が選ぶ観客賞により選出されることに。それに関連して、映画を観る時に大事にしている視点を問われた役所は「観客が映画を評価するのは一番正しいこと。でも世界中の映画人が人生をかけて作った作品を評価するのには責任を感じてしまいますね。素直に心を動かされた作品に投票することが大事だと思います。観客の皆さんが重要な役割を担うというのは映画祭の熱気につながると思うので、とてもいいこと。映画産業を盛り上げる賞になるのではないか」と期待を寄せた。
 
 
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 日本映画界のいまを写し出す「Japan Now 部門特集」からは深田晃司監督が森崎ウィン、筒井真理子と共に登場。深田監督は「2010 年に『歓待』という作品で賞をいただいてからちょうど10年なので、もっとがんばれと叱咤激励を受けたと思っています。今回上映される作品は2005年に自分が初めて人のお金で製作した『ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より』や、『東京人間喜劇』という自主映画もある。僕の映画を全く観たことない人に入門編として見てもらえたら嬉しいです」とコメント。“共感度 0.1%”と言われている『本気のしるし《劇場版》』の出演について森崎は「僕がはじめて脚本を読んだ時には 0.1%も共感をもてなかったくらい現実味のないストーリーでした。しかし撮影前に深田監督と何度も話し合いを重ねてく うちに、いつの間にか深田ワールドに引き込まれていることに気が付きました。どんどん深田マジックにかけられて知らないうちに主人公の辻という役になっていたんです」と監督の不思議な引力を思い知ったエピソードを披露。 『よこがお』『淵に立つ』の2作品に出演した筒井真理子は、『よこがお』で2019年度芸術推奨文部科学大臣賞という 栄えある賞を受賞したことについて、「『淵に立つ』も『よこがお』も 深田監督から脚本をいただいた段階で「すばらしい映画になるな」と鳥肌が立ったことを思い出しましたし、そんな賞がいただけるように導いてくれた監督に感謝しています。このコロナ禍で授賞式が中止になってしまい、立派な賞状を宅急便のお兄さんからいただいたのは少し残念でした」と笑った。
 
 
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 第33回東京国際映画祭のオープニング作品に選出された『アンダードッグ』からは、武正晴監督、俳優の北村匠海と瀧内公美、森山未來(舞台公演中のためリモート参加)、脚本家の足立紳、佐藤現プロデューサーが登壇。ボクシング未経験だった森山と北村は役作りのために1年以上かけてトレーニングを敢行。北村は、「格闘技をやったことは人生で一度もなかったのですが、格闘技を見ることが好きで、リングにあがれる機会を逃すまいと出演を決めました」と語り、森山は「ボクサー役を演じるまでは、憎くもない相手を殴ったり、殴られなくてはいけないボクシングがよく分からなかったが、練習の最中にトレーナーに殴られたときに自分の中でアドレナリンが出る感覚があり、ボクシングというものに取りつかれてしまう人の気持ちが理解できました」と撮影を振り返った。全員が「いつも撮影現場の中心にいた」と口を揃えた武監督は、「ボクシングを演出するのは難しかったです。この手の映画はキャストが本当に重要で、森山さんや北村さんをキャスティングできたからこそ良い作品ができました。キャストはみんな全身全霊をかけて演じてくれましたね。今年の1,2月に撮影をし、世界が大変な時期になっている中、編集作業を進め、今年中に公開を迎えます。困難に打ち勝った作品のようでとても感慨深い」と作品への愛情を語った。さらに「非常に意義深い作品でこうやって映画祭に呼んでいただき、非常に光栄に思っています。こういう場所でいろんな映画人たちともっともっと映画の話をして、次の企画を考えていきたい。映画祭とはそういう場所であってほしいと思うので、ぜひ映画祭の中でいろいろな交流を進めていただきたい。本当にこういう場を与えていただけると、『やっぱり(映画製作を)やめられないな』と思いますので」と映画祭に対しても熱いメッセージを残しイベントを締めくくった。
 
 第33回東京国際映画祭は、11月9日(月)まで六本木ヒルズ、EXシアター六本木、東京ミッドタウン日比谷日比谷ステップ広場ほかで開催中
公式サイト:www.tiffcom.jp
 
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