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「自分が住んでいる街パリの今、そして父性を描きたかった」 ミカエル・アース監督、主演のヴァンサン・ラコストが語る『アマンダと僕』。

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6月22日からシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開される『アマンダと僕』が、6月21日にフランス映画祭2019 横浜にて上映された。テロにより突然家族を失った後の再生を描くヒューマンドラマ。重いテーマだが、陽光溢れるパリの街並みの描写や、アマンダを演じる新星イゾール・ミュルトゥリエの瑞々しさ、そして平凡な青年ダヴィッドが突然姉の娘を引き取るかどうかの決断に迫られる様をヴァンサン・ラコストが自然に演じ、心温まる余韻を残す。
 
上映後にミカエル・アース監督と主演のヴァンサン・ラコストが登壇し、「自分が住んでいる街、パリの今、そして父性を描きたい。これまでは抑制的な映画でしたが、今回は真正面からメロドラマに取り組んだ」(ミカエル・アース監督)、「コメディー作品に多く出演してきたので、こういう役ははじめて。イゾール・ミュルトゥリエとは最初どう接していいか分からなかったが、ダヴィッドがアマンダと映画の流れで仲良くなるのと同じように、仲良くなっていった」(ヴァンサン・ラコスト)と、それぞれが映画への思いを語った。その内容をご紹介したい。
 

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■作品のきっかけ

アース監督:映画を一本作るには色々な要素が集まってできます。今回自分が住んでいる街、パリの今を描きたいと思いました。テロの後、傷を受けたパリの街、美しくも脆さのあるパリの街を描きたいと思ったのです。また、父性について、身内の不幸を巡って一緒に成長していく少女と青年の姿を描きたいと思いました。前作と比較して感情面から真正面から向かい合っている映画になっています。これまでは抑制的な映画でしたが、今回は真正面からメロドラマに取り組みました。
 

■脚本を読んだ時の感想、ダヴィッド役について

ラコスト:ミカエル・アース監督の前作を見ていましたし、とてもその映画が好きだったので、監督と仕事がしたいと思っていました。シナリオを読んでとても感動しました。今のパリを描いていながら、そこに光が差し、身近な不幸を取り上げ、残された家族の再生を描いていますが、主題の描き方がとても面白いと感じました。私はこれまでコメディー作品に多く出演してきたので、こういう役ははじめてで怖さもありましたが、とても興奮する経験でした。
 

■ラコストさんキャスティングの理由

アース監督:ヴァンサン・ラコストは気品や軽さ、自然に持っている光のようなものを全て兼ね備えています。彼自身から溢れ出るものに、常日頃から感銘を受けていました。映画が重いテーマなので、ダヴィッド役はヴァンサンが適役だと思っていたのです。
 
 

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■役作りの準備について

ラコスト:テロの被害者たちが書いた本はたくさんありますが、私は何も読みませんでした。ダヴィッドのようなどこにでもいるバイトを掛け持ちしている若者に、急に思わぬことが降りかかる。それは誰にも起こり得ることです。私は普段からシナリオをまず読んで、暗記します。撮影は順番通りには行われないので、撮影の順番どおりにセリフを覚え、頭の中に叩き込む。ダビッドの精神状態は最初と最後で全然違いますので、最初は未熟ですが、だんだん成長し、最後に父性を獲得するという感情の流れを作っていきました。

 
アース監督は、撮影中に演技しやすい準備を作ってくださったので、居心地のいい環境の中に身を任せて演じることができました。私も撮影の日まで感情が湧き上がって泣けるか不安でしたが、映画に感動していたので、自然に感情が出てきました。
 
 

 

 

 

■アマンダ役イゾール・ミュルトゥリエのキャスティングについて

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アース監督:演劇の経験がある人たちにたくさん会いましたが、本人が望んで演技をしているのではなく、親の方が望んでいるという点が気になりました。キャスティングディレクターが学校や体操教室で募集のビラを配っていたときに、体操教室から出てきたイゾールもそのチラシを受け取ったのです。赤ちゃんのようにかわいく子供らしい一方で、成熟して大人が言っていることが理解できたり、自分の考えをきちんと言える二面性がある。イゾールさんの中にはアマンダの全てがありました。女優としての意識を持ち、とてもまじめに演じていたので、労働時間が3時間だけということ以外は、私自身は大人の俳優と同じ扱いでした。いかに彼女が心地よく感じ、自由に演技をしてもらえるか。ヴァンサンや共演者も加わり、イゾールさんが演じやすい環境を作ってあげました。
 

■イゾール・ミュルトゥリエとの共演について

ラコスト:子供と演じるのが初めてですし、実生活でも周りに10歳ぐらいの子がいないので、イゾールさんがどこまでシナリオを理解できるのか。(母がテロで亡くなるという)悲しいシーンを演じた後、悲しい気持ちのままになってはいないかと色々考えました。

自分も、イゾールにとって面白いお兄さんになればいいのか、父親のように演技について教えてあげるような立場になればいいのか分からなかったのですが、映画のダヴィッドも私と重なる部分があったので助かりました。ダヴィッドがアマンダと映画の流れで仲良くなるのと同じように、仲良くなっていけました。1日3時間しか撮影できなかったのは特殊な体験でしたが、スタッフがアマンダにぬいぐるみやパズルを持ってきてくれるので、空き時間に一緒にそういうもので遊ぶのが新鮮でした。
 

舞台から立ち去る時も、軽やかに、おどけながら手を振り続けるヴァンサン・ラコストは、まさに今最注目の若手フランス人俳優だ。自然に感情がこもったというシリアスな演技は、見るものが演技であることを忘れて、その心情に寄り添いたくなる。アマンダとダヴィッドの未来を予感させる感動のラストは、確実なものがない現代にも、すぐそこにささやかな光があることを教えてくれるだろう。(江口由美)
 

 
『アマンダと僕』“AMANDA”
2018年 フランス 107分
[監督・脚本]ミカエル・アース [共同脚本]モード・アムリーヌ
[出演]ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトゥリエ、ステイシー・マーティン、オフェリア・コルブ他
 
フランス映画祭2019 横浜
◼ 期間:6月20日(木)~6月23日(日)
◼ 会場:みなとみらい地区中心に開催
(横浜みなとみらいホール、イオンシネマみなとみらい)
■主催:ユニフランス