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第12回CO2助成作品監督に聞く、CO2での映画制作と撮影秘話~『私は兵器』『見栄を張る』『食べられる男』

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第12回CO2助成作品監督に聞く、CO2での映画制作と撮影秘話
~『私は兵器』三間旭浩監督、『見栄を張る』藤村明世監督、『食べられる男』近藤啓介監督
 
3月4日(金)~3月13日(日)まで梅田ブルク7、ABCホール、シネ・リーブル梅田、第七藝術劇場をはじめとした会場で開催される第11回大阪アジアン映画祭。その中でも今年大幅にパワーアップしたインディ・フォーラム部門で恒例となっているのがCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)助成作品のワールドプレミア上映だ。40近くの応募企画の中から、CO2選考委員によって選ばれた3監督が60万円の助成金を受け、脚本作成他CO2事務局から様々なアドバイスを得ながら、オリジナリティあふれる長編を完成させている。今年の助成作品は三間旭浩監督の『私は兵器』、藤村明世監督の『見栄を張る』、近藤啓介監督の『食べられる男』だ。バイオレンスアクション(『私は兵器』)、アラサー女性の成長物語(『見栄を張る』)、ユニークな設定のSF(『食べられる男』)と、それぞれの個性で現在社会をリアルに切り取りながら、エンターテイメント性も備えた作品になっている。このCO2助成3監督にCO2に応募した経緯や、作品の狙い、見どころなどを伺った。
 

『私は兵器』(監督:三間旭浩)

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俳優特待生使用枠での応募だったという三間監督。「俳優をどう使うかの明確なビジョンがあり、ブラックな内容ながらダークヒーローが登場するあたりは、商業的な作品にもなり得る。アクション映画としてどうなるのかを見てみたい」という選考委員の評価を受け、今回助成監督に選ばれた。
 
初長編の『ユートピアサウンズ』が大阪アジアン映画祭やニッポンコネクションなどの映画祭で特別上映されているが、震災以降に撮った同作とは全く違う、暴力的な部分を前面に出した新しい長編企画をどうしても作りたいと考えCO2に応募したという。
 
<ストーリー>
調律師の望都(辻伊吹)は、小学校での仕事で出会った学校に馴染めない少年にピアノを教えることに。殺人の前科を持つ父のことを赦せない望都だったが、復讐代行組織「代弁者たち」と出会い、もう一つの顔を持つことになるのだった・・・。
 
 
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―――映画を作るにあたって、CO2事務局から受けたサポートは?
脚本を練る過程で、事務局の方と一緒に作っていった感じです。ある程度人に分からせるために脚本をどう組み立てていくのか、あまり難解すぎず、いかに面白くしていくか。また、今まではあまりキャラクター造詣をしてこなかったのですが、今回は映画に出てこないエピソードも考えながら、作り込んでいきました。
 
―――殴り合いなどの暴力シーンがしっかり描かれていましたが、アクションの作り込みはどのようにされたのですか?
俳優特待生で本作主演の辻さんはアクション俳優として活躍していますし、テコンドーもされているので、率先してアクションを組み立ててもらいました。また、復讐代行組織「代弁者たち」の運営者役の玉井さんも格闘技やアクションをされていたので、本当に助けられましたね。自分が出演していないシーンでもアドバイスをしに来てくれました。暴力シーンに関しては、ゲンナリするぐらい生々しいものになっていると思います。
 
―――選考委員からはダークヒーローものにとして商業映画でも通用するものになるのではとの声が挙がっていましたが、むしろ社会のひずみを描いた泥臭い作品です。
ヒーローなんてどこにもいない。みんな無様です。色々な暴力の形も見せたくて、教育現場でのシーンもあえて取り入れています。また、ピアノを弾いている男の子もそうですが、音叉や色々な音色を通して、暴力や色々なものが広がっていくイメージを出していきました。
 
―――普通の人が、ちょっとしたズレから暴力を振るう人間に転じていく中、主人公望都の父で妻の浮気相手を殺した男、主人公がピアノを教える少年と、少年が小さい頃虐待をした経験がある母親の3人は、過去は暴力に手を染めながらも、今は一線を画した生活をしています。彼らの本作における役割は?
母親は子どもを愛する感情がある一方、全てがそうではなく、あとの何割か「この子は私にとって何だろう」と一歩引いて眺める瞬間があるのではないかと思ったのです。そんな複雑性をはらんだキャラクターに仕立てました。父親は贖罪の意識があるものの、息子は父の過去を赦すことができずにいます。父親の感情的にやった暴力に対し、自分自身は民意(復讐代行業)でやっている暴力だから違うと思い込んでいます。ですが、実際には人を傷つけることに変わりはなく、無様なものなのです。
 
―――最後に、本作の見どころを教えてください。
暴力という重いテーマを掲げていますが、実際は娯楽作として成立できるようなストーリーにしているので、あまり気をはらずに見てほしいですね。色々な解釈が出来る映画なので、観終わった後に語り合ってもらいたいです。インディペンデント映画のようなあまり予算のない作品で、ここまでアクションを取り入れているものはないので、そこにも注目してください。
 

 

『見栄を張る』(監督:藤村明世)

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泣き屋というアイデアが面白く、日本の文化の映画か、むしろTV向けの題材との声もあった『見栄を張る』の藤村監督。その一方で、映画を撮るにあたっての計画の設定が明確で、誰にどのような協力を求めるのかというビジョンが既にあり、現実性が大きかった点も評価を受けての選考となったという。2作目の短編『彼は月へ行った』がPFFに入選した経歴を持つ藤村監督は、『バクマン。』では制作部、『図書館戦争 THE LAST MISSION』では助監督を務めるなど現場での経験を積み、「映画を撮れるならこんなチャンスはない」とCO2に応募、今回初長編に挑んだ。
 
<ストーリー>
東京で女優の仕事をしている絵梨子は、仕事も思うようにいかず、お笑い芸人の彼は今やヒモ状態。そんなある日、疎遠だった姉の訃報が飛び込んでくる。実家の和歌山に戻った絵梨子は、シングルマザーだった姉が葬式で故人の魂を送る“泣き屋”だったことを知る。姉の上司に勧められ、絵梨子は泣き屋稼業を始めるのだったが・・・。
 
―――映画を作るにあたって、CO2事務局から受けたサポートは?
長編の脚本を書いたことがなかったので、主人公が魅力的じゃないとか、もっと動かなくてはとか、もっと葛藤しなくてはとアドバイスされました。事務所で会議し、持ち帰って助監督と深夜から朝まで脚本書きをしていました。脚本の面では本当に勉強させていただきました。和歌山は助監督時代に勧められ、海南市などをロケハンして、まさに求めている場所だと思いました。主人公の実家がすごくキーになると思っていたのですが、そこも望んでいた家が見つかったので良かったです。
 
―――ヒロインの絵梨子は女優の仕事も思うようにいかず、姉の死がきっかけで田舎に帰ってからもどこか自然体になれず、不安を取り繕っている部分がありますが、監督自身を投影したところはありますか?
最初はそのつもりではなかったのですが、脚本を書いているうちに、結構自分を投影しているということに気付き、むしろ寄せてしまった方がいいと感じたので、どんどん寄せていきました。
 
―――作品全般に渡ってセリフは控えめでしたが、絵梨子役はどのように演出したのですか?
撮影の結構前から、絵梨子の経歴や生い立ちを書いたものを久保さんに渡しました。撮影に入ってからはいい感じだったのですが、絵梨子の場合は特に自分が物を言うときよりも、人の動きや発言を受け止める方が大事なので、その部分を大切にしていこうと話したりしましたね。
 
―――泣き屋を題材にするということで、事務局の企画採用時の評価にあったTV的でコミカルな作品を想像したのですが、実際はかなり渋く落ち着いたトーンになっていて驚きました。
カメラマンが60代の方なので、撮られた映像が渋かったのです。最後は映画全体を渋いトーンに振ってた方がいいなと思いました。逆に「これを25歳の監督が撮ったのか」と思ってもらった方が面白いのではないかと。
 
―――泣き屋という職業に注目した理由は?
昔は魂を送る役目として、日本古来からあった職業ですが、今はなくなってきたそうです。元々、私は色々な職業に興味があり、高校生の頃TVで「面白い職業特集」に知らない人のお葬式で泣くという泣き屋の仕事が取りあげられていたのです。そういう職業があるのかとずっと引っかかっていて、いつか作品にしたら面白いのではないかと心に秘めていたものを今回取りあげた感じです。
 
―――最後に、見どころを教えてください。
誰でも見栄を張ることがありますが、そのために大切なことを見失ったり、自分の夢がおろそかになってしまうことに主人公が気付く瞬間のラストシーンは、ぜひ見ていただきたいです。また、泣き屋が登場するお葬式のシーンも見ていただきたいですね。
 

『食べられる男』(監督:近藤啓介)

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企画書での評価が高く、宇宙人が人間を食べるというアイデアに対しても期待値が高かったという近藤啓介監督。SFというお金がかかりそうな題材をどういうアイデアで撮るのかという疑問に対し、「一つの宇宙人家族が一つの地球」という設定が選考委員の心をつかんだという。「周りの皆は世に出てしまった中、自分だけ足踏みしている状態だったとき、目の前にあるものに何でもしがみつきたかった」という近藤監督。本作は大阪芸術大学での卒業制作を含めて2本目の長編となる。
 
<ストーリー>
20年以上ひたすら工場で研磨の仕事をし続けている村田は、妻、一人娘と別れ、今は一人暮らし。友達付き合いもなく孤独な男だ。そんな村田に、地球平和のため、1週間後に宇宙人に食べられる人間に選ばれた便りが届く。突然選ばれた村田は、食べられるまでの1週間何をするのか。その時周りはどんな反応をするのか。そして、村田の疑問はただ一つ「僕なんて、おいしいのかな」。
 
 
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―――映画を作るにあたって、CO2事務局から受けたサポートは?
脚本はCO2の事務所で皆で集まり、話し合いながら書いたのですが、楽しかったですね。僕が元々知っていたお笑い芸人の方にも脚本に入ってもらい、共同脚本の小村さんと、富岡さんと4人で話しながら作っていきました。主人公、村田のキャラクターもそこからできた感じです。オーディションで村田役が本多さんに決まった時も、そこから「この人が演じるなら」とさらに脚本を書きながら変わっていきました。
 
―――村田さんのキャラクターがかなり強烈でしたが、村田さん役の本多さんについて教えてください。
本多さんは、ヨーロッパ企画所属の俳優で、既にたくさんの映画に出ていらっしゃる方だったので、僕からキャラクターやしゃべり方の希望を提示すると、後はやって下さる感じでした。村田のキャラクターとして、ずっとおちょぼ口をすることにしたので、本多さん自身もおちょぼ口をすれば村田になれる。そういう役作りをしていました。悲しいシーンのときは「本多さん、今日は70%おちょぼでいきましょうか」とか、キーワードを作り、なんとなく感覚でお互いに役の感じをつかみ合っていました。90シーン以上あるうち、村田が出ていないのは1シーンだけなので、撮影も大変でしたね。
 
―――タイトルにもあるように「食べる」ということがキーワードになっています。食物連鎖にもつながっていきますが、「食べる」に焦点を当てた狙いは?
作品全体を通して、意味をかけるという部分を色々盛り込んでおり、「食べる」は言葉だけでなく、食べるシーンをたくさん入れることも意識していました。村田はずっと石を持っていますが、これは村田というキャラクターを作った時にできていたので、「石」という言葉を散りばめました。歌でも「おまえは意思を持っているのか」という歌詞が入っていますが、そこも意識的に取り入れたものです。
 
―――食べられる直前に毛を剃ったとき、村田のスキンヘッドがかなり不自然な特殊メイクなのは、気づいて笑ってしまいました。
狙った訳ではないのですが、現場でも「ちゃっち~」と笑ったあと、面白いからこのままでいきました。このスキンヘッドでも意味合いは伝わりますから。この作品で伝えたいことは一つで、やりたいことがあれば、他のところを色々ツッコまれても気になりません。僕はここが面白いと思っているところは曲げずに撮影していきました。映画って、そんな感じでいいのか分からないですけどね。
 
―――本当に目が覚めるようなラストでした。シュールなのに笑えますね。
なんかありがたいですね。笑ってもらいたいけれど、笑ってもらえないだろうなと思っていましたから。普通宇宙人が出てくると急に夢のようになるのですが、この話は、最後に現実を見せられた。逆転していたのだなと、自分で作り終わってから発見しました。
 
―――最後にこれからご覧になるみなさんに、メッセージをお願いします。
食べられる男が、とてつもなく悲しくてむなしい話なのですが、それを笑える設定にぶち込んでいるので、楽しめるストーリーになっていると思います。多分次もこのような映画を撮ると思うし、今後も変わらないので、この作品で僕のファンになってほしいです。
(江口由美)

第11回大阪アジアン映画祭公式サイトhttp://www.oaff.jp/2016/ja/