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観客賞を受賞!エドアルド・ファルコーネ監督がコメディーに込めた思いとは?『神様の思し召し』(イタリア)記者会見&上映後トーク@TIFF2015

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観客賞を受賞!エドアルド・ファルコーネ監督がコメディーに込めた思いとは?『神様の思し召し』(イタリア)記者会見&上映後トーク@TIFF2015
登壇者:エドアルド・ファルコーネ氏(監督/脚本) 
 

~イタリアの大ヒットコメディーが観客賞に!「映画であまり描かれていないことを撮ろうと思った」~

 
10月31日にクロージング・セレモニー授賞式が開催された第28回東京国際映画祭で、コンペティション部門作品のイタリア映画『神様の思し召し』(エドアルド・ファルコーネ監督)が見事、観客賞を受賞した。
 
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脚本家としてキャリアを確立させているファルコーネ監督の初監督作。完璧主義だが、傲慢で自己中心な辣腕医師トンマーゾを主人公に、将来は医者へと期待を寄せている息子の思わぬ告白から、ある神父と出会い、人生観がひっくり返される様子をコミカルに描いている。トンマーゾと結婚して以来、かつての輝いている自分が消えうせ、子どもが育った今、人知れず孤独を抱えている妻や、トンマーゾらとほぼ同居状態の能天気な娘、トンマーゾからは馬鹿にされながらも、愛嬌のある不動産業の娘婿と、家族のキャラクターも個性的。トンマーゾの態度が変わることで、家族との関係が変化していく様子も丁寧に捉え、トンマーゾと共に家族が再生していく姿も感動を呼ぶヒューマンコメディーだ。
 
10月28日に行われた記者会見の模様をご紹介したい。
 

 
(最初のご挨拶)
イタリア人はうるさいタイプの人間なので、皆静かに観ていたので好まれていないのかと思いましたが、後で楽しかったと言ってくれました。イタリア人に比べて日本人は礼儀正しいですね。
 
―――息子の部屋の後ろの棚にゴジラがありましたが、その意図は?
エドアルド・ファルコーネ監督(ファルコーネ監督):美術担当が選びました。私も映画を観たときに、なぜゴジラがあるのかと思いましたが、今(東京で)質問を受け、このためにあるのだと思いました。全てのことには理由があるんですね。
 

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―――「神が望むなら」という原題を聞くと、より深く感じられると思いました。脚本を書く段階からいわゆるコメディーで終わらせるつもりはなかったのでしょうか。
ファルコーネ監督:最初からハッピーエンドは全く考えていませんでした。イタリアではポジティブで終わるコメディーが多いですが、あまりにも当たり前なので。死によるエンディングも考えていました。ただ、そうすると映画の意味が変わってしまい、哀しみが勝ってしまうので、こういうエンディングにしました。
 
 
―――この映画を製作しようと思った経緯と、目に見えるもの(科学)と目に見えないもの(宗教)を扱おうとした理由は?
ファルコーネ監督:もともと脚本家ですが、初めて監督をやってみないかと、何でも好きなものをやっていいと言われたので、精神性、宗教について撮ろうと思いました。映画であまり扱われていないこと、個人的なことに興味がありましたから。民主的なことを言っているにも関わらず差別的な人物を揶揄するようなことも考えていました。
 
 
―――神父をだますため芝居をするシーンでは、叔父が障がい者のふりをする場面がありました。日本では物議を醸す可能性のあるシーンですが、とても面白いかったです。不快感がないように、どう面白く笑いにする演出をしたのですか?
ファルコーネ監督:あの場面で描きたかったのは、娘の夫を馬鹿にしていた主人公が、段々認めるようになってくるというコントラストです。脚本を書く際も不快感を与えないように注意しましたが、イタリアでは大げさすぎること、コメディーということ、俳優もいい役者を見つけることができたので、コミカルな笑えるシーンと捉えていただけました。日本人はセンシティブなので、気を悪くなさる方がいるのかもしれません。
 

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―――同性愛のドタバタも描かれましたが、現在のカトリック教会の状況に重なりました。監督自身はどのようにお考えですか?
ファルコーネ監督:実際イタリアのカトリック教会で強く感じられている問題で、最近も司教が、男性が好きだとカミングアウトしましたが、(それに対して)私は分かりません。もし自分が法王になることがあったら決めたいと思います。
 
 
―――敬虔な信者の方のコメントをもらったことはありますか?
ファルコーネ監督:基本的にはポジティブな意見をもらいましたが、こんなテーマで撮るなんて頭がおかしいのではないかという声もありました。カトリックの方たちにも高評価がありましたし、バチカンがお金を出しているのではないか、冒涜していると色々な意見がありました。
 
―――家族の再生も描いているように感じました。監督ご自身の体験や親子関係も反映されているのでしょうか?
ファルコーネ監督:家族のテーマはそれほど大きいものではありませんが、多くの方がその点を言ってくださるのはうれしいです。今、イタリアでは家族はネガティブに受け取られることが多いので、うれしいです。自分の父親はトンマーゾと別のタイプで、世界中を旅行し、全く会うことがありませんでした。私自身も自分のことに意見を求めようとすることもありませんでした。
(写真:河田真喜子、文:江口由美)
 
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<作品情報>

『神様の思し召し』
(2015年 イタリア 1時間27分)
監督・脚本:エドアルド・ファルコーネ
出演:マルコ・ジャッリーニ、アレッサンドロ・ガスマン、ラウラ・モランテ、イラリア・スパーダ、エドアルド・ペーシェ、エンリコ・オティケル 
 
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