『EDEN/エデン』共同脚本スヴェン・ハンセン=ラヴ、主演フェリックス・ド・ジヴリトークショー@フランス映画祭2015
『EDEN/エデン』
(2014年 フランス 2時間11分)
監督:ミア・ハンセン=ラヴ
出演:フェリックス・ド・ジヴリ、ポーリーヌ・エチエンヌ、ヴァンサン・マケーニュ
配給:ミモザフィルムズ
2015年9月、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
© 2014 CG CINEMA - FRANCE 2 CINEMA – BLUE FILM PROD– YUNDAL FILMS
~90年代パリ、若者たちが熱中した音楽の中心にいたDJの夢と挫折、そして未来へ~
90年代パリで、親友とDJデュオを結成し、瞬く間にクラブシーンで有名になっていったポールを主人公に、彼が辿った栄光と挫折の道のりを、時代を彩るガラージミュージックやクラブミュージック満載で綴る青春群像劇、『EDEN/エデン』。
『あの夏の子供たち』のミア・ハンセン=ラヴ監督が、兄で20年間ガラージミュージックのDJとして活動してきたスヴェン・ハンセン=ラヴの体験を元に、90年代後半から00年代にかけてフランスのダンス・ミュージックシーンで起こったムーヴメント、フレンチ・タッチの最中で生きた若者たちの10年に渡る生き様を、2部構成で瑞々しく描き出した。当時行われていた音楽イベントやパーティーを実存する伝説のクラブで再現する他、DJたちがアメリカの人気DJたちとセッションする様子や、音作りする様子など、DJの活動ぶりからその苦悩まで赤裸々に映し出され、音楽を通じて10年間を顧みることもできるのだ。
最初に「23歳です。私は日本を明日去らなくてはならないのでとても淋しいです」と挨拶したフェリックス・ド・ジヴリさんと、「ミア(ミア・ハンセン=ラヴ監督)の兄です。42歳です。前回日本に来たのは15年前だったので、帰ってくることができてうれしいです」と返したスヴェン・ハンセン=ラヴさん。今日空き時間に買ったばかりのジーンズ姿もお揃いで、主人公と、そのモデルとなった人物が揃っての登壇となったトークショーの模様をご紹介したい。
\
―――主人公ポールの役を10年に渡って演じて、一番難しかったことは?
フェリックス・ド・ジヴリさん(以下フェリックス):モデルになっている人物がスヴェンさんで、彼自身も若々しいので、10年間を演じることに対して抵抗は感じませんでした。ミア監督と相談し、老けメイクをしてまで、年を重ねたようにしないようにしようと決めていました。
―――『フランシス・ハ』に出演したグレタ・ガーヴィクさんをジュリア役に起用した理由は?
スヴェン・ハンセン=ラヴさん(以下スヴェン):グレタさんは私もミアも大好きで、彼女が出演してくれるのは一つの夢でもありました。出演を了承してくれるかどうか不安でしたし、エージェントを通じて打診すると役が小さすぎると言われましたが、偶然にもグレタさんはミアの映画が好きで、すぐにやりたいと言ってくれました。少しのシーンですが、彼女の軽やかな感じが、作品に温かみを与えてくれたと思います。
―――今再びディスコやガラージが盛り上がってきているようだが、スヴェンさんから見て、この動きをどう思うか?
スヴェン:一番大きな違いは、昔はこのようなクラブミュージックを聞いていた人が今より少なかったし、新しいミュージックを発見したという熱がありましたが、今は世界中で若者たちが様々なミュージックを聞いていて、彼らは自分たちの聞いている音楽の根っこが昔にあると知っています。
―――どうしてご自身の人生を反映させて、このシナリオを書こうとしたのか?
スヴェン:この映画は私の人生を語るために作られた映画ではなく、ミアは音楽と90年代の若者たちについての映画を撮りたいと思っていたのです。たまたま、そのときに私がある音楽シーンの役割を担っていたので、最初は当時起こっていたことを語っているうちに、一緒に脚本を書くようになりました。
―――自身の役をフィリップさんにしようとした決め手は?
スヴェン:ミアがオーディションで、フェリックスさんのことがすぐにいいと思ったのは、当時の若者の中にあったエネルギーを彼の中に感じたからです。フィリップスは音楽のことも知っています。音楽のことは門外漢という人は選びたくなかったのです。
―――フェリックスさんは俳優以外にどんな活動をされているのか?
フェリックス:レコードレーベルを持っていますし、色々なイベントの企画もしています。近々、服のレーベルを立ち上げる予定です。
―――フェリックスさん自身は、今上り調子の人生ですが、かなり手痛いことが待っていた主人公を演じて共感できたのか、それとも別の感情を覚えたのか?
フェリックス:私はこの作品を成功と失敗を描いたものとは考えておらず、夢に向かってどこまで立ち向かっていけるかという映画だと思います。自分の目的に対してどこまで突き進んでいけるかということで、私はスヴェンさんのように心配性ではないので、そこまで違和感はなかったです。
―――フランスの文化を紹介する一方で、本作はアメリカの影響を強く受けていることを示しているが。
スヴェン:確かにこの映画の中ではアメリカ文化のことを紹介していますが、フレンチ・タッチを紹介する映画でもあります。フレンチ・タッチというのはアメリカとフランスのつながりによって生まれた音楽です。フランスは昔からアメリカの黒人音楽に対する根強い愛着がありました。この映画は、ある意味フランスの伝統を表しているともいえますし、その絆がいかに美しいかということを示した映画でもあります。私の好きなシーンで、主人公がシカゴに行き、アメリカのDJに会うシーンがありますが、そこで二つの全く違う文化をもったDJの間に絆が生まれ、お互い違いはないのだということが分かります。
―――最近のフランス映画は以前と比べて、生身の人間を辛辣に映し出す作品が多いことをどう思うか?
スヴェン:確かに作家主義の映画はよりリアルな人間を映し出し、人間の弱さを表しています。もしそのような映画が増えているのなら、フランスが今難しい時代に入っているのではないでしょうか。
―――今後映画とどのようにかかわっていきたいですか?また主演する可能性はあるか?
フェリックス:今後も映画の仕事は続けていきたいです。フランスではすぐラベルを貼って、枠にはめようとするのですが、今回の映画出演で新しいチャンスも得ましたし、私はこの若さを利用して色々なことに挑戦していきたいと思います。
スヴェン:私は映画が大好きですが、本当にやりたいことは文学です。
―――フランス映画ファンにお二人から一言お願いします。
フェリックス:アルノー・デプレシャン監督の『My Golden Days(仏題:”Trois Souvenirs de ma Jeunesse”)』 が素晴らしいです。フランス映画は普遍的なものなので、日本で公開されるフランス映画を今後も見てください。
スヴェン:アラン・カヴァリエ監督の初期の2作は、フランスの評論家も「最も美しい映画」と評しているので、皆さんも見てください。
(江口由美)
フランス映画祭2015
6月26日(金)~29日(月)有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇(東京会場)にて開催!