映画祭シネルフレ独自取材による映画祭レポートをお届けします。

『フランス映画祭2014』記者会見

0627-k-550.jpg『フランス映画祭2014』記者会見

2014年6月27日(金)東京有楽町・朝日ホールにて、オープニングセレモニー先立ち記者会見が行われ、今年の映画祭の見所やフランス映画の傾向について語られた。

【出席者】

  • ユニフランス会長:ジャン=ポール・サロメ(『俳優探偵ジャン』の監督)
  • ユニフランス代表:イザベル・ジョルダーノ
  • トニー・ガトリフ団長(『ジェロニモ-愛と灼熱のリズム』監督)
  • セバスチャン・ベベデール(『2つの秋、3つの冬』監督)
  • マルク・フィトゥシ(『間奏曲はパリで』監督) (大阪・京都でもトークショーの予定)

 0627-k-2.jpg【ユニフランス会長:ジャン=ポール・サロメ氏】
「今年もフランス映画祭を開催することができることを誇らしく思うと同時に、多才なゲストと共に来日できることを本当に嬉しく思います。日本は世界の中でもフランス映画の良さを理解し好んで見て下さる国です。年間50作品ほど公開されています。」と日本が映画市場としても大きな国だと述べた。それも、邦画の興行成績が良く、映画館の維持が出来ているからだとも、日本の映画産業の貢献を讃えた。「自国の文化が高いからこそ、外国の門戸が開かれるのです」。サロメ氏の監督作品『俳優探偵ジャン』も本映画祭で上映される。

0627-k-1.jpg【ユニフランス代表:イザベル・ジョルダーノ氏】
15年間ジャーナリストとして活躍して来られたイザベル・ジョルダーノさんによると、フランス映画は近年順調に推移しており、興行収入は年平均3億ユーロで、フランス以外の観客動員数は年間500万人以上あるという。特に、2012年は『最強のふたり』や『アーティスト』が大ヒットして、素晴らしい成績を収めることができた。この5年でカンヌ映画祭のパルムドール3つとアカデミー賞2つを獲得し、順調に高い評価を得てきた。フランス映画の知名度調査をしたところ、アラン・ドロンやカトリーヌ・ドヌーヴなどのベテラン勢だけでなく、新しい世代の人気も上昇してきている。ちなみに、イザベルさんは北野武監督にインタビューできたことが一番嬉しかったと語った。

続いて、「皆様に素晴らしいプレゼントを用意しました」とゲスト監督の紹介をしてくれた。今年の団長でもあるトニー・ガトリフ監督については「自由に才能を開花させている」と、マルク・フィトゥシ監督については「フランス人の多くの人がそうであるように、イザベル・ユペールに恋して映画を作っている」と、そしてセバスチャン・べべデール監督については「新しい世代の代表で、よく扱われるテーマである恋心や微妙な心情の関係性など、若者の感性は日本の皆様にも共感して頂けるのではないかと思います」。

【トニー・ガトリフ団長】
「フランスを代表して来日できて嬉しいです。私はフランス映画を見て育ち、こうして監督になりました。今また若い才能が育ってきているのを見て、これからもフランス映画に大変期待を持っております」。トニー・ガトリフ団長の監督作『ジェロニモ-愛と灼熱のリズム』を上映。

【セバスチャン・ベベデール監督】
「フランス映画祭の代表団の一員として来日できて、本当に嬉しいです。小津安二郎監督や是枝裕和監督が好きです。フランス映画も日本映画も私にとっては重要な映画人です」。セバスチャン・ベベデール監督作『2つの秋、3つの冬』を上映。

【マルク・フィトゥシ監督】
「私も来日できて本当に嬉しいです。今年この映画祭に選ばれた作品は、幅広いジャンルを網羅し、質の高い、海外で紹介する価値のあるものばかりです。コメディを日本の皆様がどのように受け止めて下さるのか、リアクションを見るのが楽しみです」。マルク・フィトゥシ監督作『間奏曲はパリで』を上映。


 ――― 今年はなぜ女優や男優のゲストが少ないのですか?
サロメ氏:昨年は豪華キャストでしたが、毎年は揃えるのは難しいです。男優も女優もスケジュールの関係で来日できないことが多いのですが、来年はまた頑張ってオファーしてみます。今年も一所懸命オファーかけたのですが…その代わり、女性監督をはじめ、いろんな世代の多才な監督に来てもらいましたので、新しいクリエイターたちにフォーカスして見て頂きたいです。

――― 開催時期ははやり6月ですか?
ジョルダーノ氏:秋の東京国際映画祭でもフランス映画を紹介して頂けることになりましたので、時期的にもカンヌ国際映画祭とトロント国際映画祭の中間ということで、6月開催の予定です。

――― 暴力シーンの表現について?
0627-k-4.jpgガトリフ監督:フランス映画は暴力的なものばかりではありません。人道主義的なものや多様な民族を扱った作品もあります。フランスは多様な民族がある分、言語や文化を大切にしています。戦争や暴力よりもっと語るべきことがあるのです。暴力シーンがカッコ良く美しく見えてしまい、人の心を惹きつけてしまうのは危険なことだと思います。私は暴力を無視することはないが、音楽や踊りで表現するようにしています。暴力と距離を置いて表現したい。
 

0627-k-3.jpgベベデール監督:暴力は、多くの監督が関心のある題材ですが、私の作品では直接ではなく潜在的に描いています。例えば、経済的に闘っている人々とか…30代の若者がこの経済戦争の中、レジスタンスのように闘いながら生きている様子を描いています。本物の戦争ほど大変ではありませんが、何とか抵抗している若者を描いているのです。


 

0627-k-5.jpgフィトゥシ監督:暴力はスペクタクル的に美化して見せるものではないと思います。『素顔のルル』では家庭内暴力を描いていますが、直接描かなくても成功しています。私の監督作『間奏曲はパリで』では、わざと争うシーンを見せずに、紛争を解決する優しさを挑発的に描いています。

ガトリフ監督:暴力という意味では、インターネットの方が悪影響を与えています。映画は全く違うテクチャーで表現しているので、むしろ人間性を高めるためのもの。映画は、もっと優しい人間性と寛容さがあることを表現すべきです。

(河田 真喜子)