『イタリア映画祭2014』を見終えて(+大阪会場でのおススメ)
(イタリア映画祭公式サイト⇒ http://www.asahi.com/italia/2014/)
~“世界最高の水準”をいくイタリア映画の醍醐味を満喫~
今年のGWもイタリア映画祭を満喫することができて嬉しい。4月26日(土)~29(火・祝)、東京は有楽町にある朝日ホールにて14本の新作が上映された。最初、マフィアの血の歴史を少年の成長と共に軽妙に描いた『マフィアは夏にしか殺(や)らない』の面白さに驚き、最後、見たこともないローマの美しい映像に圧倒された『グレート・ビューティ/追憶のローマ』で締めくくった。興奮覚め止まぬまま、帰りの新幹線に飛び乗った。大阪はどしゃ降りの雨だったが、『地上5センチの恋心』(06仏)のカトリーヌ・フロではないが、身も心も宙に浮いているような気分で、全く気にならなかった。
今回の上映作品は、大変ユニークで充実したラインナップとなった。シチリアを舞台にした①『マフィアは夏にしか殺(や)らない』、②『サルヴォ』、③『存在しない南』の3作品は、マフィアを題材にしながら、それぞれ全く違うアプローチの仕方でマフィアの恐怖に迫り、強烈な作家性を感じさせる作品となった。ローマを舞台にした人間模様が描かれた④『グレート・ビューティ/追憶のローマ』、⑤『無用のエルネスト』、⑥『フェデリコという不思議な存在』、⑦『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』、⑧『自由に乾杯』、⑨『ようこそ、大統領!』の6作品。⑧と⑨は、政治の世界を容赦なく風刺するというイタリアの伝統芸で楽しませてくれる。また、スター俳優を揃えた⑩『南部のささやかな商売』では、偏見や人生の再生を軽やかに謳いあげて楽しい。
⑪『ミエーレ』では、カトリック教国イタリアではまだ十分に理解されていない安楽死問題を、人間の生き方も合わせて問いかけている。⑫『いつか行くべき時が来る』では、ブラジルのアマゾン川流域を舞台に、イタリアからやってきた傷心の女性の変容を描いている。⑬『初雪』では、イタリア北部のアルプスに近い自然豊かな地方を舞台に、アフリカからの移民を通して心に傷を負った家族の在り方を考えさせる。⑭『多様な目』では、各地で前向きに生きる視覚障害者たちの姿を通して、気付かなかった新たな世界を見せてくれる。
ひとつ残念だったのは、リッカルド・スカマルチョ(34)とジャスミン・トリンカ(33)という美男美女のゲストの来日が叶わなかったことだ。『昼下がり、ローマの恋』や『赤鉛筆、青鉛筆』(8/23~『ローマの教室で~我らの佳き日々~』というタイトルで公開決定!)『ローマでアモーレ』などできらめく瞳で魅了するリッカルドと、今回の上映作品中『ミエーレ』『いつか行くべき時が来る』の2作品に主演しているナイーブな美しさが印象的なジャスミンに会いたかった!
それでも、昨年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』のジャンフランコ・ロージ監督をはじめとする、8人のゲストによるアフタートークは充実していた。特に、『南部のささやかな商売』を監督した俳優としても有名なロッコ・パパレオ監督は、他の作品の上映会にも参加して、アフタートークではちょっとおかしな質問で会場を笑いで包んでくれた。彼自身のアフタートークでは、“アザラシダンス”!? なるものを披露してくれて、観客総立ちで踊る!という前代未聞のアクシデントが起こった。(後日レポートします)
今年は作品も充実していたが、観客動員数も昨年より明らかに多かったように思う。アフタートークでは客席から盛んに質問が上がった。イタリア映画についてだけではなく、邦画と比較した質問や、世界の社会問題についてなど多岐に渡り、観客の映画への関心の高さが感じられた。
フランス映画祭のゲストトークなどでよくお見掛けする映画評論家の秦早穂子さんにお会いすることができた。「イタリア映画祭の方がよく来るのよ」と言われたのは意外だったが、見終えてみて、その理由がよく分かる気がした。フランス映画祭は、バラエティに富んだラインナップで、ゲストも有名女優が団長を務めることもあり全体的に華やかで、若い客層にも人気がある。だが、作品の人物描写やテーマ性に言及すると、イタリア映画祭のラインナップの方が充実していると思う。
大阪では5月10日(土)・11(日)にABCホールにて7本が上映される。あの固い椅子のABCホールで7本全部見るのは健康上良くない。せめて、座布団持参で見に行ってほしい。そこで、全部見られない方のために、おススメ作品を下記にご紹介したい。
・5/10(土)12:30~①『ミエーレ』、15:15~②『マフィアは夏にしか殺(や)らない』
・5/11(日)13:40~③『ようこそ、大統領!』、16:05~④『自由に乾杯』
(フェデリコ・フェリーニ監督に興味のある人は11:00~『フェデリコという不思議な存在』 もおススメ。でも、この作品はエットレ・スコーラ監督によるフェリーニ監督へのオマージュが捧げられた逸品なので、一般公開される可能性は高いと思われます。早く見たい方は頑張って見て下さい。)
★シネルフレでは、順次作品紹介やアフタートークの模様をレポートしていく予定です。
(河田 真喜子)