「おおさかシネマフェスティバル2013」が3月3日(日)、大阪・谷町四丁目の大阪歴史博物館に満席の280人を集めて行われ、ハイライトの表彰式では主演女優賞・高橋惠子さん、主演男優賞・井浦新さんら豪華ゲストの顔ぶれの登場に歓声とため息が巻き起こった。
同フェスティバルは今年も早くにチケットが完売する人気。高橋聰同委員長のあいさつの後、午前10時10分からベストワンに選ばれ2012年度の「作品賞」に輝いた『かぞくのくに』を上映。終了後にはヤン・ヨンヒ監督、井浦新さんにおおさかシネマフェスティバルの顔、浜村淳さんが加わってトークショーが行われた。
監督の経験をもとにした題材の映画化に「北へは帰れなくなり、始末書を書けとも言われました。だけど映画は自由であるべき。政府公認の問題児になろうと決意しました」とヨンヒ監督。井浦新さんは「監督から電話をもらってうれしかった。監督が信頼してくれていると感じながらやれた」。大阪出身の監督には故郷での受賞の意味は大きいようで、感激しきりだった。
昼食休憩後、午後1時からの表彰式では、同映画祭の創立メンバーでもある大森一樹監督が1月15日に亡くなられた大島渚監督追悼の思いを話された後、故・若松孝二監督に特別賞を贈呈。昨年、若松監督の『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』に主演した井浦新さんが代わって受賞。若松組の常連の水上竜士さんも登場され、井浦新さん、浜村氏とお三方で若松監督の思い出話を繰り広げた。水上竜士さんは「最後までおっかなかった。いつもおせーよ、このヤローという調子だったので、いつもスタンバイしてましたね」。井浦新さんは「60、70年代の歴史を題材に作っている人でした。もっともっと作ってほしかった」と偲んでいた。
<表彰式ハイライト>
【主演女優賞】高橋惠子『カミハテ商店』
「主演は23年ぶりで、初めての主演女優賞。映画を作った学生と喜びを分かち合いたい。山本監督のおかげで初心に帰って楽しめました。私としては新たな女優としてのスタートが切れます。プロデューサーの夫(高橋伴明監督)に感謝したい」。
【主演男優賞】井浦新『かぞくのくに』『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』
「三島由紀夫をやらせてもらって、実在の人物に頭を抱えてましたが、(若松)監督からナ ゾる必要はない、お前がやりたいようにやれ、と言われて、ボクなりの日本の美を追求しました」。
【助演女優賞】松原智恵子『「わたし」の人生?我が命のタンゴ』『私の叔父さん』
「和田秀樹監督の2作目です。認知症の女優ですが、可愛い女性の役。タンゴでよくなる希望が出てくるんですね。みなさんに知ってもらいたいと思ってやらせてもらいました。仕事はどんな役でも楽しんでやりたいと思ってます
【助演男優賞】青木崇高『るろうに剣心』『黄金を抱いて翔べ』
「大阪・八尾の出身で、三池崇史監督、天童よしみさん、河内家菊水丸さんらがいますが、 これからは私が代表できるようになりたいですね。これはキツイなという役の方がありがたい。これの受賞を機に大きくなりたい」。
【新人女優賞】宮嶋麻衣『とめ子の明日なき暴走』
「映画はワクワクしてやらせてもらった。今、このような賞をもらって夢がひとつ叶った。 信頼される女優になりたいですね」。
【新人男優賞】五十嵐信次郎『ロボジー』
「新人男優賞に選んでくれてありがとう。って130本出てるんだぜ。五十嵐信次郎という芸名は中学高校時代に考えて一度使ってみようと思っていた。シャレのつもりで出て、そのシャレをわかってくれてシャレ賞もらえたのがうれしい」。
【監督賞・作品賞】ヤン・ヨンヒ『かぞくのくに』
「今でも母親は鶴橋で、毎日、にんにく焼いて食べてます。次の映画は企業秘密ですが、同じく家族の映画で自分の家族ではありません」。
【脚本賞】西川美和『夢売るふたり』
「この映画で受賞できるなんて、おおさかはなんて素晴らしい。夫婦の物語をやりたくて、2人の犯罪に走る特別な感情を出したかった。おおさかの市民映画祭は雰囲気がとてもいいですね」。
【音楽賞】谷川賢作『カミハテ商店』
「(詩人・谷川俊太郎の息子だが)小学校の時に詩を書いたが、才能がない、と悟ったのでミュージシャンになった。『カミハテ商店』は情緒を抑えて、ブラジルの楽器ビリンバウを使ってドライな感覚で作りました」。
【新人監督賞】山本起也監督『カミハテ商店』
「この歳で新人は恥ずかしいですが、映画を志したのが34歳のときなので。“北白川派”の映画は学生さんに教室の中で教えるよりも、映画を作ってしまおうということでやってます。現場は8割が学生さん。『カミハテ商店』は徹底的に寡黙で無愛想に作りました。評価されてうれしい」。
【撮影賞】木村大作『北のカナリアたち』=代理受賞 東映宣伝・井川洋一さん
「『北のカナリアたち』はおかげさまで100万人を動員しました。今日はぜひ出席したかったのですが、次回作の準備のため行けなくなって残念です。今回はどうもありがとう」。
【外国作品賞】『アーティスト』(一色真人 ギャガ株式会社西日本配給支社支社長)
「3D時代にモノクロ、サイレント映画。当たる感じはなかった。でも、逆にそこが新鮮だったのでは」。