日越外交関係樹立 45 周年記念し、全13作品を上映する「ベトナム映画祭2018」が10月6日よりシネ・ヌーヴォで開催される。
アジアフォーカス・福岡国際映画祭や大阪アジアン映画祭で、近年活況を呈しているベトナム映画の中から、最新ヒット作が日本に紹介されてきたが、映画祭と銘打ちベトナム映画だけを一挙に上映するイベントは今回が初開催となる。
作品選考を務めたのは、アジアフォーカス・福岡国際映画祭でディレクター(第 1 ~16 回)を勤めた映画評論家の佐藤忠男氏。今回も郷愁を誘う作品から、ベトナム映画史に名を刻む必見作、そして最新ヒットエンターテイメント作品まで全13作品がラインナップ。60年代からベトナム映画界を牽引してきたダン・ニャット・ミン監督の実話を基にした感動作『焼いてはいけない』(09)は無料上映される。
また、10/6(土)12:35『The Rebel 反逆者』の回上映後には、東南アジア映画史研究者の坂川直也さんによるトークショーも開催予定だ。
今、アジアの中でも目覚ましい成長を遂げているベトナム映画の世界をぜひ体感してほしい。注目作を中心に、上映作品をご紹介したい。
『ベトナムを懐う』(17)
ベトナムのスーパー・ヒーロームービー『超人X』(15 ベトナム映画祭2018でも上映)で話題を呼んだグェン・クァン・ズン監督作品。第11回大阪アジアン映画祭では、『超人X』の他、『レディ・アサシン』も上映された。今年の東京国際映画祭では最新作の『輝ける日々に』(『サニー』ベトナム版)も紹介されるベトナム映画界のヒットメーカーだ。
愛する妻亡き後、家を処分し息子の元へやってきたトゥは、老人ホームに入居させられるが、妻の命日に供養をするべくホームを飛び出し、息子の家に転がり込む。彼の誕生日を手作りケーキで祝おうとしていた孫娘のタムは、突然現れたトゥに怒り心頭。トゥは家を飛び出してしまうのだが・・・
95年ニューヨークから始まる物語は、ベトナムを離れ、アメリカで生きることを選んだ息子家族と、親世代との世代間の溝や、伝統を継承することの難しさ、故郷への向き合い方の違いなどが描かれる。トゥと幼馴染、そして若き日の妻の3人のベトナムでの青春時代も交差して描かれ、雪の降るニューヨークとは対照的な、懐かしい時代のベトナムの風情を味わえる。戦争に愛する人を送った気持ち、祖国を離れざるを得ず、命がけでアメリカに渡った息子の気持ち、そして苦労した父親を思う娘の気持ち。他人に口にすることなく、心の中にしまってきた気持ちを打ち明けたとき、真の家族として繋がれる。辛い歴史や、国を超えて、お互いを思いあえるようになる家族の姿を、90年代からベトナム国内で演じられ続けてきた戯曲をもとに描いた作品。
『漂うがごとく』(09)
大阪アジアン映画祭で日本初公開された『大親父と、小親父と、その他の話』(15)のファン・ダン・ジー監督が脚本を務めた作品。第66回ヴェネツィア国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作。トラン・アン・ユン監督の世界観を彷彿とさせる男たちの中で揺れ動く女性の心情を美しく描いた作品。監督のブイ・タク・チュエンはTPDベトナム映画発展支援センターで若手映画人の指導にもあたっている。
●1922年の仏領インドシナを舞台に、アクション映画の歴史を変えたと言われたベトナム初の本格的なカンフー映画『The Rebel 反逆者』(07)※日本初上映
●高校卒業したばかりの仲良し3人組の恋愛模様を、ベテラン陣も交えて描くMBC-Studio(朝日放送とベトナムMBCコーポレーションなどが設立した合弁会社)製作の青春映画『ひと夏の初恋』(18)※日本初上映
●北海道・東川町を舞台に、ベトナム人スタッフ、キャストとともに、阿久津貴文らが参加。すでに公開されているベトナムで話題を呼んでいる夏の終わりのラブストーリー『目を閉じれば夏が見える』(18)※日本初上映、日本公開予定
●ベトナムで最初のインディペンデント作品。ベトナム北部の山岳地帯に住む少数民族・モン族の心の成長を鮮やかに描く『モン族の少女 パオの物語』(07)
●山形ドキュメンタリー2017コンペディション部門ノミネート作品。ベトナム戦争で離散した家族の日常を固定したカメラで長く撮影し、写真的アプローチを試みたドキュメンタリー『ニンホアの家』(16)
●2016年ベトナムで『ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を超える大ヒットを記録した落合賢一監督(ディーン・フジオカ主演『NINJA THE MONSTER』)によるアクション・コメディ『サイゴン・ボディガード』(17)(2017年<カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2017>にて上映)
●ファンタジーあり、アクションあり、SFありのトップ俳優共演による大ヒットエンターテイメント作品『フェアリー・オブ・キングダム』(16)(第12回大阪アジアン映画祭上映作品)
●『フェアリー・オブ・キングダム』で妹カムを演じたニン・ズーン・ ラン・ゴックが主演。ベトナムの民族衣装、アオザイの仕立て屋を舞台にした感動作『仕立て屋、サイゴンを生きる』(17)(第13回大阪アジアン映画祭上映作品)
●1980年代後半のベトナムの村を舞台に、貧しくも家族が揃って暮らすティエウとその弟、そして父親と住む幼馴染のムーンの瑞々しい初恋や村のエピソードを描いた瑞々しい名作『草原に黄色い花を見つける』(15)(2017年劇場公開)
●『焼いてはいけない』(09)(無料上映)
2009年アジアンフォーカス福岡国際映画祭で福岡観客賞を受賞した作品を、NPO法人津山国際交流の会の協力を得て無料上映が実現。
ベトナム戦争中、野戦病院で働きながら綴り続けた女医、トゥーイの日記をアメリカ軍兵士が持ち帰り、35年後母親の元に返却された実話を基にした感動作。