「パリ」と一致するもの

MPL-550.jpg

wakaionna-550.jpg

orchestraclass-550.jpg

MI6-premia-550.jpg2018年、日本の夏に史上最大のミッション発令!

MI6-logo-500.jpg

トム・クルーズを筆頭としたMI6チーム来日!
日比谷の街中に劇中ヘリコプター登場!
前代未聞のジャパンプレミア開催!

「日本に来られることは本当に名誉なこと」 トム、日本への熱い感謝を伝える
<7月18日(水)ジャパンプレミア>

 
全世界累計興収3000億円以上(※1ドル=109円換算)、トム・クルーズが伝説的スパイ:イーサン・ハントを演じる大人気アクション映画『ミッション:インポッシブル』シリーズ。その最新作となる『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』が、8月3日(金)より日本公開いたします(全米公開7月27日)。


MI6-Tom-240-1.jpgすでに、パリ・凱旋門前を爆走する“バイクアクション”や、撮影中のアクシデントにより骨折を負ったことが大々的に報じられるも、見事な回復力によって驚異的なスピードで撮影を再開し大きな話題をさらった“ビルジャンプ”、2000時間の飛行訓練の末にトム自ら“ヘリコプター”を操縦した“超絶ヘリスタント”、上空7620mから時速320キロで落下する、トムが長年の夢だったという”ヘイロー(HALO)ジャンプ”など、世界を驚かせ続けるトム・クルーズ自らが、ノースタントで挑む「全て、本物」のド迫力のアクションは本作でも健在! “フォールアウト=予期せぬ余波”というタイトルと、これまでイーサンが挑んだミッションすべてが本作の物語に繋がるというストーリーのさらなる拡がりに期待が高まっています。


この度、公開に先駆け、トム・クルーズを筆頭にヘンリー・カヴィル、サイモン・ペッグ、クリストファー・マッカリー監督の4名がプロモーションの為に来日し、ジャパンプレミアを行いました。

 


★『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ジャパンプレミア 概要

日時:7月18日(水) 17:00頃 場所:東宝ミッドタウン日比谷日比谷ステップ広場
登壇者:トム・クルーズ、ヘンリー・カヴィル、サイモン・ペッグ、クリストファー・マッカリー監督


MI6-premia-500-1.jpg<ジャパンプレミア内容>

トム・クルーズが、ヘンリー・カヴィル、サイモン・ペッグ、クリストファー・マッカリー監督らとともに、本作のプロモーションのために来日しました。トム・クルーズの来日は『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』以来約2年ぶりにして実に通算23回目!トム演じるイーサンの前に立ちはだかる敏腕CIAエージェントのウォーカーを演じたヘンリー・カヴィルは『マン・オブ・スティール』(13)以来5年ぶり、前回『スター・トレック BEYOND』(16)の来日時に一際大きな声援を浴び日本での大人気ぶりを示したサイモン・ペッグは約2年ぶり、そしてトム絶大の信頼のもとシリーズ初の続投監督を務めたクリストファー・マッカリー監督は前作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(15)以来3年ぶりとなります。


7月17日(火)に、一行が羽田空港に到着すると、待ち構えていた約1000人のファンは大熱狂!白熱した雰囲気の中、キャスト、監督それぞれが、一人ひとり丁寧にファンサービスを行いました。その中で一番ファンが白熱していたのがトムの神対応のファンサービス!いつまでもおさまらぬ、来日史上最大規模の熱狂ぶりに、トムの不動の人気ぶりを証明しました。


当日18日(水)の夕方からは、ジャパンプレミアが行われました。


スチール、ムービー合わせ、約130名程のマスコミと、会場内のプレミア招待客500名と、トムを一目でも見ようと会場周囲に集まったファン合わせて約1000人が待ち構える中、トムを筆頭にレッドカーペットに登場したキャスト、監督がそれぞれに登場すると、ファンは大熱狂!


MI6-Tom-500-2.jpgレッドカーペット上で、トムは「とても興奮しているよ !信じられないくらいワクワクしている。日本のファンとは温かい関係が築けていると、来日する度に感じているんだ。日本のファンが作品を観てどんな反応をみせてくれるのか期待しているよ」とコメント、続いてヘンリーは「日本の歴史や文化がとても好きなんだ。こうやって仕事じゃなくて、今度は是非休暇で来たいね」、サイモンは「前回来日したときよりも暑いね(笑)日本は毎回来るのが楽しみなんだ。どんなときでも来たいと思っているよ」、マッカリー監督は「前回よりも暑くないから少し快適だ(笑)日本が大好きだよ。作品は本国で今とても良い反応を得られていて、非常に誇りに思っている。みんなが一生懸命取り組んでくれたお陰だね。前作の反応がとてもよかったから、続編を担当する監督は大変そうだなんて思っていたら、結局自分がやることになったわけだけど(笑)」とそれぞれにコメントを寄せました。


また、マスコミの取材をこなしたあとは、その熱狂ぶりに応えるように、一人ひとり丁寧にファンサービスを行い、ワールドプレミア時と同様にカーペット上ですれ違うと声を掛け合うなどし、仲睦まじい様子もみせました。その丁寧で優しさ溢れる対応に、ファンは「来れてよかったね~!」と口にするなど大興奮!今年最高の猛暑が東京を襲った中、約2時間にもわたるファンサービスを終えた後、ステージイベントが行われました。


MI6-Tom-500-1.jpg作品の中で登場する同系列モデルのヘリコプターと、今回のジャパンプレミアの為に、ドイツから日本に送り届けられたという、本作仕様のBMW M5モデルが華を添えるステージに、ヘンリー、サイモン、マッカリー監督が登場し、再び観客から大歓声があがる中、突如ヘリが霧に包まれ、そこからトムが登場!すると、会場のボルテージは最大MAXに!


本作の完成を待ちわびていた日本のファンに向けて、トムは「こんばんは、よく来てくれました!とても暑いけど、温かい歓迎に本当に感謝しています。これが日本だね!みんな大好きだ!ベストを尽くしてつくった映画です。きっとワクワクするはず!みんなの為につくったよ!」とコメントすると、ファンからは「トーム!」「I love you !」といった声が多数あがりました。


MI6-premia-240-2.jpg続いてヘンリーは「僕は君を上回る日本好きなんだからね」と横目でトムをみながら話はじめ「日本のみんなのことが大好きです!歴史や伝統が豊かな国だし、もっとゆっくり来てみたいです」といい、続けて「今度マッカリー監督の、日本を舞台にした、トムが主演の、勿論僕も出演する、サイモンにも一役買ってもらって(笑)映画をつくれればと思うけどどう思う?」とファンに呼びかけると大きな拍手が向けられました。


日本語で「コンニチワ!」と挨拶したサイモンは「日本の全てが好きです!みんなこの暑い中、すごい熱気で迎えてくれて、その忍耐力はたまらなくクレイジーだと思うけど(笑)熱烈な応援に感謝します。早く観てもらいたいな!」とコメント。


「この面子で最後に挨拶となると、もう何もいうことなくなっちゃうな(笑)」と笑うマッカリー監督は「日本大好き!本当に来てくれてありがとう!」とコメントを寄せました。


MI6-Tom-240-2.jpg 一歩間違えれば命に係わる、ノースタントでのアクションが注目を浴びている本作ですが、そのこだわりについてトムは設置されたヘリに近づき、撮影を思い出すように機体を触りながら「このヘリはとても楽しんで操縦したんだ。急降下してスピンもしたよ!ヘリが僕のことをよくめんどうみてくれて、こうやって無事に撮影を終えることができたんだ」と明かしました。


世界的大ヒットシリーズにはじめて参加したことについてヘンリーは、「このような人気シリーズに参加できること自体光栄だし、この素晴らしいキャストたちと共演できたこと、そして、最高の監督であるマッカリーと仕事ができたことを本当に嬉しく思っているんだ。その中でも、トムと毎日顔を合わせることということが一番スペシャルな出来事だった。トムは優しく寛大で親しみのある人物だ。朝、互いのファーストネームを呼びながら挨拶する日が訪れるなんて、とてもクールな経験だったよ」と感無量の様子で語りました。


MI6-premia-500-2.jpgシリーズを重ねるごとに役割が多くなってきている大人気キャラクターであるベンジーですが、次回作ではスタントもやってしまうのでは?といった質問が及ぶと、サイモンは「実は全て僕がトムのマスクを被って演じていたんだ。大きな格闘シーンがあるんだけど、生きながらえるか是非スクリーンで確認して!」とユーモアたっぷりに回答し笑いを誘いつつ、「ヘンリーが言うように、みんなとの仕事は特別な経験だ。超一流の役者と超一流の監督がいたからね」と語ると、トムもまた「僕もこれだけの素晴らしい俳優たちと一緒に仕事ができて、本当に幸せだった。毎日、撮影場所にいくのが楽しみでたまらかったよ。マッカリーと仕事することも大好きなんだ。本当に楽しいんだ!」と語ると、マッカリー監督もまた「ヘンリーは一生懸命で役者として素晴らしい。そして、イケメンだ(笑)サイモンだって、ハンサムだ!今回彼がこの作品において、人間らしさの部分を担ってくれている。でも、第一にトムなしでつくれなかったけどね!」と語るなど互いを称賛し合いました。


MI6-premia-240-1.jpgまた、トムとの仕事について質問が及ぶと、マッカリー監督は「トムとは、これまでに10年以上仕事をしてきたけど、実は正式に映画をつくろうと話したことはないんだ。だから何年もかけて貯めていたアイディアがこの映画にも含まれている感じなんだ。前作でトムがヘリにしがみついたシーンだって、最初はジョークだったんだよ!でもそれをトムは真剣に受け止めてしまった。今後はジョークでさえ気を付けないといけない(笑)自分で演出するにあたり、僕もヘリなどに乗らないといけないわけだから、二度とやらない!僕は面白くないんだ!」と茶目っ気たっぷりに回答し、会場は笑いに包まれました


また、マッカリー監督は、記者会見でも多く語られた、トムの骨折エピソードも披露!その驚愕のエピソードに会場からは驚嘆の声があがりました。最後にトムから「23回も日本に来ているなんて信じられない。初めて日本に来たことを覚えている。あのときも温かい歓迎を受けて、本当に感動したんだ。そのときのことを思い出しながら、自分はこんな良い人生をおくっているんだと今日改めて思った。みんなが楽しめるものを届けたいと思ってやってきた。その結果、みんなの楽しみの一つとして僕を選んでくれてありがとう。温かい笑顔をありがとう。素晴らしい会話をありがとう。こんなにも日本に来れることは本当に名誉なことだと思っています」と挨拶。その熱のこもった愛情たっぷりのコメントに、ファンは更なる拍手と歓声をトムたちに向けました。


またステージ上を去る前に、マッカリー監督の妻と娘をステージ上に呼び、紹介を始めたトム。「このふたりの助けがなければ、この映画はつくることができなかった。彼女たちは本当に素晴らしいんだ」と拍手をおくる場面もみられるなど、トムの愛情深く、誠実な一面も垣間見らました。去り際までも「トムー!」「ヘンリー!」「サイモン!」「I love you !」「Thank You !」と歓声は続き、このジャパンプレミアの様子を生中継していたTwitterライブの視聴数は200万人を超え、国内映画業界最高数値レベルを叩き出し、さらに、Twitterトレンドにもあがるなど、現場以外での場所でも大盛り上がりの中、ファンも大満足のジャパンプレミアは幕を閉じました。


MI6-butai-550.jpgジャパンプレミア後には、日本最速の一般試写会が行われ、その舞台挨拶が行われました。 満席の会場に登場するとジャパンプレミアに負けないほど大きな歓声で迎えられたトム一行。トムは「早く観てほしくてウズウズしている!」と興奮を隠しきれない様子でいい、サイモンは「また日本に戻ってこられて嬉しい!これから観てもらうのが待ち遠しいよ!」、ヘンリーは「大変長らくお待たせしました!一年間という長い時間をかけてつくりました。才能ある役者と監督と仕事ができて、最高に幸せだし、人生において最高の経験となりました。愛すべきリーダーでもあるトムに、僕は思い出させてもらったことがあります。それは、映画はみんなの為につくっているということです」と熱く語りました。また、マッカリー監督は「トムはベストパートナーでもあり親友だ。サイモンは二作半、一緒に仕事をしていて友人だし、今作をきっかけにヘンリーとも友人になった。このように友人と一緒に仕事ができることを本当に幸せに感じる」と語り、トムをはじめとしたキャスト陣との絆を感じさせました。


最後にトムが「上映開始だ!みなさん是非楽しんで!アリガトウゴザイマシタ!」と最後は日本語で挨拶。登壇中は、サイモンがコメントしているにも関わらず、トムがファンに対しずっと手を振っていたことで、サイモンから「僕のトーク中にやめてよ!」とツッコミが入ったり、ヘンリーが熱く語った後、マイクで拍手をし、音をパタパタと鳴らすなどして笑いを誘う場面もみられるなど、和気藹々とした雰囲気に包まれたまま舞台挨拶は終了しました。
 


『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

原題:MISSION:IMPOSSIBLE -FALLOUT日本公開:8月3日(金)全米公開:7月27日(金)予定
監督・製作・脚本:クリストファー・マッカリー『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』『アウトロー』
製作:J.J.エイブラムス『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『スター・トレック』シリーズ、トム・クルーズ
出演:トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、ヴィング・レイムス、レベッカ・ファーガソン、アレック・ボールドウィン、ミシェル・モナハン、ヘンリー・カヴィル、ヴァネッサ・カービー、ショーン・ハリス、アンジェラ・バセットほか
公式Facebook:https://www.facebook.com/missionimpossibleJPN/
公式Twitter:https://twitter.com/mimovie_jp(#mijp)
公式サイト:http://missionimpossible.jp/
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

8月3日(金)~全国ロードショー(2D/3D/IMAX/4D)


 (オフィシャル・レポートより)

pain1.jpg

623日にフランス映画祭2018にて日本初上映されたエマニュエル・フィンケル監督最新作『Memoir Of Pain/メモワール・オブ・ペイン(英題)』(20192月劇場公開)。映像化は不可能と言われたマルグリッド・デュラス(『ラマン』)の『苦悩』を映画化した本作、ナチス占領下のパリを舞台に、デュラス本人の長く辛い愛と苦悩の日々を描いた歴史ドラマだ。主人公のマルグリッド・デュラスを演じたメアリー・ティエリーさんが、上映後のQAに登壇し、フィンケル監督との再タッグが実現した本作について語った。

 

デュラス役はオーディションだったというティエリーさんは、「オーディションの結果が出るまで何カ月も待つこと自体が、耐えがたく長く続いた”苦悩”でした。判決を待つような苦悩の数ヶ月でしたが、役が決まってからは、一緒に仕事をした監督なので、尊敬もしていますし、とてもうれしく思いました」とデュラス役を射止めるまでの心境を語った。

 

pain2.jpg

 

さらに、「役者は常にいい役を待っています。もちろん過去に素晴らしい役をいただいていますが、今回、色々な思いから、こういう物語を語るのに参加したいと思いました。特にこういう素晴らしい監督に一度出会うと、10年ごとでもいいからまた協力して作品作りをしたいと思うのです。中でも、今回私をキャスティングしてくださったフィンケル監督は、初めて再びご一緒できた監督。今までは2回目に声がかかることがなかったので、私の演技が監督をガッカリさせてしまっていたのではと不安でしたが、今回安心しました」と、初の再タッグを心から喜んでいることを明かした。メアリーさんから見たフィンケル監督は、「人間的、芸術的にも素晴らしい人。他の映画監督とは違う独自の哲学を持っていますし、映画作りの手法やポリシーなど本質的な深い部分をこだわって撮る素晴らしい監督です。一緒に仕事をすると激しいぶつかり合いもありますが、結果として残るのは非常に奥深く訴えかける、心に残る作品なのです」と絶対の信頼を寄せていることを表現した。

 

7.ladouleur_main.jpg

pain3.jpg

実際に、有名作家のデュラス本人役を演じる上で内面を作る必要を感じたというティエリーさん。原作の映画化であっても、あくまでもフィクションであることを強調し、「舞台となる45年当時はまだかの有名なデュラスではなく、大成する前の時期。インドシナで生まれ育ったデュラスですが、偉大すぎる彼女を演じなければならないということではなかったのです」と、意識しすぎなかった様子。色々な人から役作りに役立つアドバイスをもらい、監督自身もインスピレーションを与えてくれたのだという。「デュラスを演じることは重い任務でした。実際のデュラスは私よりもっと知的ですが、やはりデュラスになりきる方が過ごしやすかった。毎日帰宅して『これは絶対にいい作品になる』と思えた、素晴らしい現場でした」と作品の手応えを感じながらの撮影を振り返った。

 

また出征した家族や、ゲシュタボにより捕らえられた家族が戻るのをじっと待つしかなかったパリの女性たちの目線で描かれていることについて、メラニーさんはそれがフィンケル監督の意図であると明言。戦時中を描く映画が多岐にわたる中、新しい視点をもたらす必要があったとして、今回、現在のパリに通じるような映し方や、今まで焦点が当たらなかった”待っている女性”に光を当てたフィンケル監督の視点を支持していることを明かした。『苦悩』の映画化はフィンケル監督の個人的な思い入れが強かったことにも触れ、「フィンケル監督のお父さんは、自分ひとり何カ月も隠れて生き残り、家族は戦争で連れ去られてしまい収容所で亡くなってしまったという体験をしています。ずっと戻らない家族を待ち続けている父親の姿を、フィンケル監督は子供心ながら見て育ったのです。身近に”待っている人”を見ていたことから、今回映画化して、待つ女たちに焦点を当てることができました。フィンケル監督にとっても、非常に思い入れが強い作品になったと思います」とフィンケル監督の本作への思いを代弁した。

 

最後に恋多き女性だったというデュラスを中心にした物語を振り返り、「色々な体験をされてきた方。原作では位置づけがわからなかった登場人物も、映画ではもう少しデュラスと深い関係にあるように変えています。当時は、恋愛もオープンで、夫にも愛人がいたりと皆が好き勝手にやっていた時代。自由に恋愛しながら、お互いが絡み合っていたのです」と締めくくった。

 

 

pain4.jpg

レッドカーペット&オープニングセレモニーでも、スカーフをポイントにしたパンツスタイルにショルダーバッグとオシャレ度満点だったメラニー・ティエリーさん。危険な駆け引きにも動じず、なんとかして愛する人の消息を知ろうとする女性像を毅然と演じ、その精神力の強さを見せつけた。主人公のデュラス同様、観客もじっと待つ物語は、時に重い気分にもなるが、それこそが当時のデュラスら女性たちの境遇を体感するという監督の狙いなのかもしれない。男たちが支援したくなるような強かさも持ち合わせた若き日のデュラスを、来年劇場でぜひ堪能してほしい。

(江口由美)

 


フランス映画祭2018 Festival du film français au Japon 2018 
◼ 期間:6月21日(木)~~6月24日(日)
◼ 会場:みなとみらい地区中心に開催
(横浜みなとみらいホール、イオンシネマみなとみらい)
■主催:ユニフランス
■公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2018/

 

 

 

 


 

 

 
 

vision.JPG

「吉野にいることはホームにいるようなもの」ジュリエット・ビノシュ、吉野への感謝を語る。『Vision』初日大阪舞台挨拶 
(2018・6・8 大阪ステーションシティシネマ) 
登壇者:ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、河瀬直美監督 
 
『あん』『光』の河瀨直美監督が、フランスの大女優、ジュリエット・ビノシュを迎え、吉野の山深い森を舞台に撮影した最新作『Vision』。6月8日に大阪ステーションシティシネマで行われた公開初日の舞台挨拶では、主演ジャンヌ役のジュリエット・ビノシュ、山守の男、智役で河瀬監督とは3度目のタッグとなる永瀬正敏、そして河瀨直美監督が登壇した。ジュリエット・ビノシュは今回が初となる大阪での舞台挨拶で、白いロングドレス姿で会場に現れると、観客から大きな拍手が送られた。
 
 
Vision-550.jpg
 
カンヌ国際映画祭での出会いがきっかけとなり、実現した本作。二人の橋渡し役になったプロデューサーのマリアン・スロットさんもビノシュと共にパリから来場するなど、日本=フランス合作ならではの熱気が漂う中、河瀬監督はビノシュの知られざる一面として「爆買いしていました。職人の細やかな作業に共感し、吉野伝統の手漉き和紙や、醤油、あとは私の下着が奈良のオーガニックコットンのお店のものなのですが、そこで下着も爆買いして帰国していました」とチャーミングな点を明かす一方、「仕事に対する姿勢がプロフェッショナルで、研ぎ澄まされていて、“一流”という言葉がしっかりあてはまる。非常に女性として尊敬できる方」とその仕事ぶりに賛辞を送った。さらに奈良にこだわって映画を作り続けることについては「奈良は私が縁あって生まれ、暮らしている場所。離れる理由はありません。作家にとっては、そこを深く掘り下げることに世界とつながります。映画祭でみなさんとお話するにつけ、その思いが強くなりました」。
 

DSCN7153.JPG

撮影中は吉野町の宿坊で暮らしていたというビノシュは、当時の生活を振り返り、「吉野の生活は本当に静けさの中、友情を感じ、自然と自分がつながったという気持ちで滞在していました。宿坊の神主さんもとても良くして下さり、吉野の雰囲気や大きな木、空気感、光を堪能しました。私が和紙をたくさん買ったのは、私自身が絵を描く人間で、自分のために買ったので、まだ誰にも渡していません。絶対再開しようと思っています。吉野は伝統文化がすごく残っていて、それが感動的でした。吉野にいることは、ホームにいるようなもので、家族的な雰囲気を感じますし、愛され、守られているという気持ちでした。まさに『Vision』という映画を象徴していると思います」と特別な体験になったことを明かし、感謝の気持ちを表現した。
 
さらに、河瀬監督の撮影方法にも言及し、「とても緻密。河瀬直美さんは預言者です。彼女の物の見方や存在の仕方が、『預言者だな』と思わせます。本当に素晴らしい出会いでした。他の共演者の皆さんも素晴らしかったですが、なかなかお話できなかったのは、河瀬監督のご希望で『私語は謹んで』と言われたからです。永瀬さんは、とてもおもてなしの心があり、デリケートな方。少しシャイですが、私を迎えてくれました。映画は順撮りで、愛や慎み深い精神、そして希望を感じながら撮影をしました」と、当時を振り返った。
 
 

DSCN7165.JPG

河瀬監督から、「千太郎(『あん』)のときは河瀬組の洗礼を受け、共演者と朝挨拶ができないことにストレスを感じていたようですが、吉野ではすっかり河瀬組の顔となり、河瀬組初めての俳優たちにも先輩としてアドバイスしてくれました。 特に岩田君は一緒に泊まったり、真木割りを教えたりしてくれたので、この二人は大丈夫だと思いました」 と熱い信頼を寄せられている永瀬。今回の現場でもあまり話さなかったのも演出の一つとしながら、「役者同士が素に戻って会話をすると、気持ちが切れてしまいます。河瀬監督のやり方は『役を生きる』というやり方ですから、ジュリエットさんは撮影中、なぜこの人はしゃべらないのかと思われたかもしれませんね。 今日、明日いっぱいしゃべらせてもらいます」とシャイも演出の内だったことを明かした。
 
 
Vision-500-2.jpg
 
初日舞台挨拶ならではのサプライズも用意され、お客様からの花束贈呈や、逆にキャストからご来場のお客様に吉野杉の苗木をプレゼントする趣向も。さらに、「三代目J Soul Brothers」の岩田剛典演じる鈴の赤ちゃん時代役として映画に出演した夏葉ちゃんがお母さんに抱かれて登場。撮影前日に山形を訪れていた河瀬監督が、山形空港で偶然出会い、飛行機に乗っている間ずっと様子を観察して「飛行機の中で一度も泣かなっかったんです。母の愛情に育まれてそこにいる感じがして、飛行機を降りてから『映画監督の河瀬直美ですが、吉野の山に来ていただけますか。明日撮影なのですが』とお願いしました」とスカウト裏話を披露。終始ご機嫌な夏葉ちゃんに、ビノシュや永瀬も笑顔がこぼれた。
 
 
Vision-500-3.jpg
 
最後に河瀬監督は、「映画の初日舞台挨拶は東京が普通ですが、今日は本当に特別に関西から舞台挨拶をさせていただくことができ、しかもジュリエット・ビノシュさんは初めての関西での舞台挨拶です。そのように心を寄せてくださっているジュリエットは、この作品に心から入り込んでくださった。そしてパリから飛んできてくださった。その思いはこのフィルムに刻まれています。私たちはよく『やっと出会えた』と言っているのですが、それは私(河瀬)ということだけでなく、出会いたかったものに出会った経験だと感じています。最初、吉野を訪れるために近鉄電車に乗り、トンネルを過ぎた時にジャンヌは涙を流します。その涙の中に、きっと様々なことを共有し、この映画の美しい旅をしていってもらえると信じています。永瀬さんは、山の男、智を魂ごと演じてくれ、現場でも薪割りや山の様子を見守る所作の中で、愛犬のコウとの時間を育んでくれました。
 

DSCN7172.JPG

今でも私たちは家族のように映画の初日に立つことができ幸せです。あさってにはフランスに戻ってしまうジャンヌ、智も新作の現場に戻ってしまうのですが、私たちはいつでもこの疑似家族をもって、皆さんの元にもう一度現れる。そんな存在でいたいと思います。今日はありがとうございました」と挨拶、感極まって目に涙が光るビノシュが河瀬とハグを交わす姿も印象的だった。ジュリエット・ビノシュと吉野の森のセッションのような美しく、詩情豊かな物語。森の命、人間の命、そして目に見えない精霊の営みをも感じとれる。吉野の森の美しい四季と共に、五感を研ぎ澄ませて堪能してほしい作品だ。
(江口由美)
 

<作品情報>
『Vision』(2018年 日本=フランス 110分)
<監督・脚本・編集>河瀨直美
<出演>ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、岩本剛典、美波、森山未來、コウ、白川和子、ジジ・ぷぅ、田中泯(特別出演)、夏木マリ
2018年6月8日(金)~全国ロードショー
公式サイト⇒http://vision-movie.jp/
(C) 2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.
 

SBB-550-1.jpg

DSCN6857.JPG

父と息子の間にある“距離”を日常生活の中から描く
『泳ぎすぎた夜』五十嵐耕平監督、ダミアン・マニヴェル監督インタビュー
 
『息を殺して』の五十嵐耕平監督と『若き詩人』のダミアン・マニヴェル監督が、共同監督作品として企画し、青森に住む6歳の子どもを主演に据えた小さな冒険の物語『泳ぎすぎた魚』。雪深い冬の青森・弘前を舞台に、仕事に出かけた父を探す息子の姿を追った物語は、台詞がほとんどなく、サイレント映画のような趣きと、光を取り入れた雪国の美しい景色に心がほぐれる。子どもの日常を丁寧に綴った詩集のような作品だ。
4月21日からシネ・リーブル梅田他で公開される本作の五十嵐耕平監督、ダミアン・マニヴェル監督に、お話を伺った。
 

oyogisugita-550.jpg

■比較的フレキシブルに映画を撮る者同士。リスクは全く感じなかった。(五十嵐)

五十嵐さんの映画はもちろん好きだが、まず友達としてとても好きだった。(マニヴェル)

―――『若き詩人』取材時にマニヴェル監督は、五十嵐監督に映画人として多くの共通点があると語っていました。今回共同監督として映画作りをした五十嵐監督がダミアン監督に共感できた点は?また、一緒に映画を撮ろうと思った理由は?
五十嵐:一緒に映画を撮る企画があったり、映画を撮るということが先行していた訳ではなく、最初、ロカルノ映画祭で出会った時に友達になり、ダミアンが来日するたびに飲みに行ったり、話をするうちに、どういう風に映画を撮るかを話するようになりました。僕もダミアンも、比較的フレキシブルに映画を撮るので、一般的にはあまりいないタイプの監督です。だから、一緒に映画を撮ることになっても、リスクは全く感じませんでした。何か決断をした訳ではなく、本当に自然な形で一緒にやることになったのです。
マニヴェル:映画を撮ることは、僕にとってはリスクを冒すことです。二人でリスクを取ろうじゃないかということが大きかったです。二人でやったとしても何が起きるか分かりませんが、とにかく投げ出してみようと思いました。五十嵐さんの映画はもちろん好きですが、五十嵐さんのことをまず友達としてとても好きだったですね。
 
 
―――どういうプロセスで映画作りを進めていったのですか?
五十嵐:まずは、お互いにアイデアを出し合いました。僕が最初に出したアイデアが、「子どもが撮りたい」。そしてダミアンは「雪が撮りたい」。東京やパリではなく、郊外で雪の降る場所ということで、以前僕が仕事で訪れたことのある青森の弘前に行くことにしました。一番重要な要素である子どもと雪は最初に決まっていましたね。
マニヴェル:二人の間で、あまりルールや分担を明確には決めませんでした。毎日違う場所での撮影で、毎日違う冒険が待っていた感じです。僕は時々カメラのこともしましたし、五十嵐さんが鳳羅(たから)君の演出を行う。毎回色々なことが変化していく現場でした。
 
 
oyogisugita-500-5.jpg
 
―――前作の『若き詩人』は夏の南仏が舞台でしたが、今回日本の雪を撮りたいと思った理由は?
マニヴェル:『若き詩人』は夏の話でしたから、今回は冬に撮りたいと思いました。日本の田舎を知りたいと思いました。私にとって映画を撮ることは、その見知らぬ土地を発見することでもあります。
 
 
―――子どもを撮ることも、撮る方からすればかなりリスクがあったのではないですか?
マニヴェル:子どもを撮ることも、雪深い場所で撮ることも、二人の監督で撮ることも、どれもリスキーですから、気にしても仕方がありません。もうやるしかなかったのです。もし、たくさんのリスクがあれば、何かが起こります。もしリスクがなければ、何も起こらないのではないかと怖くなります。
 
 
―――リスクがある方が、映画を作っているという実感が湧くということでしょうか?
マニヴェル:正確に言えば、快適ではない状況が映画作りにおいて大事だと思います。
五十嵐:安心・安全な場所に立っていると、何でもできるけれど、選択肢があまりありません。色々なことが起きてしまう状況にいると、出来ないことが起こり、今まで想定していなかった別のアイデアが沸き上がります。しかも、それはより良い方向のもので、それはリスクがある状況でないと起こりません。成功するかどうかは分かりませんが、やらないと、自分が目指しているもののさらに上を獲得できないという感覚はありますね。
 
 
oyogisugita-500-1.jpg

■子どもと青森・弘前のポートレイトにするために、青森の子どもの起用を最初から決めていた(五十嵐)

鳳羅君を見た時の第一印象は「彼をそのまま、映画の中に落とし込みたい」(マニヴェル)

―――青森では、まず主演の子どもをキャスティングされたそうですが、最初から役者ではなく、現地の子どもをキャスティングしようと決めていたのですか?

DSCN6849.JPG

五十嵐:最初はダミアンと、子どもと青森・弘前のポートレイトにしようと話していました。子どものポートレイトを撮る時は、当然、風景との関係性もある訳です。実際、青森の子どもに特有の動きがあるのです。寒くて服をたくさん着ているので、動きが独特ですし、滑りやすいので、歩き方も小刻みです。そういうカラダでないと、その土地のポートレイトは撮れませんから、他の土地で育った子どもに演じてもらおうとは思いませんでした。
 
 
―――鳳羅君とはライブで出会ったそうですが、最初からお二人とも「この子で撮ろう!」と思ったのですか?
マニヴェル:この子とすぐに分かりました。
五十嵐:鳳羅君が走り回っているとき、ダミアンの方を振り返ると、ダミアンも僕の方を見ていて、「この子だ」と。もう少し年上の子どもを探していたのですが、出会ったのが鳳羅(たから)君で、彼が6歳だった。最初はわんぱくすぎて大丈夫かなと思いましたが。
 
 
―――鳳羅君を撮りたいと思った一番の魅力は?
マニヴェル:その動きと、エネルギーに惹かれました。恋に落ちたときと似ています。何も計算できないし、少し奇妙で、とても深い何かを持っている気がしたのです。二人が鳳羅君を見た時の第一印象は「彼をそのまま、映画の中に落とし込みたい」ということでした。
 
 
―――これで、この映画が撮れると確信されたのですね。
マニヴェル:でも最初は、鳳羅君がちゃんと演じられるか不安がありました。最初、カメラテストをした時は、何もできなかったです。
五十嵐:鳳羅君の中には恥ずかしいという気持ちがあるけれど、表には出ていなかったです。カメラテストで初めて大勢のスタッフに会った時は、テンションが上がりきって、ずっと走り回り、会話もできない状況でした。でも2回目に会った時には、すっかり落ち着いていて面白いなと思いました。
マニヴェル:最初のカメラテストで、鳳羅君はまだ自分をコントロールできなかったけれど、とても優しかったです。僕の背中に抱きついたり、登ってきたりして、すぐに友達になれました。人懐っこさがある子なので、もう断れないですよね(笑)
 
 
oyogisugita-500-2.jpg

■撮影合間に鳳羅君が遊ぶ様子を観察し、発見したものを脚本に組み込んだ(五十嵐)

話す必要がないシーンを連続させる構成で、関係性を見せた(マニヴェル)

―――「母をたずねて三千里」が頭をよぎるような、鳳羅君の冒険ぶりが凄かったです。次は何をするだろうと観ていて飽きなかったです。一見、ドキュメンタリーのようにも見えますが、鳳羅君の自由な動きも取り入れているのでしょうか?
五十嵐:鳳羅君の自由なアイデアもたくさん入っています。片方手袋を落としてしまうとか、靴を脱いで中に入った雪を落としたり、カーブミラーに雪をぶつけたり。撮影中偶然起こることもありますし、撮影の合間や生活の様子を観察して、「こんなことをやるんだ」と発見したものを脚本に組み込んだりもしました。撮影中は、僕達が準備をしている間、鳳羅君は色々な場所でずっと遊んでいましたから。すぐ寝るので、映画の中でもたくさん寝るシーンがあります。
 
 
―――台詞がなく、サイレント映画のようですが、鳳羅君のような6歳の子どもに、何も言わずに動いてもらうのは難しかったですか?
マニヴェル:夜眠れないとか、昼間道に迷うなど、一人のアクションなので、台詞が元々必要なかった。あえて、話す必要がないシーンを連続させる構成にし、関係性をみせられるようにしました。
五十嵐:最初撮り始めて、すぐに台詞は必要ないと判断しました。一番最初に、演技の基本になる歩き方や、カメラを見ないということ、そしてしゃべらないという最初の約束を決めていたので、自分から喋り出すことはなかったですね。
 
 
oyogisugita-500-3.jpg

■小さい頃、こんな風に聴いていたなという音がこの映画に込められている(五十嵐)

鳳羅君が普段着ている服と、雪との色の対比で、色彩豊かな映画になると確信(マニヴェル)

―――台詞がない分、鳳羅君の息遣いや、雪を踏みしめる音などがとても印象的でしたが、本作の音に関するこだわりは?
マニヴェル:台詞がないので、必然的にシーンと音を作り込む必要があり、映画が音楽的になっています。
五十嵐:この映画の音の印象は、普段僕達がイメージしている音というより、子どもが聴いている音です。小さい頃、こんな風に聴いていたなという音がこの映画に込められています。雪を踏む音が楽しくて踏んでみたり、音のイメージというのは、小さい頃は今よりずっと強かったと思うのです。色々な音が気になっていたのではないでしょうか。
 
 
―――雪国の映像ですが、とても明るい色合いなのが、この作品の特徴です。前作の『若き詩人』に共通する、光が降り注ぐような“マニヴェルトーン”になっていますね。
マニヴェル:色については、簡単な作業ではありませんでした。まずは鳳羅君が普段着ている服と、雪との色の対比を考えました。そして、この映画は色彩豊かな映画になるなと確信したのです。映画で着ている服だけでなく、実際の生活で鳳羅君が使っているものも、たくさん登場します。カメラもクリスマスのプレゼントに彼がもらったものですし、写真も彼が撮ったものです。
五十嵐:父親の職場までの道にあるものを撮った写真も、この撮影の前に鳳羅君が撮っていたものですし、眠れない夜に撮った写真も、後半のポートレートに使っています。
 
 
oyogisugita-500-4.jpg

■直接触れられないけれど、何かしらお互いに思っている父と息子の関係性を描く(五十嵐)

お父さんが息子に「愛してるよ」と言うような人だったら、この映画はできなかった(マニヴェル)

―――冒頭の夜、台所で父と子が同じ構図で時間を過ごしたり、ラスト息子の洗濯物を父が干すという2つのシーンで、父子の絆が静かに伝わってきました。鳳羅君の冒険とこのテーマに結び付けた狙いは?

DSCN6852.JPG

マニヴェル:本作は子どもの冒険の話ですが、それだけではなく、息子と父親の関係が一番大事です。この映画は、父と息子の間にある距離を主題としています。ただ、映画ではそれをドラマチックに描かず、いかに日常生活の中から描けるかに重きを置いています。日常の中の悲劇、つまり父と息子の間に距離があるという事実は悲しいですが、生活というのはそういうものですね。
五十嵐:父と息子の関係性はダイレクトではありません。常にコンプレックスがあり、大人になって人前では言えないけれど憧れている部分もあります。この映画で描いていることもその要素に近くて、直接触れられないけれど、何かしらお互いに思っていることがある。そういう関係性だからこそ、将来自分に子どもができた時、父にこのように思われていたのだなと気付くのでしょう。そのようなジェネレーションの話題に関心がありました。
 
 
―――共同監督としての映画作りでしたが、お互いに学ぶ点はありましたか?
五十嵐:ダミアンは、「もっといいやり方があるかもしれない」と、いつでもどこでも新しい可能性を探しています。そういう態度は尊敬しますね。困るときもありますが、一丸となって新しい方向に向かっていける。スタッフも優秀だと思います。
マニヴェル:五十嵐さんからはたくさんのことを学びました。僕はできるだけシンプルな方法を探す映画作りをしていますが、五十嵐さんはいつも感情の鍵を探しており、その感情は僕にとってはとても複雑で、深いものを探しています。五十嵐さんの映画は一度観ただけでは分からないけれど、2回、3回観ることで、色々なものが開いていく。自分があまりできないことなので、憧れますね。
 
 
―――最後に、撮影を通じて鳳羅君の成長や本音を感じましたか?
マニヴェル:毎日本当に様々な体験をしました。魚市場でたくさんの雪が降っている昼のシーンを撮影する時、(本作にも父親役で登場する)鳳羅君の父親は魚市場で働いているため、ちょうど仕事上がりで帰宅するのを、鳳羅君が見てしまい大泣きしたことがありました。その日の撮影ができなくて大変でしたが、本当にこの映画と全く同じだなと思いました。お父さんは大好きだけど、勤務時間の都合でいつもすれ違って、なかなか会えないのです。
五十嵐:鳳羅君もお父さんが好きだと口では言いません。魚の絵を書いていますが、元々はお父さんの絵を書いてとお願いしたものの、イヤだと言われて。
マニヴェル:鳳羅君のお父さんも同じで、好きなのに好きだと言いません。逆に、もしお父さんが息子に「愛してるよ」と言うような人だったら、この映画はできなかったと思います。
(江口由美)
 

 

oyogisugita-pos.jpg

<作品情報>
『泳ぎすぎた夜』
(2017年 フランス=日本 1時間19分)
<監督>五十嵐耕平、ダミアン・マニヴェル
<出演>古川鳳羅、古川蛍姫、古川知里、古川孝、工藤雄志
公式サイト⇒http://oyogisugitayoru.com/
4月21日(土)~シネ・リーブル梅田、5月19日(土)~出町座、6月9日(土)~神戸アートビレッジセンター他全国順次公開
(C) 2017 MLD Films / NOBO LLC / SHELLAC SUD
 
※第74回ヴェネチア国際映画祭オリゾンディ部門正式出品
 第18回東京フィルメックス 学生審査員賞・Filmarks賞受賞

TheSquare-jp-500.jpg(左から)森直人さん、リューベン・オストルンド監督、菊地成孔さん


 『ザ・スクエア 思いやりの聖域』監督×菊地成孔登壇ジャパンプレミアレポート

◆実施日:4月11日(水)
◆場所:ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷区渋谷1-23-16 ココチビル7F)

◆登壇者:リューベン・オストルンド監督、菊地成孔(音楽家・文筆家) 
   司会:森直人(映画評論家)

 

第70回カンヌ国際映画祭 最高賞パルムドール受賞
本年度アカデミー賞® 外国語映画賞ノミネート
美術館を舞台に<毒とユーモア>で人間の本質に迫る、
傑作社会派エンタテイメント!

北欧の鬼才リューベン・オストルンド監督登壇!
監督 「恥と罪の意識こそが人間特有の感覚なんです」
なぜ今観るべきか!? 菊地成孔と本作の見どころを徹底分析!!

 
第70回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝き、本年度アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』が、4月28日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開されます。

このたび、本作の監督・脚本を務めたリューベン・オストルンドが緊急来日!そして、ヒューマントラストシネマ渋谷にて行われたジャパンプレミアに登壇。音楽家・文筆家の菊地成孔さんとトークショーを行いました!



満席となったジャパンプレミアの会場は、はるばるスウェーデンからやって来たリューベン・オストルンド監督が登場すると拍手喝采が巻き起こった。二部構成のトークショーでは始めに観客とのQ&Aが設けられ、客席からは次々と手が挙がりました。その後、音楽家・文筆家の菊地成孔さんとの対談がスタート。司会は映画評論家の森直人さんだ。


菊地さんは始めに「この映画を観て、私たちはヨーロッパについて知っているようで、いかに何も知らないのかということを感じましたね。福祉が行き届いた豊かな国だと思っていたら、巨大な貧富の差があってホームレスが物乞いをしていて……という」と、新たなヨーロッパ像を提示した本作の鋭さに言及した。


TheSquare-550.jpgそして話は、本作でオストルンド監督が描きたかったテーマの1つである“傍観者効果”に移った。傍観者効果とは、ある危機的状況が起きた際に、周囲が傍観し続け、誰も助けようとしない状況を指す社会心理学用語の1つ。『ザ・スクエア 思いやりの聖域』には、誰もが“こんな状況あるある!”と頷く日常に潜んだ傍観者効果の場面が次々と登場する。


そこには、オストルンド監督の“この映画を通じて、傍観者として受け身にならず、人間として助け合おうという思いやりの心を思い出してほしい”というメッセージが込められているのだ。菊地は「日本の場合はもはや傍観者効果に対して、問題意識を持たないほどこじらせているんです」とキッパリ。「だから、“傍観者効果は問題だ”と気づいているということ自体に、スウェーデンと日本の意識の違いが表れている。


映画の冒頭は、主人公のクリスティアンがあるハプニングに対し傍観者になるかどうか選択を迫られ、結局“傍観者にならない”道を選んだところで、新たなハプニングに巻き込まれる。そういうところが、傍観者効果に対して、すごく知的に描かれていると感じました」と述べた。


TheSquare-500-3.jpgさらに菊地さんは、「現代アートの世界の裏側を描いた作品というのは、映画史上初めてでしょう。“砂山を作っただけで大金がもらえるってどうなのよ”という、誰もが感じたことはあるだろうけど誰も言えなかった、そんな疑問を初めて扱った」とその革新性を分析。それに対しオストルンド監督は「劇中、美術館で起きる出来事の多くは、実際に起きたことがベースになっています。例えば、ボローニャのとある現代美術館では、清掃係がゴミだと思って間違って作品を片付けてしまったというハプニングがありました。煙草の吸殻と古いシャンパングラスを置いただけの作品だったようですが、その作品に約500万ユーロの保険がかかっていたので、どうしたものかと関係者は頭を抱えたそうです」と衝撃的なエピソードを明かし、観客からは驚きの声が上がった。


また、菊地さんがそうした本作の風刺的なスタイルをモンティ・パイソン的だと評すると、オストルンド監督は「モンティ・パイソンは私も大好きです!」と微笑んだ。続けて、「それと、フェリーニの『甘い生活』も思い出しました」と菊地さん。「“神なき世界で人がどう倫理的に生きるべきなのか”というヨーロッパ的な命題を、どちらも描いているなと。それに『甘い生活』は、ゴシップ紙のカメラマンという、それまではとても映画の題材にはできなかったような職業を対象にしていましたが、主人公が変わった職業という点や、その他にも主人公がスーツ姿だったり、突飛なストーリーはなくても印象的なシーンがたくさんあったり、『ザ・スクエア思いやりの聖域』と『甘い生活』には共通点が結構あるなと思いました。でも、『甘い生活』よりもこっちの方がユーモラスで苦いですね」と、映画史上の巨匠監督による名作と並べながら、ヨーロッパ映画としての観点から『ザ・スクエア 思いやりの聖域』を絶賛した。


すると、オストルンド監督は「私は、ハリウッド的な勧善懲悪には同意できないんです」と一言。「なぜなら、私たちの誰もが、良いことをする可能性もあれば、悪いことをする可能性もある。だから私は、脚本を書くときにあえて登場人物をあるジレンマに落とし込むんです。監督の私自身が“あぁ、こんなことやっちゃうよな”って思えなければ、その映画は失敗です。私の映画は全て、社会学的なアプローチを取っています。


今のメディアは、何か問題が起きた時にある個人に罪をなすりつけがちです。しかし、社会学は誰かが失敗しても、その個人に罪をなすりつけません。むしろ、そこに興味を持つんです。“そうか、私たちはこういうことができないんだ”って。だからこそ、現代は社会学的なアプローチがより必要とされている時代なんです」と続けると、菊地も「今はネットの炎上とかも頻繁にありますし、社会学的アプローチが必要と言うのはそういう意味もあるでしょう。罪の意識の変化ですね。この映画では、社会の中で何が罪なのかが問われているんですね」とうなずいた。


TheSquare-500-2.jpgさらにオストルンド監督は、こう話した。「私は、日本や東アジアの文化にも、北欧と似ている部分はあると思います。それは、面目を失うのを恐れるということです」と語り、「私の前作『フレンチアルプスで起きたこと』では、旅行先のゲレンデで雪崩が起き、父親が家族を見捨てて逃げ出すという物語の要になる場面があります。大事故にはならず父親は戻ってきますが、家族はもう彼をそれまでのようには見られません。自分に期待される役割を果たせなかったことに、父親は強い恥を感じます。この映画で私は、恥という感覚の普遍性を描こうとしました。


例えば、エストニアの沈没事故とか、多くの人命が失われた事故や災害では、統計を見ると実は生存者は男性が多数なんです。女性を先に助けようと言っているのに、男性の生存本能が勝って利己的な行動に出ている。生存本能は、倫理的な規範をとりはらう。しかし、一方でこんなことがあります。韓国で起きたセウォル号沈没事故で、生徒たちを見捨てて生き残った教師がいました。生存本能が勝ったわけです。しかし、その後、彼は自殺してしまったのです。生存本能が強くても、最終的には恥が勝ってしまった。それほど恥は人間に強い影響を与え、人間と言う動物だけが、唯一その恥の感覚を持っているんです」と、本作が描くのは決してスウェーデンやヨーロッパに限らない、普遍的な問題を扱っていると伝えた。


トークはどんどん白熱し、まだ話したりないといった空気の中、終了の時間に。最後にオストルンド監督は、「今日は皆さん、本当にありがとうございました!」と観客に感謝を伝え、「現在私は次回作を企画中で、“Triangle of Sadness”というタイトルの、男性ファッションモデルを主人公にした“美”がテーマになる予定です」と次回作をすかさずアピール。オストルンド監督が一貫して描き続ける、人間社会の普遍的な問題を扱う悲喜劇となりそうだ。今後のそうした彼の活躍を見届けるためにも、オストルンド監督の作家性が最高のかたちで表れている『ザ・スクエア思いやりの聖域』は何よりも今こそ観るべき映画だ――観客の誰もがそう強く実感する中で、ジャパンプレミアは幕を閉じた。

TheSquare-jp-550.jpg


【リューベン・オストルンド監督プロフィール】
1974年、スウェーデン西海岸の小さな島、スティルソに生まれる。2005年、長編デビュー作『Gitarrmongot(原題)』(04)を監督。長編2作目『インボランタリー』(08・未)がカンヌ国際映画祭のある視点部門でプレミア上映。長編3作目の『プレイ』(11・未)はカンヌ国際映画祭の監督週間でプレミア上映され、‘Coup de Coeur’賞を受賞した。長編4作目の『フレンチアルプスで起きたこと』はカンヌ国際映画祭のある視点部門でプレミア上映され、審査員賞を受賞。数々の映画祭に出品され、16の外国映画賞を獲得。最新作である『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に初出品され、パルムドールを受賞。これまでに24の映画賞を受賞、30のノミネートを果たしている。


【菊地成孔さんプロフィール】
1963年、千葉県に生まれる。1985年にミュージシャンとしてプロデビューを果たし、ジャズを中心に活動。現在は「菊地成孔とペペトルメント・アスカラール」、「菊地成孔ダブ・セプテット」として活動する他、作詞提供やプロデュースも行い、『パンドラの匣』(09)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18)など映画のサウンドトラックも手がけている。主な著作に「歌舞伎町のミッドナイトフットボール」、「ユングのサウンドトラック」、「レクイエムの名手菊地成孔追悼文集」「菊地成孔の欧米休憩タイム」など。TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」ではメインパーソナリティを務めている。


『ザ・スクエア 思いやりの聖域』 

・THE SQUARE 2017年  スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク合作 2時間31分
・監督・脚本:リューベン・オストルンド『フレンチアルプスで起きたこと』  
・製作:エリック・ヘルメンドルフ『フレンチアルプスで起きたこと』、フィリップ・ボベール『散歩する惑星』  
・撮影:フレドリック・ウェンツェル『フレンチアルプスで起きたこと』
・出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー他
・後援:スウェーデン大使館、デンマーク大使館、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本

・© 2017 Plattform Produktion AB / Société Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS

2018年4月28日(土)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、京都シネマ 他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.transformer.co.jp/m/thesquare/
・作品紹介⇒ こちら


(オフィシャル・レポートより)

 

rucky-550.jpg

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25