原題 | CARRIE PILBY |
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制作年・国 | 2016年 アメリカ |
上映時間 | 1時間38分 |
原作 | カレンリスナー(「Carrie Pilby」) |
監督 | スーザン・ジョンソン |
出演 | ベル・パウリー、ガブリエル・バーン、ネイサン・レイン、ヴァネッサ・ベイヤー、コリン・オドナヒュー、ジェイソン・リッター、ウィリアム・モーズリー他 |
公開日、上映劇場 | 2018年10月20日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、そのほか全国順次ロードショー |
“堅すぎる”彼女が論理を離れ、
心にフィットする人を見つけるまで
舞台は、ニューヨーク・マンハッタン。飛び級でハーバード大学を卒業した一人暮らしのキャリー(ベル・パウリー)は、なんとIQ185という、人も羨む頭脳の持ち主だが、仕事も親しい友達も恋人もなく、ほとんど引きこもり状態の、いわゆる“コミュ力”ゼロ女子。定期的に交わすセラピストのペトロフ(ネイサン・レイン)との会話が、社会との主なる接点だ。そんな彼女の現状を見かねたペトロフから、ある日6項目からなる「幸せになるためのリスト」が渡される。不承不承ながら、一つ一つ実行に移すキャリーだったが…。
お金が山ほどあっても幸せになれるかどうかわからないのと同様に、頭が良すぎても幸せだとは限らない。キャリーはついつい人や物事を過剰なほど論理的に判断し、分析してしまうくせがある。恋人候補らしき男が3人登場して、それなりの場面を迎えても、ハートでなく頭脳で彼らを見てしまう(まあ、そのうちの2名はとんでもない輩であるが)。さらに、父親(ガブリエル・バーン)やセラピストなど熟年の男たちにも構えた態度を隠せない。
それでも、幸せリストを一つ一つクリアしていくうちに、彼女の中で何かしら良い方向での化学反応が生まれ、同じ女性として、俄然キャリーを応援したくなってくる。そのあたりは、匙加減の効いた脚本力と、これが長編映画初メガホンとなった女性監督ならではの、女性心理の機微をきちんとすくい上げられる感性に依るものだろう。
ヒロイン役のベル・パウリーがチャーミングだ。強い光を放つ大きな瞳は、若き頃のイザベラ・ロッセリーニを思い起こさせる。ロマンスグレーっぽくなったガブリエル・バーンの登場も嬉しい。そして、もう一つ、この映画の魅力は、ニューヨークの街並みの美しさをきちんと背景にとらえていること。同じ大都会でも、ロンドンにもパリにもない、むろん東京にもない、あのニューヨークにしかない独特の雰囲気が映像に滑り込んでいる。高層ビルに囲まれているのに、セントラルパークや古びたアパート、さりげない庶民的なお店などが日常風景として何とも素敵に調和し、そこに多様な民族や文化のパワーが混じり合っていて、「ニューヨークで暮らす」ことへの憧れをかきたてるに違いない。
そうして、恋人同士のシチュエーションとしてこれ以上のものはないというクリスマス・イヴ、キャリーはきっと思い出に残る‘’夜空の華”を、これから大事にしていこうと思う人と共に楽しむことになる。微笑ましくも、ロマンティックなラストシーンだ。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://my-precious-list.jp/
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