■日本のアニメ映画で好きな監督について〜高畑勲監督のことを思いながら作品を作った
■主人公ディリリの設定について〜人種の多様性を描くために、ニューカレドニアのカナック族のハーフに
■アニメの世界で表現されるフェミニズム〜女性に対する虐待は至るところに見られる
■色使いと背景について〜アニメのキャラクターと僕自身が撮った実写の写真を融合
■お気に入りのシーンについて〜実在のスーパーウーマン3人が会するシーンは感動
福井県勝山市を舞台に、お笑いタレントの横澤夏子映画初主演作にして、越前鉄道の新人アテンダントを颯爽と好演。夢破れて都会から戻った主人公が、疎遠になっていた家族や地元の人々との交流を通じて、故郷の温もりに癒され、改めて故郷で生きる歓びを感じていく、笑って泣ける感動の物語『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』を観て、思わず旅に出たくなった。
越前海岸から福井平野を走り抜け、さらに永平寺口から白山山系を望む勝山市まで九頭竜川沿いに走る《えちぜん鉄道》の、風光明媚な鉄旅が旅愁を誘う。早速、舞台となった福井県勝山市を訪ねることにした。以前から、勝山市の恐竜博物館へも行きたかったので、丁度いい機会となった。
大阪駅から特急サンダーバードに乗って2時間で福井駅に到着。JR福井駅のすぐ隣にある真新しい《えちぜん鉄道》の福井駅から勝山行きに乗車。可愛いアテンダントのお嬢さんが出迎えてくれる。今は10人のアテンダントが交代で勤務しているという。たった1両の車両に運転手とアテンダントが乗務するとは、今時なんと贅沢なことだろう。
終点の勝山駅まで約50分の各駅停車の旅は、平日だったこともあり、観光客より路線沿いの人々の乗降が目立つ。途中、保育園児の団体が乗り込んできて、車内は一気に賑やかになる。(どうです、この笑顔!“変なおばちゃん”を怖がりもせず、とびきりの笑顔でポーズ♪)
永平寺口駅を過ぎた辺りから九頭竜川沿いに走り、季節の移ろいを感じさせる白山山系が迫る山並みを目指す。途中、アテンダントが観光案内もしてくれるのも嬉しい。
遠くからでも目立つ山奥にある銀色に輝く球体にびっくり!近づくにつれその巨大さに目を奪われる。おお~モスラの卵か、ゴジラの卵か!? 謎の球体の正体は日本一規模の大きな自然史博物館の《福井県立恐竜博物館》。カナダの《ロイヤル・ティレル古生物学博物館》、中国の《自貢恐竜博物館》に並ぶ世界三大恐竜博物館のひとつらしい。
終点の勝山駅では、恐竜の親子が迎えてくれる。
恐竜博物館へは、勝山駅から出ているシャトルバス(片道300円)が便利。予想以上に大規模な恐竜の展示に大満足。いたる所で、巨大な動く恐竜たちがお出迎えしてくれるのも楽しい。館内のレストランでは福井名物のソースカツや越前そばも味わえる。恐竜博物館オリジナルのお土産も数多く、家族連れでも十分楽しめる。
映画のロケ地をもっと見て回りたかったが、恐竜博物館で時間を取りすぎてしまって、断念。いずみの実家となった老舗蕎麦屋「八助」や、「勝山市左義長祭」の舞台となった古い町並みが美しい「本町通り商店街」を歩いて、九頭竜川にかかる橋を越えて勝山駅へと向かう。
そして、松原智恵子と横澤夏子がいずみの実母について語るシーンが撮影された、勝山駅構内にあるレトロなカフェ《えち鉄CAFE》で、オリジナルブレンドコーヒーとコーヒーゼリーを頂く。その香ばしく深みのある美味しさは、旅のいい思い出となった。今度は春に訪れて、「八助」の手打ち蕎麦を食べたい! 名残惜しい恐竜の里よ、今度は白山平泉寺や越前大仏・清大寺などへも行ってみようと思う。
『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』
【STORY】
勝手に家を出て、東京でお笑い芸人を目指していた山咲いずみ(横澤夏子)は、挫折して久しぶりに帰郷する。父親の葬儀にも帰らず、実家の蕎麦屋を継いだ兄の吉兵(緒方直人)とは長年疎遠になっていたが、優しい兄嫁やその子供たちは歓迎してくれた。実は、いずみは赤ん坊の頃に引き取られた養女で、それをずっと秘密にしてきた両親や兄に対して不信感をつのらせていたのだ。
友人の結婚式で出会った越前鉄道の会長(笹野高史)にはじける笑顔を気に入られたいずみは、越前鉄道(えちてつ)のアテンダントの研修を受けることになる。1両のワンマンカーに青い制服姿の颯爽とした若い女性が車掌として乗務するという、今どき珍しい鉄道会社である。だが、兄に何の相談もなく急に帰ってきたかと思えば、地元で新たに仕事を始めるといういずみの勝手さに、兄は怒りを爆発させる。果たして、アテンダントとして一人前に乗務できるようになるのか、兄との和解は訪れるのか、いずみの心からの笑顔を見ることはできるのか?
■(2018年 日本 1時間49分)
■監督:児玉宜久 脚本:児玉宜久、村川康敏
■出演:横澤夏子、萩原みのり、山崎銀之丞、笹野高史、松原智恵子、緒方直人、辻本祐樹、坂本三佳、安川まり、古田耕子
■公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/echitetsu/
■©2018『ローカル線ガールズ』製作委員会
(写真・文:河田 真喜子)
© 2018 “Ten Years Japan” Film Partners
現在TOHOシネマズ六本木他で開催中の第31回東京国際映画祭で、香港のフルーツ・チャン監督最新作『三人の夫』がコンペティション部門作品としてワールドプレミア上映された。娼婦を描いた『ドリアン・ドリアン』(00)『ハリウッド★ホンコン』(01)に続く、「売春トリロジー」の3作目となる本作。ボート生活を送る常人離れした性欲に苦しんでいる主人公、ムイと、彼女と暮らす年老いた父親、ムイの赤ちゃんの父親である老漁師、そしてムイに恋し、結婚した青年“メガネ”が織りなす物語は、夫との性生活に満足できず、元の船上売春婦に戻るムイと男たちの性描写の多さに驚かされる一方、常人離れしたオーラを放つムイに心を奪われる。また、フルーツ・チャン監督ならではの移りゆく香港の今を、色濃く映し出す要素として、先日全面開通したばかりの香港とマカオを結ぶ世界最長の海上大橋「港珠澳大橋」も登場。今後香港に大きな影響を与える象徴的存在となっている。
フルーツ・チャン監督、脚本のラム・キートーさん、主演のクロエ・マーヤンが登壇して行われた記者会見では、まずセックスが止まらない女性を描いたことについて、「本来、性欲は男性のものですが、今回初めて性欲の強い女性を描きました。自分でも女性の性欲がどこまでいくのかわからず苦労しましたが、医者に聞くと、その欲は無尽蔵だと。満足するまではどこまでも止まらないと言われました」とチャン監督がその苦労を明かした。
初主演作にして、チャン監督の指示により1ヶ月で13キロ増量して体当たりの演技を見せたクロエ・マーヤンさんは、「チャン監督には、肉感的で、被害者ではなく力強い女性像が求められました。初めて脚本を読んだのは、香港に到着し、クランクインした初日でした。読んだ時、これぞ長年待っていて、今まさにやりたい役だと思いました」と告白。脚本のラム・キートーさんが、「普段はあまりありませんが、フルーツ・チャン監督の売春トリロジーの撮り方は、監督が文字脚本を起こし、今回のようにキャスティング後に、マーヤンさんをイメージしてビジュアルに落としていきます」と、このシリーズならではの撮り方であることを説明した。
精神的な危うさも含めて、素晴らしい演技を見せたマーヤンさんを抜擢したことについて、チャン監督は「中国においては、女性がセックスをメインにした映画を撮ることはある意味冒険で、とても難しいのです。実は10年前ぐらいに一度、マーヤンさんと出会っていたのですが、当時は私のイメージと合わずキャスティングしませんでした。今回この役を探すに当たり、あの時のマイヤンさんはどうだろう、かなりイメージが変わっていると勧めてくれた人がおり、実際お会いすると、この物語のイメージに近くなっていたので、キャスティングしました」とその経緯を明かすと、マーヤンさんも、「自分との対話という意味で、過去の自分やこれからの自分を考えた時、いま、一番これをやるべきだと思いました。とてもパワフルでした」とオファーを決意した時の心境を語った。さらに、一度脱ぐ演技をした後、そのイメージを払拭することの大変さを聞かれると「『ラスト、コーション』のタン・ウェイさんと共演したときに、その後ご苦労なさったと聞きました。でも共演した時は心穏やかな状態でいらっしゃいました。私自身も心配はしましたが、海に飛び込んだのなら、そのまま漂っていきたいと思っています」と晴れやかな表情で語った。最後に、香港での上映はできるものの、中国では上映できないことを明かしたフルーツ・チャン監督。「これが社会の暗黒面ですね」と表現の自由が犯されている状況を皮肉った。
第31回東京国際映画祭は11月3日(土)までTOHOシネマズ六本木ヒルズ、EXシアター六本木他で開催中。
第31回東京国際映画祭公式サイトはコチラ
(江口由美)