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『ザ・フォーリナー/復讐者』

 
       

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作品データ
原題 The Foreigner  
制作年・国 2017年 イギリス、中国、アメリカ合作
上映時間 1時間50分
原作 スティーブン・レザー「チャイナマン」
監督 マーティン・キャンベル(『007/ゴールデンアイ』(‘95)、『007/カジノ・ロワイヤル』(‘06)、『グリーン・ランタン』(‘11))  脚本:デヴィッド・マルコーニ
出演 ジャッキー・チェン、ピアース・ブロスナン、オーラ・ブラティ、ロリー・フレック・バーンズ、レイ・フィアロン、マイケル・マケルハットン、ケイティ・ルング
公開日、上映劇場 2019年5月3日(金)~なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー

 

“眠れる獅子”を怒らせてしまった!

過去を封じて生きる孤独な男同士の危険すぎる出会い

 

ジャッキー・チェンの新作は、ロンドンとアイルランドを舞台にテロリストとの闘いを描いた、スタイリッシュアクション炸裂のシリアスドラマである。無差別爆破テロで愛娘を失った父親の孤独で静かで激しい復讐劇は、63歳ジャッキーの悲壮感漂う傑作である。実際2017年にロンドンのシティ・オブ・ウェストミンスターでテロ事件が発生した後日、ランベス・ブリッジでバスが爆発してパニックになったというニュースを目にした。それはジャッキー・チェン主演映画の撮影用の爆破だと聞いて、びっくり!タイミングが悪すぎるその映画の行方が気になっていたが、ようやく待望の日本全国公開となった。


foreigner-500-1.jpgロンドンの下町で小さな中華料理店を営むクァン・ノク・ミン(ジャッキー・チェン)は、ナイツ・ブリッジで起きた無差別爆破テロにより愛娘のファン(ケイティ・ルング)を亡くして悲嘆にくれる。クァンにとってたった一人の家族だった。中国からインドシナ半島を経て命がけでイギリスに亡命してきたクァンは、その道中妻と二人の娘を亡くしていたのだ。警察の頼りない捜査にしびれをきらして、全財産を投げ打ってでも復讐しようと、テロ組織の情報を求めてアイルランドへ単身乗り込んでいく。


foreigner-500-2.jpgそこでクァンは、元UDI組織の幹部だったアイルランド副首相のリーアム・ヘネシー(ピアース・ブロスナン)に目星を付け、何らかの情報を得ようとするが門前払いとなる。イギリス政府から犯人捜しと次の犯行抑止を要求されているヘネシーは、北アイルランドとの和平に尽力することで政治家としての躍進を目論んでいた。だが、今回のテロ事件によりヘネシーの政治生命に危険信号がともされる事態となった。ヘネシーからの協力を得られないクァンは更なる過激な行動に出る。


foreigner-500-3.jpgクァンのことを「一人娘を亡くした哀れな初老の中国人」だと思っていたヘネシーたちは、いきなり首根っこを掴まれるような予測不能な圧力に驚き、特殊部隊の訓練を受けた甥のショーン(ロリー・フレック・バーンズ)をアメリカから呼び戻し、厳戒態勢を執り始める。果たして、クァンの復讐は果たされるのか?


foreigner-500-6.jpgこの映画の見所は、何と言ってもジャッキー・チェンが悲壮な面持ちで闘う父親像だろう。娘と明るく会話する優しい父親から、悲嘆にくれる背中を丸めた父親、そして正義を遂行しようと犯人探しに執念を燃やす父親、過去に家族を守れなかった贖罪の念がより一層復讐へと駆り立てる。今回のジャッキー・チェンは、デンゼル・ワシントンの『イコライザー』やトム・クルーズの『アウトロー』のように、過去の経歴で培った特殊技能を活かしてアナログ的な闘い方で悪を打倒する姿に似ている。見た目からは想像もできないような俊敏な身のこなしや、精鋭のテロリスト相手に高度な戦闘術を発揮する辺りは超一級の痛快さで楽しませてくれる。


foreigner-500-4.jpg一方、ヘネシーを演じたピアース・ブロスナンがまたいい!マーティン・キャンベル監督とは、5代目ジェームズ・ボンドを演じた『007/ゴールデンアイ』(‘95)でタッグを組んでいる。ジャッキーより一つ年上の64歳だが、『さよなら、僕のマンハッタン』(‘17)でも魅了した美女とのセクシーシーンも健在。政治家としての基盤が足元から崩壊していく恐怖を、感情むき出しにして全身で迫り来る。


結局、クァンとヘネシーは、過去を葬って生きてきた孤独な者同士なのかもしれない。本作の大きな特徴は、並みいるアクション映画の中でもキャラクターの持つ人間性が全面に出るような奥深さを感じさせ、ラストのクァンの表情には胸が熱くなるような感動があることだ。テロ事件が頻発している昨今、映画は痛快なだけでは終われない。この悲しみをどう感じ取ってもらえるのか、この無慈悲なテロ行為をどこまで抑制に繋ぐことができるのか。そのためにも映画は、世界共通言語となり得るような、心に響く何かを表現していかなくてはならない。本作には、その一縷の望みに繋がるものがあるように感じた。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://the-foreigner.jp/

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